ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

牛 - その2

泊まっているホテルの部屋が変わって、窓が牛が放牧されてる方を向いている。窓を開けるとカウベルの音がよく聞こえる。夜中2時3時でも聞こえる。いったいいつ寝てるんだろう。
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ジェット

「ジェット」というと、普通は飛行機などに使われるジェットエンジンを想像しますよね。でも我々の世界には別のジェットがあります。

粒子と粒子を光速近くにまで加速して衝突されると、元の粒子が消えてエネルギーの塊みたいな状態になります。プチビッグバンとでも言うような状態です。そのエネルギーの状態ではいられないので、新たに粒子を作り出します。新たに生まれた粒子が電子(の仲間=レプトンと呼ぶ。強い相互作用をしない。)なら話は簡単。電子はいつまでたっても電子だから。ところがクォークが生成されると話がややこしい。クォークというのは実在の粒子ながら単独では存在しないのです。例えば陽子はuクォークが2つ、dクォークが1つからできています。なので、高エネルギーのクォークが生成されると、真空からクォーク・反クォーク対を(複数)作り出して、相棒となるべき(反)クォークを見つけ、人間の観測にかかる粒子(陽子などの強い相互作用をする粒子=ハドロンと呼ばれる)を作り出します。

もともと生成されたクォークのエネルギーが大きいと1つや2つのハドロンを作ったのではエネルギーが余ってしまい、真空から非常にたくさんのクォーク・反クォーク対を作り出し、結果として多数のハドロンを作り出します。生成された多数のハドロンはもともとのクォークの持っていた運動量方向に飛ばされるので、実験では特定の方向、すなわちもとのクォークの運動量ベクトル方向にたくさんの粒子が観測されます。多数の粒子が狭い空間に放出されるので、個々の粒子の運動量やエネルギーを測定するのは難しく(測定しようとはしますが)、エネルギーの塊として実験では扱うことになります。この粒子の塊、あるいはエネルギーの塊を高エネルギー物理学の人間はジェットと呼びます。

ただ一言でジェットと言っても色々性質があって、それ自体が研究の対象ともなりえます。私の研究はジェットそのものではないのですが、ジェットの性質を利用しないとならないので、必然的にジェットの性質を調べることになります。今やっている研究は大きく2つあって、そのうちの1つでは、ある特定のジェットの性質を調べています。
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日本のアニメ

実験が行われている研究所で研究している利点は、なんといっても現地に滞在しているたくさんの専門家とのコミュニケーションだ。わからないことがあったらすぐに聞けるし、電話やメールに比べて、話の進むのが格段に早い。色々な人とのちょっとした会話が、行き詰まってる研究内容に新しいアイデアをもたらすこともよくある。

そんなわけで、人のオフィスに話をしに行ったり、自分のオフィスに見知らぬ人が質問しに来たりするのだが、数日前に質問しに来た人はスキンヘッドの一見強面(そういう自分も一見恐そうだという話もあるが)。けど着てるTシャツが日本のアニメ。何というアニメなのかは知らないが、私から見るとかなりオタク度が高そう。女の子の顔がTシャツ全面に大きく描かれているのだ。そのアンバランスさに驚き、笑いそうになったが、吹き出すこと無く丁寧に質問に応えることができた。

これまた数日前、研究所に向かうバスに乗る機会があった。その中で身長1m90cm, 体重100kgはあろうかという巨体の外国人に話しかけられた。最初は、研究所でどういう実験をやってて、出身はフィンランドだとかなんとか。そのうち私が日本人だとわかると、日本のアニメについて熱く語り始めた。トトロ好きの巨人…悪い人ではなさそうでした。

日本のアニメが外国で人気があるというのはよく聞く話ですが、それは確かだと思う。マスコミによくあるバイアスで大袈裟に報道されてるわけではなく、本当に人気があり、かつ定着してるようです。自分より下の世代のイタリア人とかフランス人なんて、私より日本のアニメを遥かによく知ってます。しかも、日本で放送されてた時代と外国で放送された時代が違うので、知ってるアニメの年代が複雑。人気のアニメを尋ねると、最近の知らないヤツ、北斗の拳、銀河鉄道999とか答えられてしまいます。
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滞在しているホテルの横には牧草地が広がっている。しかしそれに気づいたのはカウベルの音を聞いてから。そう、その牧草地で牛が放し飼いされていて、ホテルの敷地近くにたむろしてることがあるのだ。牛を間近に見る機会なんてあまりないのでしばらく眺めていたのだが…牛って大きい。なんで草だけ食べてあんなに大きくなれるんだろう。という誰でも思いつく素朴な疑問がやっぱり湧いてしまった。

我々の実験に使う加速器というのは、地下100メートル(くらい?)のところに周長30キロ弱にわたってトンネルが掘ってあり、その中に入っている。陽子を光速近くにまで加速し、その陽子を円状に回すためには強力な磁場で曲げないとならない。そのため超伝導磁石がトンネルの中にびっしり並べられている。さらに反対方向に加速された陽子同士を衝突させるのだが、相手は目に見えない微細な粒子。衝突させようと思うと、数(10)ミクロンの精度で加速器を接地しないとならない。これまた30キロに渡ってである。

何が言いたいかというと、最先端の科学技術を使った装置が地下100メートルのトンネル内に接地されてるのだが、地上では昔ながらに牛が放牧されてる。その落差にちょっと驚いた。いや、暗闇に聞こえるカウベルも驚きましたけど。
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超対称性

標準模型を超える新しい物理で人気なのが、超対称性あるいはSupersymmetry (SUSY)と呼ばれる理論だ。凄い対称性である。なにしろ対称性に「超」がついているのだから。

対称性には、平行移動、回転、時間反転など色々あるが、馴染み深いのは時空に対する操作である。ところが超対称性というのはボソンとフェルミオンを入れ替えてしまうという操作である。ボソンというのは0、1、2…というように整数倍のスピンを持つ粒子。フェルミオンというのは1/2、3/2、…というように半整数倍のスピンを持つ粒子のことで、それぞれ統計的な振る舞いが違う。超対称性ではそれらを入れ替えてしまっても運動法則が変わらないというのである。例えば、電子はフェルミオンであるが、質量、電荷などはそのままにスピンだけ変えてボソンの電子にしてしまっても、運動法則が変わらないと言っているのである。つまり、もし超対称性が真の理論なら、全てのフェルミオンにはボソンのパートナーが、全てのボソンにはフェルミオンのパートナーがいるはずなのだ。通常の粒子に対するパートナーのことをスーパーパートナー(super-patner)と呼ぶ。またそれらを総称して超粒子(susy particle)と呼ぶ。

しかし、実験的に質量が電子と同じボソンというのは見つかっていないし、いかなる超粒子も発見されていない。これは、超対称性は少しだけ破れていることを意味している。宇宙が誕生した直後には超対称性は保たれていたが、時間が経ち宇宙が冷えるたある時刻で超対称性が自発的に破れて、スーパーパートナーの質量が通常粒子の質量と同じでなくなったと考えられている。超粒子が今までに発見されていないということは、もし超対称性が自然を描く正しい理論なら、通常粒子よりも質量が重く、今までの実験ではそれらを生成するのに必要なエネルギーが得られていなかったということになる。そこで、我々の実験では今までに到達したことのない高エネルギー状態を加速器で作り出し、超粒子を生成、その存在を実証しようとしている。
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対称性

たまには研究内容について書いてみる。

ここ(このブログのリンクからも行ける)に書いてあるように、素粒子物理学というのは対称性と切っても切れない関係にあるらしい。全ての粒子に質量を与える源となっていると考えられている仮想的な粒子にヒッグスボソンというものがある。ゲージ対称性という数学的な(群論に基づく)対称性の考察から、実在の粒子に質量があるのはゲージ対称性が破れているためだ。という考え方を押し進めた帰結として、そのヒッグスボソンというものの存在を予言している。そのために、我々を含めて世界中で多くの研究者がヒッグスボソンの発見と、その性質の解明をすべく、日夜研究に励んでいるのである。

現代の素粒子物理学では、ほぼ全ての実験事実が標準模型という理論の予言と一致している。しかし、理由は省くが、標準模型が究極的な理論だとは誰も思っていない。より本質的な理論は別にあって、その近似版が標準模型だと信じられているのだ。そういうわけで、最近、たぶん過去10年、いや20年は、標準模型では理解できない現象(=「新しい物理」と呼ばれている)の探索が精力的に行われている。では、その標準模型を超える新しい物理というのはどういう理論かと言うと、ここでもまた対称性なのである。
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国境を歩いて越える

アパートがまだ見つかっていないため、3日前から不便ではあるが、研究所から歩いて30分弱の安ホテルに泊まっている。普通のホテルでは出張費用だけだと赤字が積算され続けるので、泣く泣くこの安ホテルに泊まっている。建物自体はそんなにボロくないのだが、ソフトウェアがかなり酷い。雑巾かと間違えるほどボロボロのタオル(一応洗濯はしてあるようだ)しか装備されてなかったり、電話すらなかったり、となかなかに趣があると言えば言える、そんなホテルだ。

研究所はスイスとフランスの国境にまたがっており、通常の出入り口はスイス側。そのホテルはフランス側。ということで、ここ数日は国境を歩いて越えている。まあ国教と言っても、入国審査や税関で止められるわけでもなく、単に警備の建物の素通りをするだけなのだが、日本では出来ない経験だ。車も止められること無く素通りなのだが、たまには止められることもあるらしい。前に知り合いに車に乗せてもらったときに、2度止められた経験があり、他の人に比べるとかなり高い確率で止められる。ランダムに選んでるわけではなく、白人以外をチェックしてるのが明らか。なんというか、仕方ないと言えば仕方ないのだが、ちょっとムカつく。ちなみに、電車で国境を越える時に警備の人間がパスポートを検査するのだが、全員チェックすることもあれば、1車両数人だけチェックすることもある。後者のときはやはりチェックされるのはほとんど白人以外。アラブ系の人と一緒に旅行したときは、どこでも厳しくチェックされてた。
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通りの名前

今回研究所に来て以来3週目に入っているが、ずーっと気持ちのいい天気が続いている。湿度が低く、まさに爽やかな日々が続いている。今日もそんないい天気だったので、久しぶりにリラックスするために、午後30分ほど研究所の敷地内を散歩した。研究所の敷地内の通りには有名物理学者の名前がついている。例えば、メインエントランスからの通りは"Route Pauli"。そこから脇へ伸びる道は"Route Einstein"といった具合。普段は気づかないがのんびりと散歩すると、素粒子物理学の研究所と思わせるシブい人選もあってなかなかに面白い。日本人では"Route Yukawa"がある。が、あまりメインな通りではない。うーむ…。
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ベトナム料理

今やっている幾つかの研究について他の研究者と色々議論する機会を何度も持てて、先週はわざわざ出張している甲斐のあった1週間であった。学生やポスドクの人たちがやってることも含めると、研究の範囲は多岐にわたるのだが、実際に自分で手を動かしてやっている内容は2つあって、その1つに関しては多少行き詰まりを感じていた。直接使えるアドバイスはなかったが、新しいアイデアの元となるようなコメントを聞けてたのは大きな収穫だった。

そんな充実した1週間の締めに(?)、昨日の晩は研究者仲間とジュネーブまでベトナム料理を食べに行った。見た目はfancyではないが、料理はとても美味しかった。ベトナム料理の定番春巻きとフォーに舌鼓を打った。値段もジュネーブ中心部にしてはお手頃で(何度か書いたがあくまでジュネーブ標準に比べて。日本の感覚だとやはり高い)、今度学生が来た時に連れて行くのによさそうな店だった。
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火災報知機

研究所に来てから1週間。大学と違って研究がはかどる。例えばデータベースに記録されている検出器の特定の部分の温度の過去のヒストリーを調べたいとする。売り物のソフトウェアではないので、それを調べるためのツールを動かすのが大変だったりする。マニュアルがあるわけではなく、コードを読んで、調べて、ということが必要になる。それでもわからないことがあると、大学にいるときは開発者にメールで聞くのだが、研究所で直接本人のところに行くのは何倍も効率的だ。複雑な説明をメールでやりとりするのは大変だし、時差はないし。一時が万事この調子で、出張してる甲斐がある。

しかし…問題は住む場所。アパート探しはしているが壊滅的に見つからない。選ぶ前に、候補となり得る物件が無い。しかたないので、高価でもマンスリーアパートでも予約しておこうかと思ったのだが、これまた激しく満室。そういうわけで依然、研究所の宿舎に泊まっているのだが、今朝5時半前くらいに火災報知器の音にたたき起こされる。日本だと誰も反応しないが、私が過去に住んでいたアメリカでもスイスでもちゃんと避難する。みんな眠い目をこすりながら建物の外に出て、消防隊が安全を確認するのを待った。今回は、確かに建物中が焦げ臭かったので、多くの人が念のため避難したということがあるのかもしれないが、誤報っぽい時でも欧米の人はみな探知機がなると避難する。日本でもそうしたほうがいいと思うのだが。
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