ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

高圧電線とシリコン検出器

中学生か高校生の理科の授業みたいですが,みなさんは,送電線になぜ高電圧が使われているかご存知でしょうか。一言で結論を言ってしまうと,同じ電力を供給するならより高電圧のほうが送電線でのエネルギーロスが少ないからです。送電線で失われるエネルギーは[送電線の抵抗]×[送電線を流れる電流の2乗]ですから,電流量を減らしたい。消費電力=[使う装置にかかる電圧]×[電流]ですから,同じ消費電力で電流を減らしたかったら電圧を上げればよいということになります。なので,高電圧で長距離を送電しておいて,家の近くで変圧するということが当たり前のように世の中で行われています。

この仕組みを最近では私たちの検出器にも取り入れようとしています。私たちが開発に携わっているLHCアップグレード用のシリコン検出器では,大量のICを使います。最近はICの動作電圧がどんどん下がってきている上に,私たちの検出器は陽子陽子衝突地点近くに設置,つまり,電源を長いケーブルを通して供給しなければなりません。なので,何も考えないと,検出器のICが消費する電力よりも遥かに莫大な電力を電源ケーブルでのエネルギー損失として消費してしまいます。

そこで,より高い電圧でIC近くまで電源を供給し,変圧を行うICを別途設けるという方法が一つのオプションとして開発研究されています。もう一つのオプションは,普通は各ICが電源からみると並列接続されているわけですが,それを直列接続にするというアイデアです。10個のICの電源を直列接続にすれば,並列接続(=普通の送電方法)のときの10倍の電圧で送電できますので,これもケーブルでの消費電力を抑えることができます。いずれのオプションもノイズなど考慮すべきポイントはありますが,いずれか(あるいはそれらの両方)の技術をアップグレード用シリコン検出器では使う予定です。

身近に使われているのと同じ原理が最先端検出器でも使われようとしているのが面白と思い,なぜか突然紹介してみました。

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情報の共有

先週の後半は,名古屋でのLHC関連の研究会に行ってました。研究会での議論,特に自分が一番注目しているヒッグス関連については,自分にとっての新しい情報がないのであまりエキサイティングではありませんでしたが,大勢の人が一同に会するということで,たくさんの人と話をすることができたのは有意義でした。

自分に直接関係のあるところでは,ATLAS日本グループ代表の2人を囲んで小さなミーティングを持てたこと,シリコン関係の人達と小さなミーティングを持てたこと,個人的にUさんと色々話をできたことなど,収穫の多い出張となりました。そこで,感じたのは情報をみんなで共有することの大切さです。人はそれぞれが独自の哲学と嗜好を持っていますから,全員が全員同じことをやるのは不可能です。逆にそんなことになったら,組織として怖いです。けど,どういう考えを持って,どういう未来を描こうとしているのかわからないままに,各人が勝手なことをしてると,協力できることも協力しあえなくなりますし,雰囲気もどんどん悪くなります。そういう意味で,今回は,色々な人がなぜ今やっていることをやっているのか,その歴史的経緯まで含めてわかったことで,自分の中でATLASグループ内での考え方が今まで以上にポジティブになることができました。

こういうのって,日常生活でも結構ありますよね。飛行機がなかなか出発しないとき,その理由を説明してもらえないとイライラが募りますが,その事情を説明してくれれば,詳しく丁寧に説明してくれればくれるほど,そのイライラが解消されます。何かをきちんと説明してくれればその事情を理解して何とも思わないようなことなのに,説明をしないがために相手に対する不信感が芽生えるというのはよくある気がします。

というわけで,自分が考えていることをはっきりさせること,情報の共有というのは重要だな,と再認識したのでした。

で,J-PARCハドロンホールのことです。私が知ってることは,オフィシャルな発表以上に詳しいことはなさそうですが,唯一オフィシャルよりも詳しいのは,私たちの研究室でKOTO実験をやってるメンバーで被曝した人はいないということです。今回は,法令的に報告義務のある案件なのかどうかについて議論をしていたところ,報告が遅れた,隠蔽した,というような嫌疑をかけられたようで,原子力とか放射能という言葉にもともと日本人は過剰反応していましたが,原発事故以降は異常反応しますので,格好のターゲットになったんでしょうね。それもこれも,何かあったときに迅速に情報を共有できるようにすべし,ということなんでしょうけど,実際問題としては何かあった1時間後にあらゆる情報を収集して判断するなんていうことはできませんから,なかなか大変ですね。

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大阪ATLASグループ初の博士

めでたいです。Hくんが,本日公聴会をクリアしてめでたく博士となることが決まりました。私が大阪に来て初めての学生がHくんで,それから6年ちょい。長かったような短かったような,妙な感覚ですが,とにかくはっきりしているのはめでたいということです。

こんなめでたい日ですから,Hくんをはじめとする学生たちと飲みに行きたいのですが,あまりにも運悪いことに,私が大学業務その他で全く身動きが取れません。明日の朝の会議用の準備もまだできておらず,今も泣きながら準備をしていたところです。

ま,そんなことはどうでもよくて,今日の話題はATLAS大阪グループ初の博士誕生が決まったということです。家に帰ったら一人で祝杯をあげます。Hくん,本当におめでとう。

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LHCの中長期スケジュール

Upgrade Weekなるcollaboration meetingに出ていると先日書きましたが,LHCの中長期スケジュールについては説明していませんでした。そこで,順序は逆になりますが,ざっくりと今後10年間のスケジュールを纏めてみます。

2013:LHCシャットダウン,ATLAS Phase-0アップグレード
2014:同上
2015:重心系エネルギー13(?)TeVで実験
2016:同上
2017:同上
2018:LHCシャットダウン,ATLAS Phase-1アップグレード
2019:重心系エネルギー14TeVで実験
2020:同上
2021:同上
2022:LHCシャットダウン,ATLAS Phase-2アップグレード
2023:HL-LHCスタート

LHCのルミノシティ増強計画のことをHigh Luminosity LHCと呼び,略してHL-LHCと言ってます。重心系エネルギーを上げても検出器的にはそれで問題が起こるということはないのですが,ルミノシティをあげると単位時間あたりに生成される粒子が増えますから,様々な工夫により,より多くの反応を高い精度で捕まえられるように検出器を改造しないとなりません。また,放射線ダメージをより大きくなるので,より高い放射線耐性を持つ検出器にしないとなりません。というわけで,Phase-2アップグレードでは,ATLASは飛跡検出器を完全に新しいものに置き換えます。シリコン検出器開発をしている私たちが今やってるのは,そのための開発です。

今からそんな先のことのための開発をやってるの?と思われるかもしれません。その通りと言えばその通りなのですが,ものによっては,設計を完全に決めてその後建設するだけでも4,5年かかってしまいます。使い始める1年くらい前までには完成させて試験をじっくりと行いたいので,逆算すると,2015から2016年には設計を終えたい。となると,新しい技術開発をして,それを実機で使用できるようにしようと思うと,今からではもう完全に遅くて,開発競争はもう何年も前から始まっているというわけです。

検出器は,陽子陽子衝突地点に近ければ近いほど,カバーする面積が小さくて済みます。逆に離れれば離れるほど,同じ立体角をカバーするには大面積が必要になります。大面積になればなるほど建設に時間がかかりますから,上記の,4,5年かかるというのは,飛跡検出器の外側部分の話で,逆に最内層なんかは設計にもっと時間をかけることができます。しかし,内側に行けば行くほど,陽子陽子衝突地点に近ければ近いほど放射線損傷が大きくなりますし,単位面積あたりに飛んでくる粒子の数も増えますからそれに応じて微細化も必要になります。というわけで,技術的にはより難しい技術が要求されるので,外側の検出器よりも設計開発に時間をかけることができるとはいえ,開発難度が高いので,どちらが作るのが大変かというとどっちも同じくらい大変だったりします。ただ,設計が決まったものをひたすら作るよりは,新技術の開発のほうが面白いので,どこの研究機関もできることなら内側のほうをやりたいと思っているのが本音です。

一気にPhase-2の説明をしてしまいましたが,Phase-0と1についても少し触れておくと,Phase-0での最大のアクティビティは,IBLと呼ばれるシリコンピクセル検出器の設置です。現存するピクセル検出器のさらに内側,陽子陽子衝突地点に近い所にピクセル検出器1層を足すというものです。小さい検出器なので作るのに要する時間は短くてすみます。だからというわけではありませんが,まだ完成してなくて,今はその製作を急ピッチで進めています。来年の初夏くらいに完成,検出器ホールに組み込むというのが予定です。

Phase-1では,基本的にトリガー関係の増強をします。HL-LHCほどではありませんが,今よりはルミノシティが上がるので,それに対応しようというわけです。カロリメータやミューオン検出器などほぼあらゆるところで読み出しエレキを改造します。

以上が,今後10年間のざっくりとしたLHCそれからATLASの予定です。

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久々のCERN

先週末からCERNに来ています。例年だと2月と3月,修論や卒業研究が終わったあとにCERNに来るのですが,今年は一回もCERNに来なかったので,わりと久しぶりのCERNです。いつ以来だろうと思って予定表を眺めたところ,去年の11月以来でした。そのときはUpgrade Weekと言って,検出器の将来計画を議論するcollaboration meetingに出席するためでした。で,今回も同じく,Upagrade Weekに参加するための出張なんですね。ということで,私の研究の軸足が将来計画に移ってきているんだなぁということを実感しました。

今回のミーティングでは,Jくんがやっていることを私が代わりに発表しました。同じようなことをやっている他の人からは,多分誤解もあり若干攻撃されましたが,全体的には私たちの研究に興味を持ってる人が多いことがわかり,また良い宣伝になったので,わざわざ話をしにきた甲斐がありました。これもJくんが頑張ってくれているおかげです。ただし,そろそろ彼は物理解析に移らないとならない時期なので,この研究を新M1のAくんが上手いこと引き継いでいけるようにしないとなりません。

しかし,そのトークの時に思ったのですが,年とともに鈍感力というのはどんどん上がっていくものですね。上に書いたように若干というか,かなり敵意を持ってコメントをしてくる人もいたのですが,全然気にならないんですね。昔だったら気にもしますし,ムキになって反論したくなったりしますが,今は,研究以外のことで痛みがあまりに多いので,研究のことで多少攻撃されても全く気になりません。あまりにも気にならない自分を発見してある意味驚きました。

それはさておき,久々のCERNでは,ミーティングを楽しんでいます。自分に関連のあるところは基本的に競争なのでそれほど楽しんでもいられないのですが,自分とは直接関係のない発表だと,純粋に新たな知識を仕入れる場として非常に楽しんでいます。ATLASのcollaboration meetingだと,普通の国際会議よりも遥かに規模が大きく,関連研究者の数も多いので,国際会議でないと聞けないような最先端の話題がたくさんあるんですね。そういうのを第3者として聞くのは本当に楽しいです。

そんなCERN生活ですが,今日はこれから恒例のフォーを食べに行ってきます。って,日曜の晩も食べに行ったので今回これで2回目なのですが,1週間くらいだったら毎日でも平気かもしれません。ただ,昨日の晩飯のイタリアンが予想以上にヘビーで,私の胃はすでに音をあげています。今日はなるべく胃をいたわってあげるつもりなのですが,さて,どうなることか。

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天気イベント

ちょっと古い話になってしまいますが,今年のゴールデンウィークは遠出できなかったので,って,遠出してる年なんて皆無なのですが,長男を連れて近場に遊びに行きました。その一つが,子供の日に大阪市立科学館であった催しで,天気キャスターが何人か集まって子供向けに天気の話をしたり,関連した実験をやって遊ばせてくれるというものに行ってきました。

テレビで見る天気キャスターが集まるということで,大した宣伝をしないにもかかわらず締切の人数にすぐに達したと聞いたのですが,残念ながらテレビを見ない私にとっては誰一人知ってる人はいませんでした。が,しかし,凄いなぁと思うのは,天気キャスターの女性の美しさです。もともと美人,かわいいということもあるのかもしれませんが,髪型,服装,化粧等々,その辺にいる人とは明らかに違っていて,プロだなぁと感じさせられました。

それはさておき,その催しの中で,科学館の学芸員で私の友人であるEくんが(彼がこの催しの存在を教えてくれました),やはり天気に関連する実験をやって解説していたのですが,彼もプロ。その説明の滑らかさに感心しました。普段からプラネタリウムの解説等,一般の人向けに話をしているというプロなので当然といえば当然なのかもしれませんが,要領よく解説していく姿はまさにプロでした。

ちなみに,彼がやった実験は水蒸気の説明で,湯気とは何が違うのか等を実験で見せながら解説していくというものでした。いや,面白かったです。

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測定器開発論文賞の審査

測定器開発についての修論を審査して,優秀なものを表彰するということが,2,3年前から行われています。今回(=昨年度修士を獲得した人達が対象)の審査ではその審査委員だったのですが,先々週に,その審査会議がありました。私が審査員であることは公表されていることですが,選抜方法についてはおおっぴらに言っていいのかわからないのでここでは書きませんが,とにかく,先々週審査員がテレビ会議で議論をしました。

審査してまず感じたことは,応募論文のできはどれも素晴らしいということです。お世辞抜きで,って,私がお世辞なんか言うことないし,むしろ毒性が高いということは周知の事実だと思いますが,本当にどの論文も修論としては非常に高いクオリティでした。彼らの指導教員がどれくらい頑張ったのかはわかりませんが,これくらいやってくれたら教員の立場として嬉しいというものばかりでした。KOTO,ATLASを問わず,私たちの研究室からもこの賞に応募できるくらい勢いのある修論を書く学生さんが現れて欲しいものです。

そして,審査員が集まっての議論で感じたことは,審査員の分野によらずみなが同じ判断をするときと,違った判断をするときがあるという当たり前の事実です。いっつも言ってますが,こういう審査のときって,得点をつけると審査員の分野によらずかなり強い相関を持ちます。今回もかなり相関がありました。内容的にそうとうかけ離れた分野の論文であっても,全体の得点分布というのはかなり似たものとなります。一方で,得点だけで決めることのできない場合,つまり議論で何かを決めようとすると,そこにはどうしてもポリシーというか,個々の人の持つ研究のバックグラウンドが顔を出します。

顕著だなぁと感じたのは,私たち高エネルギー分野の人間は,測定器開発というからには最先端の技術開発であるということを比較的重視します。つまり,そこら辺にある民生品を使って検出器を組み上げただけでは,仕事として重要なことやクオリティが高いことを理解しても,賞まではあげられないのではないかと考えます。一方,原子核の人達はかなり逆で,革新的な技術に携わっているかどうかよりも,自分たちのやる実験で必要な検出器をきちんと作っているかどうかということを重要視していました。今回の審査でも最後の最後にそれで大もめでした。

もちろん正解のある話ではないですし,こういうイデオロギー対決を仕事のときにするのが私は嫌いなので,あまり強い主張はしなかったのですが,文化というか風土の違いが如実に表れていて非常に興味深かったです。

しかし,実は,こういう違いは高エネルギー分野の中でもかなりあります。ATLASのように巨大な実験だと,あらゆる部分に時代の最先端技術が詰め込まれていますが(多くの研究機関が競いあっているので,そういうものでないと検出器として採用されません),実験の規模が小さくなれば,民生品とまではいきませんが,どうしても既存の技術に頼る部分が大きくなり,大事なのはとにかく動くものを作り上げることとなります。そういう違いがありますので,おのずと何が大切なのかも実験の規模によってきたりするのです。

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夕刊の書評

家で取ってる新聞の夕刊には毎週一回書評欄があります。昨日だか一昨日に,素粒子物理の一般向け解説書の書評が載っていました。科学系の本のコメンテーターは,とある有名なサイエンスライターです。その人の本は私も読んだことがあり,説明が上手だなぁ,と感心していました。

が,しかし。今回のには凄くがっかりしました。

その本の中でのヒッグスの説明を例に出して凄く評価していたのです。でもその説明って,説明の中で最も有名なパーティー会場のやつなのです。しかも,CERN所長ホイヤーがその喩えを使って見事に説明していたということを引き合いに出しているのですが.....うーん。

そのサイエンスライターなら,そんな喩えはもちろん知ってるはずだし,その説明がホイヤーのオリジナルではないことも知ってるはずです。ついでに言うと,その説明は,大昔にヒッグス機構を一般向けに説明するにはどうしたらいいか,その説明を集めるコンクールを開いたのだそうです。その取りまとめ役だったイギリス人物理学者のDavid Millerという人がその説明を使い始めて,今や世界中の素粒子物理学者がその喩えを使ってヒッグス機構を説明するようになりました。

というわけで,あまりにもありふれたその説明を激賞するコメントを見て,相当がっかりしました。書評もゴーストライターが適当にやってるのかと疑ってしまいました。

あ,さらに,ネタばらしをすると,パーティの喩えで登場する有名人は,今私たちがよく目にするのはアインシュタイン風になっています。しかし,オリジナルではサッチャー首相だったらしいです。政治家のパーティーという想定だったみたいですね。ところが,彼女が科学関連の予算を大幅に削ったので,David Millerが指図したのかどうかは知りませんが,サッチャー首相の代わりにアインシュタインを使うようになったのだそうです。百聞は一見にしかず、というわけで,元々のやつと普通みなさんがよく目にするヤツ双方を貼っておきます。ちなみに,私はこの絵を使うにあたり,使用許諾を取ったことがあります。最初David Millerに連絡を取ったのですが,彼らが著作権を持ってるわけではなく,実は両方ともCERNが著作権を持っていました。

higgs2 original
higgs3 current


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アトラスレゴ

ATLASグループでは,1/50スケールのATLAS検出器レゴを作っています。レゴの生まれた国デンマークにあるニールスボーア研究所の人達が中心になって作ったらしく,希望する研究機関はそのレゴを手に入れることができます。私たちもそのパーツをだいぶ(半年くらい?)前にもらっていたのですが,製作がなかなか捗っていませんでした。

この3月に修士課程を修了したHくんが中心となり彼の修論終了後に製作を始めたのですが,彼の卒業までには完成することができず,その役割は新M1のAくんが引き継ぎました。5月3日にあったいちょう祭という春の学祭での一般公開に向け製作のペースが上がり,周りにいる先輩方の協力もあり2,3週間ほど前に完成することができました。

その様子を以下にはりつけます。人の顔が写っている写真を使えばもっと臨場感があるのですが,とりあえず,味もそっけもない写真をあげておきます。

atlas_lego_01

atlas_lego_02

atlas_lego_03

特大段ボール2箱分のパーツから組み上げるのは,かなりの難作業でした。中心となって作業をしてくれたHくんとAくんはもちろんのこと,見るに見かねて(?)物凄い勢いで手伝ってくれた周囲の学生さんと,励ましのちゃちゃを入れ続けてくれた秘書さんの協力のおかげで完成に漕ぎ着けることができました。ありがとうございました。いちょう祭に間に合ってよかったです。

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反水素の重力質量

CERNで行われているALPHA実験では,反水素の性質を探ろうとしています。が,しかし,その前に反水素は自然界に存在しませんから,まずは反水素をたくさん生成,かつ,生成された反水素がすぐに崩壊しないように保持しなければなりません。数年前には,反水素の生成に成功,そして一昨年だけ去年には数百個(?)という大量の反水素をかなり長い時間(数100秒とか数1000秒のオーダーだったような)保持することに成功していました。

そして昨日,反水素の重力質量を測ったというようなニュースが流れました。反物質といってもその質量のほとんどは反陽子であり,つまりは,反物質である反クォークの質量ではなく,ほとんどの質量はQCDによって生成されているわけですから,反水素の質量の研究から何がわかるのかは私には今ひとつピンと来ませんが,とにもかくにも,反物質の重力質量というのはSF好きの人に刺激を与えるのか,海外のニュースではそれなりに話題になっているようです。

というわけで,私もさらっと論文を斜め読みしました。結果は,95%信頼度で,-65<重力質量/慣性質量<110。うーん,なんともコメントしずらい結果です。測ったといえば測ったのでしょうが,数値的には何も言えていません。たぶん,今回のポイントは,測定結果そのものよりも直接測定をできることを示した,ということなんでしょうね。方法というか,その原理は単純で,反水素をトラップしているための磁場を落として,その後,反水素の崩壊地点が検出器の上の方に多いか,下の方に多いかを比べます。反水素なんていう軽いものに働く重力はあまりに小さく,無いに等しいようなものなので,上に行ってるか下に行ってるか測るのは非常に難しく,今回,測定方法を確立することはできたけど,先に書いたように,どっちに動いたのかは今ひとつわからなかったというわけです。ちなみに,原理は単純でも,実験が難しいことは間違いありません。

しかし,冷静に考えると,(反)水素に働いてる重力はとてつもなく小さいので,その重力の100倍以上という力は働いていないということがわかっただけでも,凄いと言えば凄いです。今のところ,測定精度を制限しているのは系統誤差ではなくて統計なので,これからもっと反水素を生成保持できるようになれば,重力質量/慣性質量=1付近まで測定できるようになる,というようなことも言及されていました。

こういう実験を見ると,前にも何度か書いていますが,やっぱりレプトン単体の質量を測りたくなります。でも,電磁気力があるので,可能性としてはポジトロニウムくらいでしょうか。と言いつつ,ポジトロニウムの質量が何を意味するのか実は難しいです。強い相互作用ではなく,QEDによるエネルギーと重力の関係?になるのでしょうか。どれくらいの値になるのだろう?

しかし,電気的に中性といっても,どうせ凄く軽いだろうから,重力質量を測るにはもっと重いほうがいいですね。ミューオニウムで頑張るか,あるいはタウオニウムなんていうのを作れたら凄いですね。ははは。

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