FC2ブログ

ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

昨日のセミナー

昨日のセミナーですが…恐れていたとおり、授業の実験が長引きました。自分の出番は17:30くらいと予想していたので、さすがに17:15までにはセミナー会場に行かないとマズいと思い(授業は低学年教育のために、キャンパス内で私たちのいる理学部と一番離れた位置にあります)、17時には学生に事情を説明して、実験を終了できなかったグループは残りを宿題としてピンチを切り抜けました。(実験と言っても測定自体は非常に簡単で、主な時間は
計算に使われます。残った計算を宿題としました。)

荒技でなんとかピンチを切り抜け、セミナーでは問題なく発表できたのですが、今日はその一部を説明しようと思います。

LHCが巨大なのはご存知と思いますが、なぜそんなに巨大なのかご存知でしょうか?粒子を光速に近く加速(=高いエネルギーまで加速)するのに加速器が大きい方がいいわけですが、それを説明するためには電荷を持った粒子、例えば電子とか陽子、が円形の加速器を周回する時に失うエネルギーを考えないとなりません。電荷を持った粒子は磁場によって曲げられると(円形加速器では軌道を円形に保つために磁場が使われています)、放射光と呼ばれる光を放出してエネルギーを失ってしまいます。この失うエネルギーが一周あたりエネルギーの4乗、粒子の質量の4乗分の1、円軌道の半径Rの逆数に比例します。

……わかりにくいですかね。
例を出すと、粒子のエネルギーが2倍になると失うエネルギーは2の4乗で16倍、粒子の質量が10倍であれば失うエネルギーは(1/10)の4乗で10000分の1、円軌道の半径が100倍になれば失うエネルギーは100分の1になります。

昔、今LHCで使われているトンネルを使った電子と陽電子を衝突させる実験(LEP実験と言います)では、電子を約105GeV(=105x10の6乗 eV)まで加速していたのですが、一周当たりなんと4GeV近くのエネルギーを失ってしまいます。加速器といいますが、加速(曲げることも力学的には加速ですが、単に速度の絶対値を上げるという意味で)せずに速度を保つだけでも一周あたり4%ものエネルギーを加え続けないとならないのです。

ところが電子よりも約2000倍重い陽子を使うLHCでは粒子の速度はLEPよりも早くエネルギー7TeVですが、一周あたりに失うエネルギーはたった[7TeV]x[0.000000001]です(ゼロの数あってるかな?10の9乗分の1程度)。つまり電子よりも思い陽子を使うことでLEPよりも遥かに高いエネルギーまで加速することができるわけです。ちなみに、7TeVの陽子というのは、光速まであと時速10kmです。ジョギングしてる人の速度程度まで光速に近づいてるわけです。凄い話です。現在稼働してる加速器の最高エネルギーはアメリカの国立フェルミ加速器研究所にあるTevatronという加速器でそのエネルギーは約2TeVです(これも陽子)。その速度は光速まであと時速450km。

話を戻すと、そういうわけで、粒子をより高いエネルギーまで加速させたい場合は、重い粒子を使うか、円形加速器の大きさを大きくするしか方法がありません。供給できるエネルギーには限りがありますので。この発想で電子を使ってさらにエネルギーを上げる計画が半径をRを無限大にしてしまう、つまり、円形でなく直線の加速器(liner colliderと言います)というわけです。

そういうわけで加速器が巨大になっているのですが、LEPに比べて難しいのはエネルギー、あるいは運動量と言ってもほぼ等価ですが、エネルギーが70倍程度になったために、円形軌道を保つための磁場が非常に強力でなければならないという点です。そのために超伝導の磁石を周長27kmにわたって設置しています。大量の液体ヘリウムで1.9Kという超低温を実現してるわけですね。

さて、ここまで書いてくると、加速器に使う粒子は電子より陽子のほうが良さそうです。ですが、世の中に電子を使う加速器が多々存在するわけで、もちろんそれには理由があります。それについてはまた次回、いや、気が向いたら書こうと思います。


大学 | コメント:2 | トラックバック:0 |
<<力仕事 | HOME | インフォーマルセミナー>>

この記事のコメント

> この発想で電子を使ってさらにエネルギーを上げる計画が半径をRを無限大にしてしまう、つまり、円形でなく直線の加速器(liner colliderと言います)というわけです。

本当にまっすぐにすると、トンネルが深くなるので、直線にするか深さ一定にして地球の半径にするか、議論されているはずです。
2008-10-18 Sat 19:16 | URL | 中村 [ 編集]
早速のツッコミありがとうございます。
2008-10-20 Mon 19:08 | URL | ExtraDimension [ 編集]

コメントの投稿















コメント非公開の場合はチェック

この記事のトラックバック

| HOME |