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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

LHCの中長期スケジュール

Upgrade Weekなるcollaboration meetingに出ていると先日書きましたが,LHCの中長期スケジュールについては説明していませんでした。そこで,順序は逆になりますが,ざっくりと今後10年間のスケジュールを纏めてみます。

2013:LHCシャットダウン,ATLAS Phase-0アップグレード
2014:同上
2015:重心系エネルギー13(?)TeVで実験
2016:同上
2017:同上
2018:LHCシャットダウン,ATLAS Phase-1アップグレード
2019:重心系エネルギー14TeVで実験
2020:同上
2021:同上
2022:LHCシャットダウン,ATLAS Phase-2アップグレード
2023:HL-LHCスタート

LHCのルミノシティ増強計画のことをHigh Luminosity LHCと呼び,略してHL-LHCと言ってます。重心系エネルギーを上げても検出器的にはそれで問題が起こるということはないのですが,ルミノシティをあげると単位時間あたりに生成される粒子が増えますから,様々な工夫により,より多くの反応を高い精度で捕まえられるように検出器を改造しないとなりません。また,放射線ダメージをより大きくなるので,より高い放射線耐性を持つ検出器にしないとなりません。というわけで,Phase-2アップグレードでは,ATLASは飛跡検出器を完全に新しいものに置き換えます。シリコン検出器開発をしている私たちが今やってるのは,そのための開発です。

今からそんな先のことのための開発をやってるの?と思われるかもしれません。その通りと言えばその通りなのですが,ものによっては,設計を完全に決めてその後建設するだけでも4,5年かかってしまいます。使い始める1年くらい前までには完成させて試験をじっくりと行いたいので,逆算すると,2015から2016年には設計を終えたい。となると,新しい技術開発をして,それを実機で使用できるようにしようと思うと,今からではもう完全に遅くて,開発競争はもう何年も前から始まっているというわけです。

検出器は,陽子陽子衝突地点に近ければ近いほど,カバーする面積が小さくて済みます。逆に離れれば離れるほど,同じ立体角をカバーするには大面積が必要になります。大面積になればなるほど建設に時間がかかりますから,上記の,4,5年かかるというのは,飛跡検出器の外側部分の話で,逆に最内層なんかは設計にもっと時間をかけることができます。しかし,内側に行けば行くほど,陽子陽子衝突地点に近ければ近いほど放射線損傷が大きくなりますし,単位面積あたりに飛んでくる粒子の数も増えますからそれに応じて微細化も必要になります。というわけで,技術的にはより難しい技術が要求されるので,外側の検出器よりも設計開発に時間をかけることができるとはいえ,開発難度が高いので,どちらが作るのが大変かというとどっちも同じくらい大変だったりします。ただ,設計が決まったものをひたすら作るよりは,新技術の開発のほうが面白いので,どこの研究機関もできることなら内側のほうをやりたいと思っているのが本音です。

一気にPhase-2の説明をしてしまいましたが,Phase-0と1についても少し触れておくと,Phase-0での最大のアクティビティは,IBLと呼ばれるシリコンピクセル検出器の設置です。現存するピクセル検出器のさらに内側,陽子陽子衝突地点に近い所にピクセル検出器1層を足すというものです。小さい検出器なので作るのに要する時間は短くてすみます。だからというわけではありませんが,まだ完成してなくて,今はその製作を急ピッチで進めています。来年の初夏くらいに完成,検出器ホールに組み込むというのが予定です。

Phase-1では,基本的にトリガー関係の増強をします。HL-LHCほどではありませんが,今よりはルミノシティが上がるので,それに対応しようというわけです。カロリメータやミューオン検出器などほぼあらゆるところで読み出しエレキを改造します。

以上が,今後10年間のざっくりとしたLHCそれからATLASの予定です。

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