ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

磁気モノポールと呼んでいいの?

磁気モノポールをみつけたというニュースをスラドで知りました。記事を読むと確かにモノポールを見つけたと書いてあります。「えーっ,マジ?」と思いそのニュースに貼ってあるプレスリリースを読むと確かにそう書いてあるので2度びっくり。あまりに衝撃的だったので,その論文まで眺めてしまいました。

感想…これをモノポールと呼ぶのですか???
少なくとも素粒子物理学者がイメージする(?)モノポールとは全く別物です。

そもそも,誘電体中の電磁気学はDとかHが出てきて,私にとってはどうもすっきりしないジャンルです。ファインマンはEとBだけを使えと言ってましたが,DやHって本質的ではない物理量なんだけど,それを定義すると式の見通しがよくなるので使ってるだけの物のように感じてしまいます。いや,私がちゃんと理解できてないだけなんでしょうけど,とにもかくにもすっきりしない学問分野です。

で,今回のモノポール。DやHみたいに,ある複雑な物理量を(論文中では)E_SとB_Sとで定義してやると,E_SとB_Sがモノポールの式を満たしているということ(∇・B_S=0でないということ)なのですが,だからって,それをモノポール発見とプレスリリースしてしまうのにはかなりの違和感を覚えます。私が本質を理解していないだけで,そうやって再定義した物理量を考えることで何かもっと重大な本質的なことを理解できるようになるものなんでしょうか。

でもなあ,やっぱり,モノポールっていうと,単一の磁価を持った粒子と普通は思ってしまうんじゃないかなぁ。

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吠える(拍手数を見て)

日曜が移動日でCERNに来ています。修論と卒論研究が終わり,かつ3月末の学会までのこの時期が大学教員にとっては通常一番忙しくない時期なので,毎年この時期はcollaboration meetingなどに合わせてCERNに来るようにしています。今回も物理解析が中心のcollaboration meetingに合わせての出張です。でも,一番重要なのはやはりCERNに長期滞在中の博士課程の学生とのコミュニケーションと,現地研究者との雑談。雑談というのはもちろん世間話という意味ではなくて,研究に関する様々な雑談という意味です。今回は特に4月からの新メンバーの研究テーマを考える材料を集めるべく,何人かの人と話をするというのも重要なミッションです。

とまあ,そんなわけでCERNに来ているのですが,土曜日の怒りがまだ収まりきりません。このままだと本当に精神的に病んでしまうのではないかと自己分析するほど精神的に安定しきれません。という話から,いきなりタイトルに繋げてしまうのですが,最近のエントリーで泊週数が多かったエントリーに特徴があることに気づきました。いや,その前に,最近拍手数が多いなぁとは思っていたのですが。

私が着目したエントリーは,車の運転をしていて激怒した話,とりとめのない話というタイトルで学内人事の理不尽さに腹を立てている話,デパートで順番を飛ばされて店員に説教(?)した話の3つです。どれも私のブログとしては拍手数が多いのです。デパートのときの話では,なんでこんなに拍手が多いのだろうとちょっと不思議に思いました。私が腹を立てている様子がなんで面白いのか,とちょっと不思議でした。でも,この3つのエントリーには理不尽さに対する怒りという共通点があります。少なくとも書いてる私にとってはそれが共通点です。読者のみなさんも普段そういう理不尽さに腹を立てることがあり,その怒りを自己表現している(?)私に自分自身を重ねてそれで拍手してくれてるのかな,というのが私が考えたことです。指摘も受けましたし,自分でもわかってはいますが,私みたいに,変だ,理不尽だ,と思うことをその場で訴えることのできる人は世の中には,特に日本人にはあまり多くないですよね,きっと。だからこそ,理不尽な場面で吠えている私に拍手してもらえたのかなぁ,と分析したのでした。ま,勝手な分析,推測なので的外れかもしれませんが。

ちなみに,冷静に考えて一番困るのは,大学の中の理不尽な人事です。何人かの人々からもご意見をもらいましたが,他の研究機関では,外に人が出て行った研究室には新しいポストを付けるが,外に出て行かない研究室にはポストを付けない,学生を付けない,というような措置をしているのが普通のようです。当然ですよね,アクティブじゃない人を選択的に残すというのは,組織としてどう考えてもありないオプションです。内部の教員が困るだけではなく,学生に対して誠意のないやり口ですし,大袈裟に言うと公共の福祉に反しています。

教員の働きを採点するのだって,ラフでいいなら皆難しいとは思っていません。たとえば,競争的外部資金の獲得額なんてプロゴルファーみたいですが,非常にわかりやすい指標です。分野の違い等を考慮する必要はありますが,少なくとも同じ分野であれば有効な指標です。ちなみに,今日聞いたのですが,ドイツでは教員が指導できる学生数は,その教員の資金獲得額に比例するのだそうです。金がなければ研究できないし,学生に研究環境を提供できないから,だそうで,あまりにも正論で唸りました。あるいは,ポストをどこに付けるかという議論で,外に出て行く人がいる研究グループにポストを付けるのが常識だという考え方に基づくなら,個々の教員のヒストリーでスコアを付けることもできます。学位取得後に何回研究機関を変えたか,ただしポスドク→ポスドクは数えない,ということを得点化してそれを研究グループ毎に合算すれば,どこの研究室がアクティブであり,人が出て行く可能性が高いか,ということが数値化されます。なぜこういう簡単なことができないのか,不思議です。

おっと,拍手数を見て考えたことを書こうと思って書き始めたのに,今日もまた吠えてしまいました。

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激怒,車の運転編

昨日,所用で車の運転をしていたときの話。

私は2つ先の交差点で右折するという状況。今はその手前の交差点で信号待ち。信号待ちしている交差点というのは,右側が右折レーン,左側が直進or左折という非常にスタンダードな交差点。まあ,普通に信号が青になって発進,次の右折に備えて右レーンに入ろうとします。私の直前に待っていた車も当たり前と言えば当たり前ですが,同様の動き。ところが,私の横の右折"専用”レーンで待っていた車がクラクションを鳴らしながら直進。こちらが交通ルールを守っているのですから,私は当然クラクションを鳴らされたくらいではビビりません。結局その車は私の車の後ろに入ったのですが,引き続きクラクションとパッシング。しかも身振りで私を挑発してきます。

私は激怒。ルールを守らん人間にこんな挑発行為をされて黙っているわけにはいきません。現行犯なら私人逮捕可能ということも頭をよぎり,捕まえて警察に連れて行こうくらいの勢いで車を止めました。その車は私の直後にいますから,当然その車も停車。車を降りて後ろの車の運転手のところにダッシュ。が,しかーし,自分で挑発しておきながらその運転手は車から降りてこないんですよ。鍵をかけ,窓も閉め,車の中から携帯で私の撮影を始めます。「出てこい,警察行くぞ」と窓を叩いても,ドアを叩いても一向に出てきません。

なんなんでしょうか。交通ルールを破った上にクラクション,パッシング,身振り手振りで人を挑発。自分から人を怒らせるように仕向けておきながら,車の中に閉じこもり。怒りの矛先を失った私は,その後もずーーーーっと怒りが収まらず,夢でうなされるほど精神上の健康を害されてしまいました。

あー,腹が立つ。

ちなみに,先週も,車の運転中に,一通を逆走してくる車に2台連続で出くわして驚いたところでした。別に交通ルールを神格化してそれを必ず守れなんて言うつもりは全くありませんが,道路上を一人で走っているわけではないのですから,最低のルールを守れない人間に車の運転を許可するべきではありません。って,ここで私が吠えても交通マナーが改善されるわけではなし,やり場のない怒りが収まりません。

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とりとめのない話

優秀な事務の人は大学にとって宝です。優秀な人が多くなるような仕組みにぜひともしていただきたいです。なんでこんなことを唐突に言ってるかというと,事務手続きでわからないことがあり理学部の事務に直接電話をかけて質問したところ,いつも明確な答えをくれるOさんは今回も相変わらず非常に明確な説明。今日はさらにメールで補足説明も送ってくれて,こちらの疑問はすっきり解決。こういう人がいてくれると安心です。

関係あるような,ないような話ですが,マスコミが,対立軸の悪者として公務員を設定するのは理解できませんが,公務員改革自体は内部にいる人間としてもぜひともしてもらいたいものだと常々思っています。事務だけではなく,教員側も実力主義というか,競争原理というか,そういうものをぜひとも導入して欲しいです。今の仕組みだと,というか私たちの大学の理学部だけが問題なのかもしれませんが,アクティビティの低いグループだらけになるようになっています。

善いか悪いかはわかりませんが,大学では教職員の数を一生懸命減らそうとしています。でも常勤の人をクビにすることは,デカイ企業でも同じだと思いますが,ほとんど不可能です。では数を減らすにはどうするかというと,教員の場合,退職,他の大学へ異動などにより,誰かがいなくなった場合に,その講座に新たなポストをつけないということをやるしかありません。こういうことをやるとどうなるかというと(退職は議論に関係ないのでここでは無視),アクティブでない人ばかりが大学に残ることになります。まあ,明らかですよね。助教(准教授)から別の研究教育機関の准教授(教授)に転出する,できる人というのはアクティブな人であり,そういう人の補充をしないということは,アクティブでない人を残すというふるいをかけているのと一緒です。

こんなことは,多くの人が感じ,考えていることですが,現状は仕組みとしては完全にそうなってしまっています。数値化だってできるとは思うんですけどね。。

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ミューオンのg-2測定

素粒子・原子核実験の研究室に配属されている4年生の卒業研究発表会が,今日と明日の2回に分けて行われます(ました)。私たちの研究室の4年生の出番は今日で,4人全員が無事に発表を終えました。テーマは2つで,私が指導をしていたグループは,何度か書いたように宇宙線中のミューオンを使いg因子を測りました。いや,測ろうとしました。

偏極したミューオンが磁場中を通るとスピンが歳差運動を起こします。その周期がgと磁場の強さに比例するので,その両方を測ることができればgを決定できます。これは素粒子物理学の教科書の最初のほう,ディラック方程式のところで出てくる重要かつ,基本的なお話です。

さて,ではそれをどうやって測るかというと,まず偏極したミューオンが必要です。地表に振ってくるミューオンは主にπ(と少しだけK)の崩壊によって生成されますが,πの静止系で考えると地表に向かって飛んでくるミューオンは100%偏極しています。スピン0の粒子が2つのフェルミオンにback-to-backに崩壊,かつ,(反)ニュートリノは100%左(右)巻なので。たとえば,μ+の場合には,下向きに飛ぶミューオンのスピンは上向きになります。実際には,πがブーストされていますので,減偏極していますが,それでも2,3cmのアルミ板に止まるくらいのエネルギーのミューオンだとそれなりに偏極していて,偏極度は0.2とか0.3くらいのようです。

偏極しているミューオンが崩壊したとき,スピンの向きと弱い相互作用がV-A結合すること(粒子はカイラリティ左巻き,反粒子は右巻き成分が反応に寄与すること)を考えると,崩壊によって出てくる陽電子はμ+のスピンの向きに出ることがわかります。というわけで,それなりに偏極しているμ+を磁場中で止め,その崩壊陽電子の向きを測れば歳差運動の周期を測定できるというカラクリです。ちなみに,μーの場合は,原子核に捕獲されて減偏極してしまうので,μ+しか歳差運動の周期測定には使えません。

そんなわけで,磁場中のアルミ板でミューオンを止めて寿命測定。アルミの板から上に陽電子が出た場合と下に出た場合を別々に見ると,exponentialで落ちていく分布がgと磁場の大きさで決まる周期により振動します。実際には,上に出た分布と下に出た分布の差を取り,その分布をcosカーブでフィットして周期を求めます。

という実験内容で,私たちの研究室では初の試みだったので振動が見えるかどうかやってみるまでわかりませんでした。昨日の発表練習段階までは,最後の分布をフィットすると振動があるような,ないような,判断に難しい状況でした。振動がある場合とない場合のToy MCを振ってみると,振動がなくてもフィットするときの初期値によって期待する周期が出てしまう,というような内容でした。うーん,そうか,残念。では,何が原因で振動が見えないのか。どこをどう改良すれば周期を測定できるはずか議論して話をまとめよう,ということになっていました。

ところが…
今日の本番では,振動が見えた。振動の周期も測定し,gを測りました,という内容になっていたので大いに驚きました。詳しい事情を解析の中心人物に聞きたかったのですが,その彼は発表直後に消えてしまい,あまり詳しいことは聞けませんでした。振動しているような,していないような,判断に苦しむ分布なので,誰もが納得する結論をすぱっと出すのは難しい状況なのは確かですが,研究内容的には4年生がやる実験としてはなかなか面白いテーマだったと多くの人が思ったのではないでしょうか。来年度以降の4年生のテーマの候補になりそうです。

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OPERA実験のニュースのソース

このニュースのソースを知ってる方がいらっしゃいましたら教えてください。ニュートリノ光速超え実験の問題点の検証を行っているというニュースですが,そんなのは当たり前で,その検証の結果何か問題が見つかったということなんでしょうか???

[以下追記]

読売新聞だけでなく,他の新聞でも取り上げていますね。ついでに,CERNの所長がCERNユーザー宛に公式(?)メッセージを送りました。以下全文引用です。
--->引用開始
The OPERA collaboration has informed its funding agencies and host laboratories that it has identified two possible effects that could have an influence on its neutrino timing measurement. These both require further tests with a short pulsed beam. If confirmed, one would increase the size of the measured effect, the other would diminish it. The first possible effect concerns an oscillator used to provide the time stamps for GPS synchronizations. It could have led to an overestimate of the neutrino's time of flight. The second concerns the optical fibre connector that brings the external GPS signal to the OPERA master clock, which may not have been functioning correctly when the measurements were taken. If this is the case, it could have led to an underestimate of the time of flight of the neutrinos. The potential extent of these two effects is being studied by the OPERA collaboration. New measurements with short pulsed beams are scheduled for May.
<---引用終わり

結局のところ,もう一度やり直さないとわからないが,ニュートリノの速度を間違って測定してしまう可能性のある問題が見つかったということのようですね。

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ようやく論文投稿へ

昨日は2ついいことがありました。

1つ目は,ようやくトップクォーク対生成断面積の論文が,ATLASグループ内の全ての関門をクリアし,論文投稿してよいという承認を得たことです。去年の夏の国際会議用の解析結果を素早く論文投稿しようというのが本来の意図でした。しかし,それから,とてつもなく長い,何度も繰り返されるグループ内承認のプロセス。そして,最後の3ヶ月はたった一人からのいちゃもんを振り払うためのエンドレスループ。最後には,物理コーディネーターと呼ばれる人の仲裁というか判断を仰ぎ,幾つかのチェックを行いようやくゴーサイン。その後も,実はさらに二段階の内部査読が入り,昨日ようやく論文投稿しても良いというお墨付きをもらいました。いやー,本当に長かった。解析を頑張った学生さんたちには,一人一人にねぎらいの言葉をかけたいです。

記録として,覚えている範囲で承認プロセスをまとめると,Editorial Boardと呼ばれる解析検査人とでもいうような役割の人4人からの解析承認→トップグループ解析承認→ATLASグループ解析承認→ATLASグループ査読→Final Readingと呼ばれるプロセスでATLASグループ内からの再査読。並行して,4つか5つの研究機関が査読→(本来は必要ありませんが,私たちの場合,ここで物理コーディネーターその他の人に仲裁を依頼。その人たちのゴーサインを貰う)→1つの論文に対して割り振られるまた別の一人によって査読→スポークスパーソン査読→現在…これを書くだけでも大変です。ははは。でもまあ,いちゃもんをつけてくる人間との論争を終え,また,長ーいプロセスを終えたので,だいぶホッとしています。後は,論文の査読者とのやりとりがスムーズに行くことを願うばかりです。

そしてもう一つ。友人から良い知らせを聞きました。内容は書けませんが,自分のことのように嬉しい話題でした。

というわけで,昨日は2つもハッピーな知らせがあるという吉日でした。

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不確定性原理のセミナー

大学,というか物理学科のセミナーで,少し前に話題になった不確定性原理検証実験のセミナーがありました。それも,論文主著者のウィーン工科大学の方がスピーカーだったので,喜び勇んで話を聞きに行きました。

実証すべきポイントはこのブログでも以前取り上げた通りで,観測量の分散,測定誤差,測定することにより生じる系の乱れ,これらをきちっと定義すると,ハイゼンベルグの不確定性関係は成立してませんよ,というものです。印象的だったのは,正しい(と考えられる)小澤の不等式の提案者である小澤さんという方の第一の業績は,そもそも,測定誤差と系の乱れを数学的にきちんと定義したことだ,とお話されていた点です。逆に,ハイゼンベルグの不確定性原理の場合はきちんとした定式化なしに,なーんとなくこうだよね,という感じでずっと議論が進んできたということなんですね。いやはや,驚きです。というか,だからこそ,前も書いた通り,奥歯に物が詰まったようなすっきりしない感覚を多くの人が持っていたとは思うのですが,それが半世紀以上も放置されてきたというのはある意味凄いことです。

あ,誤解なきよう繰り返しますが,波動関数の分散が σ(A)σ(B) > (1/2)||という関係は,教科書にも載っているように数学的に正しい式です。問題にしてるのは,測定誤差εと系の乱れηとの間の関係式 ε(A)η(B) > (1/2)|| です。

それはさておき,実験のポイントは不等式を証明するための観測量を見つけることができた点だそうで,まあそれはそうだよな,と素人の私でも納得。スピンを使えばうまいことε(A)とη(B)を同時に測定することができると発見したのが肝だと力説されていました。実験そのものについては,時間の関係からか非常にあっさりの説明だったので,実験技術的に凄いということは正直よくわかりませんでした。ホントはそれだけでも凄いのかもしれませんけど。

実験とは関係ありませんが,印象に一番強く残ったのは,ユーロが使われる前のオーストリアの貨幣であるシリングでは,シュレディンガーが紙幣に描かれていたという話。ψという文字まで書かれていてカッコいいです。シュレディンガー以外だと,モーツァルトやフロイトなんかがいたりして,なんというか文化の香りがする人たちばかり。オーストリアには行ったこともありませんし,イメージも持っていませんでしたが,なんとなく心象が良くなりました。

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悔しいと感じる瞬間

人って,これは他の人には負けたくないと思っていることってありますよね。歌では誰にも負けないとか,友達よりも自分のほうがモテるとか,自分が自信を持っている,あるいは,執着しているポイントがあると思うんですね。ちなみに,今出した2つの例は,残念ながら私が他人に比べて負けたくないと思ったことがない点です…。

それはさておき,人に負けると悔しいと感じることが私には2つあります。一つは,なんと言えばいいのかわかりませんが,疑問力みたいなものです。普段あたり前に思っていることを,誰か他の人に,でもそれってなんでなんだっけ?と問われ,自分がその事柄について「なぜ」と考えたことがないと,あー負けた,と感じてしまいます。普通に生きていれば,あまりにもあたり前過ぎて全く何にも感じない,考えることのない事だらけになってしまうわけですが,そういう中に「でも,なんで?」という発言をするヤツがいると,うわ,こいつ凄い,と思ってしまいます。

そしてもう一つが,観察力というか,これまた何気ない普段の生活の中で,自分が気づいていないことを人に指摘されると凄く悔しいです。私がよく言う話に,新幹線の3列の席の真ん中の幅が広い,というのがありますよね。あれなんか典型で,逆に自分が知らずにそれを人に指摘されると凄く悔しかったりします。

そんな私ですが,負けた,悔しいと感じることが最近(と言っても,もう1ヶ月くらい前ですが)ありました。

私が住んでいるのは,私よりも年齢が上のとんでもなくボロい宿舎なのですが,その宿舎はボロいがために鉄筋コンクリート作りのはずなのに,敷居や床が曲がっていて,玄関の扉もきっちり閉まりません。隙間があるというのではなく,ドアがドア枠の一部に当たってしまうために,思いっきり力を入れないと閉まらない,という惨状です。ですが,1年中そういう状態ではなく,スムーズに開閉できる状態になることもあるんですね。

ところが,私はドアの開閉状況に全く神経を使っていなかったために,どういうときにだけドアがスムーズに開閉しているのか,ということを全く感知していなかったのです。ですが,カミサンは1年の中で最も寒い時期にだけ扉の開閉がスムーズになるということに当たり前のように気づいていたのです…。それを指摘された私は大ショック。まあ,当たり前と言えば当たり前ですが,開けやすさ開けにくさが環境に依存してるとすれば,温度か湿度くらいしかありません。でもって,ドアは金属製,枠はコンクリートですから,湿度の影響をそれほど受けるとは思えません。なので,温度と相関があるなんていうのはいの一番に考える,というより,感じ取るべき(脊髄で気づくべきというニュアンスです)ことなのに,それを私は気づいていなかったのです。しかもそれをカミサンに指摘され…。

いやー,馬鹿馬鹿しいことですが,本当にショックでした。まあ,私がこんなことでショックを受けてるなんてカミサンは知らず,ショックが和らいだ数日後にそのことをカミサンに話したら,馬鹿馬鹿しいと大ウケされてしまいました。さらにショックが和らいだので,こうしてブログのネタと本日なりました。

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分野の違いをなぜ理解しないのか

以前,論文数と学問の分野の違いに関してエントリーを書いたことがあります。一言でまとめちゃうと,論文を書きやすい分野と書くのが難しい分野がある,少なくとも論文を書けるようなオリジナリティのある仕事ができるまでに要する時間は分野によって大きく異なる,ということを書きました。また,だからこそ,分野間でプロジェクトに優劣をつけるとか,人の評価をするときは,分野間の違いをきちんと考慮すべきという意見を述べました。

昨日と一昨日は,修士課程の学生の修士論文発表会。博士課程の学生の博士論文公聴会相当(もちろん,公聴会ほどフォーマルではありませんし,色んな意味でもっと緩いものですが)だと思ってもらればいいかと思います。そこで,上記のような分野の違いを理解してないであろう教員からのコメント・質問があって,非常に嫌な気持ちになりました。特に腹立たしいのは,学会や研究会なら理不尽な発言があれば,私みたいな人間からそんなくだらんコメントするなって言い返されますが,修士論文の発表会ですから,受け答えは発表している学生しかできません。そういう理不尽な質問に対する受け答えは学生は慣れていませんし,そもそも,分野間の違いをまだよくわかっていない学生にとっては,そういう質問の真意を理解することすら難しいでしょう。もちろん,学生が私みたいにやり返せるのが理想ですが,修士の学生ではヤクザな発言に対する対応を要求するのは厳しい気がします。

学問の分野間の違いは,論文の書きやすさだけじゃなく,色んなところに存在するんですね。特に,素粒子物理と他の学問で大きく違うと感じるのは,素粒子物理の場合は単に新しいことよりも学術的な意義を追い求める傾向が強いことです。もちろん他の分野でも学術的な意義を考えてるのでしょうが,素粒子をやってる人から見ると,学術的な面白さや奥深さよりも,とにかく新しいことをやるのが偉い,そういう文化が他の分野には強くあると感じます(あくまで私の感覚)。色々な違いの一つとして例を挙げているわけですが,こういう違い,異文化をお互いに批判するのは不毛です。かたや「そんなことやって何がわかるの?」,もう一方は「それのどこが新しいの?」と言いあうのは,自分が好きな食べ物を言いあってケンカしてるのと同じくらい不毛です。

他の例だと,同じ実験物理でも重要なポイントが全く違います。高エネルギー物理の最近の問題だったりしますが,私たちの実験技術は他の分野に比べて突出して高い技術を使っているため,技術開発の専門化が極度に進み,また一つの技術開発のタイムスパンが非常に長くなっているという傾向があります。物凄い高度な技術が使われ,実験に使う検出器は全てオリジナル,売り物なんて全くと言っていいほど存在しません。ですから,学生がやっている検出器開発一つにしても非常に高度な技術を見につけ,試験結果を出すにも工夫と時間がかかります。でも,そういう高い技術が使われていることを理解していない人にとっては,単に検出器を組み立てただけ,試験をやっただけ,に見えてしまうらしいのです。

逆に私なんかから見ると,他分野の実験技術は古臭く,売り物の検出器を買ってきただけ,また測定という観点からは,バイアスの有無,統計・系統誤差の評価がアマアマで,博士論文ですら解析技術は学部生の物理学実験レポート並みだと感じてしまいます。でも,大切なポイントはそういうところじゃなくて,人がやってないことを見つける能力だったり,試料を作る腕前が必要だったり,私には備わっていない,鍛えてこなかったことが重要だったりするわけですよね。ですから,多くの人は,自分の実験に対する感覚で多分野の実験を批判するのは,的外れなことを自覚しているわけです。もちろん,敢えて他分野の手法や姿勢を取り入れるというのは良い試みだとは思います。ですが,そういう意図なら,反論・議論できない弱い学生相手じゃなくて,鼻っぱしの強い大人の研究者を相手にすべき話だと思うのです。

と,偉そうに書いていますが,私が上で書いたようなことはマトモな研究者なら皆わかっている(と信じたい)はずです。それをなぜわからない人がいるのか,謎です。自分の研究"だけ"が立派な研究だと考えている不遜な人間か,自分の研究分野あるいは研究機関に閉じこもっている村社会の住民なのか…と,書いてて思いましたが,大学教員には不遜な村社会住人というのは多いのかもしれませんね。とあるヒアリングに行ったときに,今回のような不毛な質問とコメントをされたことを思い出しました。分野間の調整というような,大局から物を眺めることが必要とされる審査員ですら,村社会発言をしてましたから。

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デパートでの出来事

週末,とあるデパートに行かなければならない用事があり,そのついでに,これまた別の用事でそのデパートの商品券売り場(贈答品なんかを扱ってるサービスカウンター)に行きました。銀行のカウンターみたいに接客するための机と椅子がずらりとあります。システムも銀行同様,整理券を発券する機械があり,整理番号順に客を捌くシステムになっています。

そのカウンターに私が行ったときは,待っている客の数はゼロ。と思いきや,私よりも先にタッチの差で整理券を他の人に取られ,私は2番目という状況でした。ですが,店員は少なくとも5人以上いるし,電光掲示板で整理券番号をチェックしても私より先に待っている人はさっきの人だけです。これは待つことなくすぐに呼ばれるな,と思っていました。ところが,5人以上いる店員は全員が客に背を向けて何か話を続けていて,私ももう一人いた客もなかなか相手をしてもらえません。何かトラブルでもあったのかな,それにしても,こんだけ店員がいるんだから,誰か客の相手しろよと心の中で思っていました。

と,そこへ,第3の客が現れます。その客は整理券なんか取らずに直接カウンターに行きます。すると1人がその客の対応を始めたのです。私よりも先の整理券番号を持ってる人はどうなったんだろうと辺りを見回すと,その女性は,なんで後から来た人の対応を先にしてるんだろう,整理券のシステムってどうなってるの?的な表情でソワソワしています。その人の様子を見て,私たちが無視されていることを確信した私は思ったことをそのまま発言します。

「おい,なんで整理券を待ってる人間より先に,整理券を持ってない後から来た客の相手をするんだよ。意味がわからん」と。別に声を荒げたわけじゃありませんよ。ただ普通に,正直に,思ったことを発言しました。でも,当然のことながらその場は凍りつきます。カウンターにいた店員,客,全員が私のほうを見て固まります。少し間をおき,そのカウンターを取り仕切っているであろう年配の男性が私のところに来て謝りつつ,私の応対をしようとします。けど,私は2番目で,私より先に待っている人がいる。その人を先に応対すべきだろう,とこれまた当たり前の発言をします。するとさらにその場に緊張感が走り,私よりも先に待っていた女性は私に一生懸命お礼を言います。というより明らかにビビってます。

あ,また人をビビらせてしまったと,ほーんの少しだけ反省しつつ,普通の人はこういう場面でどうするんだろうと考え込んでしまいました。最初は客の対応をしていませんでしたが,結局,その場にいた3人の客をパラレルに応対始めたんですね。だから,何か大きなトラブルがあったわけではありません。で,デパートのサービスカウンターに行くというのは,サービスを受けるという付加価値を得るために行くわけですよね。まあ,デパートの場合,サービスカウンターだけでなく,どの売り場でもそういう面が大きいかと思います。それなのに,ダメダメな対応をされるわけですね。しかも順番を飛ばされて。そういう時も普通はジッと耐え忍ぶもんなのでしょうか。

オカシイと感じたことを瞬間そう発言するのは科学者の特性だとは思うのですが,それを言わない人というのは,なぜ言わないのか逆に不思議に思ってしまいました。もちろん,相手が怖そうな人だったら言いませんよ。でも,サービスを受けるべき場所にいって,それ相応の対応がなかったら,普通は文句を言うと思うのですが。。。そうか,私みたいに面と向かって言わずに,ネチネチとインターネット上の掲示板やら,匿名の電話でもするのですかね。

今回に限らず,文句,苦情を言う正当な理由がある(と私には見える)のに,黙ってる人を世間でよく見かけ,なんでなんだろうと思ってしまうのでした。ちなみに,科学者の特性なのか,類は友を呼ぶということなのかわかりませんが,私の身近にいる人々にはそういう人はあんまりいません。

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M山さんの話術

昨日NHKのテレビにM山さんが出ていたそうです。私も録画はしたのですがまだ見ていません。その番組だけでなく,昨日だか一昨日のニュースに,IPMUがカブリ財団から寄付をもらうという話題が載っていました。相変わらずというか,いつものことですが,M山さん恐るべしです。

芸人みたいな言い方ですが,銭の取れる人ですよね。彼と同年代の素粒子論の人から聞いた話ですが,バークレーのような名門校だと,寄付集め(?)を目的とした金持ち相手の講演会みたいなものが催されることがあるのだそうです。講演する人は当然有名人。ノーベル賞を受賞したような有名人が,ちょっと教養のある金持ち相手に話をする,というなんともsnobな催しがあるのだそうです。Snobかどうかはさておき,あるとき,そんな講演会で話をする有名人が講演会直前に都合が悪くなったんだそうです。その時に突如代役に抜擢されたのがM山さん。自分で準備した話でもないのに,本来の講演者が使う予定だったスライドを使って物凄く面白い話をして拍手喝采。その講演会は大成功だったんだそうです。いや流石。というか,M山さんだったそうだろうな,と普通に納得していまいます。

それから,数年前に,世界最先端の拠点どうたらとかいう名目で,1つの研究にウン10億円という予算をつけたにもかかわらず,その翌年,民主党政権になりその予算額が大幅に削られたという出来事がありました。このブログを読んでるような方だったら知ってる人も多いのではないかと思います。M山さんはすばる望遠鏡を使ったプロジェクトで巨額な予算を獲得。したと思ったら翌年にハシゴを外されピンチ。すでに,前年に決まった予算で計画を進めていますから。そこでどうしたかというと,世界中の有力な大学,研究機関から金を集めるべく,共同研究グループを募り,金を出してもらいピンチを凌いだんですね。きっと,彼が世界を行脚していかに素晴らしいプロジェクトであるかを説明して回ったんでしょう(と,聞いています)。そしたら大抵の人は一緒に研究をやりたくなってしまいます。同業者からしても,それくらい彼の話はわかりやすく,かつ面白いんですね。。恐るべき才能です。

そんなM山さんも,秋に福岡でやるスクールには講師としてやってきます。Astrophysicsの講義をしてもらうのですが,実は他にも有力な候補がいて,M山さんにするためには私は委員会のなかでかなり頑張りました。他の有力候補はロシア人で,講師にロシア人がいなかったために余計にその候補者が有力になってしまったのですが,とにかく譲歩できないの一点張りでなんとかその場を凌ぐことができました。忙しい人なので,3日間も講義のために現地にいてもらえるか心配だったのですが,その問題もクリア。ということで,めでたく講師をお願いすることができました。まあ,私の苦労話はどうでもいいですが,そんなわけで講師はかなり充実していますので,ぜひ,若手の人はスクールの参加を考えてみてください。

おっと,今日も最後は宣伝になってしまいました。最近,宣伝が多いですね。ははは。

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名古屋でのアウトリーチの宣伝

今日もまた宣伝です。

名古屋,大阪,神戸の順番でやってきたアウトリーチ活動ですが,順番が一回り。前回の神戸からだいぶ間が空きましたが,3月17日(土)に名古屋でやることになりました。宣伝サイトはここです。場所は電気文化会館というところで,今回の話の中心はヒッグス探索。プラス,今まではCERNからの現場中継をやっていましたが,今度は志向をを変えて研究者とだべってもらう時間を作ります。このアウトリーチシリーズだけでなく,一般講演をやるとどこでも質問の時間が足りず,また,全員の前で質問はしずらいが個別に話を聞いてみたいと思われる方が多いみたいで,講演後に質問しに来る方が非常に多いんですね。それではと,今回はコーヒーでも飲みながらゆっくり話をする時間を作ろう,ということになりました。

満員になったときに備えて,大阪で一昨年やったとき同様(=神戸で昨年やったとき同様),事前参加登録をお願いしています。個人情報を記入する必要はないので,参加をお考えの方は登録をお勧めします。詐欺ではありませんが,ワンクリックがツークリックで登録できますので。もし,登録した場合は,そこに表示される番号が整理番号になるので,それを控えておき,当日会場の受け付けで知らせるという仕組みです。

ちなみに,物凄く苦労したけど,物凄く充実感を感じた大阪でのアウトリーチはもう一昨年になるのですね。今,思わず「大阪で去年やった」と書きそうになりました。
…なんていう感慨に浸っている場合ではなく,名古屋の後は大阪の順番なので,その準備というか,何か新しい企画を考えなければなりません。いいアイデアをお持ちの方,いや,つまんないアイデアでも結構ですので,こんなことやったらどうかという希望がありましたら,ぜひご連絡ください。特に,前から言ってるだけで実現しない主婦向けアウトリーチ企画を実現するアイデアを歓迎します。


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KOTO実験ラン中

J-PARCで行っているY研究室のもう一つの実験,KOTO実験は今まさに実験中(のはず?)。本来のビームタイムはもっと先のはず,というのもJ-PARCのフラッグシップ実験はT2K。しかもtheta_{13}の測定を巡ってDouble Choozと争っていますから,ビームタイムの優先度という点ではどうしてもT2Kに軍配が上がります。なので,本来のスケジュールの詳細は忘れましたが,とりあえず地震のダメージから復活したJ-PARCでは数ヶ月間T2Kをやり,その後1、2ヶ月間程度ハドロンホール(KOTO実験をやってるとこ)にビームを出す予定でした。

ところが,T2Kの電磁ホーンというもの(陽子をターゲットに当てて生成したパイオンを前方の1点に集めるための電磁石)の電源が故障したため,しばらく(2、3ヶ月??)実験をやれないということが去年の年末に判明しました。そこで,急遽1月から2月にかけてハドロンホールにビームを出すことが決まり,KOTOな人々は年明け早々からビームタイムに向けて準備を慌ただしく進めていました。先月末に準備を終えて,今月はすでにビームが出ているそうなので,今頃は皆寝る暇がないくらい忙しく頑張っていることでしょう。

とは言え,KOTOの検出器はまだ完成していないので,今回のランはエンジニアリングランで,今日Y教授から聞いた話では,SくんがKe3を使って,Lくんが+-0を使ってKaonの数を測るのが目標のようです。ビームの状況がどんなことになってるのか,検出器が動いているのか,私にはわからないのですが,同じ研究室のメンバーが頑張っているであろう姿を想像すると,なぜか私も興奮してきます。

ところで,KOTO実験のように陽子をターゲットに当てて生成されるハドロンを使うタイプの実験では,加速器リング内を回っている陽子を”ゆっくりと”取り出します(=ターゲットのあるビームラインに送る)。陽子の数はたくさんあり,その陽子を一瞬でターゲットに当てても,生成される粒子の数が多過ぎてデータ収集が追いつかないので,ゆっくりと陽子ビームを取り出すということをします。陽子をリングに入射,加速,取り出し,ということを繰り返すわけですが,この周期が3秒くらい(?)だったので,ビームの取り出しに使われる時間も1秒前後になります。ビーム内にある陽子を1秒かけてゆっくりとビームラインに送り続けるこの方法のことを遅い取り出しと呼びます。

一方で,T2Kのようなニュートリノを使う実験では,ニュートリノは検出器となかなか反応しないのでとにかく粒子数がたくさん必要になります。リング内の陽子全てを使って生成される粒子,が崩壊して最終的に生成されるニュートリノが一瞬で検出器に届いてもデータ収集は問題ありません。前置検出器と呼ばれる,陽子がターゲットに当たり生成された直後の粒子たちを捕まえる検出器は,粒子数の多さからまあ色々と大変ですが,でも本来捕まえるべきニュートリノを考えたときには,とにかく粒子数が欲しい。ということで,遅い取り出しよりも効率良くビームを取り出すべく,リング内の陽子ビームがリング内を1周する間に全ての陽子をターゲットへのビームラインに送り出してしまいます。この方法を速い取り出しと呼びます。

ということで,同じ加速器を使う同じ固定標的実験でも,使う粒子,狙う物理が違うと,検出器だけでなく加速器の技術も大きく違います。素人なのでイメージでしか説明できませんが,速い取り出しは,陽子を外に蹴り出すのに十分,かつ,ターゲットへのビームラインへ入射させるための磁場をガツンと与えてやるのに対して,遅い取り出しだと,リング内の陽子を少しづつ蹴り出す作業が必要になります。陽子を外に蹴り出すような磁場を与えるということは,軌道内を走って欲しい陽子の軌道に悪影響を与えるわけですから,効率良く外に蹴り出すのは難しくなります。蹴り出すというアクションで失う(=リング軌道内にも,ビームラインにも行かない)陽子が増えてしまうわけですね。

おっと,今日はそういうことを書くつもりではなく,KOTOな人々が頑張ってる頃だということを書くつもりでした。
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修論提出

修論の事務への提出は先週でしたが,審査員への提出の締め切りは今日。ということで,私たちの研究室の修士課程2年の2人は,本日めでたく審査員に修論を提出しました。お疲れさまでした。あとは,1週間後の修論発表会を残すのみとなりました。

ATLASグループの学生Eくんは書き始めるのがかなり遅かったので,一時はどうなることかと本当に焦りました。しかし,私が焦っても論文書きは進まないので,とにかくハッパをかけることしか私にはできず,この1ヶ月弱は毎日ヒヤヒヤして過ごしました。学生が修論を書くのは大抵(?)一生に一回ですが,教員に取っては毎年のことなので慣れてくるかと思っていましたが,そんなことはなく,毎年毎年ハラハラドキドキさせてもらっています。

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国際スクールの宣伝

このブログでもたびたび取り上げてきた新しい国際スクールの宣伝をようやく開始しました。そのウェブサイトがここです。関係者の方々,ぜひ宣伝をよろしくお願いします。博士課程,あるいは修士課程の学生,若手のポスドクが対象で,基本的には高エネルギー物理ですが,素粒子理論の現象論をやってる人もそこそこ楽しめるのではないかと思います。頑張って講師もかなり有名どころを集めました。一番人気はやはりM山さんでしょうか。他には,John EllisをDiscussion Leaderという役で読んでるのも目玉です。CERNとKEK両方の所長も呼び,これからずっと続けていく人気スクールにするという意気込みで皆やっています。こういうスクールは,有名人の講義をただ聞くだけではなく,一緒に酒を飲んだり飯を食ったりして話をする非常によいチャンスですので,若手の人はぜひ積極的に参加してみてください。

ちなみに,場所は福岡で,空港あるいは博多駅から30分から1時間くらいのところです。って,私もまだ行ったことがなくて,5月に視察を兼ねて委員会をそこでやる予定なので,そのときに初めてどんなところかわかりますが,非常に綺麗なリゾートホテルのようです。日時は,10月14から27日。時期としても良い季節を選んだつもりです。これからポスターを各研究機関,大学に送りますが,一番強力な宣伝は口コミですので,繰り返しになりますが,どうか宣伝をよろしくお願いします。

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LHCの今年の予定

ご存知の方も多いかと思いますが,LHCは定期シャットダウン中です。人間も長いバカンスを取りますから,加速器もバカンス,ということなのかどうか知りませんが,CERNでは毎年クリスマスシャットダウンと言って,12月から1月は実験が休みになります。と言ってもおもいっきり休んでいるわけではなくて,加速器,検出器ともにメインテナンスをしています。たとえば,ATLASではカロリメータのエレキが壊れてて穴があいてる部分がありました。検出器を開けて,壊れていたエレキを交換。電磁カロリメータ,ハドロンカロリメータともに,修理を終えて穴がなくなりました。

で,今どんな状況かというと,検出器の修理はほぼ終えて,検出器を閉じる作業にぼちぼち取りかかっています。今月は,ビームはまだ来なくて,その状態で検出器をもとの状態に戻す作業が続きます。元の状態に戻すというのは,一旦開けた検出器を閉じるだけではなく,データ収集できるような状態に戻すということです。その後,加速器の立ち上げと並行して検出器の更なる調整,物理解析のためのデータ収集は3月の末から4月くらいになりそうです。その後は大きなシャットダウンはなくて,今年一般,陽子陽子衝突は10月まで続く予定です。

ビームエネルギーはおそらく4+4TeV。正式な決定は来週シャモニーで行われるワークショップで決まりますが,重心系8TeVというのはほぼ決定事項。ヒッグス探索,特に軽いヒッグス探索では断面積は2,3割しか増えませんが,1TeVくらいの粒子の場合は断面積が2倍くらいになりますので,SUSYその他exoticな粒子を探している人たちの多くはエネルギーをぜひ上げたいでしょうね。バンチ間隔は去年と同じ50ns。なんでもトータルのビームカレントが一定値を超えることができないそうなんですね。ということは,バンチ数を増やすとバンチあたりの陽子数が減りルミノシティが上がらなくなりますから,25ns間隔にはしないという方針です。でもβ*を絞ってピークルミノシティは6E10^{33}を目指します。2011年の2倍程度,バンチ間隔は一緒。ということで,バンチ交差あたりの平均事象数は40くらいまで行きそう,という検出器に取ってはなかなかに大変な運転状況です。

気になる積分ルミノシティはICHEPまでに5fb^{-1}というのが短期の目標。年間では15fb^{-1}。さてどうなることか,楽しみです。

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ロシアの火星探査機

今新聞で読んだのですが,ロシアの火星探査機が予定していた軌道に乗ることができず,太平洋に落下したんだそうです。その理由が,コンピュータが宇宙線による誤作動を起こしたからだとか。そんなことあるんでしょうか。いや,人工衛星では,シングル・イベント・アップセット(SEU)と言って,宇宙線がコンピュータのICと相互作用を起こし,レジスタの値なんかが書き変わってしまい誤作動することがよくあり,というか,宇宙線のレートが高いのでそういう誤作動を起こさないように,耐放射線性の高いICを開発するのが至上命令だったりします。

私たちのように,高エネルギー物理で厳しい放射線環境で検出器を動作させる必要がある人間にとっても耐放射線性の高いIC開発というのは重要なのですが,上記の理由で人工衛星開発でも,SEUを起こさないICの開発とか,SEUが起きてもトラブルが起きないような仕組みを作ることが不可欠と考えられています。それなのに,誤作動で落下。ロシア,恐るべし,です。しかも新聞記事の表現では,マイクロチップが粗悪だったとか。粗悪だったって…テストせずに使うのか,ありえないだろう,というのが素直な感想です。

しかし,その落下地点は太平洋だそうですけど,落ちてくる時にはちゃんと燃え尽きてくれたんでしょうか。どこらへんまで行ってから落ちたのか知りませんが,ちょっと恐ろしい話です。

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