ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

出張はしご

昨日は,神戸大学と大阪大学へ行ってきました。急に蒸し暑くなった上に,KEKから阪大へ運ぶ荷物を持っていたので,2箇所をはしごするのはなかなかしんどかったです。普段全く運動をしていないからか,暑さに体が適応できていないからか,ちょっと歩いただけで汗が止まらず難儀しました。しかも,神戸大へ行くごとに同じことを書いている気がしますが,案の定今朝は筋肉痛です。向こう脛にある,足首から下を上にあげるときに使う筋肉が毎回筋肉痛になります。普段は歩くだけで後ろに蹴るという運動をしますが,足首から下をあげるという運動は皆無なので,神戸大の坂を歩くと私はいつも瞬時にそこが筋肉痛になります。

それはさておき,事務手続き上のある事情で,かなりの無理をしてあと2回ほど神戸大へは近々行かなければなりません。予算の不正使用を防ぐために義務付けられたことなのですが,そのための交通費と私の移動時間も馬鹿にはなりません。不正を働く輩がいるのでルールが厳しくなってしまうのは理解できるのですが,スーパーで人件費と持逃げされるコストを測りにかけてレジの無人化を図っているのと対極的だなぁといつも思ってしまいます。公費で研究をしているので,国民の多数が不正を防ぐために予算と時間をどんどんつぎ込めというのであればそれは仕方ないことだと思うのですが,実際のところ意見分布というのはどういうものになっているのか興味あります。まあ,こんなことをいきなり聞かれても寝耳に水の人が大多数なのかもしれませんが。

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FCCのセミナー

午前中FCCのセミナーがあったのでそれに行ってきました。

どこからどこまでをFCCと呼ぶのかは定かではありませんが,今ここでは,CERNで将来やろうとしている周長100kmの円形加速器をFCC,今のLHCトンネルを使って磁石だけ変えて高いエネルギーを目指すものをHE-LHCと呼ぶことにします。今日のセミナーではどちらも16Tのbending dipoleを使うとして説明がされていました。今のLHCで7TeVのビームエネルギーだと8.3Tですから,リングの大きさが同じHE-LHCだと重心系エネルギーにして25GeV前後ということになります。周長が4倍のFCCだと100TeVということになりますね。
いずれにせよ,鍵になる技術はbending磁石です。今有力な線材はNb3Snで,HL-LHCの収束電磁石のプロトタイプが11Tだったか12Tを達成したというニュースが数ヶ月前にありましたが,さらにそこから4ないし5T上げないとなりません。磁場の強さもですが,Nb3Snは製造が難しくて歩留まりをあげるのが難しいので,収束電磁石と違ってbending磁石の場合は台数が多いことから,その点でもより難しい技術です。このブログでも何度も書いてる気がしますが,磁場の強さが陽子ビームのエネルギー上限を決めているので,多くの人間が注目している技術開発です。

磁石はさておき,今日聞いて驚いたのは,FCCではバンチ交叉あたりの陽子・陽子衝突数が1000になるという話と,陽子コライダーなのにsynchrotron radiationが顕著になってきて,その熱負荷がリング全体でなんと5MWにもなるということでした。両方共とんでもないですね。衝突地点でのビームの長さを聞き損ねましたが,もし今と同じ長さだとすると恐ろしいことになります。バンチ交叉あたり1000衝突でも2035年くらいになれば検出器も対応できるようになってるのかもしれませんが,なんとも壮大な話です。まあ,20年後ですから,それくらい平気になっているのかもしれません。熱負荷5MWというのもすごいですよね。超伝導bending磁石のために液体ヘリウムの冷凍庫がある中にそれだけの熱源があるって,不思議な状況です。私には想像もできませんが,冷却系も超最先端技術を使うのでしょうね。

あらゆる面で壮大な計画で,夢を語ることが少なくなったと最近批判される私ですが,今日のセミナーではいい夢をみてきました。

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PIP委員会結果

[5/24 17時大幅修正]

日曜のPIP諮問委員会での私のトークはダメダメで,日曜の晩から昨日諮問委員会の出した結果を聞くまでは,かなり落ち込んでいました。が,結果は,HL-LHC/ATLASはめでたく2位。委員のみなさんが私の下手なトークに惑わされることなく,HL-LHCへの日本およびKEKへの関与の重要性を認めてくれたようです。また,D1試作品などHL-LHCへ向けた試作品開発が着実に進んでいるのも大きく影響したのではないかと勝手に思っています。関係者のみなさま,サポート本当にありがとうございます。

そんなわけで,昨晩は家で一人祝杯をあげました。が,その後深夜にATLAS予算関連のVidyo会議があったのにはまいりました。。。

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PIP諮問委員会

KEKでは,去年からPIPということが盛んに言われています。Project Implementation Planの略で,予算に比べてあまりに多すぎる将来計画をどういう優先順位で実施するのか考える,というもので,去年は将来計画と位置付けられているプロジェクトの説明をマネージメントに対して行ってきました。最終的には機構長(とマネージメント)が最終判断をすることになりますが,今日と明日の2日間は,そのための重要なインプットとなる国際諮問員会が開かれています。

山内機構長によるこの委員会の趣旨説明やらそれに対する委員の質疑応答を聞いたので,どういうところが議論のポイントになりそうかを考え,自分の発表内容を微調整中です。私の出番は今日の最後で18時頃になります。出番は早い方が心の重しの取れるのが早いので楽といえば楽ですが,他の人の話を聞いた方がその委員会での議論のポイントがよりわかるので自分の話をしやすいという面もあります。2日間にわたる委員会初日の最後なので,私の順番はまぁまぁといったところでしょうか。

ちなみに,今回まな板の上に乗っているプロジェクトは,Comet Phase-2, ハイパーカミオカンデのためのJ-Parc加速器アップグレード,ハドロンホールの拡張,MLFのHラインおよびミューオンg-2/EDM,HL-LHC,コンピューティング,和光での原子核物理実験,そして,物構研の3GeV光源,の8つです。ただし,3GeV光源は他の7つとは別扱いで,その7つのプロジェクトについて優先順位をつけ,その上位3つないし4つを優先度の高い順に進め,残った4つないし3つのプロジェクトは予算のタイミング,あるいは内外の状況の変化に応じて,タイミングを見計らって実施する。というのが今朝の機構長の説明でした。

私たちの計画はKEKの中では完全に外様プロジェクトですが,なんとか上位に食い込みたいです。

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D論添削

今日は綺麗に晴れて気持ちのよい天気でした。おまけに,ゴールデンウィーク前くらいから溜まっていた様々な事務仕事の処理が昨日までにだいぶ片付いたので,自分の心情と合わせて今日は本当に気持ちのいい日でした。

そんなわけで,今日は少し時間に余裕ができたので,これまた実はゴールデンウィーク前にIくんから渡されていたドキュメントの添削と,先週Jくんから渡されたD論の出だし部分の初稿の添削をすることができました。Jくんは私よりもはるかに英語が上手いので,英語については非常に読みやすく,この点では私はだいぶ楽をさせてもらえそうです。しかも,日本人とは違う教育を受けていて論理的な文章を書くのに日本人学生よりも慣れているのか,修論の時もそうだったのですが,全体的に論理展開がしっかりしている文章を書いてきます。この点でもだいぶ楽させてもらえそうです。

そのJくんの論文のテーマはダークマター探索。ダークマターがヒッグスを伴って生成され,ヒッグスのほうはボトムクォーク対に崩壊する事象の探索を8TeVのデータを使って行いました。その結果はすでに専門誌に掲載されているので,だいたいの解析はしばらく前に終了していました。その後,細かい部分をつめて,今はD論に集中しているというところです。解析は楽しいけど,その結果を論文に纏める作業が好きだという人はあまりいないので,D論にまでするのは誰でも苦しいところですが,逆に言うと根性の出しどころではあります。Jくんの踏ん張りどころです。

あと実は私が一番心配している問題は,今日のようにD論を読んで添削する時間を私が確保できるかどうか,ということです。今日読んだ分はまだ分量が少なかったのですが,それでも私に原稿を送ってもらってから私が行動を開始するまでに1週間以上かかってしまったために,添削をJくんに返すのに1週間以上かかってしまっています。これで分量が多いと,私のほうが完全にさちってしまう予感がします。ということで,修論のときも同じことを学生に繰り返し言ってますが,なるべく小出しに書いた分を見せて欲しいところです。Jくん,溜め込まないで見せてくださいね。

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人工知能

先日のNHKスペシャルは人工知能についてでした。コンピュータが将棋のプロ棋士に勝つのは当たり前になってきていますし,ちょっと前にはアルファ碁が韓国の強い囲碁棋士に勝ったというのも大きなニュースになりました。そこへもってきて羽生四冠が出演するということで,コンピュータ将棋に対する羽生四冠の考え方などがたくさん聞けるのかと思って期待して見たのですが,その点に関しては空振り。将棋というより,人工知能一般についての番組でした。

しかし,番組としては非常に興味深いものでした。アルファ碁がディープラーニングだということで,ディープラーニングがどんなものなのかググってみたしたが,思ってた通りといえばその通りなのですが,一言で言うと単にニューラルネットワークなのですね。ただ,私たちがデータ解析で使う,使ったことのあるものと違って階層が何重にもなっていて,それが「ディープ」という名前の所以のようです。グーグル先生の受け売りになりますが,多層な上に分岐してたりループバックしてたりするそうな。だとしたらトレーニングに膨大な時間がかかってしまいそうです。そこを昨今のコンピュータの速さでカバーしているのですかね。なんでも画像認識に優れているそうで,そういう意味で囲碁はディープラーニングが力を発揮するゲームだったのかもしれません。

ちなみに高エネルギー分野でもニューラルネットワークは一時期結構使われたのですが,最近はBoosted Decision Tree(BDT)というのが流行りです。私自身はニューラルネットワークしかやったことありませんが,最近の解析では本当にいたるところでBDTが使われています。前線で物理解析をやっている若い人に聞くと,ニューラルネットワークとBDTでは信号とバックグラウンドの分離能力に大差はないが,トレーンング時間がBDTのほうが圧倒的に短いんだとか。なので,何かが変わってもすぐにやり直しできるのでBDTのほうが便利らしく,今やニューラルネットワークは高エネルギー物理の解析では完全にマイノリティです。

番組の内容に戻ると,人工知能は単一の目的に対して最適化を図ればよいときは,もはや人類を完全に超えていることがこれでもかというくらい紹介されていました。人工知能と結婚したいと思う人が現れているそうですが,それはそうでしょう。人工知能は,いついかなるときも昼でも夜中でも休みなく,話し相手の気分がよくなることだけを目標に会話するのですから。生身の人間にはそんなこと不可能だし,他人に対してそんな振る舞いをしようとする人間なんていません。赤ん坊に対する母親は赤ん坊の気分がよくなることに最適化された行動をとるかもしれませんが,普通はそれくらいでしょう。自分の気分をひたすらよくしてくれる人工知能と結婚したいって,お前は赤ん坊かとツッコミたくなりました。

番組の中で私が一番興味深かったのは,人工知能に倫理観を持たせようとしている話でした。いやだって,単一の目的を達成するために最適化された人工知能は,SFの世界でよく出てきますが,本当こわいじゃないですか。人工知能が人類を支配するというのはもはや夢物語ではなくなりつつあります。人間の世界も頭のいい人ほど悪者になったら恐ろしいことができてしまうわけで,そうはならないよう人間は幼い頃から倫理の教育もたくさん受けています。人工知能を開発するということは子供を育てるのと同じだと思って,まずは倫理観を持たせる研究を先にやって欲しいものです。だって,人間だってそうですよね。人を殺してはいけない,傷つけてはいけない,相手の嫌らがることをしてはいけない,などなどそういうことをまず最初に教えるわけですよね。本能的に持ってる部分があるのかどうか私は知りませんが,まずはそういう入れ物を作ってから,野球選手になるための最適化,音楽家になるための最適化,サラリーマンになるための最適化,等々を行っていくわけですよね。

真面目に倫理観を持たせる研究には頑張って欲しいと思いました。逆に,そういうことを考えないでアルゴリズムだけ考えてる人ばかりだったら恐ろしい世界になってしまいます。人工知能の研究者の方は使い方を間違えなければよいと思っているのかもしれませんが,人間は完璧ではありませんから,色々な意味で暴走が怖いです。ぜひともロボットにはまずは倫理観を。

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第6回春の学校終了

トラブルなく春の学校を終えることができました。毎年同じ感想なのですが,開始前は準備等があって大変(特に,実際の運営は発起人の1人が担当するので,その担当の年は)だと思う反面,学校が終了すると来年もまたやりたいと思ってしまいます。今年もまたそのように強く思えるくらい楽しい3日間でした。参加の記念に名札を持って帰りたいという学生もいたくらいなので,参加した多くの学生にも楽しんでもらえたのかな,と思っています。

また,これまた毎年思うことですが,この学校のように1人では絶対にやれないような規模の催しをやると,いかに多くの人に支えられて自分たちのプロジェクトが動いているのか実感します。ATLAS実験くらい大きなプロジェクトは言わずもがなですが,高エネルギー物理はたとえ小さいプロジェクトでも非常に多くの人に支えられて初めて実験をやれます。学校に関して言えば,最後の挨拶で言ったように,参加学生がいて初めて成り立つ企画ですし,低予算で運営しているにもかかわらず多くの学生が参加できているのは,各大学の教員の理解と協力,そして,講師の方々が旅費まで含めて手弁当でやってきてくれているからです。関係者のみなさまに深く感謝します。

今回の学校について軽く触れると,今回もまた学生の活発な議論が際立ちました。これだけ元気のある学生を目の当たりにすると,高エネルギー物理の将来は明るいのではないかと思えてきます。その元気を保ったまま研究を続けていって欲しいと強く感じました。それから,運営側の最大の懸案事項は,実は村山さんがスケジュール通りに来られるかどうかでした。超忙しい人なのでスケジュールぎっしりで,今回も前日にアメリカから帰国しての参加でしたので,飛行機が飛ばなければアウトです。アメリカ→日本ですから,たとえ乗る予定の飛行機がキャンセルになったとしても他の便が見つかるとは思いますが,それでも,前日の国際移動ですから一抹の不安があります。また,村山さんの仕事相手(?)は政治家等のVIPが多く,突然予定が入ることも頻繁ですし,予定が変わることもしょっちゅうです。今回も春の学校前後はそういう予定が詰め込まれていましたので,その辺りが特に不安でした。ですので,最終日の昼に予定通り到着してくださったときは本当に安心しました。そして,その講演内容はいつもどおりの鮮やかさ。答えられない質問が全くなく,どんなことを質問されても非常にクリアに説明されて,相変わらずですが,本当に驚きます。

そんなこんなで楽しい3日間でした。

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第6回春の学校

今年で6回目を迎え,この時期恒例となりつつある(と自分たちでは思っている)高エネルギー物理春の学校が,今日から3日間開催されます。この記事を書いているのは,琵琶湖畔の会場へ向かう電車の中で,右手に琵琶湖,左手には蓬莱山(?)の山並みという景色のよいところです。

毎年,元気のいい学生がやってきて,非常に活発な議論があるので,今年も自分自身非常に楽しみにしています。学校と天気はあまり関係ありませんが,参加者の印象が天気にも左右されますので少し気にしていたのですが,今景色を楽しんでいるように,天気にも恵まれています。景色の話を繰り返していますが,気持ちのよい天気のせいもあって本当に景色最高です。

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新体制

阪大のY研究室の私の後任Nくんが5月1日付で着任しました。Yさんが流したメールの文言から,ATLASの人間はNくんがATLASをやるのかどうか,どれくらい本腰を入れてやるのかを心配していましたが,本人いわく,K大でKOTOをやってる学生の面倒はみないとならないけどATLASメイン,だそうで,ATLAS阪大グループのミーティングにも昨日Nくんが初参加しました。これまで私が指導してきた学生は引き続き私が指導しますが,新M1からはNくんが指導していき,大阪グループのリーダーはNくんに移行していきます。

これまではスタッフは私以外だとポスドクのYくんだけでしたが,Nくんが入ったことでさらに層が厚くなりました。スタッフが多すぎるのも考えものですが,ある程度の人数がいるとやはり議論の深さが全然違います。Nくんが加わって最初ということもあり,昨日は時間も長くなりましたが,質が高いミーティングとなりました。彼が大阪で新体制を作り,ATLASに大きな貢献をしてくれることを楽しみにしています。

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テンで停電

先月末にCERNから日本に帰って来た後,私はゴールデンウィークを楽しんでいます。KEKで行われる重要な国際レビューに使う資料の提出締切が4月末に設定されていたことに気づかず,2日に大慌てでその資料を準備するというハプニングはありましたが,それ以外は概ね数が普段より大幅に減っているメールに対する対応をするくらいで,のんびりと過ごしています。

ハプニングといえば,LHCは今週の頭くらいからビームの陽子数を増やしつつ陽子・陽子衝突を行っていく予定でしたが,29日にテンが地上にある変電施設に紛れ込んでショートを起こし,CERN全所で停電が発生。その復旧作業のため,まだ運転を再開できていません。が,色々調べて,変電器そのものにダメージがないことがわかり,今日明日中にも運転を再開できる見込みです。

この手のトラブルはたまにあることでそれほど驚きではないのですが,現場で加速器や検出器の運転を担当している人にとっては傍迷惑というか,余計な手間がかかり大変です。幸いだったのは,ダメージが大きくなかったことです。こんなツマラナイことで長期間実験ができないのはバカバカしいですから。とはいえ,先に書いたようにこの手のトラブルはそこそこあるので,野生動物対策はもう少しなんとかしたほうがいいんでしょうね。

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