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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

μ→eγの結果など

ここ数日,EPSという大きな国際会議のせいもあって,毎日私の本職である物理の話ばかりになっています。食傷気味のかたもいらっしゃるかもしれませんが,今日もまた物理の話です。今日のは少しインパクトがあるので,すぐに書かずにはいられません。

ちょっと前のエントリーで荷電レプトンフレーバーの破れの話をしました。μという粒子が電子とγ線に崩壊する事象の探索が熱い,という話でした。標準模型では実験の精度を考えるとほぼ起こらないと考えてよい崩壊過程で,もし崩壊があったとしたら,それは標準模型を超える物理現象。たとえばSUSYなんかが有力な候補となります。SUSYが真の理論だった場合の予言値と実験の探索感度がほぼ同じくらいになっているので,かつ,2009年のデータには信号っぽいものが見えている,ということから専門家の間ではLHCと並んで物凄く注目を浴びていました。その結果が,これまたEPSという国際会議で発表されました。

ところが,2010年のデータを加え,統計を3倍(2010年のデータ量=2009年のデータ量の2倍)にしたところ,新しく加えたデータには残念ながら信号らしい兆候がありませんでした。非常に残念です。ちなみに,崩壊比の90%信頼度の上限値は2.4x10^{-12}。物凄い感度です。1兆回に1回あるかどうかという事象を捉えるというレベルの感度です。さらにこの実験(MEG実験)は感度をもう1桁上げるべく,今年,来年とデータ収集を続けるそうですが…今の段階でこれだけゼロとconsistentだとかなりがっかりです。LHCでも標準模型を超える物理現象っぽいものがなかなか見つかりませんが,フレーバーのほうでもなかなか変なモノが見えません。。

ところで,μ→eγほどではありませんが,個人的にちょっとだけ注目していたBs→μμについてもLHCから新しい結果の発表があり,やっぱりというか,結果はゼロとconsistent。tanβの大きなときに感度のあるとされる物理過程で何の兆候もなかった上に,解析でも背景事象の見積もりが甘そうだったCDFの結果に,ほんのわずかな期待をかけていたのですが,これまたダメでした。これ以上実験の感度を上げると標準模型による寄与が見えてきてしまいそうなところまで来ています。

ということで,注目していた結果がことごとくネガティブになりちょっとガッカリしていますが,そんな中,今日は大学,というか物理学科内のセミナーでT2Kの話を聞きました。内容は,これまた少し前にこのブログでも取り上げたν_μがν_eに振動した事象の発見(兆候の発見)に関するものでした。これまで結果だけを斜め読みしただけで,解析内容を深く追っていなかったので,今日のセミナーは非常に興味深く聞くことができました。6事象の振動候補事象があるのですが,それらの詳細については全く知らなかったので非常に勉強になりました。

まあ,ポジティブなのにこしたことはありませんが,たとえネガティブな結果だったとしても,最新の注目結果に接するのは非常にドキドキわくわくします。物理をやっていて面白なぁと感じる瞬間であり,醍醐味です。

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