ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

メール処理

新学期が始まったせいか,ここ2、3週間は極めて忙しく,先々週くらいはメールに対する返信もろくにできず,1週間遅れくらいのメールの返信も多々ありました。そんなわけで落ち着いてブログを書くこともできなかったため,5月末の春の学校というイベントの宣伝をするのをずーっと忘れていました。って,まあ,このブログに書いたところで,参加者数が増えるわけではないのかもしれませんが,ずっと書こう書こうと思っていたにもかかわらず,全然宣伝できませんでした。それでも,世話人一同の努力の甲斐があり,締切の昨日には例年程度の参加者数に達しました。運営者としては,胸を撫で下ろしています。

遅れていたメール処理もようやく追いつきつつあり,だいたいの案件に対してリアルタイムで返信をできるようになってきました。というのが,先週後半だったのですが,金曜日にプライベートでちょっとしたトラブルが発生。せっかくのゴールデンウィークですが,そのトラブル処理に時間を使わされたために,メールでの対応がまた遅れています。メールはto do listも兼ねているので,その処理が遅れると締切のある仕事の処理が滞り非常に危険です。実際,締切の迫っている案件を一つ見落としていました。先ほどそれを見つけ事なきを得ましたが,いやー,本当に危険です。

にしても,そのトラブル。日頃の行いが悪いからなのかもしれませんが,非常に気の重いトラブルで,仕事をしようにも全く集中できず,集中力を要する複雑な仕事はまったくやれていません。いや,参りました。

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CDMS-II 最新結果

一昨日行われた研究室ミーティングでの論文紹介で,Jくんが(ほとんどイニシャルトークになってない...)CDMS-IIの最新結果を紹介しました。前に出した結果はゲルマニウムのほうで,今回はシリコン部分をターゲットとした解析結果を発表しました。

こういう結果が発表されたことを知らなかったので,なかなか興味深かったです。しかし,また結果は微妙です。ダークマター候補が3事象残っていて,信号だとは主張できないけど,更なる調査が必要,みたいな結論を出しています。一番言いたいのはもっとデカイのが欲しい,次の実験をやりたいってことだというのはわかるのですが,なんちゅうか歯切れが悪いです。

それと,今回の発表でこれまた初めて知ったことですが,ゲルマニウムの解析結果を発表した時,2事象残ったということをわりと大々的に宣伝してました。バックグラウンドの期待値もそれなりに大きかったので,彼らが宣伝したわけではなくマスコミが宣伝しただけなのかもしれませんが,とにかく,2事象残ったということで注目を浴びました。けど,その2事象は,その後の結果でバックグラウンドだという公式見解になってたんですね。検出器の表面で反応したために荷電粒子のわりにdE/dxが少なくて,中性粒子によるrecoilのように見えるバックグラウンドっぽいという見解になっていたことを知りませんでした。Blind Analysisかなんか知りませんが,そういう前例,結果を発表した後にやっぱり間違ってましたということが発覚したという前例があると,今回の解析結果についてもなんとなく信憑性が下がってしまいます。

解析の詳細がわからないので何とも言えないのですが,個人的には、今回は中性子バックグラウンドをどうやって見積もったのかが気になります。前の解析で,先に書いたように,検出器表面で反応する電子がメインなバックグラウンドだったということがわかったため,今回はそういうタイプのバックグラウンドについてはスライド等でそこそこ説明しているのですが,中性子についてはあまり書いてないので,そこをどうやって見積もっているのかもう少し知りたい感じがします。

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ピクセル検出器の移動

ATLAS検出器の最内層,陽子陽子衝突地点に最も近い場所に設置されているのがシリコンピクセル検出器です。この2年間のシャットダウンの間に,そのさらに内側に新たにシリコンピクセル検出器(IBLと呼びます)を設置する予定です。

どうやってIBLを設置するかについては長い議論があり,地下の実験ホールで作業するのは検出器にダメージを与える可能性があるし能率的ではないということで,ピクセル検出器全体を一旦地上に出してIBLをその内側に取り付け,その作業終了後にまた地下の実験ホールに戻すということに決定していました。

その作業がしばらく行われていましたが,ようやく,ピクセル検出器が地上に運び出されました。このブログとしては珍しく,今回はその様子の写真集です。

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8枚写真を並べましたが,順番に説明すると
1) ATLAS検出器の様子です。一番内側がピクセル検出器。
2) ピクセル検出器に繋がっているケーブルや冷却管などを取り外したところ。この作業だけでも数週間かかっています。
3) ピクセル検出器を引っ張り出しているところ。
4) 引っ張り出したピクセル検出器が輸送用のフレームに入れられています。
5) 地下実験室から地上へと続く深さ約100mの縦穴から,ピクセル検出器をクレーンで地上に持ち上げている。
6) ピクセル検出器の作業をする別の建物に移動中。
7) 移動が終わったところ。
8) 輸送用ケースから取り出され,所定の場所に置かれたピクセル検出器。

このピクセル検出器のさらに内側に,これからいよいよIBLが装着されます。って,まだIBLは完成していませんし,ピクセル検出器のサービス部分も交換するので,まずは,サービス部分の取り外しがこれから行われます。

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やはり狙われている?

先週末の1年生研修旅行に行ってわかったのですが,私はこのての催しの引率および参加が他の教員よりも圧倒的に多いようです。一般向けあるいは高校生を対象とした講演回数がとんでもなく多いのは気づいていましたが,学生との交流の場に参加してる回数が他の人よりも多いというのは意外でした。というのも,教員らしく学生とたくさん会話している原子核実験のSさんや素粒子理論のHさんたちと違い,学部学生を相手に話をするというキャラではないと自分で思っているからです。実際、そういう若い学生と何を話せばいいのか自分ではよくわかっていませんし。

にもかかわらず,そういう役が回ってくるのって上記のSさんやHさんに狙われているんですよね,きっと。前にも同じこと書いた記憶がありますが,また今回もそう感じるできごとがありました。学生との定期懇話会のようなものに出席するメンバーになって欲しいとSさんから依頼があったのです。やっぱり狙われています。でも,Sさんの奮闘ぶりを見てると,何を頼まれてもなかなか断り難いものがあり,いつも依頼を引き受けてしまいます。それはさておき,懇話会,私みたいな人間と話をして学生の役に立つことがあるのか謎です。。

狙われているで思い出しましたが,大学の催しで教員ではなく職員向けに講演をすることになりました。これは新しい試みなのですが,多くの教員が集まる場で話をしたり,今回のように職員を対象に話をしたりしたら,大学内で広範囲に渡り私の面がわれてしまい,なんだか気恥ずかしいです。ついでに,8月のオープンキャンパスでもまた高校生を相手に講演をします。どちらの講演も,やっぱり,誰かに狙われているからこそのような気がします。

しかし,高校生相手に話をするのはもうだいぶ慣れていますが,職員を対象の講演というのは初めての試みなので話す方にとってもちょっと新鮮です。

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物理学科1年生研修旅行

週末は,物理学科の1年生の研修旅行の引率でした。一泊二日でSpring8の見学,そして,夜は西はりま天文台で星を眺める,という例年通りのスケジュールでした。そしてこれまた例年通り(?)で,雨のため星を観ることは全くできず,日本国内で最大という望遠鏡を眺めるだけに終わってしまいました。私はこの旅行の引率として何度も行っているのですが,未だに星を眺めたことがありません。私が強烈な雨男なのか,時期が悪いのか知りませんが,せっかくなのでデカイ望遠鏡で何か見てみたいと思っているのですが,未だ実現していません。

引率した教員が約5分間で自分の研究を紹介するという催しもありました。聴衆は入学直後の1年生ですから,知識としては高校生と等価。5分間で何をやってるのか紹介するというのは至難の技なのですが,とりあえず,ヒッグスが素粒子の質量の起源でそれをCERNで探しているということをなんとか詰め込んで話してみました。少しでも素粒子物理実験に興味を持つ学生が増えてくれるとよいのですが,5分間ですから,まあ,それは高望みなんでしょうね。

それはさておき,参加した1年生が旅行を楽しめたのかどうかが気になります。熱があるのに出席した学生,遅刻するけどどうしても参加したいから出発を待ってくれと頼んできた学生,等々,参加することに気合いの入っている学生はいいですが,なかなか会話の輪に入れない学生というのも毎年います。そういう学生が少しでも話し相手を見つけられるように,というのがこの旅行の趣旨であると私は認識しているのですが,果たしてその効果があったのか気になるところです。

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講演のDVD

いつだったかも思い出せないくらい遠い昔のように感じますが,小柴ホールでやった平成基礎科学財団主催の講演会がいつだったのかを調べると,去年の11月の中頃。まだ5ヶ月前なんですね。なんで,そんなことを言ってるかというと,財団のほうからそのときの講演会の様子を収めたDVDが送られてきました。って,送られて来たのがすでに1ヶ月くらい前のような気がしますが...。

それはさておき,製作したのはNHKエデュケーショナル,大勢のスタッフが来て大掛かりな器材で収録して作ったDVDだけあって,非常にクオリティの高いDVDとなっています。一方で,その内容,というか私の喋りは本当にダメダメです。喋っている内容自体はまだいいですが,滑舌悪いし,聴衆の方を見てるのはいいですが,視線の移動がやけに早く全然落ち着きが感じられません。カメラを通して客観的に自分を見ると,いかに容姿が悪いかだけではなくて,喋りまでなっていないことがわかってがっかりします。顔は取り替えることができないので諦めるとしても,話し方についてはもっと修行を積まないとなりません。

ところで,この講演会は,NHK関連会社が製作とあって,使ってはならない文言やスライドなど普段の講演とは大きく違う制約がありました。卑猥な言葉はもちろんNGですが,普段下品な私も流石に講演会ではそれほど下品なこと言いませんから,そこは大して問題ではありませんでした。そのテの言葉ではなくて,先方が一番気にしていたのは会社名や製品名でした。その商品のことを話すつもりではなくて,何かのたとえ話のついでなんかに出てきちゃうことがよくあるらしく,そこら辺を心配していました。それから,当然のことながらあらゆるスライドに出てくるあらゆる図,表,ポンチ絵に関して,全て使用許諾を取りました。使用許諾を取れなかったものについては,取れた図を組み合わせて私が新たに絵を描いたりしました。

とまあ,そんな苦労のあった講演会ですが,せっかく送られて来たものなので自分の話術のダメ出しをすべく,そのうちゆっくりと見てみようと思っています。ちなみに,個人には配布しないそうですが,学校等からの依頼があればタダでお譲りできるらしいです。あと,図書館にも配布してるところがあるそうです。私のダメダメな講演を見てみたいという奇特な方は,このサイトを参考になさってください。と,自分でもそのサイトをチェックして,配布先というのを見ましたが...高校は多いですが,図書館はほとんどないので,一般の方は見るのなかなか難しそうですね。

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D論予備審査

私たちATLAS大阪グループで初めての博士を目指すHくんのD論予備審査が今日ありました。発表の仕方や質問に対する受け答えなど細かい部分ではコメントがありましたが,解析内容については全く問題ないという認識が得られ,めでたく本審査である公聴会を開催できることになりました。いやー,めでたいです。

学会や研究会と違い,指導教員である私は助け舟も出せなければ補足のコメントも出せませんので,ただ黙って話を聞くばかり。自分で発表し,質疑応答するほうが精神的に何倍も楽です。と思うのは私が指導教員だからで,本人の立場だとしたらそれはそれで大変だったんでしょうね。お疲れさまでした。

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今学期も

電磁気学を基礎工学部2年生相手に教えます。今日はその第1回めでした。

月曜はハッピーマンデーの影響その他で,他の週よりも2週から3週分授業が遅れるのですが,去年に引き続き授業の開始が先週の火曜。ということで,今学期の授業を終了するのが,早く終わる曜日に比べて4週も違います。しかも,5月にはどうしても行きたい出張があり,休講を1つ出さなければなりません。それの補講までやると1学期中に試験をやって成績提出を事務の締めきりに間に合わせることができないので,例年よりも授業日数を減らし,その分,密度を上げることにしました。

そんなわけで,例年は1回目の授業は非常にユルいのですが,今日は初日からいきなりガンガンやりました。ただ,再履でない学生にとっては同じ授業は1度しか受けないので違いはわからないかもしれませんが,この授業を担当するのは今年が3年目で私自身がだいぶ慣れてきたということがあり,教えてる側としてはすんなりと流れていると感じていました。5年,6年と同じ授業を担当するとマンネリになって自分自身でもツマラナイのかもしれませんが,3年目くらいだと,慣れ具合,緊張感のバランスがちょうどいい気がします。

しかし,今,高校時代の友人と用事があって電話で話をしたのですが,私が大学で授業をやるなんて昔は想像できませんでした。旧友と今の仕事の話をすると,なんというか非常に恥ずかしいものがあります。。

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場所取り,席取り

私たちの研究室の実験室は地下にあります。今ちょっと用事があり行ってみると,階段付近から何か焦げ臭く,実験室に近づくとさらに臭くなります。でも,実験室内は何の臭いもしません。ということで,廊下をさらに進むとより一層臭いがキツくなります。

Y教授と一緒に臭いのもとがどこなのか特定しようとその辺をうろうろ歩き回り,ようやくその原因がわかりました。外でやってるバーベキューの臭いでした。正確には肉はまだ焼いてなくて,火を起こそうとしているところで,炭その他金属の焼ける(?)臭いがなぜ地下全体に渡って充満していたのでした。なんで外の臭いがあんなにも地下に入ってくるのか,吸気口の場所がわからないのでわかりませんでしたが,とにかく,火事ではないことがわかりホッとしたところです。

で,バーベキューで思い出したのですが,大学の構内では花見の季節になると,場所取りの張り紙が勝手にあちこちに張られます。4月5日18時から◯◯サークル,あるいは◯◯研究室のような感じで貼られるのです。これが私には全く理解できません。どこかでルールを作り管理してるのならわかりますが,全くそうではないその辺の広場みたいな公共の場所で,張り紙さえ前もって貼っておけばその場所を占有できるという感覚が全くわかりません。だったら,2013年4月1日から2014年3月31日まで△△研究室で使用,というように貼っておけば,その場所はその研究室の場所になったも同然です。こんな大バカなことをやってる学生は,昨日の話の続きではありませんが,私にその権限があるなら真っ先に入学試験で落とします。頭悪過ぎです。どうやったら,張り紙すれば自分の土地になると考えられるのでしょうか。

その辺の公園とかでもこういうこと起きるんですかね。同じことをしてれば,きっとトラブルが起きます。でもって,そういう面倒が度重なるので◯×公園での花見禁止なんていうことになっちゃうんでしょうね。節度を守らないためにルールがどんどん厳格化,精密化されて,息苦しくなるというパターンなのかもしれません。

花見の場所取りと同じくらい理解不能なのが,学食の席取りです。場所取りする人間は,花見の場所取りと同じ論理を持ってるんでしょうね。って,これは別に大学の学食に限った話ではなくどこでもあることなんでしょう。しかし,集団生活の仕方,社会性を学ぶという意味では幼稚園あるいは保育園から始まり,小中高と12年以上も学校で何かを学んだ後に入学するのが大学なのに,なんで場所取りや席取りをしようという考えになるのか不思議です。花見の場所も学食の席も供給過多ならもちろん問題ありません。けど,学食なんて昼間の限られた時間しか飯を食えませんから,一人でも多くの人が飯を食うには席取りして殺してしまっている席を一つでも減らした方が,全体の利益(の期待値)は大きくなるわけです。

こんなにも簡単なことを理解できてない人間がいるわけなくて,囚人のジレンマ状態というか,フリーライダー嗜好というか,そういう自己中の考え方で行動してるのだと予想してるのですが,下手すると全体の利益の期待値が下がるということにすら気付いていない人間がいるのではないかと最近思い始めています。もしそうだとしたら,恐ろしいです。教えてもらってないとか,ウェブに載ってないとか,そう言う人がいそうで怖いです。

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素粒子実験のデータ解析と大学入試

今日は月に一度の物理学専攻の教室会議でした。大学のなんちゃら委員というのをやるのを非常に嫌っているY教授が,Tさんの根回しにより(?),今年度(と来年度)はなんと物理学専攻長。彼を専攻長に迎えての第1回の教室会議でもありました。

Y教授は専攻長みたいな役職をエラく毛嫌いしているのですが,その実務能力は遥かに常人を超えていて,多くの人は彼を大学の教授にしておくのは勿体ないと考えています。ですから専攻長としての仕事もきっちりとこなすと皆が期待しています。私の場合,何よりも教室会議の時間を短縮してくれるのではないかと期待していました。実際今日の会議で本人も会議を短くしようという意気込みを随所に見せていたのですが,不運なことにとある2つの議論がどつぼに嵌り,3時間を越える長ーい会議となってしまいました。

その議論の一つに大学入試の話題がありました。内容についてはもちろん書けませんが,その議論の最中で私が思っていたのは,大学入試と私たち素粒子実験のデータ解析が非常に似ているということでした。大学入試の目的は,優秀な生徒を選び出すことです。何をもって優秀と定義するかは別次元の問題なので今はそれについては議論しませんが,まあ,とにかくデキのいい学生候補を選びたいわけです。素粒子実験というのは,多かれ少なかれ,莫大な数の事象の中から信号を見つけ出すというのが解析過程での目的です。ヒッグス粒子を探すにはなるべく多くの事象を集め,その中からヒッグス粒子とおぼしき事象を選び出すのが解析でやっていることです。別に探すものがヒッグスでなくてもいいのですが(何をもって優秀な生徒と定義するかの違いと一緒で探す対象は実験によって違う),どういう実験でもやってることというのはなるべく多くの事象の中から特定の信号を選び出すことです。大学入試ならなるべく多くの応募者を募りその中から優秀な生徒を選ぶわけで,こういうざっくりとした点も大学入試と私たちの解析は似ています。

でもってもっと似てるのは,その選定の過程です。大学入試なら,何科目か試験を行い,その得点で合否を決めます。素粒子実験の事象選別も全く同様で,ある特定の変数に対して条件を課していき,すべての条件をクリアした事象を信号(候補)とみなします。大学受験の場合は,試験科目やその配点に違いがあり,最終的には試験全ての得点の合計で合否を決めますが,素粒子実験の事象選別でも使う変数に設ける条件というのを個々の変数ごとに設定して信号とみなす事象を選び出します。本当に全く同様の手法で取捨選択をしてるんですね。どの科目に多くの配点をするかというのは,どういう変数に対してより厳しいあるいは緩い条件を課すか,というのと同じなわけです。

と,この類似性に気付くと次のステップを想像します。上記の説明は実験データの解析の最も単純な場合で,実際には多変数解析なるものが色々な場面で導入されています。大学入試になぞらえると,数学,物理,等々の試験の個々の得点に閾値を設けるのが単純な解析で,多変数解析というのは,全ての試験の結果を総合的に判断するというものです。ただし,ここで言う「総合的判断」というのは単なる点数の合計ではありません。たとえば,私たちが探すヒッグスの信号と偽物事象で,大学入試をやると得点のパターンが非常に似ているという状況を想像してください。大学入試の場合は単純に合計得点の多い人を選ぶわけですが,ヒッグスの信号が必ずしも偽物事象よりも合計得点が高いわけではないのです。ヒッグスは物理の成績はよいけど,化学の成績は非常に悪い,なんていう特徴を持ってると考えてもらえばよいかもしれません。こういう個々の特徴を踏まえて,物理が得意,化学は苦手,球技は得意だが,機械体操が下手,音痴だけどご飯を食べるのが早い人を選ぶような作業がヒッグス探索,あるいは素粒子物理実験の信号探索なのです。で,総合的判断と言った場合は,そういう特徴を選ぶべき変数同士の相関なども含めて(←ここが重要です)多角的に解析,取捨選択するということなのです。これによって,単純に物理が得意だけど化学が苦手な人を選ぶよりも,より高い確度でヒッグスの信号を選び出せます。

これを応用すると,もし,私たちが選びたい生徒が単に試験の合計得点の高い生徒でないとしたら,実は上記のような多変数解析をするのが有効なことになります。ただ,もちろんそれができないのは,実際的な問題もありますが,それ以上に何をもって「私たちが選びたい生徒」と定義するのかがあまりにも難しい議論になります。ですから,大学に入りたい生徒の選定にた私たちが使っている多変数解析を持ち込むのは,まあ限りなく難しい話です。

でも,面接ってのは多変数解析なんですよね。多変数解析の代表例にneural networkというのがありますが,まさにそれをコンピュータを使わずに面接官の脳内のネットワークを使って行っているのが面接です。コンピュータを使ったneural networkの解析では,多数の信号と偽物事象をトレーニングサンプルとして用意し,コンピュータにトレーニングさせます。それによって,信号と偽物を見分けるにはどういう特徴を使うのがいいのか学習させるわけですね。面接の場合は,どういう人が選び出すべき信号で,どういう人が選ぶべきではない偽物事象なのかが明確に定義されているわけではないにもかかわらず,筆記試験をやるよりもより高い精度で選びたい人を選び出せているんですよね,きっと。だって,そうじゃなければ,世の中に面接はなくなります。

ということは,面接をやるという事実から次の2つのことが考えられます。一つには,選ぶべき人とそうでない人という定義が明文化されていなくても,多くの人にとってその定義が共有されている。別の理由は,筆記試験で要求される能力と面接で見極めたい能力が直交している。実際には,この2つの両方が真実で,だからこそ面接をやるのだと思うのですが...。

長くなりましたが何を言いたいかというと,多変数解析の最良の手法である脳内ニューラルネットワーク解析であるところの面接というのは,実際問題としては色々な意味で不可能だけど,大学入試としては最良の方法なんじゃないかということです。すみません,結論はあまりに当たり前(?)でした。ちなみに,大学入試で面接を導入するための最大の壁は,いわゆる公平性なんでしょうね。社会のあらゆるところで面接が人を選んだり,申請された予算の採択のために使われているのに,大学入試では物凄い反対を受けそうです。少数ならばAO入試と流行ですけど,ほとんどの人をそういう手法で選ぼうとしたら,きっと強い反対に遭うんでしょうね。それとも,実は,莫大な志願者を捌けないという大学側の単なる実務上の問題だけで,そういう制度を言い出したら社会には受け入れられる,あるいは歓迎されるんでしょうかね。

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賢い人は賢い

とある予算獲得のために何人かの人間で申請書等を準備しています。普段あまり付き合いのない人や,全然付き合いのない人とも共同作業を行うのですが,優秀な人と一緒に仕事をすると,自分のダメさ加減が浮き彫りになってしまいます。

たとえば何かの議論の際,それは変だろうと感じることがあったとします。親密度の高い人,あるいは,論理的にきっちりと反駁できるときだったら,それは変だとすぐに反論しますが,そうじゃないときってのもよくありますよね。今回も打ち合わせを何人かでしているとそういう場面に遭遇します。そういうとき,自分だと頭の回転が遅いので「えーとどうやって,そこは変だ」と指摘しようかと考えている間にどんどん話が進んでしまうのですが,できる人というのは,指摘の仕方が非常に上手なんですね。相手の主張を真っ向から否定するのではないけれども,うまーく問題点を浮かび上がらせて,議論を正しい方向へもっていけます。議論の本筋とは違うところで「なるほど,そうやって指摘すればいいのか」と心の中で相槌を打ってるときがよくあります。

メールですら同じことがよくあります。私には上手く説明できないけれども,それは変だろうと思うことがあるわけです。そういうときに,賢い人というのはエラく上手い表現でその変さを指摘してくるんですね。どっかの研究所のHさんとか,やっぱりどっかの研究所のHさんとか。ホント今回一緒に仕事をしてこの2人の賢さがよくわかりました。

何を書いているのか私以外の人には全くわからないと思いますが,日記ということでお許しください。でも,本当にそういう人の議論上手なところは見習いたいです。バカなので頭の回転の速さでは勝負になりませんが,場数を踏んでなんとかそういう技量を身に付けたいものです。

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去る人来る人

私たちの大学は今日から新学期が始まりました。研究室でもニューカマーに対するガイダンスを先週金曜に行い,新大学院生たちは一足早く研究生活を開始しています。

今年度の新M1は2人。1人がKOTO実験,もう1人がATLAS実験をやるとすんなり決まり(って,いつ決まったのかを私が気付く間もないくらいいつの間にか決まっていました),それぞれのグループのミーティングに昨日から参加しています。私たち大阪ATLASグループでは,修論を書いた学生が2人でそのうち1人が就職,もう1人が博士課程へ進学。一方,新人が1人ということで,人数的には変化ありません。が,メンバーが入れ替わると最初は違和感があります。

でも,新人を迎える昨日のミーティングのその前のミーティングでは,就職した1人がいなくなったので喪失感だけを感じましたが,今度の違和感は新しいメンバーがいるという違和感なので嬉しい違和感です。

いずれにせよ,この時期は,人の異動があり若干センチメンタルです。

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AMS-02の最初の結果

久しぶりの更新です。最近更新をさぼっていますが,体調が悪かったわけでも,特別忙しかったわけでもありません。心配してくださる方もいたようですが,単にさぼっていただけでした。何事も一緒ですが,一度サボり始めるとどんどんサボってしまいます。。

凄い結果を発表する(?)みたいな噂(というかサミュエル・ティンのいつもの大風呂敷(?))が流れていましたが,AMS-02の結果は,即ダークマターの検証というような性質のものでは全くなく,そういう意味での驚きはまったくありませんでした。相変わらず人騒がせな,というのが正直な感想です。

宇宙線中の陽電子と電子の量の比を測定したところ,10GeV付近まではダラダラと下がっているのに10GeV前後から増え始めている,というのが一言での結果です。50GeVくらいより上はこれまでFERMI-LATでしか測定されていませんでしたが,その結果よりも格段に高い精度で測定し,FERMI-LATの結果が間違っていないことを確認しました。エネルギーの高いところまで非常に高い精度で測定してるので,それ自体は素晴らしいことですが,だからダークマターを捕まえたという結論には全然なりません。というか,これだけでダークマターを観測したと言っていいのなら,FERMI-LATのほうが先です。

大昔も同じような解説を書いたことある気がしますが,この実験で観測してるのはあくまで電子と陽電子であって,ダークマター自身ではありません。とある予想よりも陽電子が多いのはダークマター起源ではないか,という単なる仮説を裏付けることができるだけで,陽電子過剰=ダークマターという解釈にはなりません。別の原因で陽電子過剰なのかもしれませんから。ダークマターが何者かを調べるには,XMASSのような直接探索,加速器実験での観測探索,これらの結果と合わせて総合的に判断するのが大切です。

ところで,反陽子はどうだったんでしょうね。PAMELAでは確か,陽電子には過剰があるが,反陽子には過剰がないという結果で,それゆえ,陽電子過剰だったとしてもダークマター起源と解釈するのは難しいという結論だったような気がします。これで反陽子にもなんらかの異常が見えれば,それはそれで面白いのかもしれません。

も一つところでなのですが,FERMI-LATって磁石載せてなかったような気がするのですが,どうやって電子と陽電子を区別してるんでしょうか。FERMI-LATの陽電子測定についてはフォローしていなかったので,FERMI-LATの結果はある意味驚きでした。

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