ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

パウリの排他律

いきなりですが,不思議じゃないですか,パウリの排他律。いったいどういう相互作用が働いて,あるいはどうやって情報を伝達し合って,複数のフェルミオンは同じ量子数を取らないようになってるのか,不思議です。

もちろん,量子力学の教科書には,フェルミオンの波動関数は反対称だから2粒子の入れ替えをすると波動関数がゼロになってしまう,云々かんぬんと説明されています。それは量子力学を全く理解していない私でもわかるのですが,でもそれって,観測事実を矛盾なく説明するための定式化で,「なぜ」には全く答えていません。いや,だから原理なんだという話なんでしょうけど,エラい理論の人はどう考えているんだろうかと思い,KEKのある理論屋さんに聞いたんですね「どういう相互作用によってパウリの排他律って成り立ってるんですか?やっぱ,電磁気力しかありませんよね?」ってな具合に。

そしたら,ニコッと笑って「ExtraDimensionくん,それは考えてはいけません。」だそうです。その人いわく,理論といっても所詮は人間が考えるものなので,なんらかのイメージがあり,そのイメージを具現化したのが(難解な数式で表現されてはいるけれども)理論である,と。つまり,理論を考えるときには,既にわかっている(と思っている)概念があり,それになぞらえている部分が大きいというのです。なので,そもそもわかっている,あるいは似ている概念がある場合はいいけど,そうじゃないときはお手上げ。パウリの排他律はまさにそのお手上げ状態だと言うんですね。まあ,私なんて最初から色んなことにお手上げなわけですが,エラい理論の人でさえお手上げだと言ってるのですから,それ以来,原理なんだから仕方ないじゃんと思うようにしているのですが,でもときどきやっぱり不思議だなぁと思い出してしまうことがあります。

同じような不思議さというか,私にとっては気持ち悪さがあるのが統計です。同じような話ですが,ある複数の粒子の集団があって,その中にいる粒子の何らかの分布がGaussianになったりするわけですが,いったい誰がそれぞれの粒子に「お前は平均値よりちょっと大きくなれ」「お前は平均値よりもだいぶ小さい値になれ」「お前は...」と指示出してるんでしょうか。素粒子の言葉で言うと,どういう相互作用によって情報を交換しあって,Gaussianという分布を作りだしているのか,これまた不思議です。いや,別にガウス分布でなくてもいいのですが,統計で出てくる確率分布というものがなぜ引き起こされるのか,全くもってわかりません。

というようなことを(統計の確率分布ではありまえんが,何らかの集団運動についてです),しばらく前にあった,物理学専攻の研究紹介をしていた物性理論の人に,素粒子関連の人が質問をしていたのですが,どうも質問の意図が通じなかったようで,フェルミオンの波動関数が反対称だから的な答えを繰り返されて,ちとがっかりでした。現象を定式化した数式の説明に終始されて,その背後のなぜには結局全く答えてもらえませんでした。この前のKEKの委員会での原子核の人の話もそうでしたが,「理解」の意味が分野によって大きく違うようです。

研究 | コメント:5 | トラックバック:0 |
<<大学の公開講座 | HOME | 台風8号>>

この記事のコメント

「量子力学を全く理解していない私」という言い方からもExtraDimensionさんの「理解」は相当ハードルが高いように思われます…
2014-07-11 Fri 20:49 | URL | 物性の人 [ 編集]
SO(3)の被覆群であるSU(2)の表現には、一周すると負符号が変わる表現があって、それを2つ用意して入れ換える操作は、それぞれを半周させているので、系として負符号が出るという感じだと思います。
なので、特に二つの粒子が完全に同じ量子数を持つ場合は、存在出来ない。
この場合も、粒子は量子数によってしか区別出来ないなど仮定していますが、これが正しいのであれば、問題を別の角度から問い直すことが出来るかと思ったりするのですが如何でしょうか?
本当かどうかは賢いお知り合いに聞いて下さい。

後半は良く分からないのですが、弱く相互作用する多体系の熱平衡分布が、どうなるのかなどであれば、証明がありそうですが、統計物理の人とか知らないのでしょうか。
最近だと、ある種のmacro な量子系は猛烈に熱化するという話があるそうです。
http://arxiv.org/abs/1402.0324
2014-07-11 Fri 20:57 | URL | [ 編集]
物性の人さん,

いえいえ,大学教員としてはありえないくらい本当にわかっていません。
胸を張って言うようなことではありませんが。。

##########################################

ななし(-)さん,

数理的な解釈は私にはよくわかりませんが,
今は原理だと思って受け入れていることが
段々とわかってくるんでしょうかね。
2014-07-15 Tue 20:45 | URL | ExtraDimension [ 編集]
〉それぞれを半周させているので、系として負符号が出るという感じだと思います。
原子核の中での電子の取り扱いはそれで良いと思うのですが、自由電子の場合は、ディラック方程式を量子化し、その解を用いて検討する必要があると思います。
そして、この問題を厳密に説く為には、弱アイソスピンの影響についても検討する必要があるのではないかと考えます。

〉数理的な解釈は私にはよくわかりませんが,
パウリの排他律は、突き詰めると難問だと思いますので、さし当りは確率0の事象は存在しないというように割り切って流し、標準理論を貪欲に学習して、その地平に立って、この問題を再検討しても遅くはないのではないでしょうか?
2014-09-18 Thu 22:29 | URL | 凡人 [ 編集]
やはり、自由電子の場合は、
http://www.slab.phys.nagoya-u.ac.jp/uwaha/statiii10-2.pdf
で検討するようですが、波動関数に対する境界条件が全く存在しない場合は、どうなるんでしょうね?
2014-09-21 Sun 23:00 | URL | 凡人 [ 編集]

コメントの投稿















コメント非公開の場合はチェック

この記事のトラックバック

| HOME |