ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

実験室の片付け

数ヶ月に一回私はやっているような気がしますが,今日もまた地下実験室の片付けをやりました。修士課程の1年生2人と,学部4年生の2人,そして私の5人で,3時間半ほど頑張りました。

学生さんたちが去年の4年生実験のセットアップとシンチレータなどを片付けている間,私は研究室の占有するスペースの半分の領域をひたすら片付けました。CAMACクレートや,とてつもなく重いケーブルたちと格闘。もう握力はなくなり,腰痛がすでに来ています。重いものの移動には学生さんにも手伝ってもらえばよかったと後悔中。

でもそのおかげで,HくんとJくんがよく作業をしているあたりのスペースは大幅に増加。新たに買ったデシケータも余裕で入れることができました。学生さんたちが片付けた領域も大きなスペースを確保。作業前からは見違えるほどすっきりとしました。Tくんは金属製のフレームを頑張って整理して,今まで危険な置き方をされていたものをかなり修正。目立ちませんが、これも今日の重要な成果です。

作業をしたみなさん,お疲れさまでした。それにしても,うー,体が痛い...。

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光子の検出と電磁シャワー

今回は,光子(γ線)の検出と電磁シャワーに関してです。

光子あるいはγ線は電磁波です。γ線といった場合は可視光よりもずっと波長の短い(=エネルギーの高い)電磁波で,ATLAS実験で扱うようなγ線は数10GeV以上です。電磁波と物質との相互作用で重要なのは3種類。光電効果,コンプトン散乱,そして電子・陽電子の対生成です。光電効果では光子のエネルギーは,仕事関数(物質から電子を引き離すのに必要なエネルギー)と引き離された電子の運動エネルギーの和に等しくなります。検出という観点からは,光子が物質に吸収されて,電子だけが出てくるというのが重要です。一方,コンプトン散乱の場合は,光子が原子中の電子を弾き飛ばすイメージで,物質に入射した光子は吸収されてなくなりません。つまり,光子が入射して,光子と電子が出てくるのがコンプトン散乱です。対生成というのは,原子中の原子核あるいは電子の電場と相互作用をして光子が電子・陽電子対に変化することです。他にも相互作用の仕方は幾つかあるのですが,私たちの扱うエネルギー領域では以上の3つの相互作用が重要です。

どの反応を起こしやすいかは物質に入射する光子のエネルギーに依存します。可視光領域では光電効果。keVからMeVくらいまではコンプトン散乱。そしてMeVを超えると対生成が反応のほとんどをしめます。電子の質量が0.5MeVなので,対生成を起こすためには1MeV以上のエネルギーが必要です。で,先にも書いたように,私たちが扱う光子は数10GeV,ATLASでなくても高エネルギー物理とよばれる分野ではMeV以下を扱うことは稀なので,私個人にとっては光子と物質との相互作用というと,ほとんど対生成を意味しています。

では,数10GeVの光子が物質に入ると何が起こるかというと,上記のようにまずは電子・陽電子対生成が起きます。生成された電子と陽電子は,数日前のエントリーで書いたように物質中を進みながら物質を電離してエネルギーを落としていきます。ただし,電子・陽電子は他の荷電粒子と違って非常に軽いために,荷電π中間子やミューオンとは少し異なった挙動を示します。

荷電粒子は,加速されると放射光を出します。たとえば円運動をする場合,接線方向に放射光を出します。物質中に荷電粒子が入射すると,物質を構成する分子だか原子からの電場から力を受けますので,やはり加速度を与えられます(元々の運動に比べると減速)。ということで,放射光すなわち光子を放出します(この現象のことを制動輻射という)。ただし,放射光を出す量が荷電粒子の質量の4乗分の1(だったかな??)に比例するので,重い荷電粒子というのは放射光をあまり出しません。逆に,電子や陽電子はガンガン光子を出します。

元に戻ると,光子が物質に入射すると対生成。生成された電子や陽電子は光子をどんどん放出。そうやって放出された光子がまた電子・陽電子対を生成…ということを雪崩式に繰り返していきます。この雪崩のことを電磁シャワーとよびます。制動輻射を起こす確率は,電子のエネルギーにも依存して,エネルギーが下がると制動輻射を出しにくくなります。電磁シャワーは,電子のエネルギーが下がり,物質を電離させることによるエネルギー損失が制動輻射によるエネルギー損失よりも大きくなるまで続きます。そこまでエネルギーが下がると,あとは,電子は他の荷電粒子と同じように物質を電離させるだけとなります。

今は,光子が物質中に入った場合の説明をしましたが,電子が入射してもほぼ同じです。最初の光子→電子・陽電子対生成という反応があるかないかだけの違いなので,一旦物質に入射してしまうと光子と電子の区別がつかなくなります。実際実験においても,物質入射前に荷電粒子として飛跡を残すかどうか以外では,光子と電子の識別はそれほど簡単ではありません。

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スクール雑感

2週間弱の国際スクールが終わりました。金曜日最終日には,午前中村山さんの講義を2つ。午後にはCERN所長とKEK機構長それぞれの講演という豪華版で幕を閉じました。細かいトラブルは幾つかありましたが,大きな問題は起きず,全体的には非常にスムーズでした。KEKの事務方の二人の女性が非常に頑張ってくれたのと,一緒に仕事してるとあまりの仕事の細かさに私みたいな大雑把な人間は閉口してしまうのですがCERNのNEさんの異常に細かなto do listのおかげだったのかな,と改めて感じています。

NEさんは,CERN関連の幾つものスクールをすでに20年以上運営しているまさにスクールの専門家。とにかく細かくて,準備段階の細かな議論には私はまったくついていけませんでした。そんなのどっちだっていいじゃん,学生に好きにさせればというような内容まで細かく指示。小学生の遠足のしおりよりも細かな指示内容で,それに関する議論に付き合うのは私にとってはかなりの修行でした。でも,20年以上かけて培ったノウハウは流石で,生徒の募集から選抜にかけての手際の良さは見事でした。Indico上にすでにセットアップされた応募様式を使い,生徒の情報すべてが(私の嫌いな)エクセルに自動的にまとめられ,それを使って国際運営委員会のメンバーが採点。その結果も簡単に集計できるようになっていて,生徒選抜の委員会では,合否の線上の生徒について重点をおいて議論することができました。

会場のホテルは,このテのスクールをやるには非常に贅沢なホテルでした。大きな国際スクールのシリーズ第1回をホストするため,その他私の知らなかった政治的思惑がからんで,KEKが予算を頑張って出したおかげで,そのようなホテルでの開催を実現することができました。ただ,豪華ホテルであればこその問題も幾つかありました。日本で次回以降開催するときは,もう少し肩の力を抜いて学生が心地よく合宿することのできるような場所でもいいのかもしれません。今回は,第1回を日本でホストするためにかなり無理をしてファンシーな会場を選んだという面があります。次回以降ではそこまで頑張らなくてよいので,もう少し身の丈に合った運営をできるかもしれません。

そして,一番気になるのは,学生にとって有意義なスクールとなったかどうかです。アンケートを取ってこれから解析することになりますが,アンケートではわからない,本当に生徒にとって教育的であったのかどうか,そこが気になります。そしてもう一つ大事なのは,こういう合宿(?)生活を通して同世代の研究者仲間を作ることだと思うのですが,それができていたのか,特に日本人学生はそれができていたのか気になるところです。

第2回はインドで開催されることがほぼ確定しました。先週木曜日に委員会があって,その線で進むことになりました。とはいえ,インド開催には小さな問題,宿題があることもわかりました。ビザです。パキスタンはもちろんのこと中国の人にもビザがなかなか発給されないんだそうです。国際的な政治問題と科学は切り離して考えたい,考えるべきだと科学者は考えるわけですが,そうは行かない現実があります。でも,フェアウェルパーティのときに,パキスタンの学生が司会役で場を盛り上げ彼自身が歌を歌い,続いてインドの学生が歌を歌う光景というのは,まさに国際親善という感じがしました。JEが歌を歌い踊ったことの次にインプレッシブな場面でした。

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通訳

長い1日がようやく終わりました。

CERN所長の講演、質疑応答、講演会に続く立食パーティでの所長のスピーチ、成り行きでそれぞれ全ての通訳をしてしまいました。その感想は、とにかく疲れました。自分で講演するのより何倍も疲れました。講演はトータルで90分。通訳しながらなので実際には45分程度の内容ですが、その間、所長が話すことを神経を研ぎすませて聞き、それを日本語変換するという作業をひたすら続けるのは、本当に大変な作業でした。普段使っていない脳味噌をフル回転させたという実感があります。

やってみてわかったのですが、英語が基本的に下手、かつ通訳という作業に慣れていない私にとっては明らかに不足している能力が幾つかあることがわかりました。まず、文章1つなら覚えていられるのですが、講演のようにスライドを使う場合、流れがあるのでスライド1枚分くらい、つまり1分間以上話し続けることがあります。そうすると、自分の英語力だと話す内容を理解するのに処理能力のかなりの部分を使ってしまうため、最初のほうで話していたことを覚えていられなくなります。全くもってFIFOから古いデータが出ていってしまったような感覚です。それから、当然というのも変ですが、数字、特に桁の大きい数字が出て来るともう完全にパニくります。数字の脳内処理が全く追いついていきません。そして、もう一つ。所長の言ってることを理解できても、それを的確な日本語に瞬時に置き換えるのは至難の業でした。これは,物理の話のときはそれほど困らないのですが、日常会話のような内容になると途端に困りました。たとえば、embarrassment という言葉がでてきたとします。その意味は理解して話の内容はわかっても、それを日本語でどう表現すればいいのかすぐに出てこないんですね。とまあ、こういう諸々があって、数字の桁を間違えたり、かなりの省略があったりと色々ありました。

特に頭が真っ白になったのは、立食パーティののときです。もう自分の出番はないと思って酒を飲み、リラックスして周りの人と話をしていたところ、突然スピーチの通訳と言われ、その時点ですでに若干聴牌気味。でもって、酔ってたからなのか、何を言ってるのか全く意味を理解できないときがあり、本当に参りました。その一例は、英語を勉強しなさいみたいなことを言ってるときがあったのですが、何を勉強しろと言ってるのかまではきちんと聞き取らずに、そこまで喋った内容の日本語表現を考え始めました。つまり、私の心の中では何かを勉強しなさいというフレーズを聞いた時点で、素粒子物理あるいは科学だと判断して日本語表現を考え始めたのです。でも実際には、勉強しろと言ってたのは英語。いや、参りました。他の人が訂正してくれたのですが、なんで英語を勉強しろなんて言ってるのかそこがわからないため、私の中では全く理解不能な内容になっていたのです。パーティのときに所長はパーティ参加者の日本人と英語を勉強しないとならないね、ということを話していたそうで、私程度の英語力だと自分の知ってる知識で完全に聞き取れない部分を補完していくので、こういう間違いが起こってしまいます。

そんなこんながあった講演会とパーティですが、講演会に参加した方が講演会を楽しめたのかどうかが気がかりです。私の通訳がダメダメなのもありますが、彼の話の内容は非常に高度で、後半部分は素粒子物理をやってる修士課程の学生でも理解できない箇所が多々(ほとんど?)ありました。なので、内容を理解するというより、CERNの所長が何か難しい話をしていたという雰囲気を楽しんでもらえたら、という感じでした。

ところで、全てのプログラムをこなした後に、CERN所長、KEK機構長、その他私も含めてトータル6人で居酒屋に行きました(全員物理屋)。朝食のときにコーヒーがなかなか来なくてイライラしていたのとは違い、CERN所長は寛いで日本酒を楽しんでいました。とてつもなく疲れた1日でしたが、色々と貴重な経験ができて、その点では本当に充実した1日でした。

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CERN所長のインタビュー

今日がスクールの最終日。残すは、CERN所長とKEK機構長二人のトークだけとなりました。

午後は彼らの話を私も聞きますが、午前中は村山さんのトークを聞けませんでした。というも、CERN所長のインタビューが2本あり、その通訳というかサポートとしてインタビューにつきあっていたからです。でも、村山さんの面白い話を聞けなかったのは残念ですが、CERN所長のインタビューに付き添えたのは、それはそれで非常に興味深かったです。素粒子物理学あるいはヒッグスに関する内容はもちろんのこと、基礎科学に関する話は普段から私たちも考えてることだし、場合によっては私たちのほうが詳しいこともあるのでそれほど興味をひきませんでしたが、CERN所長としてLHCの運転計画を決めるにあたってどういうことを考えているのかなどを聞けたのは、本当に興味深かったです。

にしても、お偉いさんは本当にタイトなスケジュールで行動してます。水曜に東京に着きその日のうちに東京でのシンポジウムで講演。昨日木曜は文科省だかの人々と会議。その後福岡に移動して、今日の午前中は上記のようにインタビュー、そして午後はスクールに参加(+講演)。明日土曜はまた福岡市内で一般向けのシンポジウム。で、私たちが学会なんかで話すのと違うのは、自分の講演の前後に政治家や役人との懇談会があるところで、全く休む暇がありません。そして驚くべきことに、日曜には今度はロサンゼルスに飛ぶとか。でも、これが普通なんですよね、きっと。精神的にも肉体的にも超タフじゃないとやってられない仕事ですね。

そのせいか、今朝、食事の時に会ったときは若干不機嫌。スクールの生徒と一緒にセルフサービスの朝食なのですが、コーヒーが切れていて、頼んではいたのですがそれがなかなか来なくてちょっとおかんむり。私が再度催促しに行くとちょうどよいタイミングで新しいのが来て、そしたら機嫌が良くなりました。CERNで誰か人と会うときは必ずと言っていいほどカフェテリアでコーヒーを飲みながら話をします。CERNの文化だと思うのですが、さすが所長。彼もコーヒーが欠かせないようです。ってか、朝イチには必要なのかもしれません。

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荷電粒子の検出

数日前の続きで、今日は荷電粒子をどうやって検出するのかという話です。

荷電粒子は物質中を通過すると、荷電粒子ですから物質を構成する分子あるいは原子と電磁相互作用を起こします。その電磁相互作用によって物質が電離されるので、荷電粒子の通過線上に沿ってプラスイオンと電子が生成されます。そのイオン、あるいは電子を検出すれば、荷電粒子の飛跡がわかるというわけです。荷電粒子と相互作用を起こさせる物質(=センサー)に電位差をかけておけば、電離されて生成されたイオン、あるいは電子を集めることができ、電流が流れ、電気信号として観測できます。素粒子物理実験でよく使われるセンサーは、大きく分けるとガスとシリコンなどの半導体の2種類です。

ガスを使う場合は、密閉容器中にガスを入れ、かつその容器の中に電極となるワイヤーを張ります。ワイヤー間に適当な方法で電圧をかけておけば、先に説明したように、荷電粒子の通過に伴いワイヤーに電流が流れます。細かな説明は省きますが、ガスの電離具合を上手く調整すれば、荷電粒子の通過した飛跡に沿ってだけガスを電離させることができるので、ワイヤーを複数張っておけば、どのワイヤーに電流が流れたかで粒子の通過位置を測定することができます。

シリコンなどの半導体を使う場合も原理はガスのときと全く一緒です。センサー中で生成されたイオンや電子を集めることで電気信号を生成、粒子がどこを通ったのか測定します。検出器の一つ一つを小さくすればするほど、より高精度で粒子の通過位置を測定できので、ピクセルをより微細にするというのは検出器の測定精度を上げるための単純で重要な原理です。デジカメで高解像度を得るために単位面積あたりのピクセル数を増やす(=一つ一つのピクセルを小さくする)のと同じですね。ただし、一般のデジカメで捉えるのは荷電粒子ではなく光(による光電効果)だということは数日前にお話しました。

物質との相互作用は同じく電磁相互作用を使いますが、その反応を電気信号ではなく光として検出するものの代表例にシンチレータというものがあります。分子あるいは原子が荷電粒子との相互作用で励起され、その後基底状態に戻る際に、励起状態と基底状態とのエネルギー差に相当するエネルギーを持った光が放出されることをシンチレーションと呼びます。凄くあっさり書いていますが、実際には励起だけでなく電離があったり、エネルギー状態が複雑だったりと色々あります。まあ、その辺の細かいことは忘れて、そういうシンチレーション光を出す物質(=シンチレータ)をセンサーとして使い、さらにその光を検出する装置をシンチレータに付けておけば、粒子が通ればシンチレーション光を検出することで、粒子を捕まえることができるというわけです。私たちが使う光検出器の代表例がPMTと呼ばれるものや、フォトダイオードです。

他にも荷電粒子の検出方法・原理はあるのですが、今日はその代表例を説明してみました。ATLAS実験はもちろん、ほとんどの素粒子実験で、上記の原理を利用した検出器が使われています。

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再び福岡へ

来ています。国際スクールの後半、生徒の発表を見るなど最後の締めの部分に参加するためのつもりでした。

ところが、私とは違うレイヤーの委員会に事情があって参加したり、CERN所長への新聞記者のインタビューにサポート役として付き添ったり、と、なんやかんやでスクールにはあまり参加できなさそうな状況です。村山さんのトークを聞けないのが残念です。そして、土曜日はスクールとは原理的には独立な一般市民向けシンポジウムに参加するCERN所長とKEK機構長のお供。ILC関係者に混じってなぜか私が参加。微妙な立ち位置なので、CERN所長から返事に困る類いの質問をされないことを祈っています。

って、もうすでに今晩は困らされました。理論屋の重鎮JEさんとCERNのそれなりの重鎮さんたちとバーでビールを飲んでたら、ILCに対する意見、というか日本のコミュニティはILCについてどう思ってるのか聞かれ、いやー、参りました。同年代の気心の知れた相手ならまだしも、初対面の重鎮さん連中にそんな質問されたら、せっかくプレミアムモルツを飲んでるのに味がわからなくなります。でも、JEさんのILCに対する意見や、物理以外の話も色々聞けて、そういう意味では冷や汗をかかされた甲斐があったのかもしれません。

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物書き

ここしばらくは物書きに追われる日々になりそうです。このブログを読んでる方だったら、科研費の申請書の締め切りが間近に迫ってる方もいるかと思います。今年は私は自分が研究代表者となって申請書を書くことがないので、とある申請のほんのわずかな手伝いだけ。ということで、科研費についてはうんうん唸るようなことは今はありません。

その代わりにと言ってはなんですが、とある予算関係の書類書きとその準備に忙しくなりそうです。独立した2件なのですが、たまたま申請締め切りが近いので、準備する側としてはなかなかにタイトなスケジュールとなりつつあります。

それに加えて、YさんとTくんと共同執筆している本の原稿書きがラストスパート。いえ、まだ本当のラストではありませんが、そろそろスパートをかけないといつまで経っても終わらないということで、1回目の校正後の修正にスパートをかけています。全体を通して読んでみると各章を個別に見ていたのでは感じなかったことなども目につき、てにをは以外のわりと大きな修正も加えています。

そして、今日依頼が舞い込んできた原稿書きがもう一つ。

本の原稿書きには厳格な締め切りはありませんが、それ以外は全ての締め切りが11月初旬から中旬にかけて。今週はまた福岡のスクールとCERN所長ホイヤーの講演通訳などのために福岡にしばらく行きますし、それ以外の出張もあります。自分の計算機のICalを見て、戦々恐々としています。

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粒子検出の原理

幾つかのきっかけが重なり私の中では必然に近いのですが,他人にとっては全く突発的ですが,粒子を検出する仕組みについてちょっと説明しようかと思います。

素粒子物理学実験では,当たり前ですが様々な粒子を検出して,その粒子の運動量や飛来方向などを測ります。それらの情報をもとに,検出した粒子がどういう反応により生成されたのか,どういう粒子の崩壊により生成されたのか,その反応の強さはどれくらいか,などなど様々な情報を引き出します。素粒子の数はそれほど多くありませんが,私たちが素粒子として観測するのはレプトンと光子くらいで,あとはクォークの組み合わせである無数のハドロンになります。とはいえ,多くのハドロンは寿命が非常に短くすぐに安定なハドロンに崩壊してしまいますので,私たちが検出器で捉えるハドロンの種類というのはそれほど多くはありません。

ということで,おもいっきりざっくりとどういう粒子たちを検出器で実際に捕まえるかというと
- 光子(中性π)
- 電子
- ミューオン
- 荷電π
- 荷電K
- 陽子
- 中性子
くらいになります。

じゃあどうやってそれらを検出するのか,というのを何回かにわたって(気が向いた時に)書いてみようと思います。

まず,粒子を検出するというのはどういうことか考えてみます。日常生活で一番馴染み深い検出器って何でしょうか。デジカメあたりを想像するかもしれませんが,誰もが持ってて,このブログを読んでる時にも使っている検出器がありますね。そう,目です。目は可視光を捉えることのできる検出器で,素粒子物理学実験で使う検出器の仕組みとつまるところ同じです。

網膜には光受容細胞があり,その細胞に光が入ると光電効果を起こします。その結果電子が飛び出し,それが神経を刺激してさらにその信号を脳が処理することにより光を感じるわけですね。小さな光受容細胞がたくさん並べられているので,デジカメのピクセル同様,どの細胞が光を感じたかという情報を元に画像を脳内で作り上げ,視覚ができあがっているのです。どうです,驚きですね。量子力学的な反応によって私たちは視覚を得ているのです。先ほど「デジカメのピクセル同様」と書きましたが,デジカメの原理も全く一緒です。光受容細胞の代わりにセンサーとして多くの場合シリコン半導体を使っていますが,その検出原理は同じ光電効果です。

ところで,有名な話かもしれませんが,暗い星を肉眼で見ることができるのは光電効果のおかげ,つまり,目は光を波としてではなく粒子として捉えているからだ、という話をご存知でしょうか?

人間の視覚というのは,何十秒に一回だったか忘れましたが,常に視覚情報を更新し続けています。ある画像をそのまま保存してるわけではありません。車のタイヤを見てると実際の回転とは逆に回ってるように見えたりすることありますよね。人間の目が何秒かに一回シャッターを切り続けてその静止画像を連続して眺めているからこそ,そういうことが起こります。

で,星の話ですが,肉眼で見ることができる暗い星の光のエネルギーを波だと考えると,そのエネルギーを一個の光受容細胞が検知するには何秒間も波を受け続けなければならないのだそうです。上で書いたように,人間は数十秒に一回画像更新してしまうので,一回シャッターを切った時間内では暗い星からの光を光受容細胞は光として検知できません。ところが,光を波ではなく粒子だと考えると状況が変わります。光を波と考えると,光受容細胞全てが一様に星からのエネルギーを受け取ることになり先に説明した状況になりますが,光が粒子だと考えると,光の粒一つ一つは光電効果を起こすのに十分なエネルギーがありますから光受容細胞が光を検知することができます。ただし波の場合と違って空間に一様にエネルギーが降り注いでいるのではなく,雨粒のようにまばらに光の粒が降り注いでいるので,光受容細胞の全てが光を検出することはありません。それでも何個かの光受容細胞が光の粒を検出するので,何十分の一秒間という短いシャッタースピードを持つ人間の目にも暗い星が見えるのだそうです。

おっと,最後の脱線が長くなりました。脱線内容については専門じゃないので本当かどうか知りませんが,可視光を検出する仕組みは,目もデジカメも光電効果を利用してるんだということを今日は説明しました。もう一言だけ言っておくと,あらゆる粒子の検出に共通ですが,なんらかの粒子を検出するということはその粒子が検出器を構成する物質と相互作用するということです。今回の例では可視光が光受容細胞やシリコンセンサーと相互作用,具体的には光電効果を起こしていました。逆に相互作用しなければ検出のしようがありません。ニュートリノはレプトンなので強い相互作用しませんし[指摘を受け修正。指摘してくださったかたありがとうございます],電荷も持ってないので電磁相互作用もしません。弱い相互作用しかしないので物質とはなかなか相互作用を起こさず,多くの実験ではニュートリノを検出することはできません。検出しようと思ったら,スーパーカミオカンデのように巨大な検出器を作りそこに大量にやってくるニュートリノがたまに反応するのを気長に待つしかないのです。

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後期最初の授業とか

今日と明日は授業があるため,大学に戻って来ています。その他にも大学でやりたい所用がありますので,スクールに戻るのは来週半ばになります。

というわけで,今日は2学期最初の授業。理学部1年生相手の実験の授業なのですが,1回目ということで,私以外の担当教員一人とTAとで授業前に打ち合わせを行いました。具体的な記述は避けますが,そこでかなりイラッとしたことがあったため,授業が始まっても私の心が落ち着かず,通常よりも若干厳しめの授業展開となりました。怒り心頭で教えるべきポイントを教え忘れたというようなことはなかったので,まあ,いいと言えばいいのですが,いつも言ってるように授業のときは心の平穏を保った状態で授業に臨みたいものです。

授業で思い出しましたが,11月18日に東大の小柴ホールで一般...ではなく高校生・大学生対象の講演会をやります。去年の12月頃に佐賀でやったのと同じシリーズで,平成基礎科学財団主催の講演会です。東京方面で興味のある生徒・学生のみなさんはぜひ話を聞きに来てください。あるいは,ぜひお薦めください。しかし,凄いなぁと思ったのは,埼玉県に住む私の姪の高校にもその案内が配られていたということです。やはり人を集めるには熱心な広報活動,もっと言うと熱意だけではなく予算が必要なんだなぁ,と改めて感じました。

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福岡にて

福岡に来ています。だいぶ前から準備をしていた国際スクールがいよいよ今日からなのです。今日から,と言っても,今日は参加者が集まるだけで,明日の朝から講義が始まり,晩は歓迎のレセプション。実働部隊ではない私は明後日まで福岡にいて,来週半ばにまた福岡に戻って来る予定です。

だいぶ前から準備をしていたと書きましたが,実際のところいつくらいから準備を始めたのだろうと調べたところ,この件に関するKEKの大御所(?)Tさんからのメールで一番古いのは2010年の8月となっています。Tさんの尽力のもと新しいスクールシリーズを立ち上げるべく国際運営委員会のメンバーが固定され,その後,去年の春から初夏にかけてサイト選び。サイトを決めてからローカル運営委員の実務レベルに辿り着くまでの間,スクールの骨格やら内容の決定と,講師および生徒のセレクションまでが私の属する国際運営委員の仕事でした。それが一段落したのが今年の初夏で,その後はローカル運営委員長のKさんのもとKEKのYMコンビが事務局として実務をほとんどこなし,そしてめでたくスクール開催に漕ぎ着けた,というのが私から見たこのスクールの準備の歴史です。

なんで私がこの仕事にかかわったのかよくわかりません。TさんやKさんにはこのスクールをやることによるメリットがあるのに比べて,私にはメリットらしいメリットが見当たりません。強いて言えば,政治を勉強する機会を与えられたということでしょうか。それでも足をつっこんでしまった以上,スクールの成功を願い,なんとなく一人称でこのスクールに絡んでやってきました。そのスクールがようやく始まる,あるいは2週間後に終わるというのは感慨深いものがあります。

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グループの近況

CERN常駐組は現在3人。ポスドクのOくんはH→bbの解析プラスシリコン検出器の性能の長期モニター。D2のOくんはH→WWの解析,D1のEくんはシリコン検出器のノイズ解析その他,モニタリングプログラムの整備などを行っています。この前のCERN出張時にみんなで晩飯を食べに行くなどして,元気で頑張ってるのを見て安心してきました。

残りのメンバーは大学にて研究。D4のHくんはD論をひたすら書きつつ,後輩のアドバイスをしている模様。M2のJくんはピクセル読み出し。今はその高速化に挑んでいます。割と簡単な修正変更により,これまでもかなりのスピードアップに成功しましたが,さらなる改善が可能かごちゃごちゃと色々やっています。同じくM2のHくんは,少し前にもブログで書いたように,テレスコープと呼ばれる検出器の製作開発中。今は回路周りの設計をしていて,この方面には私が無力なのでその助けを借りず,KEKのIさんを始め測定器開発室の人々の助けを借りつつ,自力で研究を進めています。Tくんは,モンテカルロのデータを使って最近解析を始めました。

おっと,CERNでも大学でもないところにいる学生も一人。M1のIくんはKEKに今います。先月からKEKに行ったり来たりしていますが,段々とKEK滞在時間が長くなりつつあります。やっているのは,MPPCからの信号読み出しボードの開発。バリバリのハードウェア開発でKEKのNさんとYさんに面倒をみてもらい,どんどん成果を出してきています。学部まで素粒子物理実験ではない研究室だったのですが,最近めきめきと力をつけてきています。

ざっとこんな感じでグループのメンバーは研究を進めています。私がATLASを始めたときに比べて格段に層が厚くなり,幅広い研究をやれているようになっています。そのおかげで,私も色々と勉強になっています。物理解析だったり,シリコン検出器関連のことは,自分でもそれなりに経験があるので,彼らの研究についていくの楽だし,条件反射的に何をすればよいのかすぐにアドバイスできます。けど,Hくんがやってるような回路仕事,どういう信号を使いどういうドライバーやレシーバーを使えばいいのか等々に関してや,Iくんのボード開発,どういうICを使えばよいのか等々については,私が勉強させてもらっています。

とまあ,グループの層が厚くなり,自分だけでは到底できないような研究にまで範囲を広げられるようになり,学生がいる大学の研究室の底力を感じる今日この頃です。KEKのスタッフの助けによるところが大きいわけですが,グループ全体の実力アップをホント感じます。

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フランクフルト空港

やっと荷物が届きました。フランクフルト空港(?)で彷徨っていた私のスーツケースが,昨日家に届きました。確率からして当然ですが,税関にひっかかることもなく,中身も無事で一安心です。

ところで,フランクフルト空港って最近楽器が税関で押収されるって話題になっているのですね。高額の骨董品だから申告が必要なのに申告しなかったらから密輸だとみなされるわけですね。言われてみると納得の論理ですが,今まで素通し(?)だったのに突然厳しくするというのはひどい対応ですよね。

しかし,調べたところ,楽器の話はマスコミに取り上げられたので非常に話題になっていますが,そうでなくても,フランクフルト空港の税関は異常に厳しくて,今までもトラブルがよくおきてたみたいなんです。悪意が全くない場合や,そこまで申告するのは無理だろうというものまでも対象にして,高額の罰金を払わされるケースが相次いでるんだそうです。今までCERNに行く時になにげなくフランクフルト空港を使っていましたが,これからどうしようかと迷います。次の出張はパリ経由でジュネーブに行くのが決まってるのですが,その次どうするか迷うところです。

あと,こういう話題になったついでに書くと,フランクフルト空港のセキュリティチェックは非常に厳しい気がします。私の場合,金属探知器でブザーが鳴らなかったことがありません。100%ボディチェックを受けます。ベルトを外しても靴を脱いでもだめです。私だけでなく,ボディチェックを受ける人が凄く多いので,毎回ボディチェック待ちの行列ができます。なんてことをY教授と今日話していて指摘されたのですが,私の場合ピアスが反応するんですかね。意識してないので気づいてませんでした...はい,アホです。次回フランクフルトのセキュリティを通過するときは,必ず外して金属探知器が鳴るかどうか試します。

あ,そうだ,さらに関係あるようなないような話を思い出しました。確かKEKのTさんから聞いたのだと思いますが,ドイツ人の杓子定規な振る舞いがいかに凄いかという話です。交通ルールで,歩行者は横断歩道がある場合は横断歩道を渡らなければなりませんよね。逆に(信号のない場所での)横断歩道では,歩行者の権利が100%優先されます。これは日本でも当然同じですが,まあ,全くといっていいほどこの交通ルールは無視されています。ですが,ドイツではこのルールを皆が尊重。横断歩道付近に人が立っていれば急ブレーキをかけてでも車は止まろうとするのだそうです。一方で,近くに横断歩道があるのに歩行者がそこを渡らず車と接触でもしようものなら,歩行者のほうが車の運転手から訴えられるような社会なんだそうです。どれくらいの誇張があるのかドイツで生活したことのない私にはわからないのですが,とにかく,それくらいドイツ人はよく言えばルールに厳格,杓子定規なんだそうです。

おっと,今日は(も?)思いついたことをつらつらと書きなぐってしまいました。一番言いたかったことは,スーツケースが無事戻ってきてよかったということです,はい。

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ラジオ収録

箕面FMというローカルFM局のラジオ番組の収録に行ってきました。昨日は大学で打ち合わせを行い,それに基づき今日は収録という流れでした。前に,自分の講義を撮影したものを見て滑舌の悪さにがっかりしましたが,きっと今日もそうなっていたはずで,明日の放送を聴くのが恐ろしいです。また,パーソナリティの人と1対1で話し続けるので,どういう雰囲気あるいは勢いで話せばいいのかわからず,説明にしてもどれくらい詳しく喋ればいいのかわからず,喋りながら色々なことを考えていたので余計に滑舌が悪かったのではないかと心配してます。

まあ滑舌の悪さはこれから修行すべき課題ということで忘れるとして,ラジオ番組という初めての経験ができたのは興味深いことです。私を狙い撃ちしてくれたOさんに感謝という感じです。あ,ちなみに放送は明日11日(木)の15時から16時。再放送は同日21時から22時と,14日(日)の13時から14時だそうです。後で再生ということはできないそうですが,放送中なら(?)インターネットでも聴けるそうですので,私のダメダメな喋りに興味のある方はぜひ。

しかし,ニコニコに出演したときの司会の方も同じなんですけど,こういう番組の司会の人はちゃんと勉強してきますね。私のウェブサイトにある一般向けの解説資料をチェックし,さらにこのつまらないブログまで目を通したそうです。なんだったかの取材のときにも思いましたが,やっぱりプロというのはどんな世界でもひと味違うものだと実感しました。Nさん,今日はお世話になりました。何か機会がありましたらまたお呼びください。

いやー,しっかし,緊張しました。

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物理学賞は

HiggsでもEnglertでもありませんでした。素粒子物理学関連ではなく,量子テレポーテーション関連(?)の人でしょうか。重要な実験を成功させた人たちみたいですから,受賞してしかるべき業績だったかと思いますが,私たち素粒子物理をやってる人間にとっては今年はお祭りみたいなものだったので,その勢いでヒッグス関連のノーベル物理学賞もあるのかと思いましたが,ヒッグス粒子と無矛盾な新しいボソンの発見ではヒッグス機構の解明をしたわけではないので,だめなんでしょうかね。

でも,ヒッグス機構の全貌を解明しようとしようとしたら,ヒッグスの自己結合まで測定しないとなりませんから,うーん,Higgsさんが生きてる間に結果を出すのはなかなか大変そうです。フェルミオンとの直接結合してることがわかったくらいで(ループではないというつもり),あるいはスピンとパリティをぼんやりとでもいいから測定できた時点くらいで,なんとか物理学賞を出してもらえないもんですかね。

それまでHiggsさんとEnglertさんには頑張って長生きして欲しいです。ってか,LHCがもっと頑張れということですね,はい。

あ,話は微妙に変わりますが,日本人のノーベル賞受賞はめでたいですね。さらに微妙に話は変わりますが,iPS細胞のiはiPodから取ったというのを聞いて私は思いました。山中という人はみんなMac信者なんでしょうか。KOTOの実験名がiKOTOにならなかったのが不思議です。

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スーツケースが

CERNから昨日無事帰って来たのですが,今日になってもスーツケースが届きません...。

ジュネーブからフランクフルト経由のJAL便に乗ったのですが,土曜日は朝からフランクフルト空港のベルトコンベアが一斉にダウン。大量の手荷物がフランクフルトに置き去り&行方不明になりました。フランクフルトを発ったのは現地時間の21時過ぎだったため,乗り継ぎ無しの人の荷物は問題なく飛行機に積み込めたようですが,私は乗り継ぎをしていますからきっと無理だろうなと思っていたところ,やっぱりダメ。今日になったもスーツケースの所在がわかりませんという連絡があったのみ。

いつもだったらスーツケースが紛失になったとしてもそんなにダメージはないのですが,今回は私にとってはかなりダメージ。というのは,今まで使っていたスーツケースはもう10年は使っていますし,非常に高い頻度で使っていましたからボロボロ。というわけで,今回は出発直前にスーツケースを新調。新品のスーツケースだったのです。おまけに,通常だったら帰りは洗濯物だけなのですが,今回は珍しく子供に土産を買いそれをスーツケースに詰め込んでいたのです。

マーフィーの法則ではありませんが,こういう特別な時に限ってトラブルが発生するものですね。唯一,嫌な予感がしたので,いつもならスーツケースに入れてしまう電気シェーバーやら小さな土産物の類いをなぜか機内持ち込みの手荷物に入れていました。電気シェーバーは日々使うものなので,それだけは助かりました。

JALにもどうしようもないことはわかるのですが,いつ届くかわからない,紛失して届かない可能性もある,というグレーな状態がずっと続くのがツライところです。そして,私の怒りに火をつけたのが,スーツケースの鍵の番号を教えろと言われたこと。もし荷物が届いて税関で中身を検査する場合必要になるのであらかじめ鍵の番号を教えて欲しいと言われて私は激怒。トラブルの原因はフランクフルト空港のダメダメなシステムですから苦情を日本のJAL職員に言っても仕方ありません。ですから私はやり場のない怒りをこらえていましたのに,JALでは荷物がどこにあるのか把握できておらず,最悪紛失の可能性もあるという説明を受けた後に,鍵の番号をあらかじめ教えろとい言われても教えられるわけありません。あらかじめ教えるということは,暗証番号を紙またはコンピューター上に記録するということですから,それだけでも私には承服不能。でもって,税関でかならず中身を検査するわけではないのだから,必要になった時点で向こうが私に連絡を取ってきてそこで口頭で番号を教えるのが筋。でもって,説明してる人の過失ではないから怒りを抑えてるのに,そういう論理不在の要求を受けたので大魔神状態です。

しかし,私は家路に着くときだったからまだよかったものの,これが逆向きだったら悲惨です。1週間の出張に行き,手荷物なし。その手荷物がいつ届くのかもわからない状況というのは想像しただけでも悲惨です。下着を日数分,プラスこれからの時期だと服だけの値段でもかなりの額になります。こういうのって旅行保険でまかなうしかないのでしょうか。航空会社,あるいは空港の運営会社は責任をもたなくてよいシステムなんですかね。空港なんて空港使用料というのを取ってるくせに,何の責任も負わなくてよいのか,と怒りの矛先を探してしまう昨日,今日です。って,今日もまだフランクフルトで荷物の所在がわからないという連絡が来ましたから,どんなに早くても荷物が届くのは明後日以降。次の日曜からまた出張ですが,そのときスーツケースを使うとしたら古いのを使わざるをえないかもしれません。。

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そろそろ修論へ向けて

Collaboration meeting に参加,そして何人かの人と話をするなどして,それなりの収穫を得た今回のCERN出張ですが,それと並行して修士課程2年の学生二人の指導も白熱しています。

彼らは来年3月の終了に向けて,正確には2月の修論審査に向けて,研究を進めています。JくんはATLASアップグレード用ピクセル検出器の読み出しシステムの開発,Hくんはシリコン検出器などを試験するときに使う,粒子の入射位置を測定するためのテレスコープと呼ばれる検出器を開発しています。Jくんの研究に関しては,ハードウェア自身はKEKのIさんが面倒をみてくれているので,Jくんはもっぱらファームウェアとソフトウェアの開発。やりたいことも明確で,とにかく頑張って作業をしてくれればよいという状況なので,私としてはJくんにハッパをかけるのが主な仕事。こちらにいる間も無数のメール交換で研究の指示を出しまていました。

ところがHくんの場合は,ファームウェア,ソフトウェアだけでなくハードウェアまで含めて一切合切を作らなければならないので,なかなかに高いハードル設定となっています。これまでに,信号読み出し用のSVX4を試験するためのボードを作り,SVX4からの信号の読み出しに成功。SVX4を読み出せることがわかった今は,複数のSVX4をdaisy chainで繋ぎ,かつテレスコープの用途として必要な電気的な回路を組み込んだボードの設計を始めました。それが上手くいって初めてシリコンセンサーをつけたテレスコープの試作という段取りになりますから,修論提出が4ヶ月先とはいえ,かなりタイトなスケジュールになってます。

また電気回路に関しては私はアマチュアな上,身近にもエキスパートがいません。ですので,KEKのエレキのエキスパートにアドバイスをもらったりしなければならず,スケジュール以外にも色々と苦労があります。修論というプレッシャーを受けていない私にとっては色々と勉強になって面白いのですが,Hくん本人はここ数ヶ月は心身ともに不可のかかった状態で頑張らなければなりません。

そんなわけで,修士の学生の指導を遠隔で行っていたのですが,ふと気になるのは学部4年生の卒業研究。当人たちは研究テーマを決めたと言ってきましたが,それを本当にやれるかどうかのきちんとした見積もりがなく,まずは実現可能かどうか,実現するにはどういう大きさのどういう検出器が必要なのか見積もってみるべしとアドバイスしたのですが,その後反応がなく,どうなっているのか気になるところです。来週大学に戻っても,ラジオ出演その他諸々でなかなか時間がないのですが,彼らと相談する時間をなんとかして作らなければならなそうです。

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フォー屋が...

CERNに来た時に必ず食事に行く店があります。このブログを長く読んでる方なら覚えてらっしゃるかもしれませんが,とあるフォー屋,じゃなくベトナム料理屋に必ず行きます。ジュネーブは極めて物価が高く,あらゆるものが日本の2倍の値段と思って私は金を使います。レストランは特に高く,気軽に行ける店はそう多くありません。

ところが私がよく行くこの店はジュネーブのレストランの中では比較的安く,かつヨーロッパの濃いぃ食事に飽きた私にとってはオアシス。1週間に1回は最低足を運んでいました。今回もCERN常駐組の大阪グループのメンバーと水曜日にフォーを食べに行ったのですが...

店がないのです。あれ,どこだったかなぁと皆で言いつつ歩いていると,絶対に行き過ぎてるという場所にまで来てしまいます。変だなぁなんて言いつつ道を戻りますが,やはりありません。しばらくうろうろしてようやく見つけたのは,引っ越した(?)らしいという張り紙。建物というか外壁が工事中で,外見からはその面影はなくなっていました。その店だと確定するための唯一の情報は壁に貼ってあったメニューで,ようやくそれを見てその店がなくなったということを確信しました。

そんなわけで,フォーを食べ損ねた私たちは,頭の中が完全にアジア食になっていたので中華の店に入り,フォーは食べられなかったものの,全員が麺類を食べて満足しました。今回の滞在中私にとってはすでに2回目の中華料理。世間では色々ときなくさいですが,中華料理は世界中どこでも手頃で美味しく,貧乏旅行者の見方です。

おっと,話をフォー屋に戻すと,引っ越し先の住所は張り紙から判明してるので,今晩再調査に行くかどうか迷っているところです。これまたいつも行くピザ屋のペペロンチーノも捨て難い。うーむ...。

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共通の敵

CERNではオフィススペースが不足しているという大問題があります。ヨーロッパ(特にフランス?)は階級(階層?)社会なので,CERNで長いこと実験をやってるグループやコネが強力にあるグループはオフィスの獲得に苦労しませんが,そうでない場合は,オフィススペースが確保できない場合が多々あります。私のような短期滞在者ならまあ構いませんが,常駐者でもオフィスを確保できていない場合があります。恐ろしいのは,そういうことを一生懸命訴えてもリソースコーディネーター(=古株のヨーロッパ人)に,公の場で,オフィス問題は存在しない,常駐者がオフィススペースに困ってるとは聞いていない,なんていう発言をされてしまうことです。

最近は幾らかシステムがまともになり,古株が勝手にオフィスを配分するのではなく,実験グループの秘書室で使用者と机を管理するオフィススペースもできました。短期滞在者用にもこの枠組みの中で机を割り当ててもらうことができます。私も短期滞在者なので,CERNに来たときはいつもこのシステムで机を割り振ってもらいます。

ところが,場所によっては悲惨なことがおこります。今回は近くにいるフランス人だかイタリア人が物凄くうるさいのです。学生と教員のコンビらしいのですが,その教員が異常にうるさいのです。ずっと喋り続けるだけでなく,その話し声が尋常ではなく大きく,かつ,高い頻度で怒鳴り声になるのです。流石の私も面食らって「何がおこってるんだろう?」という顔でそっちを見てると,隣りの机の人が,いつもああうるさくて,苦情をいくら言っても火に油を注ぐだけで効果ないんだよ,とあきれ顔で教えてくれます。私の場合,非常に短期ですし,ミーティングに出てる時間が多いのであまり問題ありませんが,これが長期滞在者だったら悲惨です。

人間って面白いなと思うのは,共通の敵を見つけると途端に仲良くなりますよね。今回の例でも,隣りの人とその会話をきっかけに話をするようになるし,お互い共通の被害者意識みたいなものが芽生え,連帯感が生まれます。多数の人間の意志を纏めるには,共通の敵というのは非常に有効な手段なんだと改めて感じました。中国が日本人をガス抜きにしたり,大阪の独裁者が公務員を仮想の敵にしたてあげて,多くの人から支持を得るのも,みんな同じやり方ですよね。でもって,ポピュリズムにどんどん走っていくというのは,民衆の支持を集める定跡なんでしょうね。

と書いてて思いましたが,最近の日本の政治,いや世界的に同じ傾向にあるんだと思いますが,ポピュリズムへの傾倒の仕方がハンパじゃないですね。どこまで突き進むんだろうと空恐ろしくなることがあります。独裁化も怖いですし,その先に変な愛国主義が芽生えたりするともっと恐ろしいことになりそうです。自分たちくらいから上の年齢の人間はまだいいですが,子供たちがそういう時代に生きなければならなくなるのは耐えられません。そういう社会にならないように願うばかりです。

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インパクト

9月の学会直前にポーランドの Krakow (Cracow?) というところで European Strategy Meeting という重要な会議がありました。ヨーロッパのこれから10年あるいはその先の高エネルギー物理学の将来計画を議論しようという会議です。そこには日本からも何人かのお偉いさんが出席し,KEKの素核研所長Yさんがアジアの将来計画について講演しました。

その講演内容の目玉は,日本の高エネルギー物理学コミュニティが次期大型計画であるILCという線形加速器の計画を日本政府に提案する,というコメントでした。このインパクトは大きく,ATLASグループ全体で毎週行われている週例ミーティングでも,スポークスパーソンがその内容を取り上げていました。って,私はスライドを眺めてるだけなので,どれくらいのインパクトで受け止められているのかわかりませんでした。

私が今回ATLASグループのcollaboration meetingに突如参加しようと思った理由の一つは,CERN所長がミーティングに来て話をするからでした。それが月曜の夕方だったのですが,彼も日本のコミュニティの提案について触れていて,やはりそれなりのインパクトをヨーロッパに与えていたことが窺えました。いや,だからなんだと言うわけではありませんが,こういう日本の動きを生んだのはヒッグスらしき新粒子の発見なわけで,それがさらにヨーロッパにインパクトを与えているということを考えると,新粒子発見のインパクトの大きさを改めて感じます。

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CERNではなくモントルー

土曜日に福岡での一般講演を終えた翌日早朝の便で福岡から成田に飛び,そこからフランクフルトを経由してCERNにやってきました。台風の影響を心配していましたし,朝福岡から飛ぶときは,成田からのフランクフルト行きが飛ぶかどうかはわかりません。しかも,成田のホテルは一杯で部屋は取れそうにもありません。という状況ですが,成田へ向かいますか?という質問をされたので,成田から飛べるかどうかドキドキだったのですが,飛行機はほぼ台風の影響は受けず,って単に揺れなかったというだけで航路はいつもと違ってましたが,まあ問題なくCERNまで来ることができました。しかし,今回は出張を決めたのがやや遅く飛行機の手配が遅れたためヨーロッパでの乗り継ぎの良い便が取れず,また成田での乗り継ぎもそもそも悪かったため,福岡のホテルを出てからCERNに着くまでに25時間強もかかってしまいました。出発地も到着地も家でなく,かつ移動に24時間以上かかると流石にちと疲れますね。

なんてことを書いていますが,今これを書いているのはCERNではなくモントルーという街のホテルです。Collaboration meeting をCERNではなくモントルーでやっているために,日曜の深夜にCERNに到着して,月曜の朝にモントルーに移動しました。モントルーというのはジュネーブから電車で1時間強のところにあり,シオン城というそこそこ有名な(?)観光場所があったり,ゴールデンパスという有名な(?)登山列車の出発地だったりすることがあり,非常に小さな街なのですがちょっとした観光地です。昔,スイスに半年家族と一緒に住んでたときがあり,そのとき家族で一回来たことを懐かしく思い出しています。

にしても,ヨーロッパ人というのは研究所や大学でなく,リゾート地的なところで会議をやるのが好きですね。移動の不便さ,ホテル代の高さ,会議場所の不便さ(今回もネットワークの接続が今ひとつ),等々,実際上の利便性を考えると,国際会議やスクールなら構いませんが,collaboration meeting を敢えてそんな不便なところでやろういう発想が私にはないのですが,ヨーロッパの人はホントにリゾート地が好きです。

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