ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

社会的手抜き

「人はなぜ集団になると怠けるのか」という本を読んでいます。心理学(?)の研究者が書いた本で,大筋は予想通りというか,当たり前というか,社会的手抜きは個々人の勤勉性,動機付け,倫理観等々に基づくという身も蓋もない結論なのですが,枝葉末節部分では,そんなことまで研究してるのかという面白い実験・調査結果があって興味深いです。例をいくつか紹介します。

私自身前から気になっていたのですが,何人かで多重チェックするシステムが有効なのかを調べて研究結果があって,それによると,1人でやるよりも2人でダブルチェックしたほうがミスは少ないのですが,3人以上になると人数が増えれば増えるほどミスが多くなるのだそうです。本に書いてあった実験では,郵便物の宛名や住所を1人,2人,...と人数を変えてチェックさせるのですが,ミス発見率は2人ないしは3人くらいが最大でそれよりも人数を増やすとむしろ落ちてしまうのだそうです。自分の生活を振り返ってもよくあることではないかと思います。会議に一人で参加して自分がチェアしてるときは,会議全般にわたって物凄く集中してますが,参加人数が増えれば増えるほど一人一人の集中度合いって落ちていきます。

同じような話ですが,リスクホメオスタシスという考えがあるのだそうです。チェック体制を多重化したり,安全技術の導入によりリスクが低下したと認知すると,人間の行動はよりリスクを高める方向へ向かうのだそうです。車のABS装着車と非装着車を比べた研究があって,事故の件数や大きさに有意な差はなく,むしろ逆にABS装着車に乗ってる人のほうが急減速や急加速その他あらっぽい運転をして,周りの車の流れを乱す傾向が見出されたのだそうです。これもなんとなく想像はしてましたが,それを裏付ける研究結果があるとは思っていませんでした。色々な研究をしているものですね。

それともう一つ,スポーツの分野では社会的手抜きに関する研究が非常に盛んで,色々なことが研究されています。たとえば,7勝7敗で千秋楽を迎えた力士の千秋楽での勝率が異常であるということもちゃんと調べられています。誰もが変だよねぇとは感じていると思うのですが,それをちゃんとデータで見せられると,あまりの酷さに驚きます。ただ,付け加えると八百長が問題になったことが何年か前にありましたが,それ以降は千秋楽での異常な高勝率という現象はだいぶマシになったそうです。

それからスポーツで盛んに調査されているのが,ホームアドバンテージというものだそうで,非常に多岐にわたるスポーツについてそれこそ古今東西色々なものが調べられています。その中でも(日米の)野球は,試合数が多く歴史もあることからデータが十分で色々と研究されています。細かい話で色々と面白いことはあったのですが,私が一番興味をもったのは,アメリカのワールドシリーズと日本の日本シリーズにおけるホームチームの勝率です。アメリカのほうが日本よりもホームチームの勝率が高いのですが,第1戦から第7戦までの勝率の推移を見ると,ワールドシリーズと日本シリーズでの推移の仕方がおもいっきり一緒なのです。基本的に1,3,5戦では勝率が高く,2,4,6戦では勝率低め,第7戦は特に低いという傾向があって,その変動の仕方が日米で非常によく似ているのです。ちなに,第7戦でホームチームの勝率が低くなるのは有名な現象だそうで,チャンピオンシップチョークと呼ばれているのだそうです。この日米での共通の現象はまだ理解されていないらしいのですが,いやー,非常に興味をそそります。

試合の勝率を大きく左右するのは投手の起用法だと思うのですが,それがホームチームの勝率に変化を与えるというメカニズムを思いつきません。単なる勝率であれば,第1戦をホームで迎えたチームとアウェーで迎えたチームでは投手起用法に違いがあり,それで奇数戦と偶数戦で勝率が違うなんてことはあり得ると思うのですが(たとえばホームチームは第1戦にエースを投入するけど,それを見越したアウェーがエースを第2戦に投入とか),変動に着目してるのは単なる勝率ではなくホームチームの勝率で,そこがよくわかりません。あとは,ホームかどうかで指名打者制度があるかないかという違いが生じますが,それも奇数戦と偶数戦での違いを生むことにはなりません。

大抵の研究結果については,人間の心理という意味で薄々そうだろうなと思っていたことで,それをきちんと証明する実験がなされていたということに興味を感じたのですが,ワールドシリーズと日本シリーズでのホームチーム勝率の変動の仕方については,その動きを説明する仮説を思いつくことができません。不思議です。

本に書いたのはわかりやすい例で,ホントはもっと解釈に困るような面白いデータがあるんでしょうね。

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