ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

ttHプレスリリース

今更ながらの話ですが,CERNおよびATLASでは6月4日にttH発見のプレスリリースを行いました。それから遅れること3日間,ATLAS日本グループでも7日に日本の報道機関に向けてプレス発表しました。が,3日間のタイムラグは大きく,CERNですでにリリースされている内容を3日遅れでは記事にできないと,記者さんにはお叱りを受けました。全くごもっともな話で,メディアとしては鮮度が命ですから,そんなに遅れてはニュースにできません。。それでも,CERNのリリース内容をもとに一社に記事にしてもらったのはラッキーでした。

今回CERNのリリースと足並みを揃えて国内発表できなかったのは,CERNのリリース内容が定まるのが遅かったことに尽きます(なんでそんなに遅くなったかは書くのやめておきます)。通常は,解禁日の何日も前から発表内容は定まっていて,それをもとに日本側でもリリースを準備します。研究者による確認だけでなく,KEKや大学などプレスを投げ込む機関の広報が確認調整をするのでこれに結構時間がかかる上,KEKではリリース内容をすべて文科省にお伺いを立てるというしきたりがあり,これにも時間がかかります。記者さんをはじめ,私が接する広報関係の人々もなんでそんな時間のかかることをするのかと訝るのですが,色々事情があって,この時間のかかるプロセスを経なければなりません,少なくとも今の所。というわけで,CERNの発表内容をもとに日本のリリース内容を決め,各所でのチェックを経ると,最速でも木曜のリリースが精一杯でした。

本題に戻ると,リリース内容はこれです。仕事の早い素核研広報のNさんがばんばん記事を書いてくれて,ttHのプレスリリースのことだけでなく,ATLASのcollaboration Weekのことについても,素核研の記事にほぼリアルタイムでなっています。彼は相談をもちかけると,ガンガン手伝ってくれるので本当に頼りにしています。

また脱線してしまいましたが,そうです,ttHの有意度が5σを超えました。それでプレスリリースとなったわけですが,私個人的には,マルチレプトンの終状態をttH探索に使うのは論理矛盾してると思っています。このブログで以前も書いたことありますが,ttHを探すということは標準模型を仮定してはいけないはずで,となると,トップクォーク対とたくさんのレプトンがある事象を見つけただけでは,トップクォークと結合する未知の粒子がマルチレプトンに崩壊している可能性を棄却できません。トップクォーク対と同時にヒッグスが生成されていることを積極的に同定して初めてトップ湯川の発見だと思うのです。そういう意味で,今回はttH(→γγ)がはっきりと見えているのはエポックメーキングだと思っています。単独での有意度は3σちょいですが,これのほうがよっぽどttHという感じがします。

ttHの発見は,LHCのヒッグスプログラムの中で極めて重要なマイルストーンです。ボトム湯川は有意度的には微妙ですが,mass peakがそれなりに見えていることから,私の脳内ニューラルネットワークでは信号があるように見えています。加えてτ湯川も見えていることから,第3世代の湯川をコンプリートした感があります。この成果は当初の想定よりもかなり早いもので,LHCが極めて順調で高いルミノシティを出していること,そして,その高いルミノシティにもかかわらずほぼデッドタイムフリーで検出器を運用できていること,が大きく効いています。機械学習など解析手法の改善も重要なのですが,加速器と検出器の性能が重要なんだということを若い人にはぜひ実感してもらいたいです。

ここまで来ると,ヒッグスの物理としては第2世代が次の大きな目標になります。μは統計勝負ですが,チャームはなにか新しいアイデアが不可欠です。ここら当たりこそ機械学習の出番なのかもしれません。それから,個人的に気になっているのは,トップ湯川が少し大きくないか,ということです。ttHだけじゃなく,inclusiveな解析でgluon fusionを見てもなんとなく大きい気がします。もちろんグローバルフィットをすると標準模型と誤差の範囲で一致しているので全然有意ではないのですが,脳内ニューラルネットワークでは,なんとなく大きいような気がして気になっています。ttHだけじゃなく,これから色々な生成,崩壊モードで精度を上げていく楽しみになります。

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色々終了

ATLAS Weekを無事終えることができました。Local Organizing CommitteeチェアのYくんの強烈な頑張りと,それをサポートする事務方,そして,W大の学生の頑張りによって,素晴らしいイベントとなりました。Spokespersonによる侍との対決はATLASの歴史に残るのではないかと思いますし,conference dinnerも過去最高との評判です。この成功はもちろん運営を頑張ってくれた人によるところは大きいのですが,もう一つは,会場として大学を使えたのが大きいです。国際会議場,あるいは,ホテルを使うと莫大な使用量を取られますが,今回はそれがなかったので,参加費をソフトウェアにおもいっきり回すことができました。また,この会議に協賛していただいた会社の存在も大きいです。改めてお礼申し上げます。

そして,今日。ATLAS Weekの副産物であるアウトリーチ企画を無事終えることができました。多摩六都科学館の方々をはじめ,企画と準備に奮闘してくれたみなさんに感謝します。何回か同じことを書いていますが,このムービーは本当によくできています。ぜひまたどこかで活用したいです。

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いよいよATLAS Weekです

今,早稲田大学の井深ホールにいます。ATLAS Weekの参加登録が無事始まりました。

順調に準備は進んでいますが,マイナーなトラブルがいくつか。新品のプリンターの調子が悪くて早稲田大から急遽タクシーで学生に運んできてもらったことが一つ。それから,ずっとイマイチなのが,会場をテレビ会議接続するためのシステム色々です。テレビ会議の音声を会場に出すのに苦労しています。その他,テレビ会議システムのカメラをコントロールするリモコンが故障していることが発覚。リモコンなしで,ネットワーク越しに直接コントロールすることによって問題解決できましたが,このような小さなトラブルが積み重なっています。。

それからもう一つ気になるのが台風の動きです。直撃はしないみたいですが,明日,雨が結構降るのでしょうか。せっかく,ATLAS Week参加者への配布物に傘(と扇子)を用意したのですが,雨が降っているので参加者は会場に来る前に傘を自ら買ってしまいそうです。タイミング悪し。。。

このようにまあ幾つかマイナーなトラブルはありますが,早稲田のYくんが中心になって準備をきっちり進めてくれたおかげで順調といってよい出だしですかね。

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LHCルミノシティとか

2018年もLHCは好調です。年末年始のシャットダウンから非常に順調に立ち上がり,ルミノシティはコンスタントに2×10^{34}超え。その後,ビームが不安定になりリングのある一箇所でビームをダンプしてしまうことが続いていましたが,それもその後の対策で改善したみたいです。今年だけですでに12/fb超え。去年は1.5×10^{34}でルミノシティレベリングを行っていましたが,今年はトリガー用の計算機資源の増強などによって,2.1×10^{34}くらいまではレベリングしないでも走れています。

BelleのUくんに最近よく聞かれることがあります。
「LHCのピークルミノシティの最高は?」
彼が気にしているのは,もちろん意味のあることではないのですが,世間に向けて「これまでKEKBがルミノシティの世界記録を持っていた」と言ってよいかどうか,ということなんですね。なので,私も下手なことを答えることができません。今知っている数字はオンラインでの数字なので,オフラインでは数字が変わる可能性があります。それから,ATLASとCMSでも違いますし。まあ,SuperKEKBによってすぐにルミノシティの世界最高を争うことはできなくなってしまいますが,極めて順調にLHCが稼働し,ATLASも頑張ってデータ収集しているということが重要です。

ルミノシティといえば,私,いつも気になっていたのは,バンチ交差あたりの陽子陽子衝突数です。単位時間あたりに発生する衝突事象数に,バンチ交差の時間間隔を掛ければ,バンチ交差あたりの衝突数です。ですので,断面積を80mb,ルミノシティを2×10^{34}とすれば,バンチ交差は25nsですから,
80mb × 2 ×10^{34} × 25 × 10^{-9} = 40
となります。実際には,LHCは全てのバンチに陽子を入れているわけではなくて,全部入れると2800くらい入りますが,2500くらいしか今は入れていません。すると,実効的というか,平均するとバンチ間隔は25ns × 2800/2500 = 28ns になるので,1割程度はバンチ交差あたりの衝突数が増えることになります。44とかですね。

ところが,実際には55近いの陽子陽子衝突がバンチ交差あたりに発生しています。この状況は,去年も同じで,1.5×10^{34}でレベリングしていたときに,ルミノシティとバンチ数からナイーブに計算した値よりも多くの衝突が発生していました。

そこで,LHCに25nsごとに陽子を詰めていくと何バンチ入るか数えてみると,1周約27kmありますから,25ns間隔(=光速で陽子が動いているとすると8.3m間隔)だと3250も入ります。入射やダンプのさいに空バンチが必要なのですが,それが400程度あるんですね。一回数えてみればわかることなのに,数えたことがありませんでした。。

というわけで,実効的には,25ns × 3250 / 2500 = 33ns間隔。すると,同じ計算式をもう一回書くと
80mb × 2 ×10^{34} × 33 × 10^{-9} = 53
となって,ATLASでの観測数とほぼ一致します。
いやー,すっきりしました。単純な計算も一度は自分でやってみないとなりませんね。

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プラネタリウムど迫力

先週の木曜にCERNから帰国。翌日の金曜日は,6月に行うアウトリーチイベントの打ち合わせと,文科省での打ち合わせたのために東京出張でした。

アウトリーチイベントは,6月16日(土)に多摩六都科学館というところで行います。その内容はこちら。打ち合わせでは,完成した,というか,編集してもらったムービー(プラネタリウム用にATLASのアウトリーチグループが作ったもの)をプラネタリウムで試写させてもらいました。私,最近は感動することが少なくなってきて,年かなぁと感じていますが,このムービーにはむちゃくちゃ感動しました。自分のパソコン画面でも同じ動画を見ることはできるのですが,それとは大違い。物凄いど迫力,ライブ感,立体感で,こんなに感動したのはいつ以来だろう,と思うくらいの迫力でした。興味を持たれたらぜひご参加下さい。また,知り合いにもぜひお勧めを。できれば,自分の子供にも見せたいのですが,場所がつくばからだとちょっと遠いのですよね。。

あ,参加のためには,科学館のウェブサイトから申し込みが必要です。締め切りは6/6です。

ATLASのアウトリーチイベントではありませんが,多摩六都科学館では色々なイベントをやっています。IPMUの外国人研究者とのサイエンスカフェ(英語)なんていうニッチな(?)企画もあるようです。チェックお勧めです。
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