ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

ATLASとCMSの違い

ATLASとCMSは,LHCでライバルの2つの実験グループなわけですが,よく見ると色々なところに違いがあります。

真面目なところから言うと,検出器は似てるようで設計思想がそれなりに異なります。(データ収集を始めたのはここ数年ですが)長い歴史のある実験グループなので,歴史的経緯を引きずった設計になっているというのが真相なのかもしれませんが,学生に検出器の説明をするときなどは一応真面目に設計理念の違いを説明します。ここで個々の検出器の違いを説明しても仕方ありませんので,ざっくりと私の感想を言うと,ATLASは保守的,CMSのほうがアグレッシブです。あるいは,ATLASはパッチワーク的,CMSは全体が統一されているとも感じます。善し悪しはともかく,同じテクノロジーではつまらないですし,ダブルチェックという意味でも違ったテクノロジーを使うことは大切ですから(同じテクノロジーに基づいた同じ検出器を使うと,2つの実験グループで同じ間違いをする可能性が高まる),設計思想の異なる2つの検出器があるというのは,見識かなぁと思います。

それから,実際のところはよくわかりませんが,大きな実験グループですからorganizationが不可欠,そのやり方が違うとよく言われています。ATLASはどちらかというとみんなが好き勝手やっていて足並みが揃わない。良く言うと多様性が高い。CMSのほうが組織だって物事を進める,悪く言うと自由度がなくてツマラナイ。ってなことがわりと共通の認識になっています。それが本当かどうかはわかりませんが,自分の感じるところでは,ATLASはヨーロッパ的,CMSは非常にアメリカ的な感じがします。

ヨーロッパ風とアメリカ風の違いは実験の進め方,グループの運営方法だけでなく,論文にもはっきりと表れています。英語が全然違うし,書き方も全然違います。私はATLASを始める前は主にアメリカでの実験グループに携わっていました。Belleもやっていましたが日本の実験グループにいる外国人は(Belleに限らず)アメリカ人が多いからか,日本の実験グループが書く論文もどちらかというとアメリカ風の書き方が多い気がします。なので,ヨーロッパ風の論文というのはあまり目にすることもありませんでしたし,書くにあたって参考にしたことが全くありませんでした。

そういうバックグラウンドを持った私は,ATLASの論文を読むのが非常にツライのです。見たこともない英単語,あまり目にしたことのない表現,そして何より,受動態一本槍の文章が読みづらくてたまりません。前に,トップクォーク対の生成断面積に関する論文を書いたときは,アメリカ人と私の二人で書いたので最初はアメリカ風味の論文でした。ところが,グループ内の査読でことごとくヨーロッパ風味のATLAS標準に書き換えるように言われ,泣く泣く自分にとっては読みづらい冗長な表現に変えました。

それに比べてCMSの論文は私にとっては非常に読みやすいです。来週の学会で自分にトークのあることに気付き,いえ正確にはY教授の一言で思い出して焦って数日前から準備を始めたのですが,将来の展望に関するレビュートークなのでATLASとCMS双方の論文に目を通しているのですが,CMSの論文の読みやすいこと。慣れの問題なので仕方ないのですが,同じような内容の論文を2つ並べて読んでみると,その違いの大きさに驚いたのでした。

研究 | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<オリンピック関連 | HOME | 携帯電話を持っていない人は>>

この記事のコメント

コメントの投稿















コメント非公開の場合はチェック

この記事のトラックバック

| HOME |