ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

新粒子発見で感じていること

久しぶりの更新になりました。

金曜から昨日まで出張でした。金曜は富山大学と金沢大学合同のセミナーでトーク。土曜と日曜は富山のKさんが中心となってやっているヒッグスの現象論の研究会にちょっとお邪魔して,金曜のトークのダイジェスト版。理論屋さんの話にはついて行けず大抵振り落とされていましたが,雰囲気は満喫してきました。

しかし,考えれば考えるほどヒッグスというのは不思議というか,もっと正確に言うと不自然感甚だしいです。他の研究分野の人にとっては気にならないのかもしれませんが,指導原理のない理論あるいは模型というのは,それが自然を上手く説明できることがわかっても,やっぱりすっきりしません。ゲージ対称性のためにヒッグスを導入してはみたものの,ヒッグスセクターにはどういう原理があるのかわからないので,ヒッグスそのものについての性質は理論でいくら説明されても誰もが納得するということはほとんどありません。ゲージ対称性からゲージボソンが自分で固有の質量を持つのは禁止,仕方がないから真空中にヒッグスが凝縮してると思ってヒッグスから質量をもらっている,とヒッグス機構は考えるわけですが,肝心のヒッグス自身には質量パラメータなるものが存在します。ヒッグスポテンシャルが自発的に対称性を破った後は,質量パラメータはヒッグス自身の自己結合と真空期待値で表せるので他の粒子の質量と同じように考えられないこともありませんが,自発的対称性の破れの前から質量パラメータは存在しているんですね。ゲージボソンに手で質量を与えるのはダメだからヒッグスによって質量が生成されるとしてるけれども,ヒッグス自身の質量は手で入れちゃってるんです。これって問題の単なるすり替えのように感じて,その辺が非常に胡散臭く感じてしまいます。いや,それだけじゃなく,そのうち纏めて不自然さを説明してもよいですが,ヒッグスセクターについては怪しい点が満載です。

今回発見した粒子がヒッグスだとすると,そういう怪しい粒子=理論的に不自然な粒子が見つかったので,これからしばらくは実験が今後の方向性を決める,実験主導の時代になったとも考えられます。いえ,実験屋としてはそういう受動的な感覚ではなく,これからしばらくはヒッグスの性質を実験的に精査してこれからの素粒子物理学の方向を自分たちで決めるんだ,という気概に満ちあふれています。なんというか,実験屋主導の時代が来た,みたいな感覚があります。そうしてヒッグスの性質を明らかにしていき,自然を正しく記述する現象論が構築され,さらにその先にヒッグスセクターに関する指導原理が見つかれば,と思っています。

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2012-07-30 Mon 21:15 | | [ 編集]
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2012-08-01 Wed 23:19 | | [ 編集]

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