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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

Englert - Brout

突然ですが,Englertという人とBroutという人をご存知でしょうか?
Higgsは,おそらくこのブログを読んでる方であれば非常に高い確率で誰か知ってると思いますが,EnglertとBroutの知名度はかなり低いのではないでしょうか。

Higgsは,ヒッグスボソンという私たちが探している素粒子の名前からもわかるように,ヒッグス機構を考え出した人として有名です。スカラー場が自発的に対称性を破ってゼロでない真空期待値を持つと,そのスカラー場との結合によってゲージ対称性を破らずにゲージボソンに質量を与えることができる,というアイデアを唱えた人ですね。

ところが,同じアイデアをEnglertとBroutという人が,私の聞いたところではHiggsよりも先に論文で発表していました。私たちの大学の素粒子理論の歩く百科事典Kさんの話によると,EnglertとBroutの論文のほうがちょっとだけ先に発表されたのですが,Higgsの論文のほうが理解しやすかったためにそっちが世間に広まったとか。事の真偽を私は知りませんが,まあとにかく,ほぼ同時期に同じアイデアを論文発表していました。EnglertとBroutの論文のほうが世間に広まっていたら,私たちが探している粒子の名前はヒッグスではなく,EBボソンとかだったりしたのかもしれません。

そんなわけで,ATLASは,2010年に収集したデータを使ってのヒッグス探索の結果をしばらく前に論文に投稿したのですが,その一番最初に引用されている論文はEnglertとBroutのものです。と言っても,引用は[1-3]でその1がEnglertとBrout,2がHiggsの論文なのですが,とにかくEnglertとBroutの論文が1番最初に引用されています。

恥ずかしながら,私はそのオリジナルの論文をちゃんと読んだことはないのですが,まあ一目,確かにヒッグス機構(EB機構?)っぽい説明がされています。で,私が凄いなぁと思うのは別のポイントで,そのEnglert-Broutの論文に引用されてる論文で,一番最初がSchwinger,次がYann-Mills,続いてJ.J.Sakurai,そして4番目と5番目がY.Nambuなんです。自発的対称性の破れで南部さんはノーベル賞を貰ってるのですから,当たり前といえば当たり前なのですが,並んでる論文著者が凄くて,なんというか,圧倒されます。

圧倒されてるだけでは仕方がないので,私たちとしてはヒッグスを見つけるしかないのですが,残念ながら,その発表された2010年のデータを使った解析では,感度が標準模型ヒッグスの生成断面積(x崩壊比)に到達していません。ただ,背景事象の分布や量はそれなりに理解できていて,さらに2011年は2010年に収集したデータの30倍近くをすでに収集しています。夏の国際会議用に使うデータセットがどれだけになるかは確定していませんが,さっきのミーティングでのHくん情報によると,690pb^{-1}は最低でも使うとか。(あれ,もしかするとトップグループの方針とヒッグスグループの方針は違うのかな?)

いずれにせよ,1fb^{-1}を超える統計があり,これからもさらにデータ収集しますから,今年中か来年中くらいにはヒッグスに関するなんらかのニュースがあるはずです。ということで,数日前のν_e事象の示唆,昨日のエントリーのμ→eγ探索に負けず劣らず,LHCからも目が離せません。って,私はLHC実験やってるのですから,離そうにも目を離せませんが。ははは。

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