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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

Fine Tuning 問題とか

昨日ニコ生を見て,番組中に伝えられなくて残念だと思うことが幾つかあったのですが,その中の一つがFine Tuning問題。このブログでも大昔に何度か書いたことあるのですが,今日はせっかくなのでもう一回。

私たちが観測する素粒子の質量というのは,素粒子の裸の質量だけではなく,量子補正の効果を受けていて

[観測する質量]^{2} = [裸の質量]^{2} +あるいはー [補正量]^{2}

というような関係があります。物凄くざっくりと言っちゃうと,ヒッグスの場合,観測する質量はオーダー100GeV程度。一方,放射補正による補正量は10^{15}とか10^{19}GeV(数値が大きく違うのはどれくらいのエネルギースケールまで理論が正しいと思うかに依存)。実際には,それらの2乗の足し引きになる,つまり,バカでかい数字の加減算で100GeVオーダーという観測量を捻りださなければなりません。これはヒッグスボソンに特有の問題で,Fine Tuning問題と呼ばれています。これを不自然だと考えるかどうかは人の趣味なのですが,多くの素粒子物理屋はそれをとんでもなく不自然だと考えています。逆に,別に不自然だっていいじゃんと考える人たちもいて,そういう人たちがこの後説明するSUSYを好きではないのは必然だったりします。

ちなみにですが,ニコ生の中でNさんがこの不自然さを鉛筆が芯を下にして机の上に立ってる,と喩えていました。

それはさておき,ではFine Tuningが不自然だと考える人々はどう考えるかというと,なにかトリックがあるはず,と思うわけですね。Nさんの喩えを押し通すと,鉛筆の芯が机に接着剤でくっつけてあるとか。素粒子物理ではそのトリック(?)がSUSYなのです。SUSYが本当の理論だった場合,全ての素粒子にスピン1/2違うパートナーが存在することになります。スピン1/2違うパートナーがいると先の量子補正の量がキャンセルされて,10の10なん乗というとんでもない補正量が消えるのです。

というわけで,SUSYのもともとのモチベーションはヒッグスが存在した場合に問題となるFine Tuningを消すためだったのです。そういう背景で生み出されたSUSYを色々いじってみると,うまい具合に大統一できるかもしれないとか,ダークマターの有力な候補がSUSY粒子の中にいるとか,素粒子物理あるいは宇宙論に与えるインパクトの大きいご利益が次々と見つかって脚光を浴びている,というのが素粒子物理の歴史なんですね。

なので,ヒッグスボソンというものが存在しないと,SUSYを考える元々のモチベーションを失ってしまいます。逆に言うと,ヒッグスボソンが存在すると実証されればSUSYを考える意義がよりある,というわけで,ヒッグスの発見がSUSYに与えるインパクトというのは非常に大きいのです。

というような纏めを番組の最後で入れたかったのですが...あんまり伝わってなかったかもしれませんね。

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