ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

LHCの近況とか

LHCの近況といっても,実験をしてないのであまり書くことはありません。とはいえ,研究者が2年間バカンスをとっているわけでもありません。

今年と来年の2年間LHCは休止していますが,その大きな目的は,加速器の超伝導磁石間の結線をより確実にするための補修作業です。ご存知の方も多いかと思いますが,LHCは2008年9月の実験開始直後に上記結線の一つが完全ではなかったため,抵抗値が上がり超伝導が壊れる。さらに安全装置がうまく働かなかったために電流が流れ続け接続部が溶けてしまい,そこから放電。加速器内部の真空を保つ壁に穴があきヘリウムが大量に漏れました。こういう事故が起こらないように,一つには,全部でウン千(万近かったような)ある接合部の抵抗値を測定しなおし,もし抵抗値の高い部分があれば接合しなおす,という作業を行っています。ちなみに,抵抗値が高いとか低いとか言ってますが,ナノオームレベルの話なので,普通にみなさんが考えるほどダメダメな接合がされているわけではありません。もう一つは,超伝導が破れたときの安全装置の役割を果たす仕組みの見直しです。こっちはだいぶややこしい話なので省略しますが,いずれにせよ,これらの見直し作業を今行っているというわけです。

全部の超伝導電磁石の結合を万全にすると何が嬉しいかというと,今までよりもより多くの電流を流せる=より強力な磁場を作れる=陽子のエネルギーを上げることができる,というわけです。おっと,話が前後しますが,陽子加速器の場合放射光によるエネルギーロスが少ないので,加速させるのはそれほど大変ではないんですね。むしろ,円形軌道を保つための強力な磁場を作るのがエネルギーを上げるための障壁となります。ですから,より強力な磁場を安定して作れれば陽子のエネルギーを上げることができます。

ということで,2012年は4TeV+4TeVで重心系エネルギーが8TeVだったのですが,2015年からは設計値である7+7TeVを目指します。実際には7+7TeVは厳しいかもと言われているので6.5+6.5TeVくらいで実験することになるのだと思いますが,いずれにせよ,かなりのエネルギー増強です。

というような作業をLHCではしているのですが,その作業は運転を中止したからといってすぐに始められるわけではありません。まずは,超伝導磁石を常温に戻すのに時間がかかります。いきなり常温に戻したら金属が突然膨張してエラいことになりますので。常温に戻すだけでも数ヶ月,全部の磁石が常温になったのはたぶん5月くらいではないかと思います。それ以降作業が続けられているわけですが,現在のところ予定よりも約2週間遅れ。でもそれなりに余裕を持ったスケジュールですから,2週間遅れというのは非常に順調という意味です。

一言で言うと,順調に作業が進められているということです。ただ,それが想定内だったのか想定外だったのかは私は知りませんが,ゆっくり常温に戻したと言ってもやはりそれなりのダメージを受けたパーツはあるみたいです。まあ,それらのパーツの交換も順調らしいですから,予定通り2015年初頭には実験を再開できそう,というのが今の見通しです。

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