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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

分野の違いをなぜ理解しないのか

以前,論文数と学問の分野の違いに関してエントリーを書いたことがあります。一言でまとめちゃうと,論文を書きやすい分野と書くのが難しい分野がある,少なくとも論文を書けるようなオリジナリティのある仕事ができるまでに要する時間は分野によって大きく異なる,ということを書きました。また,だからこそ,分野間でプロジェクトに優劣をつけるとか,人の評価をするときは,分野間の違いをきちんと考慮すべきという意見を述べました。

昨日と一昨日は,修士課程の学生の修士論文発表会。博士課程の学生の博士論文公聴会相当(もちろん,公聴会ほどフォーマルではありませんし,色んな意味でもっと緩いものですが)だと思ってもらればいいかと思います。そこで,上記のような分野の違いを理解してないであろう教員からのコメント・質問があって,非常に嫌な気持ちになりました。特に腹立たしいのは,学会や研究会なら理不尽な発言があれば,私みたいな人間からそんなくだらんコメントするなって言い返されますが,修士論文の発表会ですから,受け答えは発表している学生しかできません。そういう理不尽な質問に対する受け答えは学生は慣れていませんし,そもそも,分野間の違いをまだよくわかっていない学生にとっては,そういう質問の真意を理解することすら難しいでしょう。もちろん,学生が私みたいにやり返せるのが理想ですが,修士の学生ではヤクザな発言に対する対応を要求するのは厳しい気がします。

学問の分野間の違いは,論文の書きやすさだけじゃなく,色んなところに存在するんですね。特に,素粒子物理と他の学問で大きく違うと感じるのは,素粒子物理の場合は単に新しいことよりも学術的な意義を追い求める傾向が強いことです。もちろん他の分野でも学術的な意義を考えてるのでしょうが,素粒子をやってる人から見ると,学術的な面白さや奥深さよりも,とにかく新しいことをやるのが偉い,そういう文化が他の分野には強くあると感じます(あくまで私の感覚)。色々な違いの一つとして例を挙げているわけですが,こういう違い,異文化をお互いに批判するのは不毛です。かたや「そんなことやって何がわかるの?」,もう一方は「それのどこが新しいの?」と言いあうのは,自分が好きな食べ物を言いあってケンカしてるのと同じくらい不毛です。

他の例だと,同じ実験物理でも重要なポイントが全く違います。高エネルギー物理の最近の問題だったりしますが,私たちの実験技術は他の分野に比べて突出して高い技術を使っているため,技術開発の専門化が極度に進み,また一つの技術開発のタイムスパンが非常に長くなっているという傾向があります。物凄い高度な技術が使われ,実験に使う検出器は全てオリジナル,売り物なんて全くと言っていいほど存在しません。ですから,学生がやっている検出器開発一つにしても非常に高度な技術を見につけ,試験結果を出すにも工夫と時間がかかります。でも,そういう高い技術が使われていることを理解していない人にとっては,単に検出器を組み立てただけ,試験をやっただけ,に見えてしまうらしいのです。

逆に私なんかから見ると,他分野の実験技術は古臭く,売り物の検出器を買ってきただけ,また測定という観点からは,バイアスの有無,統計・系統誤差の評価がアマアマで,博士論文ですら解析技術は学部生の物理学実験レポート並みだと感じてしまいます。でも,大切なポイントはそういうところじゃなくて,人がやってないことを見つける能力だったり,試料を作る腕前が必要だったり,私には備わっていない,鍛えてこなかったことが重要だったりするわけですよね。ですから,多くの人は,自分の実験に対する感覚で多分野の実験を批判するのは,的外れなことを自覚しているわけです。もちろん,敢えて他分野の手法や姿勢を取り入れるというのは良い試みだとは思います。ですが,そういう意図なら,反論・議論できない弱い学生相手じゃなくて,鼻っぱしの強い大人の研究者を相手にすべき話だと思うのです。

と,偉そうに書いていますが,私が上で書いたようなことはマトモな研究者なら皆わかっている(と信じたい)はずです。それをなぜわからない人がいるのか,謎です。自分の研究"だけ"が立派な研究だと考えている不遜な人間か,自分の研究分野あるいは研究機関に閉じこもっている村社会の住民なのか…と,書いてて思いましたが,大学教員には不遜な村社会住人というのは多いのかもしれませんね。とあるヒアリングに行ったときに,今回のような不毛な質問とコメントをされたことを思い出しました。分野間の調整というような,大局から物を眺めることが必要とされる審査員ですら,村社会発言をしてましたから。

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