ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

Moriondに向けて

確か明日からMoriondが始まります。Moriondというのは,高エネルギー物理業界では最重要視される国際会議の一つで,毎年3月の初めにElectroweakセクション,後半にQCDセクションが開催されています。昔は,私がトークをしたときにはフランスでやっていたのですが,今はイタリアのLa Thuileというところでやっています。いずれにせよ,スキー場なので,私みたいなスキー好きの人にはたまらない開催地です。

ちなみに,La Thuileでも毎年国際会議がMoriondの直前に開催されています。ですので,La Thuileでは実際のところ2月末から3月末までずっと国際会議を開いているということになります。Moriondはフランス,La Thuileはイタリアのバックアップでやっているのではないかと思いますが,いずれにせよ,長い歴史のある重要な国際会議です。

ただ,ATLASに参加するまで知らなかったのですが,どの国際会議を重要視するかというのは,国によってかなり違うようです。夏に隔年,入れ子で開催されるのがLepton PhotonとICHEPという国際会議で,これらを重要視するのは世界共通だと思いますが,ヨーロッパではEPSという会議を重要視していて,ATLAS参加前にアメリカと日本で研究を行っていた私にとってはちょっとした驚きでした。だって,EPSってEuropean Physics Societyですから,国際会議というよりregionalな会議の印象を受けます。アメリカ人にとっては野球の大リーグーの一番を決めるのが”ワールド”リーグなのと一緒で,Europeanはヨーロッパにとっては世界なんですかね。

それはさておき,Moriondに向けて結果を発表しなければなりませんから,解析は佳境を迎えています。今回は私の学生がMoriondを目指した解析をやっていませんので,個人的には切羽詰まった状況にはなっていませんが,色々なミーティングに出ると,ATLAS全体としては大忙しということがよくわかります。

目玉の結果はもちろんヒッグス探索。すでに公開した結果に加え,感度がそれほどは高くない幾つかの探索チャンネルを加えて(プラス,既存の解析にも改良を加えて)結果をアップデートしようとしています。感度の低いチャンネルを加えるのですから,結果自身が公開されているものに比べて大きく変わることはありませんが,それでも微妙に変化しています。結果が気になる方は,"Moriond 2012"でググれば国際会議のサイトに行けますから,数日後にそこでチェックしてもらうといいかと思います。って,ATLASの公式サイトにももちろん掲載されますね。

一つ悔しいなぁと思ったのは,私たちがトップクォーク対の生成断面積測定の論文を書いていた時に受けたのと同じ質問が出ていたのですが,私たちはその質問に対応するために無茶苦茶色んなチェックをしてかなり詳細に定量的な答えを返し,それでも質問者は納得せずに物理コーディネータに仲裁を頼み,4ヶ月くらいかかってようやく論文投稿に辿り着きました。けれど,ヒッグスの解析では発表を遅らせることができないという事情もあって,質問に対する答えのクオリティは私たちの回答にくらべるとかなりラフなのですが,そのままグループ内の承認ということになりました。個人的には,今回の結果を国際会議に出すことに完全に同意します。ただ,私たちに比べてヒッグスの解析のほうがその問題の影響が遥かに大きいのです。原理的にも,数値的にも。逆に言うと,私たちの解析では指摘された問題というのは非常に小さいのです。にもかかわらず,メインな解析では仕方ないよねとなる一方で,私たちの解析は何ヶ月も詳細な検証を強要され…不公平感を強く感じたのでした。

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