ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

H→bb現状など

ヒッグスの質量測定については,これまでのデータを使った最終結果とでも呼ぶべき結果を公表していますが,各崩壊モードおよびそれらをまとめた断面積×崩壊比測定というか結合定数測定の最終結果はまだ公表していません。H→γγをD論のテーマとしていたポスドクのYくんもまだちょこちょことH→γγの解析をやらされていたりして,なかなか解析が終わりになりません。ATLASらしいというのが一言での感想ですが,ホントねちっこく延々と解析が続いています。

私が特に興味を持ってるのはH→bbなのですが,これもまた最後の一粘りをしています。いわゆるBlind Analysisというのをやっていて,その目隠しを外して信号領域を見たので普通ならもう結果公表間近なはずですが,私みたいな短気な人から見るといつになったら結果を出すんだろうというくらいまだ延々とやっています。もうこの辺の話って科学ではなく,各人の価値観というか哲学のぶつかりあいなので,好きな人は好きですが,大多数の面倒な人にとっては本当にめんどくさいです。

そんな中,先にも出てきたポスドクのYくんは次はH→bbをやる予定で,徐々に研究内容をそっちに移行させています。ATLASの解析はなかなかに複雑なのですが,さすがに手馴れているだけあって,簡単な結果はすぐにサクサクと出してきます。グループ内の仕事も徐々にこなしていってるので,このペースでやっていって陣地を着実に確保していって欲しいものです。

ヒッグス以外で何かないかとよく外部の人,特に理論屋さんに聞かれるのですが,どう答えたらいいのか難しいです。莫大な数の解析・探索をやっていますから,多少のエクセスがある解析はそれは当然あります。1シグマなら1/3程度の結果は誤差の範囲外に出るはずだし,2シグマなら5%程度の結果は誤差の外になって不思議ではありません。というか,そうなるのが正しい評価です。解析が20個あったら,何にもなくても2シグマのエクセスのある結果が1個あって不思議ではありません。なので,私自身はこれだけの数の解析をやってるLHCですから,2シグマくらいのエクセスがあってもそれほど驚かないというか,注目はするけど,まだまだこれからの結果次第というのが第一感となります。

ただ,理論の人たちは,そういうのを飯のタネとして論文を書くので,言い方悪いですけど,統計的有意さなんて関係なく,とにかく何かヒントがないかという態度で何かないかと尋ねてきます。それは職種(?)ですから当然だし,親しい人に聞かれれば教えてあげたいのは山々なのですが,公表されていない結果を自分からリークする気は全くないので,ホントどう答えたらいいか返答に迷います。

と書いておいてなんですが,何かないかと思っているのは私も同じなので,注目しているチャンネルがいくつかあるのは間違いありません。2シグマくらいだったらさっきも書いたようにあって不思議ではないのですから,とりあえず結果をさっさと出してしまってもいいと思うのですが,グループの方針的にはなかなかそういうわけにもいきません。

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委員会など

昨日,今日の2日間KEK出張でした。

昨日は素核研の将来計画検討委員会で,日帰りしようと思えば余裕で可能なのですが,私のように東京近辺に住んでいない委員にとっては,委員会だけのためにKEK出張するのは何かと不効率です。そこで,今日はKEKでやるべき別の雑務をくっつけました。

委員会では前回に引き続き,原子核関連の研究紹介的なことがありました。そこでまた議論になったのが,原子核の人の発表内容が素粒子関連者には理解できず,何をやりたいのかわからないという前回のデジャブーでした。J-PARCのPACのときも全然わからず,前回のこの委員会でもあんまりわからず,だったのですが,流石に何度も同じような議論が繰り返されて,また,原子核の人と一対一で話す機会もだいぶできてきたおかげで,以前よりは,原子核の人が何をしようとしているのかだいぶわかってきました。

ちなみに次回の委員会ではいよいよこの委員会に与えられた課題である提言の骨子作りに入ります。と言っても,与えられた3つのお題(ILC,加速器ニュートリノ,ハドロンホール拡張計画)の中の一つのILC関連だけをまずやるのですが,今までのように午後イチで始めたのではその日のうちに帰れない人が出てくるので,前泊して朝から議論ということになりました。予想はしていましたが,なかなかにヘビーな委員会となってきました。

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4年生実験近況

約1ヶ月前に始めた4年生実験は,ようやく宇宙線中のミューオンを捉える段階に入りました。閾値やタイミングの調整をそれなりにやり,回路自体は大体組めたかなという状況です。これでデータを取ってみて,寿命曲線が見えれば万々歳というところなのですが,例年通り(?),偽のトリガー信号が今年も非常に多そうです。

シンチを3枚重ねて2枚目に止まるミューオンを捕まえるセットアップなので,トリガーレートは非常に低いはずなのですが,その予想よりも遥かに高いトリガーレートになってしまいます。3枚目のveto用のカウンターが重要なので色々と調整はしてみましたが,それでも,思ったほどレートが下がりません。ちゃんと測定していないので,次に測るべきなのですが,3枚目のカウンターの検出効率が相当低いのかもしれません。

もう一つ気にしているのが,宇宙線中のミューオン以外の寄与です。特に電磁成分があるのを少し疑っています。たぶん,3番目のカウンターの検出効率が一番の原因だとは思うのですが,こちらも少し気になっています。時間があれば,検出器の上に鉛でも置いてみて,レートが変わるかどうか見てみたいところです。

というのが4年生実験の近況です。毎年,8月末の院試に備えて8月はあまり実験をやらないので,そろそろ結果の欲しいところです。

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伝播

「波が,伝播する」と書いて,何と読みますか?

私なら「なみが,でんぱする」と読みます。
というか,それが正しい読み方だと強く信じています。誤用でも,それを多くの人が使っていたら時が経つとそれが正しい用法になるとよく言われるように,「なみが,でんぱんする」と読む人が多いらしいので,そのうち,それが正しい読み方になるのかもしれませんが,20世紀後半に物理を学んだ人間としては,やはり「でんぱ」と読んで欲しいところです。

こんな言葉,物理以外であまり目にしませんよね??なので,物理を勉強してなかったら私も「でんぱん」と読むと思います。ただ,高校のときの物理の先生が波動の説明をする時に,この字の読み方は「でんぱんではなく,でんぱだ」と言っていたことがなぜか強く心に残って,物理の中身を何を教えてもらったか覚えてないのに,「伝播=でんぱ」ということだけはずっと忘れずにここまで生きてきました。

ってなことが今日少しだけ話題になりました。物理屋同士の会話だったからか,一同はみな「伝播=でんぱ」と読むことに違和感はなかったのですが,驚いたのは,誰かが広辞苑で調べたら「でんぱん」という音に対応しているから使われているのか「伝搬」という言葉がありますが,「伝搬」は広辞苑に載っていないのだそうです。私も今研究室に転がっている古い広辞苑で調べると,たしかに「伝搬」という言葉は載っていません。ただ,ウェブで調べると,ウェブ情報だけに嘘かホントか知りませんが「伝搬」という言葉もちゃんと載っています。あ,ちなみにこの読みは当然「でんぱん」です。「伝搬」の立場がこんなに微妙とは知りませんでした。ま,私自身,目にすれば抵抗なく「でんぱん」と読み流しはしますが,自分ではあんまり使った記憶のない単語ではあります。

さらに,ちなみにですが,「でんぱ」と入力して変換を試みると私の計算機では「伝播」と「電波」がでてきて,「でんぱん」と入力すると「伝搬」「伝播」「電波ん」「伝播ん」が候補として上がります。うーむ,「でんぱん=伝播」が候補になるということは,やはり,私が誤用と信じている読み方が勢力を増しているんでしょうか。

先にも書いたように,どっちが正しいとかいうのは時とともに変わるから仕方ないとしても,伝播を「でんぱ」と読むのは私の感覚からするとなかなかのひねくれものな感じがします。自分自身が相当ひねくれものなので,余計に高校のときに,波動が「でんぱ」する,というようなフレーズに魅力を感じて印象に残ったのかもしれません。

さて,みなさん,伝播は「でんぱ」ですよ。

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初韓国

韓国出身の学生の博士論文の内審査をやるために,韓国の釜山に来ています。通常は,当然大学で審査をするのですが,今回は事情によりその学生が韓国国外に出られないので,特別な措置で審査委員全員が韓国に来て内審査をやりました。結果,めでたく内審査を通過し,来月に公聴会を開くことになりました。ちなみに,その公聴会も,学生と審査委員は全員韓国。しかし公聴会ですから大学にもその様子を見せなければならず(?),Skypeでその様子を繋ぎます。前代未聞の措置ですが,とりあえず内審査を通過することができてよかったです。Lくん,半分だけおめでとう。公聴会に向けて発表の準備と論文の不備修正を全力で頑張ってください。

ところで,韓国に来るのは実は初めてでした。日本から最も近い外国ですが,私はこれまで縁がありませんでした。短い滞在なのでまだよくわかっていませんが,日本と雰囲気が似てるというのが私の第一印象です。それから,実感としてなるほどと思ったのは,地下鉄の駅に番号が付いていることです。最近は日本の地下鉄にも番号が付いていますが,その国の(言語ではなく)文字すら理解していない人にとっては,ホントにありがたいですね。駅の番号,そして駅の出口の番号というように,今回の旅では文字が全く意味をなさないので,その番号だけが頼りでした。逆に考えると,アラビア数字の威力は凄いです。少なくとも私が行ったことのある国全てでアラビア数字は普通に使われていますから。

そんなわけで,1泊2日の短い韓国滞在を終え,これから大阪に戻るべく飛行場に今いるのですが,チェックインカウンターが長蛇の列。フライトスケジュール的にもう少し待つと空くのではないかと思いこのエントリーを書いていると,案の定列がだいぶ短くなりました。ということで,これからチェックインして飛行機に乗ります。

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国際会議トークリハーサル

今日は2時間半ほど,SUSY2014という国際会議でトークする人のリハーサルをやりました。ATLASグループでは,国際会議の発表前に,発表で使うスライドのお伺いを立て,さらにその後でリハーサルをやらなければなりません。物凄い数の人間がトークをしますから,4,5人の講演者に対して1人の担当者が割り当てられ,リハーサルを仕切ります。今回は,そのチェアの役目をこなしました。

ただリハーサルといっても,どの講演者もreview talkみたいなもので,様々な結果を1ページか2ページづつに纏め,たくさんの結果を見せるものなので,誰がやってもあまり代わり映えしないトークになり,内容についてうんぬんするようなことはほとんどありません。じゃあ何をチェックするかというと,たぶん一番重要なのは長さです。各解析グループのプレッシャーもあり,私みたいな厚顔無恥な人間じゃないと見せる結果を絞りませんから,割り当てられた時間に対して見せようとする結果が大抵物凄く多くなります。到底時間内に収まらないようなスライドを作ってくるヤツもいるので,そこら辺を注意するのがこの仕事の役目のようなものです。

あとは,学生にありがちな,グループ内のjargonを注意するくらいでしょうか。

にしても,学生かポスドクかわかりませんが,若い人がこういうreview talkのようなものをするのはなんというか痛々しいです。解析の数が多過ぎるので,ヒッグスあたりならまだしも,それ以外の解析の1つ1つを国際会議で話すということはほとんどないので,1つの講演でどうしても複数の解析結果を見せることになります。実際に解析を頑張ってる若い人が国際会議でトークすべきなので,実際割り当てられるわけですが,できることなら,本人たちがやってる解析だけをじっくりと話させてあげたいものです。現実問題として無理なのはわかりますが。ま,頑張っていれば,研究会は国内の学会等で話をする機会はあるので,国際会議は免許証みたいなもので,発表したという事実さえ残ればいいのかな。

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大学の公開講座

まだだいぶ先ですが,大学の公開講座を担当することになりました。と言っても,1回90分の話をするだけなので,一般講演みたいなものなのですが,もし近隣にお住まいの方で興味のある方は申し込んでみてください。ただし,私たちがやってるアウトリーチと違って公開「講座」と銘打っているので,どうも有料のようです。そこは残念ですが,私にはどうにもできない部分なのでお許しください。

この講座は全部で7回×2で全部で14回の講義からなっていて,毎回違う講師がオムニバス形式で話をします。でも,予想つくかもしれませんが,この手の講座って理系のバリバリの研究というのは少なくて,なんとなく健康に関連があるようなないような話か,地震とかゲリラ豪雨とかのように世間一般で話題になっているネタとか,そういうものばっかりです。私が話をするのもヒッグスが話題になったからでしょうから,そういう意味ではまあ同じなのですが,それにしても,素粒子のように知識を積み上げなければならないタイプの学問と,横に広く人がやっていないことをやるという学問の話を同じ時間でしなければならないというのは,毎回言ってる不満ですが,本当にツライです。去年も素粒子というか原子核関連の話はあったようですが,それは,原子核実験の施設の歴史がメインの話だったようです。

いや,自分でアウトリーチをやるときは別に気になりませんが,こうやって並べられると,自分のおかれた環境の不遇さを意識してしまいます。極論他の人はいきなり本題に入ることも可能だったりします。もちろん,本題に興味を持ってもらうための前フリなどがあるわけですが,使う言葉は,日常生活で使う言葉とそれほど変わりませんし,使う概念も日常生活で多くの人が取得している概念です。しかも,そもそも(多くの人が嫌いな)数式がなかったりします。それに対して,たとえば,素粒子物理学っていうのはつまるところラグランジアンを決めたいんだと説明したいわけですが,ラグランジアンが何かをちゃんと説明してその概念を理解してもらおうと思ったらそれだけで一大事です。

こういう違いがあるのに同じ時間ですから,どうしたって,本当に伝えたい,面白いと思える内容の量に差がついてしまいます。ってなことを考え始めてしまうと,自分たちでやるアウトリーチでは感じることのない不満を持ってしまいます。そうは言っても,不満を言ってても何も良いことはありませんから,前回の高校生相手で時間調整に失敗したことを教訓に,本番ではせっかく足を運んでくださる方々を少しでも楽しませることができるよう準備しなければと思っています。

今調べると私の話は,11月12日(水)でした。平日ですが,夕方からで18時半開始です。場所は中之島にある大阪大学の施設です。興味のある方は大学のウェブサイトあたりから申し込んでみてください。

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パウリの排他律

いきなりですが,不思議じゃないですか,パウリの排他律。いったいどういう相互作用が働いて,あるいはどうやって情報を伝達し合って,複数のフェルミオンは同じ量子数を取らないようになってるのか,不思議です。

もちろん,量子力学の教科書には,フェルミオンの波動関数は反対称だから2粒子の入れ替えをすると波動関数がゼロになってしまう,云々かんぬんと説明されています。それは量子力学を全く理解していない私でもわかるのですが,でもそれって,観測事実を矛盾なく説明するための定式化で,「なぜ」には全く答えていません。いや,だから原理なんだという話なんでしょうけど,エラい理論の人はどう考えているんだろうかと思い,KEKのある理論屋さんに聞いたんですね「どういう相互作用によってパウリの排他律って成り立ってるんですか?やっぱ,電磁気力しかありませんよね?」ってな具合に。

そしたら,ニコッと笑って「ExtraDimensionくん,それは考えてはいけません。」だそうです。その人いわく,理論といっても所詮は人間が考えるものなので,なんらかのイメージがあり,そのイメージを具現化したのが(難解な数式で表現されてはいるけれども)理論である,と。つまり,理論を考えるときには,既にわかっている(と思っている)概念があり,それになぞらえている部分が大きいというのです。なので,そもそもわかっている,あるいは似ている概念がある場合はいいけど,そうじゃないときはお手上げ。パウリの排他律はまさにそのお手上げ状態だと言うんですね。まあ,私なんて最初から色んなことにお手上げなわけですが,エラい理論の人でさえお手上げだと言ってるのですから,それ以来,原理なんだから仕方ないじゃんと思うようにしているのですが,でもときどきやっぱり不思議だなぁと思い出してしまうことがあります。

同じような不思議さというか,私にとっては気持ち悪さがあるのが統計です。同じような話ですが,ある複数の粒子の集団があって,その中にいる粒子の何らかの分布がGaussianになったりするわけですが,いったい誰がそれぞれの粒子に「お前は平均値よりちょっと大きくなれ」「お前は平均値よりもだいぶ小さい値になれ」「お前は...」と指示出してるんでしょうか。素粒子の言葉で言うと,どういう相互作用によって情報を交換しあって,Gaussianという分布を作りだしているのか,これまた不思議です。いや,別にガウス分布でなくてもいいのですが,統計で出てくる確率分布というものがなぜ引き起こされるのか,全くもってわかりません。

というようなことを(統計の確率分布ではありまえんが,何らかの集団運動についてです),しばらく前にあった,物理学専攻の研究紹介をしていた物性理論の人に,素粒子関連の人が質問をしていたのですが,どうも質問の意図が通じなかったようで,フェルミオンの波動関数が反対称だから的な答えを繰り返されて,ちとがっかりでした。現象を定式化した数式の説明に終始されて,その背後のなぜには結局全く答えてもらえませんでした。この前のKEKの委員会での原子核の人の話もそうでしたが,「理解」の意味が分野によって大きく違うようです。

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台風8号

きっと全国で数千万人が同じネタでブログを書いたりつぶやいたりしてると思いますが,今日は私もこのネタです。通常,世間一般の人がネタにしているであろうことはなるべく書かないようにしているのですが,今回の台風8号関連では幾つか書きたいことがあります。

台風8号は,沖縄から九州の西まで北上した後,90°に近い角度で東向きに進行方向を変えました。この動きを天気予報ではずっと予想していて,結果その通りになったのですが,こんなにも激しい進路の変化をどうやって予想してたのか気になります。緩やかな動きはまあある程度予想できそうな気もするのですが,今回のは本当に急激に進路を変えました。とんでもなく強い偏西風でもあったんでしょうか。

関連してですが,自分の単なる主観ですが,最近の台風の進路予想って昔よりもかなり精度が上がっているような気がします。予想に使えるデータが莫大に増えているからなんでしょうけど,せっかくだから,天気予報では単なる天気の予想だけでなく,天気図その他予想に使っているデータをもっと見せて欲しいです。まあ天気図はどの天気予報でも見せていますが,それだけでなく,予報に使っているデータとなぜそういう予報になっているのかという解説を見たいです。そしたら,単に「天気は晴れのちくもり,降水確率が30%」と言われるよりも,自分なりにも考えることができて楽しめます。

今回の台風は史上最強(?)と宣伝されていましたが,そのパワーはもはやもう普通の台風になっているようです。今天気予報のサイトでしらべると985ヘクトパスカル。このままだともうすぐ熱帯低気圧になってしまいそうです。それはさておき,ここ大阪では雨も風も未だにたいしたことありません。青空すら見えています。風はこの後強くなるのかもしれませんが,少なくとも私の経験則的には雨はあんまり降らないような気がします。というのは,台風のときって,台風の進路の先では基本南から強い風が吹きます。大阪の南は紀伊山地がしっかりガードしてるので,三重,奈良,和歌山あたりではたくさん雨が降り,大阪ではそれほど雨が降らないというのが私の印象なのです。台風が過ぎた後はもちろん風向き変わりますが,雨が降るのって台風が向かってくるときで,過ぎた後にはあまり降りません。

という自分なりの法則を持っているので,今回も風による被害は当初心配していましたが,雨はあまり心配していませんでした。と,偉そうに書いていますが,実際天気予報でも大阪中部の雨が多いとは予想されていませんでした。近畿や四国,あるいは東海地方では200ミリとか400ミリの雨の恐れと言われていましたが,私が住んでいる付近のローカルな天気予報では実はずっと予報は弱雨でした。私ですらデータも持ってないのに予想できることですから,天気予報が予想できなくてどうするという話ですが,天気予報流石です。

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CP violation 50周年

Y教授は,CP violation 発見50周年を祝う(?)シンポジウムだかなんだかに出席するために今日から出張です。講演もしなくちゃならないとかで,ここ数日何やら忙しそうに準備をしていました。役職にだけ就いてあらゆる実務を他の人に投げ,業績だけ自分のものにする教授の方々も散見しますが,Y教授は雑務をほとんど他の人に回さず全部自分で処理する上,今物理学専攻長・学科長なので,とんでもない量の雑務を処理しています。そういう雑務だけでなく,研究も含めあらゆることを自分でやるのが好きなので,逆に下の人間としては実務をもう少し他の人に投げ,もう少しリーダーシップを発揮してもらいグループを大きくするとか考えて欲しいとかも思うのですが(特に研究関係),そうはしないのがY流。もうそれなりの年になっているのに,最近はPythonにハマり,若手研究者に負けずにコードをバリバリと書きます。

そんなわけで,傍で見ていてもとてつもなく忙しそうなのですが,そんな中,CP violation関連の歴史(?)を勉強していたみたいです。たとえば,CP violation発見といえば,1964年のクローニンとフィッチの実験ですが,そこで使われていたトラッカーはスパークチェンバーで,写真撮影をどのようにやり,その後画像処理をどのようにしたのか,なんてことを昼飯の時にみんなに話していました。KL→ππを発見したこの実験やJ/psの発見の論文は,先のカラー自由度3の話ではありませんが,高エネルギー物理屋の一般教養として誰もが一度は目を通したことのあると言ってもいいくらい有名な論文です。私もよく授業で取り上げるのですが,真面目に自分で調べたことはありませんでした。全部PRLなのですが,大発見と思われる現象を観測した,とにかく早く論文にしなくちゃ,という意図が明らかで,どの論文も要点だけが短く記述されています。ビームラインの話はもとより,検出器の話も物凄くあっさりと書かれているので,当時の検出器の主流がどんなものだったのか,そういう歴史を知らない私のような無学の人間には,それらの論文を読んだだけでは実験の詳細までは全く読み取れません。ゼミならまだしも,授業くらいだと,そこまで詳細を議論することはなく,実験の原理やら測定のポイントを説明することが中心になるので,自分自身で論文の孫引きなどして詳細を理解しようとしたことはありませんでした。

今回,検出器の詳細を少しですがY教授から聞くと,50年という時の流れを強く感じます。今の実験センスだと全く付いていけないことも多く,よくそんな装置で実験やれたなという感じすらします。高エネルギー物理学があと50年続いてるかどうかわかりませんが,50年経ったら今私たちがやってることを50年後の人たちは,よくそんなことをやってたなと思うに違いないのですが。。。

しかし,CP violationに限らず,素粒子関連の未知の現象が見つかった後,その現象を完全に理解するまでには50年くらいかかるものなんですかね。CP violationの場合,1964年に発見された後,2000年代前半にはとりあえずKLやBで観測してる破れの理解はできたと人類は考えましたから,新現象の発見から完全な理解まで約40年。。自分たちのやってることに無理矢理持っていくと,ヒッグス機構が提唱されたのが1960年代後半で,GWS模型が出来上がったのが1970年代前半。でもって,ご存知のようにヒッグスが発見されたのが2010年代前半。仮説の提唱から完全な検証まで40年ほどかかっています。50年まではいってないかもしれませんが,本当に理解したと思えるようになるまでには50年くらいかかっちゃうものなんですかね。

そう考えると,たとえばダークマター。それが何なのか理解できるようになるのがいつ頃か考える前に,いつぐらいにダークマターがあると認識し始めたのか考えないとなりません。渦巻き銀河の回転速度がおかしいとか言われたのが最初なんですかね。その後,バリオン密度の測定やらなんやらで世間の一般常識としてダークマターを認めることに徐々になってきて,今はもうほとんどの人がその存在を信じるようになりました。という感じなので,いつというのがハッキリしないのですが,渦巻き銀河の回転速度云々の話が初めてでてきたの,いつ頃なんでしょう?よくわかってないのですが,1980年代くらいなのかな??いや,もっと前のような気もしますが,この辺の歴史全然わからないので,最初に閃いた1980年代だとすると,ダークマターが何かわかるのは2020年代。そうか,HL-LHCでわかるのか,と勝手に話を纏めてみました。ははは。

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池の鯉

先日,なんで庭園の池ではいつも(?)鯉を飼っているのか,という話題にちょっとだけなりました。そのときは私自身あまり食い付かず,何かきっかけはあったのかもしれないけど「そういうもの」になったからだろう,くらいにしか考えていませんでした。

ですが今日突然閃きました。鯉の食欲が凄くて,ボウフラ退治に役立つのではないか,と。あ,いや,こう書くとあまりに唐突ですが,私の中にはその発想に辿り着くいきさつがありました。そんないきさつはどうでもいいし,面倒なので書きませんが,どうでしょう,池の鯉=ボウフラ対策説は?

と思って,ググってみたのですが,今ひとつはっきりしませんでした。鮒をボウフラ対策にするという話はあったのですが,鯉と特定してるサイトは見つかりませんでした。って,最初の1つ,2つを眺めただけなので,探せば見つかるのかもしれませんが,とにかく,池の鯉=ボウフラ対策説を確認するには至りませんでした。

しかし,あまりに唐突な話題でした。自分の中では雷に打たれたように閃いたので,よしっ,これはブログに書かなくちゃと思ったのですが,この感動(?)伝わりましたかね??

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委員会のためにKEK

Tくんによる昨日のセミナーはなかなか盛況でした。私たちの研究室ではあまりセミナーというものを開かないのですが,人を呼ぶための旅費を私の研究費から払える範囲で,これからもぼちぼちやっていこうと思っています。

さて今日はKEKに来ています。素核研の将来計画検討委員会というもので,かなりの頻度で行われています。今回はJ-PARCハドロンホール拡張に関する議論の準備として,原子核コミュニティの人に物理の話をしてもらいました。何が面白いと思ってやっているのかはなんとなくわかったのですが,私を含めて素粒子関係者がなかなか理解できないのは,彼らの言う「理解」という概念です。素粒子の場合,ラグランジアンを決めることに尽きるので何を目指すというか,どうなればいいのか非常に明確なのですが,原子核の人たちが最終的に何を知りたいと思ってやっているのかが相当わかりませんでした。私だけでなく,素粒子の委員一同は同じところにひっかかり,噛み合ない議論がかなり続きました。何をわかろうとしているのかがわからまいのですから,なかなかに大変です。

次回は,KOTOとCOMET関連なので,私にとってはだいぶわかりやすくて楽しめそうです。

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本日CMBセミナー

約1ヶ月前の研究会で,気になっていたBICEP2の話をKEKのTくんにしてもらいました。それをネタにブログも書いたような記憶があります。その面白い話を独り占め(じゃないけど)するのは勿体ないので,彼をセミナーに呼ぶことにしました。で,今日がそのセミナー。学内の人に対する暗号になってしまいますが,16時からH601です。BICEP2の話だけでなく,基本的にはCMB測定全般の話をしてくれるようにお願いしました。興味がある方はぜひ。

このセミナー宣伝のためのポスターをEくんに作ってもらったのですが,その出来映えがなかなかです。春の学校のときの名札製作に引き続き,Eくんの力作です。

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カラーの自由度3

クォークにはカラーの自由度が3あります。RGB(red, green, blue)の3色で表現されるヤツです。教員的には,素粒子物理学実験の教養として,学生に知っておいて欲しい幾つかの実験結果がありますが,その中の一つがカラーの自由度3あることを示唆する実験だったりします。授業で取り上げることが多いのですが,電子陽電子衝突におけるハドロン対とミューオン対の生成断面積の比の測定がその実験です。

ミューオンもクォークもスピン1/2の点状素粒子だと思うと,電子陽電子衝突による生成ですから電磁相互作用を考えると,ミューオン対の生成とハドロン対の生成の違いは,ミューオンとクォークの電荷です。ミューオンは電荷の絶対値が1,uクォークだったら絶対値2/3なので,断面積の違いは電荷の絶対値の2乗を考えればよく,ミューオン対に比べてu-ubar生成の確率は4/9になります。実際に実験をやる場合,電子陽電子衝突の重心系エネルギーによって生成できるクォークの種類が変わります。cクォーク対を生成することのできるエネルギー以下だと,uクォーク対,dクォーク対,sクォーク対が生成され,それぞれの生成断面積はミューオン対に比べてそれぞれ,4/9,1/9,1/9になります。観測するのはハドロンですから,これら3つを足した物が見えてくることになり,ハドロン対生成断面積はミューオン対に比べて2/3(=4/9+1/9+1/9)となりそうです。

ところが,実際には下に貼り付けた図のように(図中のRがハドロン対生成断面積とミューオン対生成断面積の比),cクォークが生成されるエネルギー以下では2になっています。そうです,2/3に比べて実験値は3倍多いのです。それがクォークが3色あることの間接的証拠と考えられています。これだけだと信じられないという人は,cクォークは生成されるけどbクォークは生成できないエネルギー領域,bクォークも生成できるエネルギー領域それぞれも見てください。cクォーク生成の閾値以下ではRは2,それより上bクォーク生成閾値以下では10/3,bクォーク生成閾値を超えると11/3というように,きれいな階段状の振る舞いが見えます。

Ratio of hadron production to muon pair

というのが,素粒子実験の教養の一つなのですが,今日の授業でこれと似たような内容が出てきました。Wの崩壊比を考えましょうというもので,たとえば,W-->eνに行く崩壊比は,クォークにはカラーの自由度が3あることを知っていれば推測できます。Wの主な崩壊先は,eν,μν,τν,ud,csの5通りです。電荷の保存とトップクォークがWよりも重いことを知っていれば,この5通りにしかなりません。ただし,usのようにクォークのほうで世代を跨がる崩壊は今は考えないことにします。そして,上で説明したようにクォークには3つの自由度があるので,実際に崩壊する行き先としてはud,あるいはcsの場合は,それぞれ3通りあることになります。よって,eνが1通り,μνが1通り,τνが1通り,udとcsがそれぞれ3通りということで合計の行き先は9通りあります。細かい話をすると,終状態の質量とかを考えないとなりませんが,どれもWに比べると十分軽いということでそういう細かい話を抜きにすると,全部で終状態が9通りですから,W-->eνの崩壊比は1/9ということを推定できます。実験値が幾つかいうと,今PDGを見ましたが10.75%で,推定値1/9と非常に近い値になっています。そんなわけで,Wの崩壊比もクォークにはカラーの自由度が3あることを示唆しています。

先にも書いた通り,この手の教養というのが幾つかあって,授業やらゼミではおりにつけ説明するようにしています。学生さんにはぜひ理解しておいてもらいたいものです。

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