ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

最近気になり始めたこと

宇宙定数問題というのをご存知でしょうか。場の量子論でおもいっきり単純に真空のエネルギー,宇宙のエネルギー密度と言い換えてもかまいません,を計算すると,宇宙観測から得られているエネルギー密度よりも120桁程度大きくなってしまう,というものです。宇宙論,あるいは現代の物理学上の最大の謎の一つとされています。

しかし,私はこの問題にはちょっと前まであまり関心がありませんでした。真空のエネルギーというのは基底状態のエネルギーのことで,場の量子論では無限個の異なるエネルギーを持った波の重ねあわせとして,とある状態を表現するので,そのエネルギーを足し上げれば当然発散します。が,場の量子論はプランクスケールまでしかせいぜい正しくないとして,足し上げるエネルギーの上限をプランクスケールにする,というのが,真空のエネルギーの計算方法です。

宇宙のエネルギー密度なんて考えない場合,素粒子物理学の教科書的には人間が観測するのは基底状態との差だけなので,基底状態のエネルギーは気にしない,normal orderingというルールに従って基底状態のエネルギーは無視しちゃってよい,ということになっています。別に教科書にそう書いてあるからというわけではありませんが,量子力学というか場の量子論には,人間の都合の良いような定式化というか数学の解釈を行っていることはよくあるので,不思議だなぁとは思いつつも今まではあまり基底状態のエネルギー,ひいては宇宙項問題についてもそこまで関心はありませんでした。ただ,カシミール効果によって基底状態のエネルギー差がマクロな世界でも観測できるというのは凄いと思っていました。場の量子論的効果がマクロな世界で見えるのは驚きです。

ですが,ヒッグスらしき粒子を発見した今,それがもしヒッグスだとするとヒッグス場が実在することになります。そうなると,ヒッグス場のエネルギーというものがやはり気になります。しかもそのポテンシャルの形が宇宙の初期から同じではなく,自発的対称性の破れによって変わっています。ポテンシャル最小を与えるヒッグス場の真空期待値だけでなく,最小であるポテンシャルの値そのものも変わりえます。基底状態の絶対値は無視することにしても,差は観測量になりますから,宇宙のエネルギー密度に大きな変化をもたらします。そう考えると,宇宙のエネルギー密度というのはやっぱり忘れておいてはいかんのかなぁ,と思ってしまうのです。

ま,だからこそ,世間ではダークエネルギーとか宇宙項とかについてさかんに議論してるわけですが,私個人的には場の量子論の考え方を宇宙のスケールにまで適用するのが今ひとつ馴染めていなくて,だからこそ先に書いた宇宙定数問題をあまり気にしていませんでした。重力を量子力学的に理解できてないのに,一般相対論と場の量子論をまぜこぜにしちゃうような考え方が腑に落ちないというか。まあ,私が一般相対論も場の量子論も理解できていないから,宇宙定数問題と言われてもピンとこないのでしょうけど,とにかく,今まではそれほど気にしていませんでした。

が,ヒッグスのポテンシャルを考え始めると,宗旨変えしたほうがいいのかと思ってしまいます。いや,やっぱり,ヒッグスは色々と不思議なことが多いです。

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この記事のコメント

標準模型のHiggs場の存在が確定するか否か
非常に気にしております。決まるのは2~3年先でしょうか?今のポテンシャルはほんとは必要ないのではないかと疑っております。ゲージ原理主義?ではありませんが、現在のHiggsポテンシャルは作業仮設であり標準模型建設のための足場に過ぎないと思っています。足場を取り払った後に綺麗な標準模型がゲージ原理で自立している姿を想像しております。ポテンシャル同等の機能は内に秘められていると思っております。それを証明することは困難だと思いますが、Higgs場の存在が確立すればその証明の第一歩になると思っております。
いずれにしろ実験結果を期待する日々が何年か続きそうです。
2013-01-14 Mon 20:42 | URL | koba [ 編集]

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