FC2ブログ

ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

レーザープラズマ加速

来週火曜日の研究室ミーティングでの文献紹介の準備を進めています。やりたいことが幾つかあって迷ったのですが、結局、タイトルにあるレーザープラズマ加速というものについて紹介することにしました。そういうわけで、今は色んな文献を調べている最中です。

ここでも、ちょっとだけ説明してみます。

まず加速器の非常に簡単な説明をすると、今多く使われているのは、金属製の加速空洞と言われる物の中に高周波の電場を入れます。イメージとしては、sinでもcos曲線でも構いませんが、波が加速空洞内を進んでいると思って下さい。加速したい粒子をその加速空洞の中に入射すると、上手く波の周期に合った粒子たちが波に乗って加速されるわけです。なので加速空洞で加速された粒子は連続的に分布しているのではなく、加速する波の周期にあった粒子群(バンチと呼びます)となります。例えばLHCだと25ナノ(0.000000025)秒ごとに粒子群が飛んできます。

私たちの実験では高エネルギーの粒子が欲しいので、ある一定の長さの加速空洞で加速される量が大きいほど嬉しいわけです。LHCのような円形加速器では、同じ加速空洞を何度も何度も周回して繰り返し加速することが可能なので、今書いた加速できる量というのはそれほど(あくまで後で述べる話との比較問題です)致命的ではありませんが、線形加速器と呼ばれる直線型の加速器だとこれは大問題です。1回きりしか加速できないので、一定の距離で沢山加速できないと、加速器自体が莫大な長さになってしまうからです。土地の確保、加速器を収めるトンネル工事、施設の巨大化などなど、実際の建設ではコストが跳ね上がってしまうからです。例えば、ILCと呼ばれる次期巨大加速器計画では、長さ約30kmの直線衝突型加速器を建設したいと考えています。

そこで、一定の距離で加速できる量を増やそうという努力がされていて、現在では1mでオーダーとして30から50MVの加速勾配を生成することが可能です。って言われてもピンとこないかもしれませんが、これって凄い数字です。1mの間に5000万ボルトもかかってるわけですよ。1cmの間で50万ボルト、1mmで5万ボルトです。よくそんな高電圧をかけられるもんだと思います(交流と直流の違いとかはとりあえずツッコマナイで下さい)。でも流石にそれ以上の加速勾配というのは難しくて、それよりもオーダー上げるためには全く別のテクノロジーが必要と考えられています。

そこで登場するのが今一生懸命勉強中のレーザープラズマ加速という方法です。

この方法では加速空洞を使わず、粒子を加速する媒質としてプラズマ状態のガスを使います。プラズマにレーザーを入射すると(レーザーでなくても粒子ビームでも同様のことができます)、プラズマ中の電子に疎密波が生成されます。あ、プラズマというのは中性物質が電子とイオンに電離した状態のことを言います。イオンは電子に比べて重く、動くのが遅いので、私たちのように光速に近い粒子の運動を考えるときには、イオンは止まっていると思ってその寄与は無視します。

イメージとしては、プラズマ中のたくさんの自由電子にレーザー、あるいは粒子ビームで衝撃を与えると、プラズマ電子が吹き飛ばされて密度の低い部分ができ、次に密度の低くなった部分に周りからプラズマ電子が流れ込む…という過程の繰り返しで衝撃を与えるためのレーザーの進行方向にプラズマ電子の密度の濃い部分と低い部分が周期的に生成される、と言った感じでしょうか。電子の密度の低い部分と高い部分があるということは、電位差が生じているわけですから、そこに加速したい粒子を入射すれば、その疎密波の電位差によって加速されます。

この加速方法の何が凄いかというと、何年か前に夢のビームと紹介されたくらいで、加速勾配が1mあたり1GV(=10億V)を超えています。今調べている文献によると最近では10GV/m程度まで進んでいるようです。驚異的です。その勢いならILCが全長1キロとかで出来てしまいますから。ははは。

そういうわけで将来的に非常に興味のある研究分野で、自分の勉強も兼ねて研究室の人々に紹介しようと思い立ったわけです。が、もちろん、実用化にはまだまだ程遠く、クリアすべき課題が山ほどあります。1メートル当たり10GVと言っても、それは単に1メートルに換算したときの話で、実際に粒子が加速される距離がcmオーダーの話なので、純粋に加速されるエネルギーというのは100MeV程度だったりしますし、加速空洞のように複数の加速装置を直列に並べて、同じ粒子群を複数回加速させるのも難しいようです。他にも無数の問題があり、数十年先にやっと実用化されるテクノロジーではないかと勝手に思っていますが、研究するのは面白そうな分野です。


研究 | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<旧友・親友 | HOME | 今日の実験>>

この記事のコメント

コメントの投稿















コメント非公開の場合はチェック

この記事のトラックバック

| HOME |