ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

見応えのある応酬

今回CERNに来てるのは,ATLAS検出器のアップグレードに関するCollaoration meetingに参加するためです。10年後に予定されているLHCアップグレードに合わせてATLAS検出器,特に,シリコン検出器群からなる荷電粒子飛跡検出器の総取り替えが予定されていて,私たち大阪グループもそのシリコン検出器開発に携わっているので,朝から晩までぎっしりと詰まったミーティングに参加しています。

10年後というのは普通に考えるとだいぶ先の話ですが,建設するだけでも4,5年,できあがったものをテストしたりする期間も考えると,2,3年後には使用と設計を決定しなければなりません。なので,今がまさに開発競争のピークなんですね。

特に開発競争の激しいのがピクセル検出器で,様々なテクノロジーを色々な研究機関が開発していて,自分たちの開発しているものがATLAS検出器の一部として採用されるべく凌ぎを削っています。大阪グループを含む日本グループは,保守的というわけではありませんが本線と考えられているような技術開発を推進しています。しかし,検出器開発という観点では,今まで使われてないような技術開発の方が楽しいので,2,3年後に実用化するのは難しいだろうというような技術開発を行っているグループもあります。

ピクセル検出器としてCMOSセンサーを使おうという動きがあって,昨日はそれに関して午後まるまる議論をしました。CMOSセンサー自身はデジカメなどで最近は極めて普通に使われているものですが,私たちのような大型加速器実験では実機として使われたことは(たぶん)ありません。素粒子実験用としては検出器の反応が遅いことと,放射線に対する耐性がないことが大きな問題でこれまで使われていませんでした。が,それらの問題を解決できると言ってるグループが現れてきて,CMOSセンサーの開発に本腰を入れるかどうかというのが議論のネタでした。

その昨日の議論では,CMOSセンサー推進派(?)の人々がイニシアチブを取っていたので,当然イケイケの雰囲気になります。冷静に見ると現状では実験に使える要求をクリアしていませんし,実証すべき点がまだたくさんあるのですが,その場の空気が「やろう」という感じになってしまうんですね。反対の意見を言い難い雰囲気になってしまうわけです。ですが,見識の高い人もいて,そういう雰囲気の中でも正論をきちんと言える人がいるんですね。どこそこの見積もりが楽観的過ぎるとか,こういうことが実証されてないとか,反対するわけではないですが,現状ではよしみんなでやるぞという段階に達していないことを筋道立ててきちんと主張する人が何人かいて,なんというか流石だなと思いました。空気に流されることなく,まっとうな議論をすることができる文化があるのは素晴らしいです。そういう見識のある人たちと推進派の人たちの応酬は見応えがありました。

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