ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

塩水振動とゲージ原理

突然ですが、塩水振動という現象をご存知でしょうか。ググってもらえれば詳しい説明があるかと思いますが、簡単に説明しておくと…

水槽に真水を入れておきます。それとは別に、底に穴のあいたコップのような物に塩水を入れておきます。さて、そのコップを水槽の水面に入れるとどうなると思いますか?

そうです、塩水のほうが真水よりも重いので水槽内に塩水が流れ出ます。実験をやるときには、塩水であることがよくわかるように色を付けておくとよいようです。ま、ここまでは当たり前なのですが、知らないとその後の展開に若干驚きます。コップ内の塩水の重さによる穴から水槽に飛び出そうとする圧力と、それとは逆向きに働く水槽内の水の水圧が釣り合ったところで塩水の流出が止まるような気がします。ところが、勢いに乗って塩水が出過ぎてしまうため(という説明でよいのか私にはわかっていませんが)、今度は水槽内からコップの穴を通して水が逆流を始めます。するとまた逆流が勢いに乗ってしまい、平衡点を越えてまたコップ内の塩水が水槽内に流れ出ます。そしてまた勢いに乗り過ぎて…と、コップ内と水槽内の水が出たり入ったりを繰り返します。

似たような現象は他にもあって、私が見せてもらったことのあるのはろうそくの炎の振動。1本のろうそくだとゆらゆらと燃えているだけなのですが、2本(複数本)まとめておくと、炎の大きさが周期的に変化します。これらは、非平衡系の物理という物理学の中の1つのジャンルとなっていて、塩水振動の例だと、水の粘性やらなんやらを考慮して、そういう現象をモデルを立てて説明します。

で、私がこの前見せてもらって驚いたのは(ちなみに、Saturday Afternoon Physicsの高校生への講義で見せてもらいました)、塩水振動のための容器を2つ使った場合です。初めはそれぞれ2つの容器の水の出入りがばらばらです。ところが時間が経つと、だんだんその周期が一致してくるんですね、しかも逆位相で。2つの容器の間では情報伝達をしていませんから、独立に塩水振動が起こるような気がするのですが、まるで連成振り子みたいな挙動をするのです。なかなか不思議な現象です。

ろうそく振動でも同じようなことはあるようで、これはずいぶん前にどこかで見せてもらったのですが、ろうそく2本をある程度の距離に離しておくと、さきほどの例では同じ位相で、つまり2本の炎の大きさが同時に変化していたのが、今度は逆位相で振動を起こすんですね。

どちらの例も、水の粘性による水の流れや、炎の大きさの変化による空気の流れで説明できる現象なのでしょうが、誰でも見てすぐにわかるという点で非常にインプレッシブな実験です。そういう実験を見て私が感じるのは、ゲージ原理の偉大さです…物凄い飛躍ですね。ははは。

こういう一見不思議な現象を人間がどのように理解するかというと、色々なパラメータを導入して(=パラメータの持つ物理的な意味を考え)モデルを立て、そのモデルが観測結果を再現すると、パラメータの持つ物理的な意味、解釈が正しいということになるわけですよね。弱い相互作用におけるパリティの破れや、CPの破れを観測し、その観測事実に合うようにラグラジアンの形を決めたのに似ています。

ところが、ゲージ原理というのはその原理を使うと相互作用ラグラジアンの形が決まってくるのです。観測事実から推測するのではなく、ゲージ原理が宇宙を支配するルールだとして、そのルールを受け入れることで観測事実に合うラグランジアンを決められるわけです。これって凄くないですか。そんなことわざわざ言わなくても、だからこそ、多くの素粒子物理屋は標準模型に信頼を寄せているわけですが、その凄さを多くの人にわかって欲しいなぁ、なんて思うのでした。素粒子を学ぶ学生さんでも、その凄さ、ご利益を実感していない人が多いですし、一般の人に対してきわめて説明しづらい概念なんですよね。それがまた、塩水(ろうそく)振動の実験などと違って悔しいところです。

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LHCの予定とか

今月はLHCは重イオンの衝突実験。検出器は立ち上がっていますし、データも収集していますが、まあ正直、自分にとってはエキサイトなデータ収集ではなく、自分たちの実験が走ってるのに実験状況に関してあまり興味がない、という不思議な状態です。そんな重イオン衝突もそろそろ終わり、12月の第2週くらいからクリスマスシャットダウンです。ビーム衝突の再開は2月中旬の予定となっています。

2010年から11年にかけては、通常よりも短いシャットダウンで休み無くLHCを走らせるという話でしたが、短いシャットダウン=がっつり2ヶ月休み、というのはヨーロピアンな感じです。普通にシャットダウンすると言ったらどれくらい休むものなんでしょうね。

クリスマスシャットダウンはさておき、高エネルギー関係者が今注目しているのは、その後のLHCの予定です。2011年一杯は7TeVで走り、その後1年強のシャットダウンで14TeVに行けるように加速器を準備するというのが既定路線でしたが、最近は、どうもその予定が変更されそうです。2011年ではなく、2012年まで7TeV(あるいはどこかで8TeVにエネルギーを上げて)で走り続けるという案が有力になってきています。

Tevatronが2013年まで(でよいのでしたっけ?)走ることになりそうなので、間違ってTevatronに先にヒッグスを見つけられては困る、というのが予定変更を考えている理由だと思われます。Tevatronの結果は、exclusion limitを下げるための、本当の意味での探索ではない解析手法で出された結果なので、2013年まで走っても兆候さえ見つけるのは難しいのではないかと私は思っていますが、同じように考えていても上層部の判断としては、1年間シャットダウンを先延ばしするというオプションはあるでしょうね。Tevatronをやや上回るまでの感度を出しておいて、その後ゆっくりとシャットダウンをしてエネルギーを上げる、というのは非常にありうる判断です。

ところでTevatronでは、CDFと特にDzeroのシリコンは死なないんでしょうかね。自分がやっていたDzeroでは、シリコン飛跡検出器の最内層に耐放射線特性の高いシリコン検出器が追加されていて、その検出器はTevatronのルミノシティなら相当長いこと生き延びますが、それ以外の検出器は放射線ダメージの影響が出始めているはずです。Tevatronが延長して、もしかするとLHCと競争できるのは非常に軽いヒッグスの場合のみなので、btagできなくなると走る意味がありません。って、まあ、P5でやりたいって言ってるくらいなので、なんとか死なないで走れる目算があるのでしょうね。

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久しぶりの委員会

今日は久しぶりに、なんちゃらかんちゃら委員会のためにICEPPへ行ってきました。前回のこの委員会と、もう一つの委員会は別の用事のために不参加だったので、3ヶ月振りくらいになります。

ちょっと前のエントリーに、神戸大学へ行った時に1日に3回も電車の遅れを経験したと書きましたが、なんと、今日もまた経験しました。山手線に乗っていると、ある駅で長いこと停車。アナウンスによると、1本前を走っている電車がドアの故障の修理をしてるとか…。最近仕事でどこかに出掛けるたびに、電車の遅れに遭遇してるような気がしてしまいます。まあ、危険な目に遭ってるわけではないので、良いと言えば良いのですが、かなり珍しい体験ではないかと自分でも驚いています。

委員会の内容はようやく議論中心になっています。少し前までは議論のための勉強会だったのですが、それをもとにようやく将来計画を議論する、という段階に入ってきました。春の学会でタウンミーティングを行うのですが、その議論の叩き台となる提言を今作っているところです。ただ、学会でのミーティングでは生の声を聞くのは難しいでしょうから、若手の声を吸い上げるには別のなんらかの工夫が必要になってくるかもしれません。とは言うものの、真に意見を聞きたい若手に10年先の将来計画について意見を言えというのはかなり荷の重い相談であることも確かで、若い人の意見を聞くのはいずれにせよ結構大変なのかもしれません。

とまあ、今日はそんなことを議論してきました。

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わかりやすさの功罪

今日の午後は、学部1年生の物理学実験の授業。最近スランプで、13時から18時までまるまるかかってしまいます。それも、1つの班が遅いとかではなく、毎回かなりの数の班が遅くなり、最後は私自身が計算を手伝ってあげるというようなことが続いています。去年もその前も同じ授業を同じ学部同じ学科の学生相手に担当したのですが、大抵は16時過ぎくらいに終わり、遅い班が17時くらいになるというのがお決まりのペースだったので、今年は何でこんなに時間がかかるのかと不思議に思っています。

いや、正確には、遅いのは実験の測定ではなく、測定が終わった後のデータの計算が例年に比べて強烈に遅くなっています。計算と言っても、四則演算だけ、しかも計算機を使うので、慣れていれば2、3分、過去の1年生は1時間程度(つまり、測定には2時間程度)で終えられる、というペースだったのですが、今年は2時間から3時間かかってしまうという大幅な変化なのです。本当に与えられた式に数値を代入して四則演算するだけなので、躓いているわけではないんですね。見ていても頑張って(?)計算しています。にもかかわらず、とてつもなく時間がかかってしまうので、何をどうアドバイスすればよいのか悩んでいます。計算の要領の問題かとも思い、実際に私が計算をしてみせるのですが、学生が同じことをやると別の答えになってしまい(オーダーが違うような明らかな間違い)、結局時間がかかってしまうのです。いや、本当に困っています。

関連して悩んでいるのは、わかりやすさを追求した授業でいいのか、ということです。この授業は全ての教員が画一的に同じプログラムで同じ内容を教える必要があり、実験手順の説明をするDVDが用意されています。通常はこのDVDを学生に見せるのですが、このDVDがわかり良過ぎるのですね。わかりやすいというのは、実験の意味や、測定の意味を理解していなくても、やるべき手順が画像で示されているので、それを猿真似すれば測定は行えてしまうのです。もちろん短時間で授業を終わらせようと思えば、測定の手順をわかりやすく説明してるそのDVDを見せた方がいいのですが、あまりに学生が何も考えないのが怖いのです。

例えば、そのDVDを学生に見せないと、オシロスコープにどうやってケーブルを繋げばいいかわからない、的な説明しろと言われても困ってしまうような質問に出逢ってしまうのです。ケーブルのコネクターの形と大きさ、オシロスコープのコネクターの形と大きさを見れば、どのケーブルが差し込めるか一目瞭然ですし、そのコネクター同士の接続の仕方って…押し込めという説明以外に何を彼らが期待してるのか私にはわかりません。押し込んでみれば、捻ることはすぐに気付くでしょうし。

もちろん、考えて、色々試した挙げ句にどうしたらいいのかわからないときは、遠慮せずに質問して欲しいです。ですが、とにかく、まずは少しは自分の頭で考えて欲しいんですね。普通に生活できるレベルの人であれば、考えればそんなことは必ずわかります。そういう問題(と呼ぶほどのことではない事柄)も考えないという態度は、教員としては非常に悲しいのです。でもそれは、わかりやすさを追求して、自分自身で考えさせることをしてこなかった教育の問題でもあるわけで、いや、社会的な風潮が根幹にあり、多くの人が考えることを放棄してる結果なのだとは思いますが、教育する側としては、本当にわかりやすさを追求してよいのかと考えてしまいます。

昔、外山滋比古さん本(タイトル忘れました)を読んで心に残っている内容があります。今の教育は、飛行機ではなくてグライダーを作っている。自分では飛べないが、誰かに引っ張ってもらうと上手に飛ぶ、そういう人間を作っている、という内容で、強く同意した覚えがあります。一番良い教育は何も教えないことで、本人が人から何かを盗み、考えないことには、真に身に付くことはない、というような主旨のことも書かれており、それにも強く頷きました。教える側には、物凄い忍耐力が要求されますけどね。

ところが現実には、もしそういう教員がいれば、学生からのアンケートでわからないと文句を言われ、クラスの平均の成績が悪いと大学の会議で問題視され…そんなことは到底私たちの大学ではできません。私たちの大学だけではなく、小中高大を問わず学校ならほとんどがそうでしょう。(聞くところによると、京都大学ではそういう授業が多かったと聞きますが、今はどうなんでしょうね。)

とまあ、自分の描く教育の理想と現実との大幅なギャップは埋めようもなく、できることはブログにこうして考えを書くくらいなわけですが…ホントどうしたらよいのか難しいです。
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宇宙は何でできているのか

いきなりキャッチーなタイトルです。でも、そのタイトルに応えるべく、ダークマターが23%で…と、うんぬんかんぬん書くつもりはありません。そうではなくて、そういうタイトルの本が売れてるというのが今回のお題です。

読書が趣味のカミさんは、その本が科学関連の本なのによく売れているということを知っていて、新聞の広告に大きく乗ってるM山Hさんの写真を見て驚いている私を見て、「知らなかったの?」的な反応をしていました。とまあそういうわけで、つい最近までそんな本が売れてることを知らなかったのですが、M山さんが書いてるんだったら一般の人にもわかりやすく、かつ、面白いだろうから、売れてると聞いても驚きはありません。

M山さんのトークは極めて面白く、わかった気にさせるマジシャンとでも呼びたいくらいです。難しい話でも、彼のトークを聞いてるときはわかった気になってしまいますし、実際、専門家の間でも評判が高く、大きな国際会議の〆のトークをよく任されています。最近は、高エネルギー物理の将来計画検討小委員会なるものでご一緒させていただいているのですが、彼の場合、トークだけでなく発言も非常にわかりやすく、人を説得させることに関しては彼以上の人を私は知りません。あ、いや、もちろん、無茶苦茶賢くて、物理もよーくわかっているからこそ、そういう話ができるわけです。何が本質で、人は何を理解しずらいかを瞬時に見破り、ここが特徴ですが、説明するときに非常にわかりやすい上手い喩えを使ってくれます。その例え話でわかった気にさせちゃうんですね。

そういう私も、一般の人向け、あるいは学部生を対象とするような素粒子物理学のイントロダクション的なトークをするときには、M山さんのトークを大いに参考にさせてもらっています。毎回使うスライドの1枚には、M山さんのスライドのパクリがあって、「M山さんのスライドを拝借して修正」的なコメントを入れて使っています。

ところで、最近色々な所で一般の人を相手にトークをして強く感じるのは、キャッチーなフレーズの重要性です。「宇宙」「反物質」「ブラックホール」「ワープ」あと何だろう…?他にもあるかもしれませんが、とにかく、前述のようなSFチックな言葉を出した時の喰いつき方が違います。コメントでN村さんが書いていたように、私たちのような専門家は、SFチックな言葉に対する感受性が劇的に低くなっています。あまりに日常ですし、それが何なのか理解してしまってますから。しかし、一般の方は違うんですね。そういう言葉で色々な想いを想起することができ、胸躍らせることが可能なんですね。

で、M山さんに戻ってくるのですが、彼はキャッチーなフレーズを散りばめるのも上手です。キャッチーな言葉を散りばめすぎるのは、なんというか、誠実さに欠けてくる気がする一方で、私たちのような人間の講演を聞きにくる人というのは、そういう言葉を用いた解説を聞いて胸躍らせることを目的にしている可能性も高いでしょうから、やっぱりそれなりに混ぜた方がいいのかな、などと、その配合については結構迷います。いや、今手元に「宇宙は何でできているのか」の新聞広告の切り抜きを持っているのですが…専門家以外だと「ん、どういうことだろう、これ?」みたいなキャッチフレーズの連発です。ま、これは広告ですから仕方ありませんが、そういうフレーズをどんどん思いつけるコピーライターのような能力もM山さんは兼ね備えているんでしょうね。

最後に、毎度の繰り返しですが、やはり日本人は強烈な言霊教だと感じてしまいます。語感というのでしょうか。それがとにかく大事で、油断してると中味よりも語感のほうが重要だったりするので、油断なりません。「宇宙」=ロマン、「イトカワ」=ロマン、「素粒子」=ロマン…になって欲しいものです。

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砲撃のニュースで思うこと

朝鮮半島での砲撃のニュースが今日の朝刊の1面で大きく取り上げられていましたが、私はそのニュースにはあまり驚きませんでした。最近の北朝鮮の権力移行に伴う緊張感演出(?)政策と、日本のダメダメ外交ぶりを考えると、日本に対する何らかの威嚇行為があるのではないかと思っていたし、それが心配だと周りの人にも訴え続けていたので、攻撃対象が日本ではなかったということが私の中での若干の驚きでした。軍事・外交的にはかなり緊張感が高まっている中で、相変わらず政策の議論はされず失言をなじりあっている国会を見て、日本の国際安全保障問題を心配していた矢先の出来事だったので、「日本ではなく韓国か」「次は日本か」というのが、ニュースを見た私の第1感でした。

日本の政治には、人口減少を根源として構造的なデフレ、社会保障問題などなど多くの問題がありますが、私は個人的には国防を一番心配しています。戦争がないこと、国防を心配しなくても安全な国際社会、というのがもちろん理想の世界ではありますが、犯罪がないことが理想ではあるがだからといってセキュリティ全くなしという人がいないのと同様、犯罪者がいるのと同じように日本人の感性では理解できないような無茶な国があるわけですから、自分の国の領土と主権を守るためのシステムは不可欠です。

変な喩えかもしれませんが、繁華街で商売をするには、その道の人たちから身を守るためには警察という国家権力か、同業者であるその道の人たちのどちらかに頼らなければならないわけですよね(もちろん前者が倫理的に正しい行動だと思いますが、今は喩えです)。それと同様に、警察に匹敵する国防組織を確保するか、アメリカのような国に守ってもらうか、なんらかの安全対策が必要です。泥棒はいないほうがいいけど、家を空けるときはみんな鍵をかけて出掛けます。暴漢はいないほうがいいですが、シカゴの南部のように治安の悪い場所を若い女性がセクシーな姿でフラフラ歩いていたら、襲われたからといって同情してくれる人はほとんどいません。国防も全く一緒だと思うのですが…日本の政治家さんたち、特に民主党の人々はどうやって日本の領土を守るビジョンを描いているんですかね。

というか、政治家だけでなく、自分の身は自分で守るという感性が日本人には著しく欠けているんでしょうね。何かあれば国に責任を求め規制を作らせ(それが経済発展の妨げになってるのに)、腐っているかどうか自分で判断しないで賞味期限表示を頼り、そういう国民が選んだ政治家なので国を守るという意識が希薄なのは当然なのかもしれません。

政治関連の話になったのでつけ加えますが、景気低迷、経済の低成長などの問題に関しては、私は政治家の無能ぶりや役人よりも、大企業(財界)のご都合主義に一番腹が立ちます。自民党政治で50年以上も鉄のトライアングルを築いてきたのですよ。今の新興国のように、何も考えなくても高成長できる人口のボーナスに乗って、将来のビジョンなくその時代に企業が儲かるように政策を影でコントロールしてきたわけです。人口が減ることは予想できたし、価格競争では後発の途上国に勝てなくなる日が来ることもわかっていたわけです。それなのにノウノウと同じビジネスモデルを続け、今もまだ円安にしろと政府や日銀にプレッシャーを与え続けてるのを見ると、マスコミに責められてる政治家や官僚が可哀相になってきます。あるいは、世界的に見て非常に莫大な手元資金を貯め込んでいるのに、自分たちではリスクを取らず、政治に対してだけ財政出動やら法人税減税を求めてる企業に本当に腹が立ちます。大学生の就職活動を早くから開始することの弊害がわかっているのに、自分の会社だけが早く優秀な人材を確保したいから就職活動の開始時期を遅らせられないという会社の態度や、上記のリスクを取らない態度というのは、最後通牒ゲームの卑怯者そのものです。

おっと、もう何に腹を立ててるのかわからなくなってきてるのでこの辺でやめますが、(何らかのミスも含め)突然ミサイルが日本に降って来るようなことがないよう祈っています。できることが祈るだけというのが、なんとも辛いとこですが…。

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自己嫌悪

いやー、参りました。昨日は、私たちATLASグループの定例ミーティングを夕方に終えた後、新型シリコン検出器のテストで苦労しているUくんの手伝いをしようと、一緒に実験室で作業をしたのですが…作業開始後間もなく、私が検出器を壊してしまいテストできなくなってしまいました…。Uくんの作業を加速させようと思ったのに、おもいっきり大ブレーキ。激しく自己嫌悪です。

テストしているものは、シリコンセンサーと読み出し用の専用ICが一体となったものなのですが、その検出器とさらに外部の読み出し装置は、ワイヤボンディングという非常に細い(数10μmでしょうか)ワイヤと溶接技術を用いて接続されています。溶接されているといってもそのワイヤは非常に繊細なので、何かに触れると力学的に壊れてしまいますし、手などで触ると塩分で性能が劣化してしまいます。強度的には10グラムちょいでワイヤが取れてしまうのではないかと思います。

そういうわけで、とにかくデリケートな部分なので注意が必要な箇所です。テストするときは、大抵カバーをつけた状態で行います。が、昨日は、カバーを外してテストしたくて、それでワイヤボンディングの一部を破損してしまいました。この特殊な溶接は大学ではできないので、KEKまで行かないとなりません。そうです、Uくんには申し訳ないのですが、KEKまで行って修理してもらわないとなりません。ついでに、検出器は1台だけでなく2、3台持って来てもらおうと思っています。

ちなみに、私が壊したから言うわけではありませんが、私たちが使うシリコン検出器最大の弱点は、このワイヤボンディングです。ピクセル型の場合は、バンプボンディングと言われる、まあ似たような(と言っていいかどうかは微妙なのですが)溶接技術を使って、シリコン検出器と読み出しICが接続されています。大量生産時の歩留まりも悪いし、テストした後に実機にインストール。そこで起こるトラブルもワイヤ(バンプ)ボンディング関連が多いと推測されています。そこで最近の流行として、センサー部と読み出しICのボンディング不要な一体型検出器(monolithic detector)が色々な場所で開発されています。Uくんがやってる開発というのも、その一環だったりします。

とまあ、色々書きましたが、言いたいことは一つ。Uくん、ごめんなさい。

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違法≠犯罪?

日本の刑罰は重いか軽いか、というような内容の本をこの前CERNに行った時の移動中に読みました。

結局、比較問題なので(国による違い、時代による違いなどなど)、現代という前提から他の国と比べると、軽犯罪については異常に重く、重大犯罪については軽い、という結論でした。また、日本の特徴は、他の国に比べて社会的制裁が異常なまでに厳しいうえに、有罪にならなくても逮捕されただけで社会的に抹殺されてしまうところだ、という主張にはおもいっきり頷きました。ということで、結論自体はそれほど驚かなかったのですが、法律そのものや、その執行方法、犯罪者に対するリアクションが国によって大きく違うことが説明されていて、その違いには大いに驚きました。

なかでも「へー」と思ったのは、中国の法律。もちろん法律ですから、何が違法かの定義はあるわけですが、違法行為をしたからといって即犯罪ではないのだそうです。違法行為が社会に著しく影響を与えたときのみ犯罪になるのだそうです。何をもって「著しく」と判断するのかは、当局の都合なのでしょうが、とにかく法律上の定義として軽い違法行為は犯罪とみなされないのだそうです。(用語を正しく理解していないかもしれないので、間違っているかもしれません。その辺は行間を読み取ってください。)

例えば、万引き。盗んだ金額が大きければ(何元という基準みたいなものがあるらしいです)罪になりますが、たいした金額じゃないと、裁判はおろか警察が逮捕することもできないのだそうです。警察が怠慢なわけではなく、軽い違法行為では有罪にならないので動けないのだそうです。いやー、びっくりしました。暴行についても同様で、暴行罪みたいなものは存在しないのだそうです。殴るか蹴るかして、相手が大怪我をすれば傷害罪になりますが、たいしたことない場合は犯罪と認められないのだそうです。

と、私は驚いたのですが、別に中国だけでなく、他にもそういう国はあり、日本のようにどんな小さな違法行為でも警察が動いてくれて、逮捕、裁判…となる国は、むしろ珍しいくらいらしいのです。いやまあ、確かに治安が良いとは言われていますが、実際、日本の警察、というか社会の犯罪者に対するリアクションが日本ほど厳しい国はないみたいなんですね。だからこそ、治安が良いんでしょうね。ただ、まあ、そこまでなんでもかんでも違法行為を犯罪にされてしまうと、冤罪が非常に恐ろしいです。著者も、この日本人の反応は相当恐れているようです。

でもって、この本を読んで最も頷いたのは、日本の法律とその運営は日本人の文化を強く反映しているということ。軽犯罪には重罰を持ってのぞみ、殺人のような重大な犯罪でも犯罪者が反省していれば(反省していると判断されると)異常なほど軽い罪になってしまうのは、日本人の気質、文化そのものだと説いていて、その説明には非常に納得しました。コトあるごとに謝れ、謝罪しろ、反省しろ、というのは日本人のお家芸ですよね。実際、裁判でも、被告が反省していると判断されると、普通の人が予想している以上に刑が減刑されるのだそうです。一方で、なんとか条例なんていう法律以下のルールが厳しく運用され、それで逮捕でもされようものなら社会的に抹殺するなんていう国も日本だけなんだそうです。

日本の量刑が重いか軽いかは、結局、日本人の文化で決まっているという主張には強く同意したのでした。日本の政治家が政策について議論しないで、本質から離れたところで失言を責め立てるのも、そういう政治家を選ぶのも日本人の文化だと常々思っているので、余計に著者の意見に同意してしまいました。

しかし、中国だけではなく、国によって法律、法解釈、法の執行等がそこまで大きく違うということを知らなかったので、非常に楽しめる一冊でした。

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新聞記事の紹介

大学、特に日本の国立大学に関する読売新聞のコラムです。大学運営や大学の在り方をジャーナリストの立場から書かれています。まあ、自分(たち)に都合のよい記事なので紹介してるだけなのかもしれませんが、こういう考えを持っていてくださるジャーナリストもいるということで紹介しておきます。

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Saturday Afternoon Physics での講義

今日は午前中は、というか昼過ぎ昼飯を食べた後にもやっていましたが、シリコン検出器開発関連の打ち合わせ。KEKの仙人…じゃなかった、AさんがIさんと一緒に私たちの大学を訪れました。物性関連の研究室との共同研究に関する打ち合わせで、加えてTさんという別大学の方もいらっしゃいました。

みっちりと打ち合わせをやった後は、高校生対象の講義シリーズ Saturday Afternoon Physics の講義。今日が全6回のうちの最終回で、私は素粒子原子核関連の話をしました。毎度毎度の内容ですし、去年に引き続いて2度目なので、喋り自体は上達していると思うのですが、なぜか去年ほどは盛り上がりませんでした。いや、正確に言うと、質問はたくさん受けたので、内容自体は興味を持ってもらえたのかもしれませんが、去年ほど笑いをとれませんでした。笑いを取れるかどうかというのはその場の雰囲気が大きいので、具体的にどうすればよいのかは難しいのですが、まあ、私はお笑い芸人ではないので、質問が多かったということで良しとします。(と考えて自分を慰めます。ははは。)

ところで、今日の講義の中でも宣伝しましたが、遂にアウトリーチ第3弾の日時と場所が決まりました。3月19日(土)に神戸大学でやります。色々な経緯があったのですが、とりあえずそこに落ち着きました。ポスターやチラシはこれからですし、ウェブサイトもこれから内容を足さないとなりませんが、とりあえず神戸大学のYさんを中心に物事が動き始めようとしています。阪神地方にお住みで興味のある方は、ぜひ足をお運びください。

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反水素

昨日の新聞に、反物質の生成に成功という記事を見つけました。何のことかと思えば、すでに今世紀初頭に成功した反水素の生成の話でした。実は新聞記事だけでなく、CERNの所長もユーザー宛に送るメールで反水素生成について触れていましたから、プレスリリースがあったということなんでしょうね。

ではなぜプレスリリースがあったかというと、素人かつ外部の人間が推測するに、生成した反水素を反水素として保持していられる時間がこれまでよりも格段に長くなったからのようです。そもそもなんで反水素を作るかというと、(これまた素人が聞きかじった知識ですが)反水素のエネルギー準位を詳細に測定して、水素のエネルギー準位と比較、CPTが破れていないか検証すること、だったはずです。

CPTというのは、C(荷電共役変換=粒子と反粒子の入れ替え)、P(パリティ=空間座標の反転)、T(時間反転)の3つの変換を掛け合わせたもので、非常に緩い仮定から素粒子の場の理論はCPT変換に対して不変ということが示せるので、ゲージ原理(ゲージ対称性)あるいは不確定性原理のような宇宙の法則を支配するルールではありませんが、非常に根源的な対称性であると考えられています。ちなみに、PやCPは、相互作用の特徴を示すものなので、相互作用を帰納的に考察するには重要ですが、ゲージ原理やCPT対称性は演繹するための前提みたいなものなので、同じ対称性としてはくくれません。

というわけで、最終目標はCPTの検証。それにはエネルギー準位の測定が必要。ということは、数多くの反水素が長い時間反水素でいることが必要。で、今回は、反水素の保持時間が格段に長くなったので、実験の大きなマイルストーンということだったのでしょう。

ところで、反水素は水素の反物質ですから、反陽子と陽電子からなる束縛系です。どうやって作るかというと、(たぶん)放射線源から得られる陽電子をポテンシャル障壁でどこかに溜めておき、そこに加速器で生成される(陽子を標的に当ててできる)反陽子を減速、冷却して入射します。反陽子で陽電子は電荷が逆ですから、どういうポテンシャル障壁を作るのか謎ですが(=きっと、それが秘伝のタレなのでしょう)、とにかく反陽子も陽電子付近にポテンシャル障壁でトラップさせます。一言で言うと、反陽子と陽電子を空間的にも速度的(=温度的)にもそろえてやることで、束縛状態を生成させます。

ではどうやって反水素ができたということを実証するのかというと、ある時間が経って反水素が消滅すると、反水素は物質との相互作用により(実験は真空に近い状態にしますが、本当の真空状態は作り出せないので微量の粒子が存在します。もちろん宇宙空間にもたくさんの粒子が飛び回っています)、パイオンなどの粒子を生成して消滅。陽電子は崩壊してガンマ線を対生成します(=癌などの場所を調べるPETで使われている崩壊です)。反陽子の消滅により生成されるパイオンなどの粒子の生成位置と、ガンマ線をトレースすることで同定する陽電子の崩壊位置が等しいということをもって、反陽子と陽電子の束縛状態が存在した、つまり反水素が生成されていたとわかります。

とまあ、そういうわけで、反水素を生成できたということなのですが、反水素=反物質なんですね。つまり、陽電子のような反粒子は日常的に、とまでは言わないまでも、PETなどで広く使われています。が、反粒子は反物質ではなくて、反水素、つまり水素原子になると物質と呼ばれるのですね。どうでもいいことなのですが、どこまで物質と呼ばれて、どこからは物質と呼ばれなくなるのか、謎です。

それともう一つ感じたのは、「反物質」という言葉の響きのよさです。天使と悪魔の影響もあるのかもしれませんが、反物質というとマスコミの食いつき方、一般の人の好奇心の駆き立てられ方が違う気がします。しょっちゅう書いていますが、「宇宙」という言葉と似てますね。これも言霊かもしれません。

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ちょっと嬉しいこと

素粒子理論、原子核、そして高エネルギー分野では、若手夏の学校という大学院生が主体となる催しが毎年開かれています。幾つかの大学の持ち回りで様々な準備をします。実務面の準備やプログラムの準備などを分担するわけです。来年の高エネルギー分野の(プログラム)担当はどうやら奈良女らしく、数日前に講師をやってもらえないかというお誘いを受けました。

学生に話をするのは好きなので2つ返事で引き受けたかったのですが、実は私は一昨年も講師をしています。同じ講師が続くというのはあまりよくないのでその旨を伝え、事実上の辞退。せっかく依頼を受けたのに引き受けられなくて申し訳なかったです。

しかし、この依頼は実は嬉しかったです。勘違いかもしれませんが、先月のセミナーの評判がそこそこよかったからではないかと自分勝手に推測したからです。まさか、先月のセミナーでダメダメだと感じた人間に講師を頼まないでしょうから。セミナーをしたときに手応えを感じたというような内容のエントリーを書いたかと思いますが、その手応えは私の一方的な感覚ではなかったのかな、と少し安心しました。

いや、全くの勘違いで、他に思いつく人がいなかったので、先月のセミナーで講師をやった私を思いついただけなのかもしれませんけど。ははは。

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万引きと思われない

先週の土曜日の夕方、ミーティング等が終わった後で少し時間があったのでジュネーブのダウンタウンに出掛けました。夕方店が閉まる間際に出かけて、自分の服と土産をサクッと買ってきました。それだけではわざわざ書くほどのことはないのですが…

服を買った店を出る時に、防犯ブザーらしき音がします。凄い人ごみだったし、雑踏の音も大きかったので、防犯ブザーとはほとんど認識していませんでした。次にワインを解に店に入ったところ、ここでもまた防犯ブザーらしき音がします。ここでようやく自分に反応しているのではないかという疑いが芽生えました。しかしまだ何が起こっているかは完全に把握していません。電磁波を反射だか共鳴させるような物を自分が持ってるはずないのに、と思う一方で、もしかして…とある考えが思い浮かびます。

でもどうしようもありません。ワインを買って、出口付近に防犯タグを検知する機械の前を正々堂々と歩きます。すると…やっぱり、鳴りました。間違いありません。自分に反応しています。以前カルフールで万引きと間違われたときのようにスーツ姿のごっつい男が現れるかと思いましたが、とりあえず恥ずかしいので、自分に反応したとは周りの人に悟られないように堂々と歩き続けます。で、結局、誰にも呼び止められず、何事もなかったように帰路につけました。

しかし問題はまだあります。なぜ私に反応したか、です。買い物袋に手を突っ込んで防犯タグがないか調べますが、軽く触っただけでは着いてるかどうかわかりません。しかも、そこから服を買った店まで戻るのはかなりの手間。しかも、店がまだ開いているかどうかわかりません。もし防犯タグが着いていたら壊せばいいか、と考え、そのままCERNの宿舎に戻りました。

部屋に戻るやいなや、袋から服を取り出します。一見何も着いていなそうでしたが、やはり(!)着いていました。プラスチックのあれです。とりあえず、いつも持ち歩いている折りたたみのペンチでこじ開けようとしますが、かなりの強敵。まあ、それはそのはずです。そんなに簡単に外れたら防犯の意味ありませんから。仕方ないので、叩き壊そうかと思いましたが、そのタグをよく見ると壊すとインクが飛び出す、的な絵が書いてあります。そうか、無理矢理壊すとインクが飛び出して服を使い物にならなくなる仕組みなのか、と悟ります。

ここから格闘すること約30分。ペンチでこじ開けようとしますが、うまくいきません。少しだけこじ開けた隙間を覗くと、色のついた出っ張りが幾つかあります。それを押すか引っ掛けるかすればいいのかとしばし悪戦苦闘。が、注意深く明かりをかざしてその出っ張りを見ると、どうやら液体っぽいのです。いやー、危ないとこでした。それがインクなんですね。

この辺で力尽きて一旦諦めます。今度は道具を借りて、インクを炸裂させずにプラスチックを破壊することにします。そこで、CERN滞在中で家にいたHくんとMくんにSOSのメール。CERNに来るついでのあるHくんにペンチやらプライヤーを持って来てもらいます。それで上手く行くかどうか不安だったのですが、プラスチックの材質がしょぼいのか、意外に簡単に壊せます。ペンチ2つを使ってバキバキやると、インクを出すことなく見事にタグの片方を破壊。長い苦闘の末にようやくタグから解放。

いやー、ホントよかったです。しかし、防犯タグを外し忘れるとは酷い店員です。というか、店を出る時に防犯ブザーが鳴っても誰も止めないんですね。最初の1回目は私自身ほとんど気付きませんでしたが、ワインを買いに行ったデパートでは明らかに2回とも(入る時と出る時)鳴りました。でも、誰も万引きだって騒ぐ人いないんですよ。そういう防犯システムがあるよ、っていう抑止力だけで、実際にはそれでガードが駆けつけて来るということはないんですかね。もし、服を買った店を出るときに誰かに止められていたら、レシートを持っていますからそれで問題解決だったのですが…いい(?)体験をさせてもらいました。

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山盛り

CERNから帰ってきて早々、やらなければならないことが山盛りです。特に今日はひどかった…。

物理学会のシンポジウム案を学会に届ける期限が今日。ということで、各方面に案を固定するように早くから働きかけていたのですが、案の定(?)今朝になってもまだ固定されず、かつ、入力情報も中途半端。しかし、午前中は、研究室の定例ミーティング。そして午後は1時から6時半近くまで実験の授業。授業が長引いたおかげで、定例のミーティングを1つすっぽかしてしまいました。授業の後はまた別のミーティング。それが終わった後にまた学会シンポジウムの申請で抜けていた情報を入力。本来は私が担当だったところも、相棒のMさんに肩代わりしてもらい、なんとかほぼ(?)終了。今やっと一息ついています。

ということで、CERN滞在中+移動中に色々ネタを仕入れて来たのですが、今日はこれでおしまい。あっ、一つだけ。

昨日の帰り、成田発伊丹行きの飛行機の中で南部さんを見かけました。「おー、南部さんだぁ」と心の中でつぶやいたのですが、プライベートな時間を邪魔されたくないでしょうから声はかけませんでした。ですが…有名人がいたら周りの人がそれに気付いてさざ波が起こりますよね、普通。けど、全然そういうのがないんですね。だーれもノーベル賞受賞者がそこにいると気付かないのです。そんなものなのかなぁ、と微妙に寂しくなってしまいました。首に「私がノーベル物理学賞受賞者の南部です」くらい書いた札でもぶらさげてないと気付かないものなんでしょうかね。いや、しかし、お元気そうでなによりです。

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CERNにて

実は今週末はCERNにいます。先月に引き続きの超短期出張です。

とある物理解析ミーティングに出席するためなのですが、前回同様無理して短期で来た甲斐があって、ミーティングの議論は非常に楽しめました。いや、純粋に楽しんでいいのかどうかはわかりませんが、物理の内容に関しては少なくとも私にとっては興味深いものでした。色々と考える材料を収穫できました。

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守秘義務と科研費審査

ちょっと前に、裁判員制度での初の死刑判決か、という裁判結果が話題になりました。裁判員制度の判決は、今までの判例よりもだいぶ重いという印象を持っていたので、今回も死刑になるのかと予想していましたが、結果は死刑回避でした。懲役って、人生70から80年のうちの何割かの自由を剥奪してしまうわけですよね。日本だったら、例えば、子孫を残したいと思ってる人がいても、服役前に子供がいなくて、子供を作れる年齢のうちに出所できないと子孫を残したいという、かなり人間としての根源にかかわる権利を奪ってしまうわけですよね。

にもかかわらず、裁判員制度になってからは、被害者感情なんていう論理的にはオカシイと思われる事由のために、量刑が重くなっています。いや、量刑が重くなってること自体は問題とは思いませんが、その理由が変だと言うことはこのブログでも何度も書きました。ところが、です。死刑に関しては別物なんですね。過去の判例に照らしても死刑でも不思議ではないところで、無期懲役。裁判員制度による厳罰化は懲役の場合だけで、死刑には適用されないみたいで、なんだかなぁという感想です。極刑にするのは躊躇するけれども、命さえ奪わなければ、とりあえず勢いで厳罰化してるのが裁判員制度のように感じられて、またまた不公平感を感じてしまいました。

で、今回の件に関してマスコミの報道で、裁判員に選ばれた人の苦悩についての記事を多く目にしたのですが、極刑にするときだけは悩んで、そうじゃないときは裁判員になった人悩まないのでしょうか。懲役10年にするか、15年にするかも、極刑にするかどうか判断する時と同様に、勢いだけでなく、真剣に悩んで欲しいです。だって、変な例えかもしれませんが、高齢者の人を極刑にした場合に奪うことになる時間の期待値と、若い人を長期間服役させた場合に失う時間の期待値って、後者のほうが高くないですか。

とまあ、ごちゃごちゃ書きましたが、裁判員になった人の負担が軽くないだろうということは理解できます。あと辛いのではないかと思うのが、議論内容に関して守秘義務があることです。どれくらい悩むかは知りませんが、悩みってその内容を人に打ち明けられるとだいぶ楽になりますよね。あるいは、人に言ってはいけないこと、守秘義務があることを守るのって、結構精神力が要求されます。

そういう私にも、もちろん幾つも守秘事項があるのですが、その中の1つが科研費の審査員。これは、審査員をやってから2年(?)経つと公開されるのと、1年前でもとある事情があると公開されます。というわけで、人前でようやく堂々と審査員をやってたことを言えるのですが、今回、その「とある」事情が私にも訪れました。なんだか知りませんが、1次審査をした5000人の中から今年は39人が審査員表彰というのを受けるそうで、びっくりなことに私もそれに選ばれてしまいました。大学の総長が表彰してやるので日程調整するから都合の良い日時を教えろという上投げなメールで、今日連絡が来ました。いつも通りの辛口コメントが評価(?)されたのでしょうか。

賞状もらうなんて卒業証書以来なので、しかもちゃんと手渡ししてもらうのは中学校以来でしょうか、嬉しいような、恥ずかしいような、妙な心持ちですが、できることなら賞状ではなく、副賞として私が申請する科研費は採択、とかの方が嬉しいです。ははは。(もちろん、そんなことはありません。)

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テレビ会議中

EVOというPCを使って行うテレビ会議の真っ最中です。

とあるATLASグループの解析ミーティングで博士課程学生のHくんがトークをしているので、それをこそっと聞いています。毎回同じこと書いていますが、学生がトークするのを聞くのは心臓によくありませんね。自分で喋るのよりも何10倍も緊張します。しかも英語でのトークなので、余計です。

が、Hくん、昔よりもだいぶ英語でのトークに慣れてきているようです。若い人は短期間で成長するものですね。別に英語が上手くなって欲しいわけではありませんが(上手くなるにこしたことはないですが)、実験現場で外国人に囲まれて研究してると、発表のテクニックだけでなく、やはり英語力もつくのだなぁと実験しました。

おっ、こんなエントリーを書いてるうちに発表終わりました。質問もそつなく答えられたようで、Hくん、お疲れさまでした。

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授業とか

午前中は研究室のミーティング。午後は、本来は授業のない日なのですが、出張の都合で他の教員と担当日を入れ換えたため、工学部の1年生対象の実験の授業。私の金曜日と交代してもらいました。が、私の担当するクラスは3人1班として7あるいは8班。ところが今日は15班。人数が2倍になると、講義と違って結構忙しくなるものです。色々質問が飛び交うので暇を持て余すことなく、良い感じでした。実験の授業はやはり楽しいです。

ちなみに、彼らは工学部の応用理工学科という学科だそうで、1学年に250人近くいるのだとか。他にも工学部は大規模な学科が幾つもあるわけで、冷静に考えるとその人数の多さに驚きました。で、ふと気付くと、そういう彼らに物理を教えるのは理学部物理学科の私たちなんですよね。物理学科の学生数は1学年に70人程度。工学部、いえ、それだけではありません、基礎工学部というのもあります。それらを合わせると物理を受講する学生数って1学年1000人近くいるのではないでしょうか。それらを物理学科の教員が教えるというのは、教員数の比も圧倒的に違うわけで…なんか微妙な心持ちになってしまいました。当然ですが、(基礎)工学部の教員が物理学科の学生に対する授業をしてくれるなんていうことはありません。

おっと、話がウェットな方向に進んでしまいそうなので方向修正。

授業の後は、とある物理解析のミーティングに遅れて参加。解析に関する有意義なミーティングなので、無理してでも参加します。特に最近はトップクォーク対生成断面積の測定をしているHくんに追い風が吹いていて、なぜか色々なところで発表する機会が訪れており、この風にしっかりと乗れるよう叱咤激励しているところです。よく言われるように、女神様の後頭部は禿げていると私も強く思っていて、学生には、チャンスあるいは勝負所でぜひ踏ん張って欲しいです。

ちなみに、上の段落で「なぜか」Hくんに発表する機会が訪れていると書いていますが、それは外的要因も含めての話で、何もしていないのに発表する機会が訪れているわけではありません。研究成果を積み重ねているからこそ人の目に留まるわけで、女神を呼び寄せるにはもちろん不断の努力が大切です。誤解がないように、追記しておきます。

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ネタ切れ中

最近、このブログに取り上げたいような物理ネタを思いつきません。日々感じたことや考えたこと、その日にあったことを書くのがブログだと言ってしまえばその通りなのですが、物理の宣伝を兼ねている(つもり)なので、何か小ネタを仕込みたいと常々思っているのですが、最近、そういうネタが欠乏気味です。ということで、今日も何かネタがあるわけではありませんが、とにかく1日を振り返ってみます。

雑務以外に今日やったことと言えば、ATLASグループのミーティングと高校生へのレクチャー用のスライド作り、そして学部4年生レベルの物理の演習問題の英訳。その合間を縫って、4年生と少しだけ卒業研究の議論。授業が無い日の定常状態といった感じです。定常と一番違うのは演習問題の英訳でしょうか。

これは研究生として私たちの研究室に所属している留学生のためのもので、来月に物理学専攻内の外国人特別選抜のための筆記試験をその留学生が受けるので、彼の学力がどれくらい上がったのかを(来日前に簡単な試験を行ったのでそれと比較して)私が知りたいのと、彼自身が試験が迫ってナーバスになっているので練習問題のつもりで演習問題を渡しました。しかし、英訳しようと思って改めてわかるのが自分のボキャブラリー。自分の専門分野であれば、英訳するのもそれほど困難はありませんが、大学時代の勉強は完全に日本語だったので、どう表現していいのか大いに悩むケースがしょっちゅうなんですね。先週は、電磁気と量子力学の演習問題を何問か英訳し、今日は熱力学に挑んでいるのですが、熱力学は素粒子物理とのオーバーラップが用語的に非常に少なくて、だいぶ苦労しています。

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今年度初参戦

物理学専攻で毎年主催しているSaturday Afternoon Physicsという高校生を対象としたレクチャーシリーズに、今年初めて参加しました。ミーティングにはときどき出ていたのですが、全6回のうち過去3回は、他に用事があったためにサボっていました。というわけで、4回目の今日が初参加となってしまいました。しかも、来週は出張のためにまた参加できず、今年は2回だけのお手伝いとなりそうです。

さらに、忘れていたのは、自分が再来週に講義をするということ。今日手伝いに行き、他のスタッフに準備を催促されて思い出しました…。去年も講義をしたのですが、去年とは違う切り口が要求されているので(講義には2通りあって、物理の基本的なことを説明するのと、最先端の研究の紹介的なものに分かれています)、前の講義の内容を使い回すのが苦しいところです。昨日のエントリーで書いたように、20日までは予定が詰まっているので、なかなかに大変そうです。って、人ごとみたいですが、何とか準備するしかありません。

話は変わりますが、今、大学では大学祭をやっています。ゴールデンウィークの時のプチ学祭と違って、私や、研究室で何か出し物をするわけではないので、特に宣伝することもないのですが、まあ、大学のキャンパスを眺める機会はあまりないでしょうから、お近くの方は遊びに来てはいかがでしょうか。

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日程調整

先週末、そして今日と、ミーティングなどの日程調整を私が行う機会が続きました。先週は大学の教授陣数人、今日は学会関連の打ち合わせたのため他大学・研究機関のスタッフ数人。こういうことをやるたびに思うのですが、日本人のスタッフが3人以上だと、解を見つけるのが非常に困難になります。それに比べて、私とコンタクトのある外国人は暇なのか(?)、ATLAS関係の委員会のメンバー6人くらいで日程調整をしても平気で皆の都合のいい日時が見つかります。やっぱり、日本人は働き過ぎなんでしょうかね。

それと関係してますが、スケジュール表を見るとうんざりするときってありませんか?

先月後半の2週間くらいは、私の標準に比べるとだいぶ楽なスケジュールだったのですが、今月前半はかなりハード。20日までのスケジュール表を見ると見ただけでげんなりしてしまいます。MacユーザーなのでiCalを使っているのですが、予定だらけで何が何だか一目ではわからなくなりつつあります。はぁーっ…。

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プログラム採択

9月の初めに東京までヒアリングに行ったプログラムに採択されました。昨日も行ったK大学と組んで申請していて、9月末には結果がわかり、10月の初めから交付されるというスケジュールのはずだったのに、結果が来たのが先月末。ということで、どうなっているんだろうと気になっていたのですが、とにかく採択されてよかったです。

ヒアリングまであるプログラムなので、私にとってはそれなりの予算規模で(分野を代表するような有名人にとっては大した額ではないのかもしれませんが)、かつ、プログラムの趣旨が若手研究者を海外で鍛えよう的なので、私たちが最も必要としている旅費に遠慮なく充てることができるという、非常に使い勝手のよい予算です。過去数年間は、とにかく旅費で苦労をしていましたが、これでしばらくの間は博士課程の学生をCERNに派遣するのにはこれまでのような苦労をしなくて済みそうです。

ちなみに、このプログラムは一つの大学あるいは研究所からの申請数が5本までという決まり(それよりも希望が多い場合は、それぞれの研究機関内で絞り込まれる)がありました。かつ、採択予定件数が70から100。これが何を意味しているかというと、同じクオリティの研究内容、申請書内容だと、小さな研究機関ほど有利なわけですね。大きな大学では内部での戦いで落とされる確率が高まりますから。学振(文科省)の人間も馬鹿ではありませんから、そんなことは当然わかっているはずです。ということは、そういう意図があったわけで、大型大学に研究費が集中してしまうのを防ごうという力学でも働いたのかな、というのが私が気になっていた点です。堕落した人間ですので、採択されてしまうと、そういう細かいことはどうでもよくなったりしてしまうんですけどね。

ちなみに、申請件数が212で採択数が68。打率3割です。科研費もそうですが、野球と同じで3割を超えると強打者みたいです。さらに興味深いのがその内訳。理工系では23のプロジェクトが採択されているのですが、その約1/3が素粒子原子核、宇宙関係も含めるとおよそ半分が私たちに近い分野です。研究者数、研究機関数ともに物性のほうが圧倒的に(数倍は)多いので、いかに私たちの分野が外向きかということを示しています。少し前の新聞記事で研究者の海外志向が減っているという話を元に、そんなことないのではないかとブログで書きましたが、実は私たちの分野以外では内向き指向が強まっているのかな、なんてことを考えさせられました。

日本国内で研究を完結してしまう分野って実は結構多いのでしょうか。日本人だけしか面白さを感じない研究というのは、ちょっと微妙な気がしてしまいます。紫式部の研究とか、卑弥呼の研究だったら日本国内で閉じてしまうでしょうが、少なくとも理工系とか生物・医学の分野だったら、戦う舞台は世界だと思うのですが…。そうか、素粒子原子核と違って、物性や生物関係は金回りがいいので、ちょっと海外に研究に行くくらいの金は潤沢なのかもしれませんね。

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線路を歩く

神戸大学での研究会を終えて帰ってきました。学生の発表を楽しみましたし、スタッフと幾つか打ち合わせしたいことがあったのですが、その打ち合わせも予定通り終えられて、毎回同じこと書いていますが充実した研究会でした。

普段なら研究会はこのブログに書く良いネタなのですが、昨日はそれ以上のネタがありました。

研究会からの帰り、電車の先頭車両後ろのほうに乗っていたのですが、とある駅でなかなか出発しません。警笛を何度も鳴らし、動く気配がありません。乗客の多くはどうしたんだろうという態度でしたが、早く帰りたい私は電車を降りて運転手さんのところに行きます。ドアをノックし「どうしたんですか?」と尋ねると「自殺しようとしてるんですわぁ」という予想通りの返事。電車の進行方向を見ると、数10m先の踏切に人が突っ立っています。

短気な私は「わかった」と言って、ホームの端から線路に降りて、電車の前の線路を歩き、その人に近づきます。踏切に近づくと、60歳前後の女性が魂が抜けたかのようにボーッと立っているのがわかります。私が近づいても声を掛けても反応はありません。仕方がないのでその人の腕を取り力づくでホームのほうに引っ張っていきます。すると、その女性は子供が泣くようにわぁわぁと大声で泣き始めます。そんなことはお構いなしにホームまで引っ張って行き、電車の運転手に引き渡します。あとは、駅員さんがやって来るのを待つばかり、と先頭のドアから電車に乗りました。

すると…モーゼの十戒で海が割れるかのように、私が歩こうとする方向に座っていた乗客たちは居住まいを正し足を引っ込め、立っている乗客は私から遠ざかります。いやー、線路に立ってた自殺志望者(?)を殴ったわけでもなんでもないのに、乗客の皆さんは私がよっぽど怖い人だと思ったみたいです。しかも、電車の外のホームではその女性がわぁわぁ泣き続けています。悪いことしたつもりはないのに、「なんでそんな目で私のことを見るんだ」と言いたいような状況になってしまいました。なんだかなぁ…。

とまあ、そういうわけで帰りの電車は遅れたのですが、その次に乗り換えた電車もとある駅でまた発車しません。ようやく発車した後、今度は乗客を介抱していたために遅れた」という内容のアナウンス。乗ってる電車が2本続けて遅れるというのはかなり稀ではないでしょうか。

しかも、まだあります。帰りはそれだけだったのですが、朝、神戸大に向かう電車がやはり遅れ、本来なら乗れるはずの乗り継ぎ電車を逃してしまいました。

というわけで、昨日は、1日に3回も電車の遅れを経験してしまいました。日本ではなかなか珍しい経験ではないでしょうか。

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小さな同窓会

昨日の晩は、大阪近辺に住んでいる大学時代の同級生7人で集まり、小さな同窓会。旧交を温めました。大学卒業以来会ったことのなかった人も2人いて、懐かしい思いを起こさせる催しでした。普段接している人々とは違う職種の人もいるわけで、色々な話が聞けて面白かったです。いつも、こういう企画を実現させるべく尽力してくれるEくん、ありがとう。またやりましょう。

今日は、一ついいことがありました。何度か書いたように、エクセルでの書類書きに苦闘していましたが、それをめでたく提出。事務のチェックが入り、修正した物を再チェックされていたのですが、ようやく終了。相当気の重い作業だったので、精神的にだいぶすっきりしました。

これからは、ミーティングの連発。17時以降に集中して3つあります。そして、明日、明後日は神戸で研究会。神戸大、名古屋大のATLASグループと定期的に開催してる研究会です。というわけで、ここしばらくはミーティング続きになります。

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