FC2ブログ

ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

反水素の重力質量

CERNで行われているALPHA実験では,反水素の性質を探ろうとしています。が,しかし,その前に反水素は自然界に存在しませんから,まずは反水素をたくさん生成,かつ,生成された反水素がすぐに崩壊しないように保持しなければなりません。数年前には,反水素の生成に成功,そして一昨年だけ去年には数百個(?)という大量の反水素をかなり長い時間(数100秒とか数1000秒のオーダーだったような)保持することに成功していました。

そして昨日,反水素の重力質量を測ったというようなニュースが流れました。反物質といってもその質量のほとんどは反陽子であり,つまりは,反物質である反クォークの質量ではなく,ほとんどの質量はQCDによって生成されているわけですから,反水素の質量の研究から何がわかるのかは私には今ひとつピンと来ませんが,とにもかくにも,反物質の重力質量というのはSF好きの人に刺激を与えるのか,海外のニュースではそれなりに話題になっているようです。

というわけで,私もさらっと論文を斜め読みしました。結果は,95%信頼度で,-65<重力質量/慣性質量<110。うーん,なんともコメントしずらい結果です。測ったといえば測ったのでしょうが,数値的には何も言えていません。たぶん,今回のポイントは,測定結果そのものよりも直接測定をできることを示した,ということなんでしょうね。方法というか,その原理は単純で,反水素をトラップしているための磁場を落として,その後,反水素の崩壊地点が検出器の上の方に多いか,下の方に多いかを比べます。反水素なんていう軽いものに働く重力はあまりに小さく,無いに等しいようなものなので,上に行ってるか下に行ってるか測るのは非常に難しく,今回,測定方法を確立することはできたけど,先に書いたように,どっちに動いたのかは今ひとつわからなかったというわけです。ちなみに,原理は単純でも,実験が難しいことは間違いありません。

しかし,冷静に考えると,(反)水素に働いてる重力はとてつもなく小さいので,その重力の100倍以上という力は働いていないということがわかっただけでも,凄いと言えば凄いです。今のところ,測定精度を制限しているのは系統誤差ではなくて統計なので,これからもっと反水素を生成保持できるようになれば,重力質量/慣性質量=1付近まで測定できるようになる,というようなことも言及されていました。

こういう実験を見ると,前にも何度か書いていますが,やっぱりレプトン単体の質量を測りたくなります。でも,電磁気力があるので,可能性としてはポジトロニウムくらいでしょうか。と言いつつ,ポジトロニウムの質量が何を意味するのか実は難しいです。強い相互作用ではなく,QEDによるエネルギーと重力の関係?になるのでしょうか。どれくらいの値になるのだろう?

しかし,電気的に中性といっても,どうせ凄く軽いだろうから,重力質量を測るにはもっと重いほうがいいですね。ミューオニウムで頑張るか,あるいはタウオニウムなんていうのを作れたら凄いですね。ははは。

研究 | コメント:3 | トラックバック:0 |
| HOME |