ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

放射線耐性

今回CERNへ来ているのは,ATLASのアップグレード用シリコン検出器に関するcollaboration meetingに参加するためです。朝から晩までミーティングに出て,その合間にやらなければならない雑用を処理しているので,それなりに忙しい日々を過ごしています。

シリコン検出器は荷電粒子の飛跡を検出するために使うもので,ATLASだけでなく,コライダー実験では常にビームの衝突地点近くに設置されます。なので,基本的にrad-hard,すなわち放射線耐性が高くないとならないのですが,LHCはビーム衝突で生成される粒子数が多い上に,ルミノシティも高いので,シリコン検出器には極めて高い放射線耐性が要求されます。

しかも,LHCのアップグレードというのはルミノシティを上げる計画ですので,アップグレード用のシリコン検出器というのはさらに高い放射線耐性が要求されます。そこで,日本グループも浜松ホトニクスと協力してシリコンセンサーの放射線耐性を上げる研究をしています。でも,検出器はセンサーだけでできているわけではなく,センサーと並んで検出器の最重要パーツである信号読み出しASICをはじめ,様々な部品からできています。

センサーとASICが一番重要なので目立っていますが,実は,検出器を構成するあらゆるパーツの放射線耐性というものを調べて検出器を作っています。たとえば,大阪グループのYさんがやっているのは,接着剤の放射線耐性の試験だったりします。前にも書いたことある気がしますが,放射線をたくさん浴びた接着剤は,接着剤が接着剤であるための分子構造(架橋構造?)が放射線によって破壊されてしまうために,ベタベタがなくなって接着力を失ってしまいます。そこで,接着剤に様々な量の放射線を浴びせて,どれくらいの放射線量まで接着力を保っていられるか,というようなことをあらかじめ調べないと検出器には使えません。

今回私の目をひいたのは,ケーブルです。普通だったら何にも考えないで使っているようなケーブルですら,様々な理由があって選ばれます。今回議論があったのはデータ転送用なので,帯域がもちろん重要です。その他に重要なのが,物質量で,できることならなるべく細いケーブルを使いたいという要請があります。荷電粒子が物質中を通過すると多重散乱といって,突き抜ける際にわずかに進む方向を変えます。これがあると飛跡の飛んできた方向を間違えてしまうので,飛跡の測定という観点からは非常に邪魔なものです。じゃあ多重散乱を抑えるにはどうしたらいいかというと,答えは単純で,物質量を減らすということになります。なので,細いケーブルが好ましいというわけですね。それに加えてここでもやっぱり放射線耐性を調べています。一見すると普通の同軸ケーブルやツイステッドペアなのですが,全部ちゃーんと放射線を浴びせて特性が変化しないか調べています。

自分たちも似たようなことをやってはいるのですが,検出器を作るとなると,本当にあらゆるものを様々な角度から検査しないとならないんだなぁ,ということを改めて意識しました。油断してると忘れてしまうようなパーツでもちゃんと検査するというのは,なかなかに難しいことで,こういうところに経験の差が出るんでしょうね。

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