ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

学会など

ここしばらく出張が続いています。先週の日曜は委員会に出席するためKEK。火曜水曜はATLAS関係の物理の研究会で東大。その研究会終了後そのまま学会に参加するため東海大湘南キャンパスというところへ来ています。

東大でやる研究会はなかなか参加できないので,今回はかなり久しぶりの参加となりました。相変わらず大勢の理論屋さんが来ていて非常に活気のある研究会でした。今回のテーマは重いSUSYだったのですが,naturalnessを忘れるといいことばかりだという理論屋さんのトークを連続で聞いていると,今まのSUSYのmotivationはなんだったんだと思うと同時に,思わず重いSUSYありそうと洗脳されてしまいそうでした。って,元々SUSY信者ではないのでそうは簡単に騙されませんが,どういう状況になっても思わずそうかなと思わせてしまうような話をできる理論屋が数人います。そういう人の話を繰り返し聞いていたら洗脳されてしまう若い人がいても仕方ないのかもしれないなぁ,と思ってしまいました。

学会では体調を崩してしまい,今ひとつ集中して話を聞けていませんが,BICEP2の結果について何人かの人と話をできたのはよかったです。とはいえ,理解には全然到達していないので,そのうち誰かをセミナーに呼ぶしかなさそうです。

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MoriondでのCMSの結果

昨日は委員会に出るために日帰りでKEKに行き,LHCアップグレードの話をしました。目的はILCを推進するにあたり,KEKの素核研がどのように寄与していけばいいのかを議論することで,その議論の参考としてLHCアップグレードの話をしたのですが,発表の直前にTさんからCMSがMoriondで出したヒッグスの崩壊幅測定結果が面白いという話を聞き,急遽その結果のスライドを今流行の(?)コピペして使いました。あ,冗談だとわかってもらえない人がいると困るので一応言っておきますが,こういうときは,CMSのスライド発表者の名前入りでコピペしますし,コピペとわかるように2次加工はしないで使います。

コピペはさておき,崩壊幅をどうやって測るかですが,普通の方法では相当難しい測定です。標準模型通りだと崩壊幅は4MeVで,測定精度よりも1桁から2桁狭いので質量を測ってそこから共鳴幅を測るのは少なくともLHCでは難しいです。そこでどうするかというか,有力だと考えられている方法が2つあって,1つは結合定数の測定です。崩壊できる粒子全てに対する結合定数を測定すれば結局のところ崩壊幅を測ることになりますので,色々な崩壊パターンを見れば一応測定できることになります。ただし,ヒッグスが標準模型の枠外で記述されるものだと,標準模型以外の粒子への崩壊がありますので,LHCの場合測定という意味では標準模型を仮定しなければなりません。ただし,その仮定をおいたときに得られる測定精度がわかりますので(=HL-LHCまでいくと10%以下まで行きそうです),その測定精度よりも大きく外れた値を得たとしたらそれは標準模型枠外の粒子への崩壊を意味していますので,新物理探索という観点からは十分に意味のある測定となります。

もう一つ別の方法は,ヒッグスが生成された後γγあるいはZZ(WW)へ崩壊する過程を使い,continuumあるいはoff-shellヒッグスとの干渉を使うというものです。今回CMSがやったのは,ZZへの崩壊で,おもいっきり一言で言うとoff-shellヒッグスと実ヒッグスとの生成断面積の比から崩壊幅を求めました。その結果,もちろん”測定”までは到達していなくてゼロとconsistentなのですが,95%CLでの上限値が17MeVにまでなっています。いやびっくりです。理論の不定性やらヒッグスを経由しないcontinuumのZZ生成の寄与をどれくらい正確に評価できているのか等々気になるところはありますし,手法としてこういう方法があるというのはsnow massでも言われていたので知っていましたが,ここまでの精度を出すとは思ってもいませんでした。

ちなみにMoriondのスライドはCMS以外はまだ見ていませんが,幾つか他にも面白そうなのがあるのでそのうち時間を作って眺めてみたいところです。

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同時通訳

日曜にOISTで一般講演をしたときは,通訳する人が2人ついて,英語への同時通訳が行われました。自分の話を通訳してもらうというのは初めての経験なので,なかなか貴重な体験をさせてもらいました。さすが沖縄で,それなりの数の外国人の方が講演会には来てくれていました。

通訳する人は物理屋ではありませんから,話す内容をあらかじめ知ってもらうために講演用のスライドを数日前に送り,また,私が一般講演のときに配るハンドアウト(これはスライドのコピーではなく数ページにわたるレポートのようなものです)をあらかじめ送っておき,通訳する人に私がどんなことを話すのか予習しておいてもらいました。それでも当然,内容を理解できませんから,講演前に打ち合わせをしました。

講演時間は1時間ですが,内容をほぼ理解してもらうためにどういうことを話すのか1時間半ほどかけて説明しました。驚きは,予習してもらっていたとはいえ通訳する人たちの理解度が非常に高いことでした。知っていたという意味ではなく,私が説明することを瞬時に理解してくれるのです。そして不明な点があればそれを質問して,きっちりとこちらの言いたいことを理解してくださるのです。同時通訳って物凄く頭を使い疲れるそうですが,そういうことをできる人だけあって,頭の回転がとてつもなく速いんでしょね。本当にびっくりしました。

しかし,いくら内容を説明してあったとはいえ,通訳するのはきっと大変だったと思います。通訳者泣かせのくだらない冗談を混ぜたりしますし,言語ではなく勢いで説明するような部分も多々ありますから,そういう部分を通訳するのは本当に難しかったはずです。

というか,そもそも同時通訳できる人の脳味噌ってどうなってるんでしょうね。2つの言語をどちらも母国語のように喋れるのであれば,まあ頑張れば,逐次通訳はそれなりにできると思うのですが,全く語順の違う2つの言葉の間で同時通訳をやれるってまさに神業です。とてつもない能力を持った人がいるものです。

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EASIROCモジュール講習会

昨日と今日,Iくんが開発したEASIROCモジュールという電子回路基板の取り扱い説明および実習を含む講習会を開催しました。Nさんに提案され,せいぜい5,6人の参加者かと思い安請け合いしたところ,実際には20名超える参加者に来てもらうことになり,盛大な(?)講習会となりました。Iくん,Nさん,そして参加者のみなさま,お疲れさまでした。

しかし,このEASIROCモジュールは本当に大人気です。すでに30台ほど売れて,さらに20台分ほどの追加注文が予想されています。これほどの大ヒット商品になるとは思ってもみませんでした。開発だけでなく,製造販売も自分たちでできれば大もうけでした。ははは。

追伸:
Bモード偏極観測についての情報をくださった方々ありがとうございます。
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Bモード偏極

今朝の日経新聞に,重力波をBICEPが観測したという記事が載っていました。Explicitには書いてなかったのですが,どうもBモード偏極を観測したということらしいのです。今ググってみましたが,詳しいことわかりません。もし良い情報をお持ちの方いらっしゃいましたらどうかお教えください。

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OIST

沖縄に来ています。目の前には真っ青な海がひろがっています。これからその海へ...

というのは嘘で,あ,いえ,沖縄に来てるのも,目の前にきれいな海があるのも本当ですが,海へ行くというのは嘘で,これから沖縄科学技術大学院大学(OIST)というところへ行きます。オープンキャンパスで講演をするために来たのですが,滞在している場所もOISTがある場所もまさにリゾート地で,なんというか雰囲気の違いに驚いています。

それから驚いたといえば,私は沖縄に来るのは今回で2回目なのですが,前に来た時も今いるホテルに近いところに滞在しました。昨日ホテルへ来る途中,どっかで見たことある街並みだなぁと思ったり,この居酒屋に来たことあるような気がするという店があったりして,よーく考えてみると確かに来たことがありました。大事なことはすぐに忘れてしまうのに,1回しか来たことのない居酒屋を覚えている私の脳味噌の不思議さにも驚きました。処理能力やら記憶能力やらを大事なことに振り分けることってできないものなのですかね。

それはさておき,OISTのオープンキャンパスには5000人もの人が来るというのにも驚きました。東京や大阪みたいな大都市なら全然驚きではありませんが,今いる場所は先にも書いたようにリゾート地で,地元に人の数は非常に少ないです。昨日聞いたところ,OISTのある村の人口は1万人程度だそうで...それなのに5000人ってホントに凄くないですか。CERNの一般公開にも10万人オーダーの人が来ると聞き驚きましたが,今回の5000人もそれを超えるような驚きです。広報の方々が地元の自治体と一緒になって頑張ってるおかげなのだと思いますが,それにしても凄いです。

そんな力の入ったオープンキャンパスですから,私も力が入ります。いや,力を入れるってどこに力を入れればいいのかよくわかりませんが,とにかく参加してくださる方に少しでも素粒子物理の面白さを伝えられればと思っています。USTREAMで講演が流されるそうなので,もし興味のある方はご覧ください。って,宣伝遅過ぎでした。

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研究上の倫理

エラいことになってますね,STAP細胞。私は全くフォローしていないのですが,昼飯のときによく話題になって周りの人から話を聞いています。分野は違えど一応同じ科学者なので皆興味津々なんでしょうね。かく言う私も人からの2次,3次情報なので,精度の低い理解だと思いますが,色々と思うところがあります。

まず感じるのは,今回のこととは直接関係ないのでしょうが,D論の2割がコピペというのは私の感覚としては許し難いです。アウトです。自分の学生にも口を酸っぱくしてコピペを禁じていますし,学位論文の副査になったときに論文を書いた学生の文章ではないことが一目でわかったので,それを指摘したこともあります。学生の指導をしたことある人ならわかるかと思いますが,本人の文章かどうかは一目で区別できます。学生実験のレポートでも一目です。ただ学生実験の場合は,あまりに高い確率でコピペなので,指摘しきれなくて困っているということは,昔からこのブログに書いている通りです。どんなにダメダメな文章でも自分で書くというのが最低限のモラルでしょう。なんてことを言ってるからか,私のD論はあまりにもダメダメな英語になっていました。今,堀り出して一目眺めたのですが,もう,中学生ばりの英語でそういう意味では恥ずかしいです...。

次に気になるのは,STAP論文の核心部分です。本当のところどうだったんだろうというのはやっぱり気になります。しかし,画像がD論のときのものとなると,単なる間違いとは思えませんよね。日本中で何人もの人がつぶやいてると思いますが,同様の感想を持ってしまいます。

それから,理研が示した手順には大きな不備があると指摘されているそうで,そういう不備がある論文を通してしまうネイチャーってのも,なんだかなぁという感じがします。素粒子ではネイチャーに取り上げてもらうことなんてないので妬み半分という噂がありますが,一般紙に毛が生えたようなジャーナルにしか見えないんですよね。専門家が知りたいような詳しい情報なしの論文でどうやって審査をしてるのか前から不思議でしたし,そういう論文=内容が信用できるのかよくわからない論文のインパクトファクターがなんで大きいのか,よくわかりません。論文はあっさりでも,実はその裏で査読者と物凄く厳しいやりとりがあったりするんですかね。いや,詳しく書かなくてもその凄さがわかるような研究じゃないとならない,ということなのかもしれませんが。

でもって,今回のことで一番強く感じたのは,我々の業界って論文を書くのが異様に大変だということです。同じデータを何人もで解析して,もちろん解析方法その他には個々の人間が工夫を凝らすわけですが,グループの公の結果として発表するときは,何人もが独立に解析をして同じ結果にならなければなりません。不正の入り込む余地がありませんし,単純なミスを犯す確率は極めて低いです。ただし,グループの方針というのは何人のグループでも最終的には一つですから,その方針自体が間違っていないかどうかはまた別の問題です。でも,とにかく独立なグループ,複数の人間によるクロスチェックがなされているので,恣意的に結果を操作するなんて事は全くできません。たとえば,決められた事象選別を解析する人間全員でやり,残った事象が全員同じになるまでクロスチェックを続けます。これが本当に正しいやり方なのかどうかはわかりません。というのも,使っている計算機のOS依存とかも生じてくるからです。同じソースファイルを使ってもOSによってビット数が違い精度が違うなんてこともあります。こんなのを見つける苦労には,ホントに泣けてきます。こういう苦労を積み重ねて初めてグループ公認の結果となりますから,今回のような事件(?)を見ると,他の研究分野って個々の研究者のモラルにだけ頼ってるんだなぁ,と感じてしまいます。というか,LHCひいては高エネルギー物理が異端なんでしょうけど。

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質量の単位

素粒子の質量の単位には[eV/c^2]を使います。E=mc^2ですから,質量の単位はエネルギー/速さ2乗です。高校生で習う物理でも,たとえば運動エネルギーは(1/2)mc^2なので,やっぱり質量の単位はエネルギー/速さ2乗です。やっぱりというか,そういう整合性を持っていなかったら何の議論もできなくなります。ただし,高校生が使う単位系はMKS単位ですし,日常生活でも重さの単位といえば[kg]でしょう。そこで,126GeVのヒッグス質量をkgで表してみます。

まずは1eV/c^2が何kgになるか考えてみます。1eVは,素電荷量が1.6×10^{-19}クーロンなので,1.6×10^{-19}ジュールです。それを光速の2乗で割ればよいのですから,
1 [eV/c^2] = 1.6×10^{-19} / (3×10^8)^2 = 1.8×10^{-36} [kg]
となります。ということは,
126 [GeV/c^2] = 126 × 10^9 × 1.8 × 10^{-36} [kg] = 2.3 × 10^{-25} [kg]
です。

ちなみに,よく引き合いに出されますが金原子の質量は,原子量を調べると197なのでモル数でわると金原子1個の重さは
197 / (6×10^{23}) = 3.3 × 10^{-22} [g] = 3.3 × 10^{-25} [kg]
になります。

素粒子のくせにヒッグスは金原子と同じオーダーの重さということになります。って,この最後の結論は計算しなくてもおおよそ見当がつきます。原子核の結合エネルギーを考えなければ,金の原子量が197という時点で金原子1個の重さは197GeV前後なんだろうとわかります。陽子と中性子の重さがどちらも約1GeVだからです。ということで,126/197 = 1.6なのでヒッグス質量は金原子の0.6倍程度かなと推測できます。実際の値2.3/3.3 = 0.7とそれほど離れていません。

ゆえあって,こんなことを突然書いてみました。

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美しさ,手際のよさ,気持ちよさ,数学や物理

だいぶ前のことになりますが,美しさについて語っている本を読みました。私は人並み程度に本を読んでるほうだと思いますが,小説はほとんど読まず,読むのは新書などのノンフィクションばかりです。自然科学,経済,人文学等々なんでも読み,ジャンルは問いませんが,必然的に研究者が書いた本を読むことが多く,美しさについての本も,読む前は学術的な本かと思いました。が,読んでみると内容は作家さんが書いたエッセーで,極めて冗長。言葉遊びに終始していて,まあ私みたいな単純な脳味噌を持つ人間には読破するのに相当の忍耐を要しました。

でも,その人が言ってる(と思われる)ことに近い感覚を味わう機会が少し前にありました。実験室にあった恒温槽を別の研究機関に輸送するため,業者さんに来てもらったときのことです。たしか,このブログでも書いたと思いますが,その業者さんたちの手際のよさにヒドく感心しました。

また,数日前のことですが,ちょっと勉強しなければならない案件があって珍しく物理の勉強しました。物理とか数学って最初はよくわからなくても,やってみると筋が一本びしっと通っていることがわかり,最後にはジグソーパズルを完成したときのように,すっきりとした爽快感を味わうことがあります。たいした勉強ではないのですが,論文を読んで色々調べてみると最後にはようやく一本の筋が見えました。

何が言いたいかというと,物理や数学をやっていて得られる爽快感や,手際の良さに感心する気持ち良さって,先の作者も言っていた合理性に見える美しさと同じことなのかな,ということです。受験勉強だとよくありますよね,数学や物理の問題を解いてみて,最後にすっきりとした形になって,なんとなく納得するということ。あるいはそういう法則なり式を美しいと感じることもあります。研究していてそこまですっきりとした結論が得られるということは滅多に(絶対?)ないのですが,それでも,仮説が上手く物事を説明できるとわかったときには同じような気持ち良さを感じます。実は先の作者もそういうことを言いたかったのかな,と今になって思い始めています。

ただ,物理の難しいところって,美しい理論体系が必ずしも真ではないところです。いや,美しい法則があると信じて素粒子をやってる人が多いと思いますが,ホントにそうなってるかという保証のないところがツライところであり,また面白いところなのかもしれません。

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新陳代謝

先週の木曜は研究室の飲み会でした。未だにそういう言葉が使われているか知りませんが,追い出しコンパでした。修士を終えて,あるいは就職により研究室を去る学生と,別の研究機関に職をみつけたHくんが追い出される側でした。そのHくんは,4月1日からではなく3月の頭から働き始めるということで,他の人たちよりも一足早く研究室を去りました。

Hくんは私にとって初めての学生であり,最初にD論を指導したということで,これからもしょっちゅう顔を合わせるとはいえ,それなりに感慨深いものがあります。彼は研究室に8年いたと言ってましたが,私は今の研究室に来てまだ7年なので,研究室歴では彼のほうが1年先輩です。ATLAS大阪グループの大黒柱として活躍してくれて,指導教員にとっては本当にありがたい学生でした。今は新しい職場での活躍を期待するばかりです。

それからもう一人就職により研究室を去るOくんは,ATLAS大阪グループの最年長学生でした。HくんとOくんがそろって研究室を去るというのは,時の流れを感じます。4月から新たに学生が加わりますし,大型補強に成功して研究員としてYくんもやって来ますから,そういう意味では一つの時代が終わり新しい時代に突入するということなのかもしれません。ATLAS大阪グループの新陳代謝です。

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