ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

恒温槽

新しく恒温槽を買うことになったので,今まで使っていた恒温槽をとある研究機関に輸送することになり業者さんにその作業をお願いしていました。今朝その搬出作業を行ってもらったのですが,その手際のよさに感心しました。幅と奥行きが1m弱,高さが1m30cm程度で,重さが(今日業者さんに聞いたら)約250kgというものなのですが,梱包作業,移動,トラックへの積み込み,どれをとってもプロの技で,見ていてホント気持ちよかったです。

ところで恒温槽,色々な場面で使われる実験器具だと思いますが,私たちの場合,主にシリコン検出器を冷やすのに使います。普通のシリコン検出器,というか,放射線を大量に浴びてないものなら別に冷やす必要はないのですが,私たちの研究テーマで重要なのが放射線耐性に強いものをつくることで,この開発サイクルではシリコン検出器を冷やすことが必須となります。

放射線耐性を高める工夫をこらしたセンサーの試作品を作ったとします。そしたら実際に放射線を大量に浴びせて,放射線量によって性能がどう変わるかを測定します。この過程で冷やさなければならない理由が2つあって,まず1つには,放射線を浴びたシリコンセンサーは常温だと放射線によるダメージがどんどん進行してしまいます。放射線ダーメージとここで言うのは具体的には不純物濃度の変化なのですが,その変化の速度が温度に依存していて,温度が低いほど不純物濃度の変化がゆっくりになり,センサーとしての寿命が長くなります。なので,ATLAS実験他放射線によるダメージが多い環境でシリコン検出器を使うときは,-10℃とか-20℃とかに冷やして使っています。というわけで,放射線を大量に浴びせたセンサーは,センサーとして使う使わないにかかわらず常に低温で保存(?)します。この目的では,単に冷やしておけばいいので恒温槽ほど高価なものは必要なくて,−20℃あるいは−30℃程度まで冷やせる業務用の冷凍庫を使ったりします。

もう一つの理由は,センサーの暗電流に関係します。センサーの暗電流は受けた放射線量に比例するので,私たちの開発過程で大量に放射線を浴びせたセンサーの暗電流は放射線を浴びる前に比べて桁違いに大きくなっています。それをそのまま使おうとすると熱暴走してしまい,使い物になりません。性能評価どころの話ではなくなります。一方で,暗電流は温度にも依存します。冷やせば冷やすほど暗電流が減ります。そこで,放射線によるダメージを受けたセンサーの暗電流を抑えセンサーとして動作させるためには低温にする必要があります。今度購入する恒温槽は−60℃程度までいけるもので,実際には−40℃程度まで冷やして測定を行います。

というわけで,放射線耐性を調べる試験を行うには,保管用の冷凍庫と低温恒温槽,これら2つが必需品となります。

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