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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

ν_e appearance 事象

東海村のJ-PARCで生成したニュートリノビームをカミオカンデに打ち込みニュートリノ振動の研究を行うT2K実験が,今日プレスリリースを行いました。新聞にも既に載っていますし,KEKのウェブサイトにもう少しだけ詳しく載っていますが,ニュートリノ振動の結果ν_μ(ミューオンニュートリノ)が ν_e(電子ニュートリノ)になったという事象を見つけたそうです。

KEKのプレスリリース

プレスリリースの文章そのままですが,背景事象の予想値が1.5イベントのところ6事象観測したそうです。今回解析したデータセット以前の解析でも,背景事象の予想が0.3くらい(?)のところ1事象観測していました。それでは,背景事象からの有意な乖離とは言えず,結論持ち越しとなっていました。

先月彦根でスクールをやったとき,T2KをやってるYくんが,残りの全てのデータを使った解析結果を議論するcollaboration meetingが翌日(?)くらいにあると言ってたので,そのときにはすでに結果を知ってたんでしょうね。何か挙動怪しかったですし。

それはさておき,ν_μ→ν_e が見つかったのはめでたいです(見つかったと言っていいほど統計的に有意かどうかはプレスリリースだけでは私にはまだ判断できませんが)。ニュートリノセクターの混合角(クォークの場合はCKM行列)がこれで全部測定できることになります。θ_23はスーパーカミオカンデの有名な測定である大気ニュートリノ振動現象から測定,θ_12は太陽ニュートリノ振動現象と原子炉からのニュートリノを使ったカムランド実験で測定,残る未測定角がθ_13でした。(3体の混合なので混合は3x3の行列で表されて,独立な混合角は当然3個になります。)

このθ_13の測定は世界的な競争が繰り広げられていて,原子炉を使った別の実験(たとえばフランスのDouble Choozという実験)なども有力なライバルでした。ただ,θ_13は理論上のフリーパラメータのため正確な予言値がなく,先のν_μ→ν_eという事象が起こる確率がsin(θ_13)の2乗に比例しているため,もしθ_13が小さいと今の実験では測定できないかも,という心配がありました。それを見つけたのですから,関係者ならずとも大喜びです。

というのは,ν_μ→ν_e事象を観測したというのは,実験の将来計画にも大きなインパクトを与えるからです。もし見つけられない=θ_13が小さ過ぎて現状では測定できない,となったら,次の計画を進めるのは結構難しかったわけで,それが今度は,θ_13の測定はもちろんのこと,ニュートリノのCP非保存を研究する実験までやろうかということになってきます。

ところで,ν_μ→ν_eによるθ_13の測定と原子炉を使ったθ_13の測定は手法が違いますし,というか,そもそも観測する対象も違います。原子炉では反電子ニュートリノが生成されて,それが時間とともに(実際に測るのは生成地点からの距離)どう変化するかを観測します。原理的には測定量がθ_13にのみ依存するのですが,ν_μ→ν_e実験では他の混合角プラス物質効果込み込みだったように記憶しています(違ってるかも)。まあ,自信がないので細かいとこは置いておきますが,ポイントは,手法が違う測定なので第3者的にはT2KだけでなくDouble Choozなどの原子炉実験でもθ_13を測定した結果を出してくれて,その両者の結果が一致するとより安心します。

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