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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

院試の結果を見て思うこと

今日午前中は,判定会議というものがありました。先週あった大学院入試の結果を,教授・准教授参加の会議で承認するという催しです。これは物理学専攻と宇宙地球科学専攻の承認なので,さらに理学研究科の承認もきっとどこかで行われるのでしょう(それには准教授は参加しません)。

そういうわけで,合格者が内定しました。さらに,合格者の研究室がどこになるかも決まりました。

その結果を見て,毎年感じることがあります。何を一番強く感じるかというと,人生,運に支配される部分が大きいということです。合格,不合格とかではありません。それは本人の実力の占める部分が大きくて,運による多少の変動があったとしても,順位に大きく影響を与えるようなことはありません。もっと言うなら,私が普段接している学生なら,試験結果を知らなくても,順位はほぼ予想できます。いや,むしろ,普段接している教員の評価の方が1発勝負の試験よりも精度のよい評価なのかもしれません。いずれにせよ,普段の評価と試験結果には強い相関性があるので,運・不運が試験結果に影響を与えることはそれほど大きくないと感じます。

私が感じる運というのは,研究室の選択です。ぶっちゃけ,アクティブに研究を展開している研究室とそうでない研究室を選んだ場合では,本人の実力とは関係ない部分で,将来が大きく変わります。あ,いや,研究室同士を比較すると角が立つので,同じ研究室でも時期によってアクティビティが大きく違うとして,以下話を進めます。

たとえば今私が所属するY研究室は,KOTOとATLASという2つの実験をやっていますが,どちらもまさに今が旬。KOTOは今始まろうとしている実験ですので,今実験に加わると,実験の立ち上げをやれて(=高エネルギー物理ではこのタイミングに当たれるかどうかは非常に大きな人生の分かれ目です),多岐に渡る経験ができ,研究者としての実力アップに最適にタイミングでしょう。別に研究者にならなくても,実験を「主導する」経験ができるというのは,何の職業に将来就くとしても非常に貴重な経験だと思います。ATLASであれば,実験が順調に動き始め,これからまさに世紀の大発見に立ち会えるかどうか,という一番面白い時期です。普段から宣伝してるのでこれ以上書きませんが,物理としての面白さだけでなく,これまた色々な経験ができるという意味でも参加する絶好のタイミングです。

さらに,研究者を目指すとなると,このタイミングというのは非常に重要です。自分の博士論文のテーマと直接関わってくるからです。K大のNさんなんかは,どういう実験グループを選ぶかは本人の実力次第だと,いっつも言ってます。運と言ってる私より厳しい考え方なわけですが,そのいわんとするところは,旬の実験かそうでない実験家を見分ける目を持つことが大切だ,ということです。ポピュラーかどうか,あるいは大きな実験か小さな実験かどうかという意味ではなく,物理として面白い結果が出そうかどうかを判断する目,センスが重要ということです。学生の段階では自分で実験を計画できるわけではありませんから,世間で行われている実験の中で,どの実験が自分の学生としてのライフサイクルを考えた場合に面白い結果を出せるか考えることが大事だと言ってるんですね。

言ってることは正論で,面白い結果を出せるかどうかというのは,博士論文うんぬんもですが,その後の研究者としての実績に大きく影響を与えてきます。それは,本人の実力だけではいかんともしがたい部分があり,面白い実験に対する嗅覚が大事だというのは私も同感です。ただ,Nさんみたいに優秀な人は学生の時点でそういう感覚を持ちあわせていたかもしれませんが,自分を振り返ってみると,研究室選びはほぼ勢いだけでした。逆に言うと,私が研究者になったのなんて運100%です。アクティビティの高い研究室に入り,実験のタイミングがどんぴしゃり,良い指導者と良いcollaboratorに恵まれ,この道も悪くないと思えたので今の人生があります。

逆に優秀でも,実験のタイミングが悪いと結果はなかなか残せません。もちろん,非常に優秀な学生はどんな実験でも頭角をあらわしますが,一般論というか,平均を考えたとき,旬でない実験を選んでしまうと研究職につけるかどうかという観点ではかなりのマイナスを背負うことになります。

で,先にも書いたように,学部生くらいだと私みたいに勢いやその場の雰囲気で研究室を選ぶ学生が少なくないと思うんですね。もっと言うと,博士課程くらいになればまだしも,学部生ではその判断は難しいのではないかと思います。ということは,選んだ研究室がアクティブかどうかというのは,学生にとっては運次第なわけです。今の私なら知らない大学の研究室でも,どれくらい盛り上がってやっているのかを,各種資料をあたることで調べられます。でも,4年生にはそれは無理です。さらに,どの研究室も一様に宣伝をしているわけで,それも選択を余計に運にしています。

というわけで,4年生がどれくらい真剣に研究室を選んでいるかはわかりませんが(同じ大学だと違う研究室はなかなか希望しないので,3年生時点でその後の人生が決まっている人も多いかも),人生って運,あるいは巡り合わせだなぁ,と院試のたびに思ってしまいます。

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