FC2ブログ

ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

続・電流と電子の速度

ちょっと前のエントリーに対する補足です。とあるコメントに対する返事を兼ねて。

電流の定義は電荷量の時間変化ですので,物質中を流れる電流といった場合,私宛のコメントでも指摘されているように,電荷密度の伝播速度というイメージを私も持っています。じゃあなぜその伝播速度が数10μm/sなんていう遅さになるかというと,単に自由電子の数が多いからです。それを実感してもらうために,この前の例であげた1mm^2の銅線に1A流れている場合を考えます。

I = dQ/dt = neSv ですから(nは自由電子の数密度,eは電子の電荷,Sは断面積,vが電子の流れの平均速度)
v = I / (neS)
e = 1.6 x 10^{-19} クーロン
S = 10^{-6} m^2

自由電子の数は私は正確な値を知りませんが,銅なら原子1個あたり1個の自由電子がいるのかな,と勝手に想像しました。イオンの価数とかあるのかもしれませんし,原子のエネルギーバンド構造みたいなのにも依るのかもしれませんが,そういう難しいことは今考えていません。ということで1molあたりアボガドロ数個の自由電子があると仮定します。1molの体積は,質量数63g÷密度8.9g/cm^3で約7cm^3です。これに6x10^{23}個の自由電子が含まれていると仮定しているので,数密度は約10^{23}/cm^3=10^{29}/m^3となります。

n = 10^{29} /m^3 を上の式に入れると,
v = 1 / ( 10^{29} x 1.6 x 10^{-19} x 10^{-6} ) = 0.6 x 10^{-4} [m/s] = 60 [μm/s]
となります。

最後の式にあるように,銅線中の自由電子って無茶苦茶多くて,電子の電荷1.6x10^{-19}Cと1A=1C/sという電流を見比べたとき,自由電子の全体としての移動速度が無茶苦茶遅くてもそれなりの電荷量の移動がある,というのが電荷密度の伝播速度がナイーブにイメージするよりもずっと遅いことの本質なんだと思います。

ところで,定常電流の場合は,電子がイオンとかにぶつかって終端速度に達するという模型で考えたときの終端速度と上記のvは等しいはずです。
i = ρv = ρμE
とかで,抵抗なんかも定義されていて,矛盾は生じてなかった気がします。

ついでなので,金属を理想気体とした場合に,
mv^2/2 = 3/2 kB T
として,vを計算すると常温で v = 100km/sとなります。金属を理想気体とみなしたら怒られてしまうのでしょうが,まあとにかく,この100km/sと上記の60μm/sを比べて勝手に私が思い描くイメージは,電子はかなりの速度で乱雑に動き回っているけれど,電場をかけてある方向に動かそうと思ってもすぐに散乱されてしまい,全体としてある一方向にはなかなか動かない,というものです。もっと比喩的には,とてつもなく元気な幼稚園児が何10人,何100人も集まっているイメージでしょうか。子供たちそれぞれは勝手に物凄い速さで走り回っています。でも,その勝手気ままな子供たちの集団全体を任意の方向に動かすのはなかなか難しく,集団全体の移動速度というのは非常に遅かったりします。個々の電子の動きと電流の関係もそれに似てると私は勝手に思っています。

日常 | コメント:2 | トラックバック:0 |
<<平成基礎科学財団 | HOME | ヘビーな週初め>>

この記事のコメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011-06-08 Wed 03:27 | | [ 編集]
http://hpcgi2.nifty.com/eman/bbs090406/yybbs.cgi?mode=by_date
での議論では、、、

電子(群)の持つエネルギーは、
ポテンシャルを U とすると、
E=1/2 mv^2 + U なので、
Uは +極では、ある値、-極では、U=0
この差が、間の抵抗で熱に変わる と言う意見が
でました。
Uは、電源の起電力で、常に補われて、
Uは、変わらないということです。
2011-06-09 Thu 03:31 | URL | Kafuka [ 編集]

コメントの投稿















コメント非公開の場合はチェック

この記事のトラックバック

| HOME |