ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

算数の問題を見て

昨日家に帰ると,小学2年の息子の算数の答案用紙が落ちていました。普段は気にも留めないのですが,昨日はふとその答案用紙を眺めました。勉強嫌いの息子はそれほど成績は良くありませんし,点数もまあいつも通りな感じです。で,何を間違えたのかと見てみると「りんごが2個ずつのった皿が4枚あります。りんごは全部で何個でしょう?」というような問題です。デキの悪い息子でもさすがに答えが8個(ちゃんと「個」は書かれています)だというのはわかるのですが,式がどうやら間違っています。

「2x4=8」で間違いになってます。。。

「2個/皿 × 4皿 = 8個」と書かなければならないのだそうです。うーむ...確かに問題文の中には「皿」「個」という言葉が入っているので数え方を知らなかったとしてもできるはずなのですが,何か釈然としません。私たちの世代は,そんな教え方されませんでしたし,物理屋の病気を発病させてよいなら,「皿」も「個」も無次元じゃん。と思ってしまうのですよね。問題の中には,「1mの8倍は?」という問題もありました。それなら「1[m] × 8 = 8[m]」が正解だとは思うのですが,無次元量と無次元量の掛け算に数え方まで書かないとならないとは知りませんでした。あ,ちなみに,「倍」は書かなくていいみたいです。りんごのロジックに従うと「1m/倍 × 8倍 = 8m」と書かなければならないと思うのですが,「1m × 8 = 8m」で正解になっていました。この辺も謎です。算数なのですが,もはや論理の世界ではなく,例外処理を記憶するのが目的となっているようです。

「皿」や「個」ならまだいいですが,笑ってしまったのは,おはじき5個を一括りとしてそれが3括りある場合の問題です。みなさんなら何と書きますか?正解は「5個/1つ × 3つ = 15個」でした。もちろん,問題には絵が描いてあって,その絵に「つ」とか「個」とか書いてはあるのですが,私みたいに何も考えてない人間だったら「5つ/一塊 × 3塊 = 15」とか書いてしまいそうです。って,あれ,一つ,二つ,,,と数えていって,10を超えたら何と数えればよいのでしたっけ??

モノの数え方を教えるのが国語ではなく算数に含まれるのであればそれはそれでよいのですが,うちの息子みたいにデキの悪い子供は,掛け算を習っていると思ってるのにその途中に物の数え方が紛れ込んでいるので混乱しちゃうんですよね。しかも例外処理の連続。なるほど,こうやって勉強嫌いの子供を増やしていくのか,ということがよくわかります。学校の先生も大変ですよね,きっと。自分で勝手にカリキュラムを作れなくて,文科省指定の教科書の内容にそって画一的な授業をしないとならないのですから。何も考えずに先生の言ってる例外処理の連続を黙々と記憶していける子供はいいですが,そうじゃない子供もたくさんいるわけで,それを一つの同じカリキュラムで教えるということ自体に無理があるんでしょうね。

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色々な人と話をする

昨日と今日は,たくさんの人と話をしました。基本的にはみな研究者ですが,専門が違ったり,大学が違ったり,と微妙に自分とは違う環境にいる人々と30分あるいは1時間づつくらい話をしました。今日なんて,午前中に修士の学生とゼミをやり,午後の早い時間はATLAS日本シリコングループのミーティングでHくんの研究内容について熱い議論をした後は,ホントに人との話ばかりでした。

昨日書いた内容と少しかぶるのですが,微妙に違う環境にいる人から色々な話を聞き,意見をもらうのは,凄く刺激的だし,勉強になります。大きくかけ離れた職種の人と話をするのも,昨日のエントリーのようにこれまで考えてもみなかったことを考える機会になって面白いのですが,自分と同じようなことをしていながらちょっとだけ違う状況で研究をしている人との話もまた違った意味で面白いです。考えている対象は同じようなことなのに,自分とは違った角度からものを見て,自分では全く思ってもみなかった発想があり,同じような事を考えているのにこれだけ様々な意見・考え方があるものなのだと,妙に感心します。アイデアがないところでも,諦めなければ捻り出すことができそうな気がしてきて,昨日と今日は自分にとっては有意義な2日間でした。

って,具体的に何を相談議論したのか書けないので,読者の方には意味が通じないかと思います。すみません。でもホント,一つの物事でもかくも多様なものの見方ができるんだということを実感すると,多様性というのは大切なのだなぁと改めて思います。

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知らないことが多い

よく言われることですが,世の中には本当に知らないことが多いです。外国のことだったり,自分と全く関係のないことなら知らないことばかりで当然ですが,身近にも色々知らないことが多いということを再認識する機会がここ数日多くて,なんというか非常に刺激を受けます。

たとえば,私たち理学部物理学科には物理学専攻と宇宙地球専攻という二つの組織があって,オフィスなんて非常に近いのに宇宙地球専攻の人がどんなことをやっているのかよくわかってなかったりします。もちろん,私の知識不足,勉強不足によるところが大きいのですが,最近,宇宙地球専攻の教授の人たちと色々話をする機会があって,ついでに(?)彼らがどういうことをやっているのか聞くと,「へー」と思うことの連続です。科学としての目的は違うけど,その手段が実はかなり近く,でも,素粒子物理の分野とは違う要求が検出器に課せられていて,私たちが普段考えるアプローチとは違うアプローチでシリコン検出器を開発してたりして,本当に面白いです。

あるいは,とある理由で,とある市の商工会議所のことを調べていたのですが,商工会議所でやってる内容と,市役所の経済部みたいなところでやってる内容がかぶっていることに気付き,当たり前のことかもしれませんが,私には「へー」でした。商工会議所と市役所がどういう組織なのかを考えれば,別の組織が同じような業務を行っていても当然なのですが,そういうことを考えたことのなかった私には最初その二つが同じようなことをしていることが不可解でした。立場が違えど進むべき方向性が同じなのだということに考えが至り,些細なことですが,自分の膝を叩きそうでした。ちなみに,商工会議所と商工会が別物で管轄が微妙に違うことも知らず,世の中には本当に知らないことが多いものだと驚いたのでした。

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対象が想定外

CERNから土曜日の晩に帰って来ました。今回の出張はかなりハードスケジュールでした。18日の講演会から深夜便での移動。そしてCERNに着いてからは割と高い密度でミーティングに参加。夜中はひたすら書類作り。ということで,非常に濃密な1週間でした。

そして今日は,ヒッグス探索に関する講演がありました。私たちの大学とグローニンゲン大学というところが大学間協定かなんかを結んでいて,わりと活発な学術交流があります。その交流(?)シンポジウムで話をしたのですが,準備が大失敗。というのも,どういう聴衆か全くわからなかったので,基本的には物理学専攻+物性寄りの工学関係者が聴衆ではないかと勝手に想像していました。なので,素粒子物理のわりと基礎から話を始め,あまり専門的な内容を詰め込まなかったのですが,講演会場に行ってみると日本人はほとんど素粒子か原子核関連のスタッフばかり。あちゃー,という感じでした。それでもまあ,ネタが旬だったのでたくさん質問をしてもらい,見た目それほど大失敗という講演にはならなかったのでよかったです。

しかし,聴衆がどんな人かは聞いておくべきでした。講演では当然気にするべきことなのですが,なぜか今回は迷いなく勝手に聴衆を想定してしまい,準備もいつもより時間をかけました。専門家相手なら同じような講演を何回かしているのでそれほど準備に時間はかかりません。一般向けも同様です。が,対象が素粒子物理を専門としていない物理屋と想定したので,今までの講演内容の使い回しがあまりできなくてかなり準備には時間をかけました。帰りの飛行機の中,そして昨日,さらに今日も午前中も微調整を行っていました。私は小心者なので講演のスライドは比較的早めに準備を終わらせるほうなのですが,今日は直前まで準備をする羽目になり,その結果が,対象が違っていたというのですから,アホです。

しかも慌てたのは,会場を勘違いしていたことです。部屋を間違えていたくらいならいいのですが,キャンパスを間違えていました...。私たち理学部のある豊中キャンパスというところでやるものとばかり思っていたのですが,実際には吹田キャンパス。いやー,ホントに焦りました。気づいたのがまだ取りかえしのつく時間だったからよかったですが,気づくのがもう少し遅かったら講演に穴をあけていました。

予定が詰まり過ぎて,仕事を処理しきれなくなっていることが明らかになりつつあります。。。

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テレビ会議システムの変更

ATLAS(というかCERN?)では,EVOというテレビ会議システムをこれまで使っていたのですが,ここ1年から半年くらい前からVidyoというシステムに移ろうとしています。EVOにしてもVidyoにしても,個人の計算機から簡単に便利にテレビ会議に参加できるようになったことで,顔を合わせてミーティングをする機会が減ったし,不要と思えるようなミーティングまで増えて,本当に良いことなのだろうかと疑問に思うことがよくあります。

前にも何度か書きましたが,重要な相談は顔を突き合わせて今でもやるわけだし,テレビ会議でミーティングに参加したのでは深い議論ができません。でも,ミーティング数は莫大に増える。浅い議論しかできないミーティングが増える。時間の無駄が増える。ということになっるように感じます。とはいえ,ATLASみたいな大人数のグループでは必要な技術ではあるのかもしれませんが。

ところで,そのVidyo。使ってる人みんなが文句を言ってることがあります。会議を始めたとき,必ずビデオがONになってしまうのです。会議スタート前に設定をビデオOFFにしているにもかかわらず,会議がスタートすると勝手にONに戻ってしまうのです。カメラがついてない計算機なら大丈夫ですが,Macみたいに内臓カメラが取り付けられている場合は,非常に危険です。

私がVidyoを使って初めてミーティングに参加したのは,深夜,家からでした。私は基本的に終電で帰ってこられるミーティングの場合大学からミーティングに参加します。終電が早いせいもあって,普段とあんまり変わらないからです。でもその日は,どうしても参加したいミーティングが深夜にあったので家から接続しました。私の家が綺麗に片付いていて,私がいるのがかっちょいい部屋なら構いませんが,とてつもなく散らかっている部屋から参加したんですね。で,テレビ会議をスタートさせると,なぜかカメラがON。いやー,焦りました。その日は天気がア悪くて洗濯物が乾かず,家の中に干してあったりもして,大慌て。

ビデオの設定はOFFにしてあったはずなのにと思いつつ,同様のことを繰り返し,会議スタート時にはビデオがONに戻ってしまうことを学びました。ですから最近は,会議に参加する瞬間はカメラを手で隠すようにしています。自分だけの問題なのかと思っていましたが,同様の苦情が多く寄せられていて,最近のバージョンアップでは問題が解決したと聞いた気がするのですが,昨日のテレビ会議ではやはりビデオがONに戻っていました。いったい,いつになったら修正されるのやら。。

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ヒッグス解析最近の結果とか

先週は京都で中規模な国際会議があり,そこでATLAS,CMSともにヒッグス探索の幾つかの結果をアップデートしました。ATLASに関してはとある理由により,γγとZZの結果を更新しませんでした。その理由というのはここでは書けませんが,私の感覚ではその判断は感情論に近く,その解析手法を使っていたからには結果を公表するのが科学的な手続きだったと思っています。

その一方で,解析が遅れていたbbとττについては統計を増やした結果を公表しました。自分はbbに興味があるし,うちのポスドクOくんもbbをやっているので,解析内容をかなり詳細にフォローしています。しかし,ここでも今一番の話題はほとんど感情論です。ATLASとCMSの結果の違いの議論がホットなのですが,せっかくCERNに来てるのでミーティングに出てみると,その議論がなんというか,全然建設的じゃなく,感情論に近い議論が延々と続いて辟易しています。

物理学者のミーティングだと論理に基づいた議論ばかりかと思われるかもしれませんが,政治的な理由などによってデキの悪い人がサブグループのリーダーになると,よくこういうくだらない議論に時間が費やされことがあります。物理解析は楽しいのですが,現場で解析してて一番辛いのはそういうたちの悪い人がリーダーになったときです。まあ,極めてよくあることなので驚きはしませんが,現場で踏ん張っているOくんにとっては修行となりそうです。ただ,逆に,そういう環境で研究をするのは非常によい経験ではあります。無茶な議論に揉まれることを,国際感覚を身につけるということだと私は思っているくらいですから。

おっと,解析結果に関してはサブライズはなく,統計が増えたおかげで感度が上がりましたが,標準模型ヒッグスを発見できるほどの感度には達していないので,背景事象だけを仮定したときに比べて若干イベント数が多いかなぁ,という程度で(bbとττ,ATLASとCMSそれぞれ全てを自分の脳内で足しあわせてみました),フェルミオンとの直接的な結合を発見という段階にまではまだ達していません。でも,この分だと,今年収集するデータを全て使い,bbとττ,さらにはATLASとCMSまでもを合計すると,かなりの感度に達しそうです。幸いなことにここ1,2週間は加速器の調子もいいですし。

シャットダウンの年である2013年は,解析手法もより改善しますから,夏の国際会議あたりでの結果が楽しみになります。その前のMoriondでも当然結果を更新しようと頑張っていますが,bbとττの解析結果,特にbbがそこに間に合うかは微妙なところです。

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同じゲートから

CERNに来ています。

日曜に平成基礎科学財団の講演会を終えたあと,その足で羽田空港へ行き,そこから深夜1時半発の夜行便パリ行きを使いジュネーブに移動。CERNへは現地時間の昼頃着きました。その後,ミーティングに出て,早めの夕食の後,速攻で寝ました。家を出たのが日曜の早朝なので,まともに寝るまでに40数時間が経過していました。初めて夜行便を使ってみましたが,ちとキツいですね。出発前に重労働してなければ問題ないのかもしれませんが,今回の場合は,早朝からの移動と長丁場の講演会の後に続けての移動だったので,流石にやり過ぎのスケジュールでした。。

それはいいとして,今回はパリのシャルル・ド・ゴール空港で一つネタを仕入れました。

私が搭乗予定のジュネーブ行きの便は,F30というゲートから10時に出発。同じゲートから9時55分にコペンハーゲン行きの便も出発。どちらかが間違っているのかと思い,搭乗案内までずっと神経をとがらせていました。が,結局,どちらの便も本当にF30というゲートから出発なのです。最初意味がわからず,とりあえずゲートを通過する際にジュネーブ行きはここからでいいんだよね?と確認します。あれ,じゃあコペンハーゲン行きはなんだったんだろうと思いつつ,ゲートの後,飛行機に乗り込むまでの通路を歩いていると途中で分岐点があります。前を歩いている人たちは,右へ行く人もあれば,左へ行く人もあります。で,分岐点には空港職員と思われる女性が立っていて,私が近づくとどこへ行くのかと尋ねます。ジュネーブだと答えるとじゃあお前はこっちだと右へ行くよう指示されます。

…えっ?この人の一言に行き先を委ねてしまうの?
と思いつつ,他に方策もありませんので,その指示に従い通路の先にいる飛行機に乗り込みます。でもやはり不安なので,いつもは完全に無視している機内アナウンスを今か今かと待ち受け,エールフランス何便のジュネーブ行きというアナウンスを確認し,やっと一安心しました。コペンハーゲンに行ってしまったらそれはそれでネタ的には凄く面白いとは思うのですが,しかし,ゲートでチェックするバーコードのチケットではなく,行き先に関しては,職員との会話,あるいは機内アナウンスに運命を委ねさせるというやり方は,凄いですね。言語が通じない人間は人間にあらずということなのですね。

少し前に日本ではシンドラー社のエレベーターが話題になりました。でも,ヨーロッパには安全装置がほとんどついていないような古いシンドラー社製のエレベーターがたくさんあり,私も挟まれそうになり慌てたことがありました。でも,そんなことが問題になってるとは聞いたことがありません。国民性の違いと言えば一言で終わってしまうのですが,うーん,日本以外の国では常に油断は許されません。ま,なんでもかんでも人のせい,国のせいにするよりも正しい人生観ではあるのかもしれませんし,国際社会を生き抜くには日本人だけが持つ特有の甘えた構造を捨てないとならないんでしょうね。

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講演会など

昨日は,大学のいつも通ってるのとは違うキャンパスで行われた理学部生向けの研究室紹介的なものに行ってきました。話をする内容がまあ手馴れた内容なので,滞りなくいつも通りの勢いで話をすることができ,それに関しては問題はなかったのですが,話をするまでに幾つかハプニングがありました。

私は通常大学への通勤に車を使わないのですが,昨日は,雨も降っていましたし,私がいつも通っているキャンパスと違い若干交通の便が悪いので家から車でキャンパスへ向かいました。しかし,普段は入れるはずの校門が閉まっているんですね。どうも,その校門からの出入りは平日だけらしく,その時点で私はパニック。他にどこから入れるか瞬時に思いつきません。しかも,普段あまり車を使っていないため,そのキャンパス付近の道がよくわからずしばし右往左往し,その間どこから入れるか冷静に考えました。で,よく考えると,最初に入れなかった校門から比較的近いところから入れるはずだと確信。最初は,おもいっきりキャンパスの反対側まで回ろうとしましたが,結局そんな回り道をしなくても,思いついた校門から入ることができ一安心。

しかし,まだあります。やっと,目指す建物に着いたのですが,その建物に入れません。休日なのでやはり鍵がかかっているのです。私が持ってるIDカードで入れるような仕組みではなく,指紋認証やらなんやらまでしないとならない雰囲気。この時点ですでに自分が想定していたのよりも30分近く時間をロスしています。焦りますが,何もやれることがありません。そこに,やはり研究室案内の講演をするためにやってきたOさんと遭遇。やった,これで入れるかと思いきや,彼女もやはり鍵は持っていなくて二人で立ち往生。どうしようかと二人で話し,とりあえず入口でうろうろしていると,ようやく建物の中から人がやってきてことなきを得ました。

なんて言ってますが,この時点で予定では私の講演が始まっているはず。やばいと思って走って会場へ行くと,私の前のKさんがまだ話をしています。それも,いつから始まったんだろうと思うくらい,ゆっくりとした進行。話が終わっていてしかるべき時間なのに,まだ話の内容はイントロダクション。なんだかわかりませんが,助かりました。後から聞くと,Kさんが時間をおもいっきりオーバー。そのおかげで私の遅刻が目立たないものとなったのでした。。。

そんな冷や汗ものの土曜を過ごした翌日の今日は,早朝家を出て10時半過ぎに東大へ到着。11時頃から,講演会撮影のセットアップ,そして小柴さん,武田さんという平成基礎科学財団のお偉いさんとおしゃべり。昼飯も一緒に食べて時間を過ごし,13時からいよいよ講演会。DVD用の撮影をNHKの関連会社の人たちが撮影するため,いつもの講演会とはちょっとだけ雰囲気が違い,若干緊張感の漂う講演会となりました。緊張感というのは私ではなく,講演を聞きに来ていた高校生や大学生のほうで,撮影しているからなのか,講演の最中いつもよりもだいぶ静かでした。いつもに比べてあまりに反応が少ないので,講演最中はかなり不安を感じていました。

が,講演会終了後,撮影が終わったあとには,いつもと同じくらいの質問攻めにあい,ちょっと胸を撫で下ろしました。行列を作り,自分の順番がくるまで忍耐強く待ち,質問をしくれる聴講者が大勢いるというのは,本当にありがたいです。中には遠くから話を聞きに来てくださった方もいるし,あと何より嬉しかったのは姪が話を聞きに来てくれていたことです。質問の行列がはけるのを待って話しかけてきてくれたのですが,最初は全然気づかず本当に驚きました。彼女の高校の先生と一緒に話を聞きにきてくれていたのですが,身内の前で話をする機会というのは滅多にないので,かなり嬉しかったです。

話を聞きに来てくださった方々,そして,Tさんをはじめとする関係者の方々どうもありがとうございました。

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物書き続く

自分で書いたブログの過去記事一覧を眺めてみたら,3週間くらい前にしばらくの間物書きに追われそう,なんていうエントリーがありました。いやー,まさにその通りになっています。

先週たくさんあった締め切りをクリアしたと思いましたが,その中の幾つは修正作業が今週にまで食い込みました。さらに,来週も予算関連の書類の締め切りを控えていて,今週はその資料作りに追われています。あまりに追い込まれていて,土曜日の学部生向けの研究室紹介のような行事を危うく忘れそうでした。さっき,リマインダーがあり,その準備をしなければならないことにも気づいてしまいました。

それに関連して思い出したのが,18日(日)の講演会。こちらは事前準備やら,主催者とのやり取りが続いていたので,講演会自身を忘れていることはありませんでしたが,このブログで宣伝するのを忘れていました。ということで,11月18日(日)東大理学部の小柴ホールで高校生と大学生を対象とした講演会をやるのですが...今,主催者の平成基礎科学財団のサイトを眺めると,申し込みが必要なのですね。しかも,その締め切りが今日の未明でした。うーむ,全く宣伝になっていませんでした。

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ミューオンの同定方法

ちょっと間が空きましたが,粒子検出方法の説明の続きです。

荷電粒子一般,そして電子と光子の検出方法をさらっと眺め,電磁シャワーとハドロンシャワーについても言及したので,私たちが日常的に観測・測定する粒子の中でまだ説明していないのはミューオンになります。

ミューオンは荷電粒子ですので,2、3週間前に書いた荷電粒子の検出方法がそのまま当て嵌まります。というよりもむしろ,私たちが通常観測する粒子のエネルギーでは電磁シャワーを作りませんし,ハドロンではないのでハドロンシャワーも作らず,荷電粒子一般の性質が一番顕著に現れる粒子です。物質中をただひたすら物質を電離させながら突き進みます。

そこで,ミューオンを他の荷電粒子,主にπ中間子やK中間子,陽子など,から分離識別するには,シャワーを作らずにただひたすらに物質中を突き進むという性質を使います。鉄などある程度の密度を持った物質をそれなりの厚さ(数m)で置いておけば,ミューオン以外の荷電粒子たち,上記の粒子たちはハドロンなのでハドロンシャワーを作り止まってしまいますし,電子ならばそれよりも早く電磁シャワーを作り止まってしまいます。ですから,ある程度の物質量の後にプラスチックシンチレータ,あるいはガス検出器などの荷電粒子検出器を設置しておき,それらの検出器が粒子を検出すればそれはミューオンだろう,ということになります。

大雑把な原理的な話は以上で全てなのですが,さらにミューオンの誤同定を防ぐために,物質を通過した後に測定したミューオン候補の飛跡と,物質を通過前に測定した荷電粒子の飛跡が滑らかに繋がることを要求したりもします。こんな方法で測定されたミューオンというのは,誤同定確率の小ささ,そして,カロリメータを使わずに荷電粒子検出器の情報のみから運動量を測定できることなどから,あらゆる粒子の中で最もクリーンでかつ精度の高い測定を行える粒子と言っても過言では(たぶん)ありません。

余談ですが,ATLAS実験の一般向け講演会などに行くと,イベントディスプレイというものを見せられることがあるかと思います。これがH→γγの候補で,これがH→ZZの候補です,なんていう具合に説明されるヤツです。検出器の図があり,陽子と陽子が衝突した地点から多数の粒子が飛び出していることくらいしかわからないヤツです。無茶苦茶沢山の粒子が飛び出しているので何が何だかわからないかと思いますが,私たちのそれらの個々の粒子については全く着目していません。着目していることの一つ=イベントディスプレイから読み取れる情報の一つが,運動量の高いミューオンが存在するかどうか,です。ミューオンは検出器の外側にまで飛び出しているので,ごちゃごちゃしていて何が何だかわからないようなイベントディスプレイの中にあっても,一目でその存在を確認できます。もし,イベントディスプレイを見る機会があるかたは,そんなところにも注目してみてください。

以下のイベントディスプレイは,H→ZZの候補で,それぞれのZが2つの電子と2つのミューオンに崩壊したと考えられる事象です。図中,緑色で真っすぐに伸びている2つの飛跡が電子,赤で真っすぐにしかも検出器の凄い外側までその線が伸びていってるのがミューオンです。
H→ZZ→eeμμ

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高校生と素粒子実験

今日は,高校生数人を2時間ほど研究室で受け入れて,素粒子物理学実験の触りをやりました。Y教授と私でそれぞれ4人づつの高校生を担当し,シンチとPMTからなる検出器を使って,幾つかの実験をやりました。まずは,オシロやNIMの回路で遊んでもらい,その後,宇宙線としてミューオンが降り注いでいることを体感してもらいました。って,体感してもらえたかどうかは謎ですが,2つのカウンターの距離や向きを変えることで,どういう方向からどういう頻度で宇宙線がやってくるのかを定性的に感じてもらおう,という趣旨のことをやりました。

もう一つは,学部の1年生がやってる実験内容の一つで,放射線源を使ったものです。計数の距離に対する依存性を理解してもらおうというヤツです。ただし,高校生といっても1年生が多いのでlogを使うことができず,1/rと1/r^2を横軸にしたグラフを書いてもらい,2乗分の1に比例していることを説明しました。その中で,数学好きな高校生が1人いて,用意していた両対数グラフに興味を持ち,それに書くとどうなるのかという待ってましたという質問をしてくれました。喜んで,しかし,わかってもらえるかとちょっとだけ不安を持ちつつ説明したのですが,数学が好きというだけあって,1年生なのですがすんなりと理解してくれました。傾きによってベキ数がわかるということに感動してくれたのには,こっちが感動でした。

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目の前で交通事故

今朝は驚きました。

駅へ向かう途中,駅のすぐ近くの交差点,それも私が道を横断するために信号を待っていたその交差点で,2台の車が激しく衝突。両方とも廃車間違いなしのダメージでした。

私は信号待ちで歩道に立っていました。というか,正確には,横断歩道のある場所にちょうど到達したくらいのタイミングで,バーンという物凄い音。視線をその音のする方に向けると,2台の車が正面衝突のような形でまだフロント同士が接触した状態でした。でも,その後の両車の動きと,信号の様子から何があったのかすぐに予想がつきました。

右折可能の右矢印の信号になり右折しようとした車に,対向車線から走ってきた直進車が衝突したと予想される車の動きなのです。右折しようとしていた車はゆっくりと右回転しながら(たぶん)進行方向から時計回りで135°くらいの方向へ押しやれています。一方,赤になっても直進して突っ込んできたと思われる車の方は,左回転しながらその車の進行方向を基準に半時計回りに40°くらいの方向へ動いていきました。

両方とも大破なのですがエンジンが止まっていないので,そのままのろのろと歩道を動き,それぞれ柵と生け垣に突っ込みやっと止まりました。私が立っていたのとは反対方向へ両者ふっとんでいったので私は安全だったのですが,反対側の歩道で信号待ちをしていた自転車の若いにーちゃんに一台の車がのろのろと動いていき,その人が若者だったからよかったものの,あれが年寄りや小さな子供だったら,結構ヤバかったです。

朝の通勤時間なのでそれなりにたくさんの人がいて,すぐに警察と救急車へ連絡してましたし,乗車していた人のところへも数人がすぐに駆け寄りました。でも,私の性格ですから,それぞれの車に近寄り運転手のところへ行きました。たぶん右折しようとしていた車の方はエアバッグが開いていて,乗ってる人は意識もしっかり,苦しんでる様子もなく一安心。もう一方は,エアバッグが開いてなくて,運転していた女性は意識はありますが少し苦しそう。でも,私よりさきにドアを開け運転者に声をかけてる女性がいたので,なすすべなくその場を離れ.....る前に,「エンジンを止めましょう」と介護しようとしていた女性に声をかけエンジンを止めてもらいました。フロント部分メチャクチャになってるのにまだエンジン動いていて,車が動きそうだしそうなのです。しかも,そのメチャクチャのフロント部分からは何か知りませんが色んな液体がダダ漏れになっていて,火でもつかないかと,私はドキドキしてしまいました。あ,ちなみに,乗車してたのはどちらも運転手だけでした。

あとは,私にできることはなさそうだったので,駅に向かい大学にやってきました。事故の直前から瞬間を目撃していれば,警察が車で待って実験物理屋ならではのバイアスのない状況説明をしてやろうと思ったのですが,肝心の場面を見ていなかったので,証言することはないと判断してその場を去りました。でもあとから考えると,事故直後0.5秒後くらいからしか見てなくても,証言の一つとしてはそれなりに役立ったのかも,と思ってしまいました。

今日の事故の全容を目撃したわけではないので,一般論として書きますが,信号が赤になってもガンガン車が突っ込んでくる無茶っぷりは,先進国と呼ばれる国の中で最悪ではないでしょうか。イタリア人よりも酷い気がします。おっと,どこを先進国と呼ぶか,というのはまた微妙な問題ですね。あはは。おっと,そんなことはどうでもよくて,警察のみなさんには,信号無視と路駐を捕まえるべくぜひ仕事して欲しいものです。

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端に座りたい理由

このブログでもたまに話題にすることありますが,日常生活の中でふとした疑問がわくときってありますよね。いえ,今日のは疑問が湧いたというより,長いこと私が疑問に思ってることについてです。

私は通勤に,電車,というかモノレールを使用しています。ま,別にそのモノレールに限ったことではありませんが,座席の端になんとしてでも座ろうとする人をよく見かけるのですが,あれってなぜなのでしょうか。対面式の長いシートの端を是が非でも確保しようとする人がいます。特に多いと感じるのは,比較的年配の女性です。普通に座っているのに,どこかの端の席が空くとそこに向かって猛ダッシュする人がいます。その空いた端の席に近い人がいても,その人を押しのけてまで端に座ろうとする人,なぜなんでしょうか。

普通に考えると,あらゆる席が空いていたら端から座るのはなんとなく理解できます。座る場所が1, 2, 3, 4, 5というように5席あったとしたら,たとえば,1→5→3→2→4というように,隣りの人との間隔がなるべく広くなるように座るのは,私がそうするかどうかは別として,そういう行動パターンを取る人が多いし,あまり不思議とも思いません。でも,前述したように人を押しのけてまで,無理して端に座ろうという人には,その理由を聞きたくて仕方ありません。

ちなみに,私の個人的な趣味では,端はあまり好きではありません。正確には,車両の端の場合はよいのですが,ドアの横は好きではありません。座る席があるにもかかわらずドア付近に立って,しかも,座席の肘掛け部分とでもいうような場所に寄りかかっている邪魔者がときどきいるからです。しかもそいつが肩からかけるバッグを持ってたら鬱陶しくてたまりません。リュックだったりしたらもう最悪です。なので,ドアの横の席は好きではありません。あと,冬なんかは,ドア付近は駅で停車したときに寒いので,余計に好きではありません。

と,書いてて思いましたが,ドア付近に立つ人というのは,他人の乗車降車を邪魔するのが趣味の人たちなんですかね。ガラガラに空いてるのに座らずドア付近に寄りかかってる人は,人の通行を邪魔することに快感を感じる人たちなんでしょうか。すぐに降りるからという理由では合理的な説明になってない人がたくさんいます。空いてる車両に乗り,座ってしまった途端に次の駅で超大量の人が乗り込み,ドアまで行くのが大変なくらいの混雑に突然なることを心配してる,というのなら理解できます。私にはそれ以外の理由は思いつかないのですが,他にどんな理由があるんでしょうか。って,そういう人が今書いた理由でドア付近に立ってるとは到底思えませんけどね。

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研究会など

昨日と一昨日はT大学で行われた研究会に行ってました。月曜朝イチの飛行機で行き,帰りは伊丹着の最終便の一つ前で全てのセッションに参加することができました。ということで,飛行機移動を好む私にとってはピッタリの時間設定がされた研究会でした。

時間設定だけでなく,私たちのグループのIくんが非常にしっかりとした発表をして,その大きな成長ぶりを見せてくれたのは非常に大きな収穫でした。収穫という表現は適切じゃないかもしれませんが,まあ,とにかく頼もしく感じました。

ただし,私的にはかなり辛い研究会となりました。というのも,そもそも風邪気味で参加したのですが,月曜は会場が非常に寒くて(私の体調が悪かったので寒く感じただけかもしれませんが)体調が悪化,あまり眠れずに火曜を迎えたのですが,その日の朝は土砂降り。傘は持っていたのですが,足がビショビショになり,その状態で昨日一日を過ごすのは苦行でした。

そういうわけで,一夜明けた今日も休もうかと思う体調だったのですが,授業があったのと,締め切りの迫った書類書きを数件抱えているので休みたくても休めない状況でした。にしても,昨日締め切り1件,今日が1件,明日が2件,なんとなく今週中というのが1件。どれもサボることが許されない書類で,本当に泣きそうです。。。

そんな中,事件が勃発。明日締め切りの書類を今日とりあえず提出したのですが,Macで作ったexelではダメだと言われブチキレ。いや,正確には切れていません。Y教授や秘書のCさんになだめられ(てはいないか,彼らと話をして),なんとか意識(?)を回復。マクロが動かないのが問題なので,色々やってみるがやはりダメ。文科省に提出する書類なのですが,そのマニュアルにMacでは動かないことを確認済み。Windowsのエクセルを使いなさいという注意書きを発見。うーむ,確信犯です。とりあえず,上記2人も私もWindowsを持ってないので,事務になんとかしてくれという返信。ついでに,文科省の担当者の連絡先を照会。

しんどいから早く帰ろうと思っていたのですが,興奮したのでまだ大学にいます。いや,でも,今日は本当に早く帰ろう。

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来週土曜に向けて

今年度は私はノータッチですが,物理学科では今年も高校生を対象にした6回連続の講義シリーズを開催しています。実際には講義だけでなく,簡単な物理実験や大学の施設見学などもあり,非常に充実した内容となっています(Saturday Afternoon Physics)。今年は自分がタッチしていないので言ってしまいますが,この内容の体験学習が無料で受けられるというのは物凄いお得です。大学業務のほとんどがそうだと言えばそうなのですが(なにせ,常勤の教員は死ぬまでコキ使って大丈夫な裁量労働制ですから,ははは),この企画運営も基本的には有志によるボランティアで,それを毎年続けてらっしゃる方はエラいなぁと感心します。

その体験学習は毎週土曜6回連続なのですが,来週の土曜は研究室見学が予定されています。見学とは書きましたが,実際には研究室を見て回るだけではなく,各研究室で実習みたいなことをやって楽しんでもらうという企画です。その企画の準備をかねて,今日はY教授と二人で簡単な実験を幾つかやりました。内容的には学部1年生の物理学実験相当の内容ですが,それを与えられた器材でやるのではなく,そこら辺に落ちてるシンチ+PMTでどんなことができるか色々試してみました。いや,これが非常に面白くて,1時間半程度でしたが,今日は非常に楽しみました。こうやって実験してるだけだったら,給料泥棒と言われても仕方がないくらい楽しいです。

で,色々やってみた結果,まずは宇宙線が降り注いでいることを複数のシンチを使うことで実感してもらい,その後,線源を使って,受け取る粒子の数が距離の2乗分の1に比例していること,つまり,私たちの空間が3次元であることの説明,それから時間があれば,物質の吸収係数でも測ってもらおうということになりました。ちなみに今日のハイライトは,距離依存性を測っていたら,距離を大きくしていくと2乗分の1よりもやや急に落ちていくんですね。そこで空気による吸収を疑い,空気の物質量を計算。さらに,Y教授がいつも持ち歩いているフェルミのログブックのページ数を変化させることで,炭素での吸収係数を測定。物質量の概算から,空気で吸収されてると仮定した場合とほぼ一致していることを確認。二人で納得して実験をやめました。

これらをもちろん精度よくやったわけではありません。測定時間は私の腕時計。距離の測定はそこら辺にあった巻き尺。というように,非常に大雑把なものです。個々の測定の時間だって非常に短いです。それでも手順を間違えずにやるとちゃんと解釈可能な結果が出るもんだなぁ,と自分たちでやっておきながら感心してしまいました。それにしてもY教授,ログブックにlog-logのグラフ用紙まで常備しているんだそうです。相変わらず,やります。

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運動量測定とエネルギー測定

粒子検出ということで,これまでに,荷電粒子と物質との反応の仕方,その反応を利用した荷電粒子の検出,そして光子あるいは電子が生成する電磁シャワーについて,気が向いたときに書いてきました。今日はその続きで,運動量とエネルギーをどうやって求めるかという話です。

荷電粒子の運動量測定の原理は単純です。なんとかの左手の法則です。磁場があれば荷電粒子は曲がりますので,磁場を用意して,先に説明したような方法で飛跡を捉えることができれば,その粒子の運動の曲率を求めることができます。磁場をあらかじめ測定しておけば,曲率と磁場の大きさから運動量を求めることができるというわけです。真っすぐな飛跡から曲率を求めるよりも,大きく曲がっている飛跡の曲率を求める方が精度よく曲率を求められますので,運動量の測定精度を上げるにはより強い磁場をかける必要があります。同様の理由で,運動量の高い粒子よりも低い粒子のほうが運動量測定精度は高いです。運動量が高ければ高いほど,磁場があっても真っすぐ飛んでしまいますので。曲率を精度よく測るのがポイントですから,検出器が大きい方が有利とも言えます。円弧の一部分から曲率を求めることを考えれば,円弧が長ければ長いほど精度よく曲率を求められるというのは直感的にもイメージできるのではないでしょうか。

以上の簡単な原理に基づいて荷電粒子の運動量を測ることができます。しかし,中性子のような電気的に中正な粒子の飛跡は検出できませんので,個々の粒子の運動量を測れるのは荷電粒子に限ります。中性子などは,後述する方法でエネルギーを測れるのみです。ただし,私たちが普段扱っている粒子たちは高エネルギーなので,運動量とエネルギーの大きさはそれほど変わりません。E^2 = p^2 + m^2 で,p>>m なので Eとpはほぼ等しいです。

さて,エネルギーです。光子や電子の場合は,粒子の持つエネルギーが電磁シャワーというものに転化されるということは,数日前に説明しました。ですから,電磁シャワーのエネルギーをなんらかの方法で測ってやればよいことになります。電磁シャワーというのは,物質中で光子→電子・陽電子対→光子放出→電子・陽電子対→…という反応を繰り返していくことでした。ということは,結局のところ,そのエネルギーは,電子あるいは陽電子が物質中を移動するときに物質と相互作用する形で失っていきます。つまり,荷電粒子が物質を電離することでエネルギーを失うのです。電磁シャワーのエネルギーが大きければ大きいほど,電磁シャワーが広がり長く続きますから,それに従って生成される(陽)電子数が増えま,電子あるいは陽電子により生成される電離電子とプラスイオンの量が増えます。よって,最終的に生成される電離された電子あるいはプラスイオンの電荷量を測定すれば,電磁シャワーのエネルギーが測定できることになります。

電離電子あるいはプラスイオンの電荷量を測るには,荷電粒子検出と全く同じ方法を使います。電場をかけておき電荷を集めるか,シンチレータなどを用いて光量を量るか,のどちらかです。エネルギーを測るのが目的ですから,入射電子あるいは光子のエネルギーと,最終的に信号として得られる電気信号,あるいは光量が比例関係になければなりません。その比例関係の度合いを線形性と呼び,エネルギー測定装置の大切な性能指標の一つです。また,最終的に得られる信号量がわかってもそれだけでは入射粒子のエネルギーが絶対値としてどれだけなのかはわかりませんから(信号量の大小で相対的なエネルギーの大小だけならわかりますが),どれけの信号量だと入射粒子がどれだけのエネルギーを持っていたのか,という対応関係作りが必要になります。これをエネルギースケールの較正とよび,実験家が実験をする上で最も大事な事柄の一つだったりします。

イメージトしては,目盛りのついていない温度計に目盛りを振る作業だと思ってもらうのがいいかと思います。みなさんならどうやって目盛りをふりますか。何かの基準があればいいですよね。それも2点以上。となると,すぐに思いつくのは水の沸点と融点を利用することでしょうか。沸騰したお湯に温度計を入れば,そのときの目盛りが100℃です。水を冷やしていき,氷になったときの温度を使えば0℃の目盛りをふれます。あとは,温度計の反応が線形であることを仮定すれば,100℃と0℃の感覚を100等分すれば,1℃ごとの目盛りもふれます。素粒子物理の実験でも同様のことをやるわけです。なんらかの方法でエネルギーの値が既知の粒子を使い,その粒子の作る信号量が何GeVというように目盛り付けをするわけです。

ところで,エネルギー測定に関しては電磁シャワーを使うという話をしてきましたが,光子と電子以外についても簡単に触れてみます。

荷電π中間子,陽子,中性子などのクォークからなるハドロンの場合は,物質中を通過すると原子核と強い相互作用をすることで,ハドロンシャワーとよばれるものを作ります。クォークがグルーオンを放出→グルーオンがクォーク・反クォーク対を生成→クォークがグルーオン放出→…というように,電磁シャワーと同じように雪崩式の反応を起こします。クォークができるとそれらがすぐにハドロンになりますので,電荷を持ったハドロンが生成されれば,電磁シャワーと全く同様の原理でエネルギーを測定できることになります。ただし,電磁シャワーと違って注意すべきことが幾つかあります。

一つには,生成されるハドロン種は必ず同じというわけではないので,同じエネルギーの同じハドロンが入射したとしても,検出器中に残すエネルギー,つまり信号量の変動が大きくなります。ときには,ハドロンが崩壊してニュートリノとしてエネルギーを持ち逃げすることもありますし,中性π中間子ができるとすぐに2つの光子に崩壊するので,電磁シャワーを作ります。なので,検出器の問題ではなく原理的にどうしても電磁シャワーよりもエネルギー測定の精度(分解能)が悪くなります。

そしてもう一つは,電磁シャワーよりもハドロンシャワーは生成されにくいので,測定したい粒子が長い距離検出器中を通過させる必要があります。確率過程なので必ずこういうことが起こるというわけではありませんが,平均すると,粒子が物質に入射すると,電磁シャワーはすぐに生成されるのに対して,ハドロンシャワーは物質中をある程度進んでから生成されます。ですので,検出器の配置としては,粒子の生成位置に近い所に電磁シャワー,その後ろにハドロンシャワーを検出するための装置,という配置になります。また,ハドロンシャワー中のハドロンも次の雪崩を作るためには,電子や光子よりも長い距離進まなければなりませんので,シャワーの大きさが電磁シャワーよりもハドロンシャワーのほうが大きくなります。その違いを利用して,電子・光子とハドロンを見分けたりすることもあります。

もう一つ,ミューオンはまた別なのですが,それはまた後ほど。

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