ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

ミューオンの同定方法

ちょっと間が空きましたが,粒子検出方法の説明の続きです。

荷電粒子一般,そして電子と光子の検出方法をさらっと眺め,電磁シャワーとハドロンシャワーについても言及したので,私たちが日常的に観測・測定する粒子の中でまだ説明していないのはミューオンになります。

ミューオンは荷電粒子ですので,2、3週間前に書いた荷電粒子の検出方法がそのまま当て嵌まります。というよりもむしろ,私たちが通常観測する粒子のエネルギーでは電磁シャワーを作りませんし,ハドロンではないのでハドロンシャワーも作らず,荷電粒子一般の性質が一番顕著に現れる粒子です。物質中をただひたすら物質を電離させながら突き進みます。

そこで,ミューオンを他の荷電粒子,主にπ中間子やK中間子,陽子など,から分離識別するには,シャワーを作らずにただひたすらに物質中を突き進むという性質を使います。鉄などある程度の密度を持った物質をそれなりの厚さ(数m)で置いておけば,ミューオン以外の荷電粒子たち,上記の粒子たちはハドロンなのでハドロンシャワーを作り止まってしまいますし,電子ならばそれよりも早く電磁シャワーを作り止まってしまいます。ですから,ある程度の物質量の後にプラスチックシンチレータ,あるいはガス検出器などの荷電粒子検出器を設置しておき,それらの検出器が粒子を検出すればそれはミューオンだろう,ということになります。

大雑把な原理的な話は以上で全てなのですが,さらにミューオンの誤同定を防ぐために,物質を通過した後に測定したミューオン候補の飛跡と,物質を通過前に測定した荷電粒子の飛跡が滑らかに繋がることを要求したりもします。こんな方法で測定されたミューオンというのは,誤同定確率の小ささ,そして,カロリメータを使わずに荷電粒子検出器の情報のみから運動量を測定できることなどから,あらゆる粒子の中で最もクリーンでかつ精度の高い測定を行える粒子と言っても過言では(たぶん)ありません。

余談ですが,ATLAS実験の一般向け講演会などに行くと,イベントディスプレイというものを見せられることがあるかと思います。これがH→γγの候補で,これがH→ZZの候補です,なんていう具合に説明されるヤツです。検出器の図があり,陽子と陽子が衝突した地点から多数の粒子が飛び出していることくらいしかわからないヤツです。無茶苦茶沢山の粒子が飛び出しているので何が何だかわからないかと思いますが,私たちのそれらの個々の粒子については全く着目していません。着目していることの一つ=イベントディスプレイから読み取れる情報の一つが,運動量の高いミューオンが存在するかどうか,です。ミューオンは検出器の外側にまで飛び出しているので,ごちゃごちゃしていて何が何だかわからないようなイベントディスプレイの中にあっても,一目でその存在を確認できます。もし,イベントディスプレイを見る機会があるかたは,そんなところにも注目してみてください。

以下のイベントディスプレイは,H→ZZの候補で,それぞれのZが2つの電子と2つのミューオンに崩壊したと考えられる事象です。図中,緑色で真っすぐに伸びている2つの飛跡が電子,赤で真っすぐにしかも検出器の凄い外側までその線が伸びていってるのがミューオンです。
H→ZZ→eeμμ

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