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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

ヒッグスの結果について

学内でのヒッグス探索現状についてのセミナーを終えたところです。これで,記者会見から続いた(私の生活の中での)ヒッグスフィーバーは一区切りと言った感じです。

今回の結果を無理矢理ざっくり纏めてみます。

ATLASは126GeV付近にわずかなexcessがあります。Local p-valueで言うと,3.6σ。H→γγだけで2.8σ,H→ZZ→llllだけだと2.1σ。ただし,γγとllllではp-valueの最小を与える質量はわずかに違います。γγは126GeVですが,llllでは125GeVより少し小さいところです。この3.6σはlocal p-valueなので,ヒッグスの質量が既知で,その質量領域だけを探索した場合にはかなり大きなexcessと考えることができます。

ですが,私たち人類はヒッグスの質量をいまだに知りません。非常に広い質量領域の探索を行っています。サイコロを振って1が3回続けて出る確率は(1/6)^3で1/216で低い確率ですが,サイコロが216個あればどれか1個は1が3回続けて出ても不思議ではない,とも解釈できます。野球で3連打,4連打が出る確率は低くてもそれを目にすることがあるのも同じ理由です。このように,機会が多数あるために確率的に低い事象が発生することをLooking Elsewhere Effect略してLEEと呼びます(個人的にはTrial Factorと呼ぶ方が好きなのですが)。そのLEE効果を100GeVから600GeVの範囲で考慮に入れると,上記の3.6σが2.3σになります。というわけで,この結果自体で「発見」と結論付けるのは早過ぎる,というのが一般的な解釈で,新聞報道等でも大多数の報道機関はそのように報道してくれました。

一方,私たちも13日のセミナーまで知らなかったCMSの結果はというと,119GeVと124GeVにかすかなexcessがあります。最小のp-valueを与えるのは124GeVで2.6σ。LEEの補正(110から600GeV)を加えると0.6σとなります。専門的なコメントを入れると,ATLASの場合,LEEの補正をするときにtoy MCではなく,データのlikelihood自体から求めています。ある質量領域にどんだけ上ブレしてるかを数えてそれで補正してます。CMSもtoy MCやってる時間がなくて同じ方法なのではないかと推測すると(嘘かもしれませんので注意),2.6σだったlocal p valueがglobalで0.6σになるというのはなんとなく納得いきます。というのも,なぜか知りませんが,CMSの結果って上ブレや下ぶれしてる質量領域が多いからです。おっと,話を戻すと,CMS単体でのsignificanceも大したことありません。

よって,今回の結果をまとめると,scientificには「発見」と呼べるような結果ではありませんでした。ですが,落胆すべ結果では全然ありません。現在の統計ではそもそも125GeV付近での発見を言えるはずがないので,発見でなくて当然だからです。逆に,ATLASのγγとllllそしてCMSのγγの3つの解析で同じような質量領域に上ブレがあったのは興味深いです。γγ,llllともに分解能は1.5から2GeV程度。同じピークと言えなくもないからです。来年統計を貯めるとどうなるか楽しみ,というのが今の正直な気持ちです。ただし,CMSのllllは119GeVにクラスターしていて,両方のピークが正しいということはないので,現段階では2σ程度のlocal p-valueがでても一喜一憂すべきではなく,global p-valueを見ないとならないということも示唆しています。

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2012-01-10 Tue 16:50 | | [ 編集]
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2012-01-10 Tue 17:08 | | [ 編集]
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2012-01-27 Fri 09:34 | | [ 編集]

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