ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

すり合わせ

今週はATLASアップグレード用シリコン検出器開発関連の大きな会合に参加しています。こういう打ち合わせに出るといっつも同じことを感じます。

昨日出た打ち合わせの一つにピクセル検出器のバレル部分の製造関連のものがありました。大きなプロジェクトなので,いくつものチームが役割を分担して設計,製造を行います。たとえば,センサーなどの配置いわゆるレイアウトは物理屋主導でシミュレーションをもとに物理の性能を最大化させようとします。一方で,実際の検出器の設計はエンジニアリングの世界で物理屋ではなくエンジニアが物質量を減らしつつ要求される冷却性能と強度を保つべくデザインを考えます。すると,エンジニアリング的には,つまり,実際には作れないものあるいは作るのが非常に難しいレイアウトをレイアウトグループが推薦してくることも多々あり,そうすると,両グループの主張の落とし所を探ることになり,これが非常に時間がかかります。

あるいは,エンジニアリング的な設計と一言で言っても,全部を一人あるいは一つのチームで設計するわけではないので,Aという部分を担当しているチームとBという部分を担当しているチームで意見が対立することもよくあります。昨日の例だと,バレル部分のケーブルを通すためには,エンドキャップ部分との境界を通さないとならないのですが,その間隔が1mmしか取れない。それを交渉したが今の所4.5mmしかまだ隙間がない。それじゃまだ足りないからさらに交渉が必要。みたいな話になっていました。

これらはあくまで一例で,一人ですべてをやれないプロジェクトでは多かれ少なかれ,同様の問題があるのではないかと思います。自動車の設計とかでも,きっと,色々なすり合わせがされているはずですよね。営業と設計。設計の中でも,エンジンを作る人とボディを設計する人,シャシーの設計とエンジン,などなど,無数のすり合わせを経て最終的な設計が決まるはずで,その調整作業をいかにスムーズに,違うチーム同士がいかに相手のチームのことを理解して歩み寄れるか,それによって良いものができるかどうかが決まるんだろうなぁ,と,ミーティングに出るたびに感じます。同時にその辺の意思疎通をうまくやれるかどうかがプロジェクトリーダーの腕の見せ所なんでしょうけど,実際に自分でやるの難しいなぁ,とこれまた日々感じています。

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春の学校の申し込み受付開始

昨日の晩,永世幹事からhecforumにアナウンスがあったように,第8回高エネルギー物理春の学校の受付が始まりました。この記事を読んでいらっしゃる方の周りに,学生あるいはポスドクがいましたら,ぜひ参加をお勧めください。元気のある若手が集まり,非常に活発に意見を交わし,自分たちの実験以外をやってる同世代の人間と知り合う,良い機会になっています。場所はいつも通りびわ湖の湖畔。ここ数年は毎年同じ場所でやっています。日程は5月17から19日にかけての2泊3日です。

今回の講師は,理論が永田さん,測定器が三部さん。これら2つの基幹講義に加えてとピカルとして3つ。ATLASが奥村くん,Belle IIが後田くん,そして,ニュートリノが木河くん。意識したわけではありませんが,全体的に例年よりも講師の年齢が若くなっていますね。夜の部もエネルギッシュに対応してもらえそうです。

このスクールを始めた当初はノウハウもなかったので,毎回結構神経を遣い苦労していましたが,最近はノウハウが蓄積されてきた上に,永世幹事が現場を仕切るだけでなく設営から何かやってくれるので,もはやお客さん気分で遊びに行ってる感があります。今回も面白い講義と,若手同士の熱い議論が楽しみです。

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虚数のエネルギー

今日は,不安定な粒子のエネルギーは,質量でもいいですが,なんで虚数なんだっけ?というところから始まって,KEKの有名な理論やのKさんがどこかのスクールで熱く語っていた「粒子=poleなんだ」という話を思い出し,伝播関数からpoleがどうやって出るのか思い出してみたり...と,仕事の合間にちょくちょく素粒子物理屋っぽいことを考えていました。

はい,完全な逃避行動です。。

厳しい予算状況の中,来る日も来る日も金のことを考え,色々な人と金の相談ばかりしていまして,今朝もKEKの主計の人たちとかなりの長時間に渡って今後どうしていくのかの相談。その他にも幾つか金の相談があり,現実逃避で物理のことを考えてたというわけです。

しかし,虚数。不安定な粒子のエネルギーだけじゃなく,色々な物理現象,それも素粒子物理に限らず極めて広範に出てきますから,自然現象を理解するための数学というツールだと思うしかないのかもしれませんが,物理法則の中にあらわに虚数が出てくるたびに違和感を感じてしまうというか,それって一体どういう意味なんだろうと悩んでしまいます。私は学生の頃はCPの破れをやっていまして,そこでも当然虚数が重要な役割を果たします。数学的にはわかっても直感的なイメージがわかず...虚数のエネルギーもしくは質量も一緒です。質量行列に崩壊幅の項があると粒子の存在確率が時間とともに減っていく,というのは,簡単な数学でわかりやすいので,虚数の崩壊項が入ってくること自体は受け入れられるのですが,でも虚数のエネルギーってどういうことですか?と,たとえば一般公開で質問されたら,何と答えてよいのか思いつきません。

でも,虚数があるおかげで,色々な物理現象がうまく記述できてますよね。もはや虚数なしには,説明できない物理がたくさんあるのではないでしょうか。そう思うと虚数って凄いのですが,誰がいつ発明したのか私は知りませんでした。でした,と過去形で書いたのは今グーグル先生に訊いてしまったからなのですが,まあ,誰がいつ発明したのかはさておき,本当に凄い発明でしたね。

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準備色々

5月に開催予定の高エネルギー物理春の学校。そして,6月に開催予定のATLASグループのCollaboration meeting。これら2つの準備が進んでいます。春の学校のほうは永世幹事のNさんがいつものように張り切って準備していて近々アナウンスを流せそうです。Collaboration meetingのほうはYくんを中心とする優秀なLOCの人々がそれぞれの役割を着実にこなし,会場とホテルの手配,ポスターにウェブ,参加登録の設定などなど数多くの準備が滞りなく進み,来週早々にも登録をアナウンスできそう,というところまで準備が進んでいます。

後者については,ウェブとポスターを業者に作ってもらっているのですが,その業者は私が阪大にいるときにお世話になった会社で,いつも綺麗でカッコイイウェブとポスターを作ってくれます。Yさんもお付き合いがあったので,今回はYさんに窓口となってもらいましたが,そのデザインは相変わらず美しく,頼んでよかったなぁと思えるものになりました。昨日はATLASのmanagementも混ぜて,登録開始前の打ち合わせを行いました。ボトルネックとなる問題もなく,上記のように来週には登録を開始することができそうです。

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DCDCコンバータ

検出器の物質量,特に,不感物質の量は少なければ少ないほどいいので,コライダーのように有感領域にケーブルを配線する必要がある場合,最近の流行り・進む方向として電源供給にはDCDCコンバータが使われ始めています。複数のチャンネルに並列に配線するよりもケーブルの数=物質量を大幅に減らせますし,ケーブルで消費する電力も抑えられるので一石二鳥。というわけで,私たちが開発しているATLASアップグレード用のシリコン検出器でもDCDCコンバータを使って送電します。

CMSでは去年入れ替えたピクセル検出器にすでにDCDCコンバータを使っているのですが,去年の運転中からトラブルが発生して,徐々に死んでいっています。信号読み出し用のASICが高い放射線環境なのでSEUを起こすのですが,それをリセットするためにはチップを初期化configしなおすのではなく,電源を供給しているDCDCコンバータのパワーリサイクルをしているのだそうです。なんでパワーリサイクルまで必要なのかは私は知りませんが,とにかく,パワーリサイクルが必要だと。ところが,パワーリサイクルをしようとすると,動作不良を起こすDCDCコンバータが表れ,去年の運転中はその数が着実に増えました。

あまりに増えるとCMSが走れなくなり,LHCではATLASだけあるいはCMSだけでは走らないというルール(?)があるため,LHC自体の運転を止めなければならない,なんていう事態が心配されます。それを年末年始のシャットダウン中に修理,原因解明を行うという話だったのですが,Oくんからの最新情報によると,壊れていたものは全て交換したが,なんでそういう問題が起きるのかの根本解決には至っていないということがわかりました。全部直したので,これからまた壊れてもさらに1年は走れるのかもしれませんが,とにかく,また壊れ始めるという可能性が高いというのは懸念材料です。1年走れば長期シャットダウンになりますから,それまでなんとか持ってくれればいいという考えがあるにはあるのですが,そのDCDCコンバータはCERN開発で実はこれから色々なところで使われる予定のものなのです。

ATLASのシリコンアップグレードでもそれを使用予定ですし,今日聞いた話だと,ミューオン関連のアップグレード,それもPhase-Iのアップグレードでもそれを使う予定だそうで,あちこちで不安の声があがっています。ただ,ミューオンの場合はそれほどSEUしないでしょうから,パワーリサイクルをそれほどしなくてよいのでシリコンほどは深刻な問題ではないかもしれません。が,シリコンのアップグレードでは対岸の火事というわけではなく,今後の調査に注目が集まります。

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