ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

ATLASでのダークマター探索

今日の研究室ミーティングでは,私が文献紹介の担当でした。準備をする時間があまりになかったので何にしようか迷う,というか困ったのですが,結局ATLASでのダークマター探索の論文をやりました。

SUSYを信じて,SUSYの予言するニュートラリーノなんかをダークマターだと思えば,SUSY探索もダークマター探索だと言えなくもありませんが,まあ明らかにモデル依存な探索になります。SUSYが見つからないということもあってか,最近は,モデルに依存しない探索が流行の兆しを見せています。いや,単に私の興味がそういう方向を向いているだけかもしれませんが。。まあ,私のバイアスだけではなく,流行っているのは間違いなく,しばらく前にPRLの注目論文に選ばれていたり,ILCのstudyでも同様の解析が最近注目されています。

その探索方法ですが,宇宙に存在するダークマターの直接探索では,ダークマターと標的原子核との相互作用を利用します。ダークマターの速度,というか,ダークマターの中を動いている地球の速度は,素粒子物理学的な観点からは非常に遅いので,ダークマターと原子核が弾性散乱をします。その結果の原子核の反跳を捉えるというのが大雑把な探索原理です。結局のところ,ダークマターと原子核を構成する核子の中のクォークとの散乱とも考えることができて,それと同様のことをコライダーでもやろうというわけです。

陽子陽子衝突では,クォーク(あるいはグルーオン)が力の媒介粒子を介して散乱されるわけですが,その力の媒介粒子が何であるかは今は考えずにとにかくクォーク・クォーク散乱により生成されるダークマター対を探そう,というのがアイデアです。つまり,直接探索において原子核とダークマターが何らかの相互作用によって弾性散乱するのを観測する代わりに,クォークとダークマターが何らかの相互作用によって散乱するのを観測しようというわけです。ここで,その散乱に寄与する相互作用がSUSYなどの特定のモデルを仮定せず,Effective Field Theory というものを使って,考えうる色々な相互作用のパターンごとに結果を解釈する,というのがコライダー実験でのダークマター探索と呼ばれているものです。

Effective Field Theoryというのは,一言で言うと,あるエネルギースケール(Λ)以下で成立する有効理論で,細かいことを言うと,上記の解釈が成立するにはΛが相互作用に寄与する運動量遷移よりも十分大きい必要があります。ざっくり言うと,Λがダークマター質量よりも十分大きいときに信頼できる有効理論と言えます。たぶん。なので,そういう意味では直接探索と比べるには注意が必要ですが,とにかく最終結果は直接探索のときと同様,原子核ダークマター散乱の断面積に焼き直しています。

この方法で重要なのは,ダークマターが軽い時は直接探索よりもむしろ感度が高いということです。今書いたように,ダークマターが重くなると有効理論がどこまで有効なのかという議論が必要になってきますが,軽いところではそういう心配もないので,その意味でも軽いところに感度があるというのは重要です。

じゃあどうやってこの過程を捉えるか,ですが,ダークマターが生成されただけだと観測できる粒子がいませんから,そういう事象を観測するのは不可能です。そこで,ダークマターを生成すべく散乱に寄与するクォークが強い相互作用によってグルーオンを放出すること,あるいは,弱い相互作用によってWやZを放出することを利用します。ダークマターは観測できないので消失エネルギーとなり,結局は,一つのジェット+消失エネルギー,あるいはWやZ+消失エネルギーが観測すべき事象の特徴となります。

今回紹介したのはW+消失エネルギーという事象探索で,残念ながら,というか大きな話題になっていないので当たり前なのですが,有意な信号を観測することはなく,先に述べたように最終的には原子核・ダークマター散乱の断面積の上限値に制限を与えることになりました。確かにダークマターが軽い場合は,直接探索の結果よりも感度が高くなっています。もちろん,「直接」探索ほどは直接ではないので,こういう結果をもって直接探索に意味がないということはありませんが,新しい手法としては意義のある解析なのではないかと思っています。

[6月4日:間違い修正。]
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この記事のコメント

Stauではdarkにならないような。。。
2014-06-03 Tue 21:31 | URL | [ 編集]
> Stauではdarkにならないような。。。

電荷持ってますから当然ダメですね。
なるほど,私がそう書いているのですね。
ご指摘ありがとうございます。
2014-06-04 Wed 08:52 | URL | ExtraDimension [ 編集]
ダークマターがニュートラリーノのような超対称性粒子であった場合、Abell520のような従来のダークマター理論を覆す観測をどのように考えて探索しているのでしょうか?

http://news.mynavi.jp/news/2012/03/06/045/
2014-06-06 Fri 03:11 | URL | ひゃま [ 編集]

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