ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

CP violation 50周年

Y教授は,CP violation 発見50周年を祝う(?)シンポジウムだかなんだかに出席するために今日から出張です。講演もしなくちゃならないとかで,ここ数日何やら忙しそうに準備をしていました。役職にだけ就いてあらゆる実務を他の人に投げ,業績だけ自分のものにする教授の方々も散見しますが,Y教授は雑務をほとんど他の人に回さず全部自分で処理する上,今物理学専攻長・学科長なので,とんでもない量の雑務を処理しています。そういう雑務だけでなく,研究も含めあらゆることを自分でやるのが好きなので,逆に下の人間としては実務をもう少し他の人に投げ,もう少しリーダーシップを発揮してもらいグループを大きくするとか考えて欲しいとかも思うのですが(特に研究関係),そうはしないのがY流。もうそれなりの年になっているのに,最近はPythonにハマり,若手研究者に負けずにコードをバリバリと書きます。

そんなわけで,傍で見ていてもとてつもなく忙しそうなのですが,そんな中,CP violation関連の歴史(?)を勉強していたみたいです。たとえば,CP violation発見といえば,1964年のクローニンとフィッチの実験ですが,そこで使われていたトラッカーはスパークチェンバーで,写真撮影をどのようにやり,その後画像処理をどのようにしたのか,なんてことを昼飯の時にみんなに話していました。KL→ππを発見したこの実験やJ/psの発見の論文は,先のカラー自由度3の話ではありませんが,高エネルギー物理屋の一般教養として誰もが一度は目を通したことのあると言ってもいいくらい有名な論文です。私もよく授業で取り上げるのですが,真面目に自分で調べたことはありませんでした。全部PRLなのですが,大発見と思われる現象を観測した,とにかく早く論文にしなくちゃ,という意図が明らかで,どの論文も要点だけが短く記述されています。ビームラインの話はもとより,検出器の話も物凄くあっさりと書かれているので,当時の検出器の主流がどんなものだったのか,そういう歴史を知らない私のような無学の人間には,それらの論文を読んだだけでは実験の詳細までは全く読み取れません。ゼミならまだしも,授業くらいだと,そこまで詳細を議論することはなく,実験の原理やら測定のポイントを説明することが中心になるので,自分自身で論文の孫引きなどして詳細を理解しようとしたことはありませんでした。

今回,検出器の詳細を少しですがY教授から聞くと,50年という時の流れを強く感じます。今の実験センスだと全く付いていけないことも多く,よくそんな装置で実験やれたなという感じすらします。高エネルギー物理学があと50年続いてるかどうかわかりませんが,50年経ったら今私たちがやってることを50年後の人たちは,よくそんなことをやってたなと思うに違いないのですが。。。

しかし,CP violationに限らず,素粒子関連の未知の現象が見つかった後,その現象を完全に理解するまでには50年くらいかかるものなんですかね。CP violationの場合,1964年に発見された後,2000年代前半にはとりあえずKLやBで観測してる破れの理解はできたと人類は考えましたから,新現象の発見から完全な理解まで約40年。。自分たちのやってることに無理矢理持っていくと,ヒッグス機構が提唱されたのが1960年代後半で,GWS模型が出来上がったのが1970年代前半。でもって,ご存知のようにヒッグスが発見されたのが2010年代前半。仮説の提唱から完全な検証まで40年ほどかかっています。50年まではいってないかもしれませんが,本当に理解したと思えるようになるまでには50年くらいかかっちゃうものなんですかね。

そう考えると,たとえばダークマター。それが何なのか理解できるようになるのがいつ頃か考える前に,いつぐらいにダークマターがあると認識し始めたのか考えないとなりません。渦巻き銀河の回転速度がおかしいとか言われたのが最初なんですかね。その後,バリオン密度の測定やらなんやらで世間の一般常識としてダークマターを認めることに徐々になってきて,今はもうほとんどの人がその存在を信じるようになりました。という感じなので,いつというのがハッキリしないのですが,渦巻き銀河の回転速度云々の話が初めてでてきたの,いつ頃なんでしょう?よくわかってないのですが,1980年代くらいなのかな??いや,もっと前のような気もしますが,この辺の歴史全然わからないので,最初に閃いた1980年代だとすると,ダークマターが何かわかるのは2020年代。そうか,HL-LHCでわかるのか,と勝手に話を纏めてみました。ははは。

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この記事のコメント

渦巻き銀河は1930年ごろで、acoustic oscillationやbullet clusterは2000年くらいのようです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Dark_matter

そこから50年だと、100TeV colliderでしょうか。頑張って下さい。
2014-07-09 Wed 18:55 | URL | [ 編集]
> 渦巻き銀河は1930年ごろで、

教科書的には,70年代後半(?)から
80年代に,DavisとPeeblesが
ダークマターと言い始めたとよく
書かれているので,80年代と書きましたが,
そんなに昔から言われていたのですね。
天文らしいです。

天文の観測では常に色々な不具合
(説明できないこと)があるので
言ったもん勝ちだと天文屋がよく
言いますが,その通りですね。
検証実験する必要がないので,
どう見ても直線に見えないような
結果でも,直線だと言いきれる
人の勝ちだそうです。
2014-07-10 Thu 08:56 | URL | ExtraDimension [ 編集]
> 教科書的には,70年代後半(?)から80年代に,DavisとPeeblesがダークマターと言い始めた

http://inspirehep.net/record/16312

これのintroductionを見ると、大規模構造とcold dark matterだとか、GUTだとかが一緒に議論され始めたのが、そのころみたいのようです。勉強になりました。
HL-LHCではDMのみならず、GUTのヒントも見えるかも知れませんね。

言ったもん勝ちは理論の人もそうですね。
当たれば残るし、外れれば忘れられるだけなので、言うだけ言っておくのが最も得だということなのでしょうか。
2014-07-10 Thu 18:57 | URL | [ 編集]
> 言ったもん勝ちは理論の人もそうですね。
> 当たれば残るし、外れれば忘れられるだけなので、言うだけ言っておくのが最も得だということなのでしょうか。

確かにそうですね。
面白い話なので,エントリーのネタに使わせてもらいます。
2014-07-11 Fri 09:54 | URL | ExtraDimension [ 編集]

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