ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

ヒッグス受賞で思うこと

ミーティング終わりましたので,さっき書いた通り追記です。

まずはしょーもないことから。私はアングレアと表記しましたが,新聞記事を見るとアングレールと表記してます。ということで,これからは私もアングレールと書くことにします。

さて今回受賞したのは,アングレールとヒッグスの2人になりましたが,ブラウ(ブロウ?)は残念でしたね。賞をもらうには長生きしなきゃならないようです。しかし,他にも惜しい人はいますよね。南部さんのアイデアをもとにヒッグス機構に近いアイデアを提唱した人は,前にも書いたことありますが他にもいます。でも,よくはわかっていませんが,単なるアイデアでなくスカラー場を導入して場の量子論の枠組みで記述したというところが,アングレール・ブラウ・ヒッグスの偉かったところで,他の人たちを差し置き(?)今回の受賞に繋がったんだと理解しています。

そういえばちょっと面白いなと思ったのは,ノーベル賞の発表の後にイギリス人たちと昼飯を一緒に食べたときのことです。そのテーブルにいた人達をほとんど知らなかったのです,2人知ってる人がいたのでそのテーブルに混ぜてもらったんですね。そしてふと気づくと,私以外には日本人が1人とあとは8人くらいが全部イギリス人なのです。で,そのときちょっと話題になったのが,ヒッグス粒子(場)の呼び方なんですね。知ってる人は知ってるかと思いますが(当たり前か),CERN上層部は以前から素粒子に質量を与える源をヒッグス場ではなくBEH場(ブラウ,アングレール,ヒッグスの頭文字)と呼ぶように指導していました。でも,これまでずっとヒッグス場と言ってたわけですから多くの人には違和感があります。ただ今回アングレールが受賞したことでBEH場と言うようになるのかなぁ,みたいな話題になったのです。私は心の中で,そうは言っても長年の呼び名を変えるのは微妙だなぁと呟いたのですが,周りはイギリス人ばかり。どう表現したらいいのかわからないのですが,誰が言うともなく空気が「やっぱりヒッグスだよね」と言ってる感じなのです。いや,実はその話題になるまで周りが全部イギリス人だということに気づいてなくて,逆にこの話題になったことでイギリス人ばかりだったということに気づいたのです。だからどうしたという話ですが,一人膝を叩いていました。

ヒッグス機構については,私も何度か説明を試みているのでここら辺を見てもらうといいかと思うのですが,何度説明しても,何度言っても不思議だなぁと思うのは,ゲージボソンに質量を持たせるために思いついたスカラー場(=ヒッグス場)がフェルミオンにも質量を与えてるっぽいところです。ゲージ対称性からゲージボソンの質量は本来ゼロでなければなりませんが,フェルミオンの質量はゲージ対称性からはゼロである必要は必ずしもありません。フェルミオンの場合,カイラル対称性から質量ゼロが要求されるので,誰かが質量を与えないとならないのは確かなのですが,他人のようなゲージボソンに質量を与える場がついでにフェルミオンにも質量を与えているというのはすっきりしないんですよねぇ。繰り込み可能な相互作用は湯川結合だけだから,と言って片付けようとする人のいますが,繰り込み可能かどうかはなんというか人間の都合みたいなもんですから,ヒッグス場がフェルミオンにも質量を与えているというのは,私にはどうしても作為的,恣意的に感じてしまうのです。

だからこそ,これからヒッグスとフェルミオンとの結合が直接的に検証されて,かつ測定精度があがっても標準模型が正しいとしたら,それはかなりの驚きです。省エネで,とりあえず(?)湯川でフェルミオンの質量も作っておこう,みたいな模型が自然を記述してるとしたら驚きじゃないですか。逆に,もしそうだったとしたら,BEHの強運ぶりに脱帽です。って,もしそんなことになったら,素粒子物理はどっちを向いて進めばいいのかわからなくなってしまいますけど。

とまあ,色々と書きましたが,やっぱり自分がかかわった実験結果が誰かのノーベル賞受賞に繋がったわけですから,それなりに嬉しかったりします。今回の受賞がどこでどう効くのかわかりませんが,少しでも高エネルギー物理の追い風になるといいですね。

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 私はあなたのブログに、実名や「μ」、「nisimiyu」名義で2010年から5回以上、震災の事前警告コメントをしていました。震災被害額は約20兆円で、他にも多数警告した証拠がありますから、3億円の価値はあったのでは。これはノーベル賞賞金額(同時受賞者の合計)の約1億4千万円よりも多いのですから、不思議な気分です。
 日本のノーベル賞物理学者達も、残念ながら震災前、「なゐふる」には加入していなかったようです。できてしまった私にはとても責任があるように感じて、私費15万円程度を不本意に失いながらも震災後はHPやブログ、学会発表で経緯を説明して来ました。他に似た人を知りません。
 震災後、「トンネル事故などの状況で、地震予知能力が身につく場合があるので、もしいたら名乗り出て欲しい」との新聞記事を見ました。予知できた危機感の最初のきっかけは1979年の電車脱線事故に居合わせたことのようです。2010年の夏には、その同じ踏み切りで、思わず後ずさりしたくなるような本能的危機感を感じました。脱線事故の当時一緒にいた母も、震災の数日前2011/3/6頃、「出航時から座礁している」などと言っていましたが、居合わせなかった他の家族は鈍かったようです。船に乗った経験はあまりないのに、なぜか高潮に特化していたところも、私たち母娘の特徴でした((平成23)(行ウ)555事件に証拠の一部を提出済み)。
 豊田亨死刑囚の弁護をしたのも単純な善意だったと思いますが、その分家族がおろそかになり、実の妹の命まで、無料MLに加入する努力すらできなかった詐欺学者のデマによって奪われたのは、悔しい限りです。世の中、努力をして多くの人にとって価値ある仕事をした人に無理やり罪を着せ、その発言をなきものにしようとする人もいます。このように無知で傲慢な人達は、間接的に多くの人命を奪いながら、それを意識していない可能性があります。公益通報者保護のため、証拠保全などにご協力願います。早く真実が公の場で明らかになり、今後の被害者が減らせますように。
 専門の素粒子理論については後回しになってしまいましたが、2012年に
http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%88%A9%E7%94%A8%E8%80%85%E2%80%90%E4%BC%9A%E8%A9%B1%3ANisimiyu
でコメントしました通り、「ヒッグス粒子が角砂糖の大きさの中に10の50乗個ぐらいもある」とのNHK報道は、元・専門家の私にもさっぱり判りません。この、超対称性理論で有名な村山斉IPMU機構長の主張に関する、信頼できる出典文献がありましたら、お知らせ下さい。ボソンである中間子の数も、原子核の中では距離依存性があるはずです。標準理論を作った本人であるS. Weinberg先生が著書で「ディラックの海は実験結果から否定されている」と明言しているのに、ヒッグスを数えることなど、できるのですか?
 村山斉氏は東大の同窓会ほか多数の場で講演の機会があるようですが、私と同じ柏市に勤務していたはずなのに、震災を事前警告もできなかったようです。私には信頼できない人物に思えます。なぜ、できなかった人は税金を使って研究をできて講演に招かれたのに、できた私は懲戒処分まで受け、言論や学問の自由を奪われたままなのでしょうか?これが現在の日本で今も続く、女性差別の実態です。

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