ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

第7回春の学校

第7回春の学校を無事終えることができました。参加者のみなさん,学生を送り出してくれた指導教員の方々ありがとうございました。あと,講演料はおろか,旅費さえこちらでは出さないのに講義をしてくださる講師の方々にも感謝です。毎回同じことを書きますが,本当に充実して楽しい3日間でした。学生と物理の話をしたり,酒を飲んで戯れるのはストレスフリーで本当に楽しいです。

また,永世幹事の称号を持ち,毎回現場監督として学生に指示を出すNさんが今回は初の幹事。いつも以上に張り切って準備と運営をこなしてくれたおかげで,他の世話人は,いや少なくとも私はいつも以上に何もしないで,ただただスクールを楽しみました。

ここ4回は同じ場所で開催していて,来年もまた同じ場所で,ということで帰り際に来年の予約もすでにしてしまいました。来年も今年と同じくゴールデンウィーク明けの2週後の,5月17-19日です。今年リピーターが,さらに来年は増えてくれることを祈っています。

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3σevidenceと言うか?

参加中のLHCP2017の昨日のヒッグスのセッションでのこと。結合定数測定の話をした講演者がttHをマルチレプトンチャンネルで3σで見つけたと発言し,ちょっとした物議を醸しました。発表後の質疑応答でも厳しく突っ込まれていましたし,晩飯を一緒に食べた人からも「あれは酷い」という話になりました。

CMSの結果がμ=1.5+/-0.5だったことについて講演者は3σevidenceと言ったのですから,ある意味間違ってないとは言えないのですが,うーん,そう言うか?という感じがします。だったらμの値が1.5だと主張して欲しいですが,そういう主張ではなく標準模型とconsistentだという主張。いや,それも間違ってないので頭ごなしには否定できないのですが,測定する前から答えはμ=1だと思っているのがヒシヒシと伝わってきて,なんのために実験してるのかという印象を強く受けてしまいました。私だけでなくそう感じた人が多かったら話題になったわけで,うーん,何だかなぁという感じです。

もし答えありきで実験やるなら,わざと感度を落とした測定をやって運良く3σになるのを待ってるようなものです。たとえば,統計量を減らして誤差が物凄く大きくなるように,たとえば+/-2くらいになるように統計を減らしたとしましょう。2の誤差があれば,ぶつ切りにしたデータセットそれぞれで中心値が大きくブレるはずで,その中にはμ=6+/-2になるデータセットがあるかもしれません。それも3σevidenceだし,かつ,標準模型ともconsistentです。

これでは答えの捏造になってしまいますから,そんなことはしませんが,ポイントは感度の悪い測定を色々な方法でやって,たまたま自分が欲しいと思った答えになったものを3σevidenceというのは,もはや捏造に近いのではないかということです。頑張っているけど感度が足りないというのであれば,出た結果に対する解釈に対して責任を持った発言をして欲しいです。じゃないと,パーツを切り出すとどの発言も間違ってないのに,全体としては間違った方向(今の場合,測定をする前から答えがμ=1だと強く信じて測定を行い,どういう結果であっても標準模型とconsistentだと主張する方向)に進んでしまっていると思います。

それに比べて,2012年にヒッグスの発見をクレームするかどうかというときには,熱い議論があって楽しかったです。測定前に答えありきではなく,そういう厳しい議論をしないと,データを取っても金の無駄遣いになってしまいます。

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自分の頭で考えてもらいたい

ある外国人研究者とのやりとりに疲れています。研究内容について質問すると,「どこそこの論文にそう書いてあるから」的な答えばかりで,自分自身でその内容を吟味もしていなければ,理解もしていないのです。検出器開発にかんする議論で,なぜそういう要求値になるのか,なんでもっと緩い要求ではダメなのかと尋ねると上記の答えなのです。。では,と,その論文を見ると仕様要求は書かれていますが,なぜその要求値になるのかは定かではありません。

こういうことはよくあるのですが,そのパターンは2つに分類できるかもしれません。

その1:相手が何にも考えていない。一定の割合ではどこにでもそういう人がいて,運悪くそういう人に出くわしてしまった。

その2:検出器開発の専門家によくあることですが,一般的に面白い技術開発をやっていると,その研究をさらに進めるために物理から本当に必要なのかどうかわからないけど,とにかくoverspecなものを作ろうとする人たち。技術開発自体を目的とするエンジニアが幅広い応用を見据えて技術開発してるかのごとく,技術開発自身がゴールになっているパターン。

今回はこの2つのコンビネーションみたいなのですが,相手にするのが本当に疲れます。本に書いてあるから,誰かがそう言ってるから,という理由で研究を正当化するなら科学者をやめたほうがよいです。いや,2のパターンならそう言ってくれれば,それはそれで納得します。自分の今の環境だとそういうことをする金も人もいないので,潔くoverspecだけど趣味でやってると言われれば,ただただ羨ましいと思うだけです。でも,本来は2なのに,誰かが必要と言ったから必要なんだ,みたいな説得力のない言葉で正当化しようとしてる人を相手にしなければならないのは,仕事だから仕方ないことなのかもしれませんが,科学者同士の会話ではありません。とほほ。

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RK*

先週CERNのセミナーで,LHCbがRK*が1からズレている,と言っても2σちょいですが,という結果を発表して,理論屋さんの間ではちょっとした話題になっているようです。RK*というのは,B→K*eeとB→K*μμの崩壊比の比で,標準模型ならペンギン経由のγ(とZも?)が電子対かミューオン対に行くだけなので,その値はほぼ1です。電子とミューオンでは質量が違うので位相空間のデカさは多少違いますが,今はざっくりとした議論なので,γとの結合に電子とミューオンに違いはないのでほぼ同じということです。

どっちを分母にしてるのか定義を忘れましたが,とにかくそのRK*が1から2σちょいズレてるということですが,普通にSUSYとかでそういうこと起きませんし,無理やり電子への結合ととミューオンへの結合の違うものを入れようとしたら,他の観測事実にひっかかってしまうだろうし。。。というわけで,自然にこれを説明するのはなかなか難しい気がしますが,これまでの既成概念にとらわれず虚心坦懐に実験結果を吟味するという姿勢は大事だと思うので,注目は一応しておこうと思っています。

セミナーの内容は見ていませんが,実験屋的には電子とミューオンの検出効率にバイアスがないかをまず気にします。当然,それぞれの検出効率を測るだけでなく,J/psiあたりで測定にバイアスがないかをチェックしてるんでしょうね。他にも色々in-situのデータでチェックできることはあるので,もし,1からのズレが実験によるものだとしたらあとは統計ということになりますが,いずれにせよ,そのうち発表内容をよく見てみようとは思っています。

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申し込み殺到

春の学校の申し込み締め切りが過ぎ,蓋を開けてみると70(?)の応募。多数の申し込みありがとうございました。

この学校を始めたころは,当然のことながら知名度ゼロだったので,高エネルギー物理屋が入っているメーリングリストはもちろんおこと,色々な知り合いを通じて学生の参加を呼びかけてもらいました。ところが,ここ1,2年は,そういう個別のお願いをしなくても毎年ほぼ同じ人数の申し込みをしてもらえるようになりました。ありがたいことです。

さて,次の問題は,この多数の申し込みを受け,どうやってプログラムを作るのか,です。何度か議論したことがあるのですが,2泊3日では入りきらないほどの口頭・ポスター発表の申し込みがあるので,日数を伸ばそうかとも考えました。でも,学生には授業や実験現場での研究活動もありますし,運営側も暇人なわけではないので,日程を伸ばすのは難しいという結論に達しています。となると,どうやって発表を入れるのか...かなりの難題です。

今回幹事おNさんは色々と選抜方法やプログラム案を考えて提案していますが,さて,最終的にどういうことになるのか。。

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