ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

2017年11月ATLAS近況

ATLAS at anywhereというタイトルなのに,ATLASのことを最近全然書いていなかったので,今日はその近況を。

重心系エネルギー13TeVでの物理データ収集は先々週に終えました。約50/fbの陽子陽子衝突が今年だけであり,ATLASでは約47/fbのデータを収集しました。本当にLHCの調子がいいです。一時期ビームロスが大きいという問題がありましたが,結局その後の調整で知らぬ間に元通りになり,結局,陽子の入射直後はルミノシティが高すぎて検出器がそれに追いつけず,当初HL-LHCで予定されていたルミノシティレベリングをすでに行っています。そのため,瞬間ルミノシティの推移をみていると,ビーム入射直後はしばらく1.5E34くらいで一定のままでした。

先々週に13TeV運転を終えたあと,昨日までの約1週間は重心系エネルギー5TeVでの陽子・陽子衝突実験をやっていました。WのpT分布を理解したいとか,重イオングループのためのstudyとかのためだったみたいです。でまた,昨日だか今日からは低ルミノシティでの13TeV運転をしてるみたいです。ルミノシティ測定のためのヴァンデルメールスキャンや,これらのstudyを11月中に行い,12月早々には運転停止で,年末年始のシャットダウンとなります。

予定よりも1週間ほど早いシャットダウンで,これはCMSの要請によるものです。去年の年末年始シャットダウンにインストールしたピクセルの調子が悪くて,検出器を開けて色々調べたいというのがその理由です。DC-DCコンバーターを使っているのですが,それをコントロールするチップがSEUを起こすと,パワーリサイクルしないとならないのだそうですが,パワーリサイクルできなくなってるモジュールが徐々に増えているとか。この電源問題が解決できないと,CMSは運転できないのではないかとかなり真剣に心配されています。コストパフォーマンスの面から,ATLASとCMSが同時に走れない場合は多分LHCの運転をしないので,ATLASとしては他人事ではありません。また,同じ電源をATLASアップグレード用のシリコン検出器でも使おうとしているため,これまた,シリコンをやってる人間としては他人事ではなく,ATLASのミーティングでもこの問題が話題になっています。

とまあ,色々ありましたが,総じて2017年の運転は順調で,それもこれも,現場にはりついて頑張っている研究者のおかげです。願わくば,よりデータ量を増やした精度の高い解析で,何か見つかれば言うことなしです。

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スペイン人に慰められる

今週はCERNです。オタワから中1日での登板ですが,オタワで神経を使わず楽してたせいか,案外疲れずにCERNに移動してきました。というか,CERNへの移動はもはや通勤みたいなものなので,体力的には疲れますが精神的には楽みたいです。

今朝は,スペイン人の知り合いと朝飯を一緒に食べたのですが,その際,日本のATLASに対する財政状況が厳しいという話をしたところ,彼の国の現状を教えられ,日本のほうがはるかにマシだと慰められました。加速器の運転経費は,CERN加盟国からの収入でまかなわれますが,ATLAS検出器の運転経費は,ATLASグループが著者数に応じて各国に分担を求めています。日本はCERNの加盟国ではないので加速器の莫大な運転経費は払っていませんが,ATLAS検出器の運転経費は(これも一般的な感覚では莫大ですが,加速器に比べると非常に少ないものです)毎年分担分を払わなければなりません。日本人の発想ではそれを払えなかったらATLASをやめなければならないと考えますが,スペインは当然のように今年分をまだ払えていないとか。加えて,給料の支払いすらピンチだそうで,他人事ながら大いに心配な状況です。しかし,ラテンの人は私たちほど悲観的でないというか,そういう状況に慣れているというか,とにかく,私が心配するほど心配してなさそうなのが凄いです。

しかし,日本もいつまで運転経費を支払えるかわからない状況で,最近の私は,そういう厳しい財政状況をATLAS首脳陣,ATLAS日本のメンバー,KEKの偉い人に説明するのが仕事になってしまっています。昨日も19時くらいまでミーティングをした後にATLAS予算担当者とシリコンアップグレードプロジェクトリーダー相手に2時間ほど現状の説明。先週のオタワとは大違いで,クタクタです。。

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これevidence?

9月以降海外出張がとんでもなく多くて,今週はCERNにいます。もっぱら精神的に病んでしまいそうな打ち合わせをひたすらこなしているのですが,昨日は,Yくんにつられて(?),CERNセミナーを聞きに行きました。

ATLASグループがttHのevidenceを主張する内容だったのですが,正直なかなかに辛いものがありました。自分もATLASをやってるのだから,こういうことを言ってはいけないのかもしれませんが,ヒッグスが影も形も見えません。というのも,ヒッグスの崩壊モードは幾つかありますが,感度のほとんどはmulti-leptonで決まっています。Multi-leptonではヒッグスの再構成をしませんから,これでヒッグスとトップの結合を見たと言われても,多くの人は「えっ?」という反応になってしまいます。それに,信号はレプトンとmissing ETだけなので,標準模型内で考慮している背景事象の見積もりの精度が仮に高くても,標準模型の枠外からの寄与に関しては全く考慮されていません。何らかの信号を見つける際に,標準模型を完璧に仮定してしまったら,もはや何を測ることになるのか意味がわかりません。

ここはやはりttH(→γγ)できっちりとヒッグスを見ないとダメでしょう。統計がたまれば綺麗に見えてくるはずで,もしそれが綺麗に見えれば,multi-leptonもクロスチェックとして意味あるかなとは思うのですが。というわけで,Hくん,解析頑張ってください。

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怒涛の数日

前回のエントリーでは,ミーティングの内容を楽しんだなんていう呑気なことを書いていましたが,その後,私の周りの状況が急変。ミーティングに出て,関係者と打ち合わせをする目的でCERNに来ていましたが,並行して,某所でHL-LHCの説明をするための準備,政府が補正予算編成を決めたことを受け,それに備えた準備。どちらも超重要,かつ,超緊急の案件で,ここ2,3日は私の処理能力を完全に超えていました。そのおかげで,返信すべきメールがだいぶ溜まってしまいました。

今はジュネーブ空港で飛行機を待っているところですが,上記の緊急案件に関連して,日曜まで打ち合わせが入ってしまいました。その後,月曜は某所に行き,そして,水曜はまたCERNに戻ってくるというハードスケジュールがこの先も続きます。ちょっと前にも書きましたが,体力温存が今まさに私のテーマです。

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ミーティングを楽しむ

今回のCERN出張は,HL-LHC用シリコン検出器開発に関するcollaboration meetingに出るためです。今日はこれから,各国がどこをどれだけ担当するかを議論するセッションがあったり,その分担についての水面下の交渉とでも言うべき内緒の打ち合わせがあったり,と,私にとっては1番頑張らなければならない日であり,ヘビーな日でもあります。

一方,昨日は,私たち日本グループも関連するセンサーとその周辺部に関する議論がテーマで,ほぼ技術的な話ばかりだったので,それぞれの発表を楽しんで聞いていました。特に,CMOSピクセルセンサー関連は色々と情報収集できて面白かったです。これまで高エネルギー物理で使われてきて,かつ,HL-LHC用の本線として開発されているのピクセル検出器は,センサーと,信号読み出しのためのASICをバンプボンディングするタイプなのですが,それに変わるものとして,センサーと読み出し回路が一体化したCMOSセンサーが精力的に開発されています。ATLAS(やCMS)では,このCMOSセンサー開発が非常に盛んで,各国,各グループが独自のベンダーと連携して,様々な技術開発を行っています。

正直,HL-LHCで使うための実用化にはまだ時間がかかるだろうという印象なのですが,新技術開発はそれ自身が楽しいですから,それはもうたくさんのヨーロッパ人が開発競争に参加しています。発表で面白いと思ったのは,開発しているグループ自身は結果を見せる際にいいとこ取りをするのですが,第3のグループが色々な試作品を試験して比較すると,開発グループが見せない結果まで見せてくれることです。開発の鍵となっている,つまりは,ボトルネック部分に関する結果をきちんと見せてくれるので,それは非常に興味深かったです。

国際会議等でも同じですが,競争になると,発表内容は人に見せたい,うまく行ってる部分ばかりになり,問題を隠す傾向になるので,真の開発進行状況がわかりづらくなってしまいます。でも,開発グループとは別の第3者グループが試験をすると,隠し事をせずに何でも見せるので,公平で面白い発表になります。実際,今回,ある測定結果が非常に悪い結果だったのですが,瞬間,開発グループからそれは間違っているというコメントが飛んできて,でも,発表者は間違っていないと主張。このやりとりはなかなか面白かったです。一聴衆としては,だったら開発グループがまさに見たいそのプロットを出せよ,というツッコミを入れたいところでした。我々が本当に見たいものを見せないんですよね。。

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