ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

粒子検出の原理

幾つかのきっかけが重なり私の中では必然に近いのですが,他人にとっては全く突発的ですが,粒子を検出する仕組みについてちょっと説明しようかと思います。

素粒子物理学実験では,当たり前ですが様々な粒子を検出して,その粒子の運動量や飛来方向などを測ります。それらの情報をもとに,検出した粒子がどういう反応により生成されたのか,どういう粒子の崩壊により生成されたのか,その反応の強さはどれくらいか,などなど様々な情報を引き出します。素粒子の数はそれほど多くありませんが,私たちが素粒子として観測するのはレプトンと光子くらいで,あとはクォークの組み合わせである無数のハドロンになります。とはいえ,多くのハドロンは寿命が非常に短くすぐに安定なハドロンに崩壊してしまいますので,私たちが検出器で捉えるハドロンの種類というのはそれほど多くはありません。

ということで,おもいっきりざっくりとどういう粒子たちを検出器で実際に捕まえるかというと
- 光子(中性π)
- 電子
- ミューオン
- 荷電π
- 荷電K
- 陽子
- 中性子
くらいになります。

じゃあどうやってそれらを検出するのか,というのを何回かにわたって(気が向いた時に)書いてみようと思います。

まず,粒子を検出するというのはどういうことか考えてみます。日常生活で一番馴染み深い検出器って何でしょうか。デジカメあたりを想像するかもしれませんが,誰もが持ってて,このブログを読んでる時にも使っている検出器がありますね。そう,目です。目は可視光を捉えることのできる検出器で,素粒子物理学実験で使う検出器の仕組みとつまるところ同じです。

網膜には光受容細胞があり,その細胞に光が入ると光電効果を起こします。その結果電子が飛び出し,それが神経を刺激してさらにその信号を脳が処理することにより光を感じるわけですね。小さな光受容細胞がたくさん並べられているので,デジカメのピクセル同様,どの細胞が光を感じたかという情報を元に画像を脳内で作り上げ,視覚ができあがっているのです。どうです,驚きですね。量子力学的な反応によって私たちは視覚を得ているのです。先ほど「デジカメのピクセル同様」と書きましたが,デジカメの原理も全く一緒です。光受容細胞の代わりにセンサーとして多くの場合シリコン半導体を使っていますが,その検出原理は同じ光電効果です。

ところで,有名な話かもしれませんが,暗い星を肉眼で見ることができるのは光電効果のおかげ,つまり,目は光を波としてではなく粒子として捉えているからだ、という話をご存知でしょうか?

人間の視覚というのは,何十秒に一回だったか忘れましたが,常に視覚情報を更新し続けています。ある画像をそのまま保存してるわけではありません。車のタイヤを見てると実際の回転とは逆に回ってるように見えたりすることありますよね。人間の目が何秒かに一回シャッターを切り続けてその静止画像を連続して眺めているからこそ,そういうことが起こります。

で,星の話ですが,肉眼で見ることができる暗い星の光のエネルギーを波だと考えると,そのエネルギーを一個の光受容細胞が検知するには何秒間も波を受け続けなければならないのだそうです。上で書いたように,人間は数十秒に一回画像更新してしまうので,一回シャッターを切った時間内では暗い星からの光を光受容細胞は光として検知できません。ところが,光を波ではなく粒子だと考えると状況が変わります。光を波と考えると,光受容細胞全てが一様に星からのエネルギーを受け取ることになり先に説明した状況になりますが,光が粒子だと考えると,光の粒一つ一つは光電効果を起こすのに十分なエネルギーがありますから光受容細胞が光を検知することができます。ただし波の場合と違って空間に一様にエネルギーが降り注いでいるのではなく,雨粒のようにまばらに光の粒が降り注いでいるので,光受容細胞の全てが光を検出することはありません。それでも何個かの光受容細胞が光の粒を検出するので,何十分の一秒間という短いシャッタースピードを持つ人間の目にも暗い星が見えるのだそうです。

おっと,最後の脱線が長くなりました。脱線内容については専門じゃないので本当かどうか知りませんが,可視光を検出する仕組みは,目もデジカメも光電効果を利用してるんだということを今日は説明しました。もう一言だけ言っておくと,あらゆる粒子の検出に共通ですが,なんらかの粒子を検出するということはその粒子が検出器を構成する物質と相互作用するということです。今回の例では可視光が光受容細胞やシリコンセンサーと相互作用,具体的には光電効果を起こしていました。逆に相互作用しなければ検出のしようがありません。ニュートリノはレプトンなので強い相互作用しませんし[指摘を受け修正。指摘してくださったかたありがとうございます],電荷も持ってないので電磁相互作用もしません。弱い相互作用しかしないので物質とはなかなか相互作用を起こさず,多くの実験ではニュートリノを検出することはできません。検出しようと思ったら,スーパーカミオカンデのように巨大な検出器を作りそこに大量にやってくるニュートリノがたまに反応するのを気長に待つしかないのです。

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2012-10-21 Sun 18:53 | | [ 編集]

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